8月16日
コースタイム 八久和峠(ゲートあり)7:00〜〜フタマツ沢先渡渉点11:30〜カクネ沢14:15〜長沢出合15:15〜芝倉沢出合15:50
アプローチには、鶴岡に一番早く着ける寝台特急「あけぼの」。
個室でもないオープンタイプの寝台(我々はこのタイプの寝台をドリフのコント号と呼んでいる)で早速モコモコさんと軽く乾杯し、余目と酒田で降りるという向いの方と「おやすみなさい」の挨拶をして「寝台特急あけぼの」は一路鶴岡へと向かう。
車掌さんが起こしに着てくれたのは鶴岡到着20分前。
降りる支度をしていると余目で降りる方を車掌さんが起こしに来た時間になり、余目下車の方から「気をつけて」の言葉をいただいてデッキへと向かう。
降りた鶴岡はまだ5:00前だというのに千葉と同じくらい蒸し暑い。
トイレを済ませたり珈琲を飲んだりして過ごしてタクシーを予約した5:00になったのでタクシーに乗り込む。
八久和ダムへ向かう鱒淵林道はよく手入されているが、事前情報通り八久和峠で通行止となっていた。
ここで軽く朝食をとり、支度を済ませ体操をして林道を歩く。下りで樹林の中なので涼しく歩みが捗る。
問題の土砂崩れだが、道路自体は綺麗に修復されていて何も問題がない。しかし法面をこれから工事するのかどうかわからないが、土壁の急斜面がむき出しになっていた。
だんだんダムに近づくにつれてアブが寄ってくる。
防虫ネットを被るほどではなく、三面川に比べるとずっと数が少ないが、やはり付きまとわれるとうっとうしい。
峠から1時間ほどで林道分岐に着く。
林道から先もしばらくは車が問題なく通れそうな道だった。
バックウオーターが近くに見えてきても林道はさらに奥へと伸びている。
高安沢辺りから林道に草が茂り踏み跡となるが、しっかりして歩きやすい道だ。
やがて森の中を歩くようになり、とても快適だ。
このままいったら楽勝だ。と思ったがそうは甘くなかった。
踏み跡ははっきりしているが、ときどき崩れかけた急斜面のトラバースがあったりして結構時間がかかる。
途中のムカゲ沢で下山してきた釣り人3人とすれ違う。
楽しいお盆を過ごしたのだろう。疲れた顔の中にも充実感がうかがえた。
フタマツ沢までまだまだ踏み跡は続く。
いい加減いやになるトラバース道だ。とくに丸森沢出合いあたりは歩きにくくうんざりする。
再び森の中の道になるとほっとする。
ハキダシ沢を過ぎてフタマツ沢にやっと到着。フタマツ沢自体は本流に滝で出会っているらしく沢を下降して本流に降りず、すこし先にある木に「フタマツココ下る」の切り付けがあるところから踏み跡を辿って本流におりる。
途中足場が崩れているところがあるが、慎重に降りれば特に問題ない。
降り立った本流はさすが八久和川という大きな流れだ。
早速渡渉する。
深さはあるが、流れが強くないのであっさりと渡渉成功。
渡渉した対岸は砂地になっているので、長めに休憩をとる。
ここからは時間短縮の為、ガイドにもあるように右岸の涸れ沢を登りヤロウ平と呼ばれるところの踏み跡を辿る。
結構踏まれている。
少数であるがアブに付きまとわれながら、森の中ときどき斜面のトラバースといった感じで進み、ベンノウ沢出合い手前で本流に下降する。
本流は相変わらずの水量だ。
ほんの少し本流を遡行するとベンノウ沢出合い。
ここで再び休憩。
ベンノウ沢出合上流は大きな淵となっている。ガイドによるとまだ踏み跡があるらしい。出合いに赤テープがあったので、上へ上へと登ってしまうが、これが間違えで20分のロス。
正しくは、そのまま石畳に上がり本流を少し遡行してから踏み跡へ登る。
この踏み跡はカクネ沢まで続いているらしい。
ちょうどお昼頃になり曇り空でときどき太陽が覗く程度だが気温が上がり汗が吹き出る。
アブが特に耳にまとわりつくので不快指数100%だ。
ペースも上がらない。
途中でモコモコさんの暑さ対策と入山祝いの焼肉のために板氷を担いできており、さらにフルーツパックも持ってきたので、おやつとしてフルーツを食べる。
甘く冷えたものがとてもおいしくありがたい。
気を取り直して進む。
カクネ沢手前で森の中を小沢が流れる平坦地があり、絶好のビバークポイントといえるようなところだ。実際にビバークした跡があった。
モコモコさんも「余裕があったらここに泊りたいよ」と言っていた。
もうすぐでカクネ沢だ。
カクネ沢を渡りいよいよ踏み跡が小沢で途切れたので、小沢から八久和川へと降り立った。
降り立ったところは広々としたところだ。
幅いっぱいに水がひろがっているが「広いなー、すごいなー」といいながらさくさく進める。
長沢までは目立った特徴もない。
長沢出合い周辺は砂地が広がり、天気がよければどこでも泊れそうだ。
予定では小国沢までだったが、きつそうなのでいいところがあったら泊ることにして今夜の宿を物色しながら進む。
ガイドでいいところがあったとモコモコさんが言い張りどんどん進んでいくうちに、流れは大きく曲がりなんだか泊れそうなところもなくなってきたような感じだ。
「贅沢言うからいいところ過ぎちゃったんじゃない?」とモコモコさんに言うが、それでも先へと進む。
すると芝倉沢出合いについてしまった。
ちょうど我々が立っている芝倉沢出合いの対岸は小高い砂地の台地になっていて快適そうだ。
また、出合い左岸にも止まれそうなところが見える。
モコモコさんと「この砂地に泊る?」と聞くとまんざらでもなさそうだが、「一応あそこも見てから決めよう」ということになる。
胸まである淵を渡渉して芝倉沢出合いへ行くと少し斜めで狭いが支流の水も汲めるし、増水しても砂の台地ところに比べてすぐに樹林になっているので逃げやすいということで出合いのところに決定(これがあとで効いてくるとは微塵にも思わなかった。)
早速設営にかかる。
ガイドやHPの記録をみると必ずと言っていいほどヤブ蚊の猛攻撃やすごい数の蟻の出没に精神的ダメージを受けたりと、虫の被害を受けているので、重くなるが今回はカヤライズを背負ってきた。
フライは持ってこなかったので、タープの下にカヤライズを張り設営終了。
焚火は出合いの小さな砂地の川原ですることにする。
薪を集めて、焚きつけはモコモコさんに任せて夕食の支度にかかる。
2人とも着替えを済ませ、焚火も燃え上がったところで乾杯だ。
重い思いをして板氷で冷やしながら担いできた焼肉に舌鼓を打ち、板氷が溶けた冷たい水で割った焼酎を堪能する。
夕方から凶暴化したやぶ蚊の攻撃や、安定した焚火の火炎放射熱をものともせず、初日の行程をまずまず順調にこなせたことに喜びながら盛り上がっていく。
そうして楽しく夜も更けていく・・・・はずだった。
これから宴会も最高潮になろうというときに懸念していた雨が降り始めた。
食事はほとんど済ませており、びしょびしょから生乾き程度にまでなっていた服も取り込み一時撤退する。
しかし雨は止まないので、焚火そばでの宴会はあきらめタープの下(カヤライズの中)で宴会の続きをする。
焚火もなく、夜行での疲れもあり眠くなったのでシュラフカバーに入る。
雨はどんどん強さを増して、増水が心配になったモコモコさんが「大丈夫かなあ?」と言ってくるので「焚火が燃えているから大丈夫」といったやりとりを何回も繰り返しながらうとうとする。
どのくらい時間がたったのかは全く憶えていないが、モコモコさんが「なんだかゴンゴン石がぶつかる音がする。増水して石が流れてるんじゃないの?」というのでさすがに心配になり、外の様子をちゃんと観察すると、穏やかな流れが嘘のように消え去り、物凄く増水していて、さっきまで水がなかったところもすっかり流れの下だ。
焚火も流されてしまっていた。
あれほど穏やかだった出合いも物凄い流れで渦を巻いている。
我々がいる所は大丈夫だが、一時は泊ろうかと思っていた対岸の砂の台地はほとんど水に浸かっている。
改めて、長沢付近の砂地や対岸の砂の台地に泊らなくてよかったと思った。
雨は一向に止む様子がなく、フライを持ってこなかったため、タープから少しはみ出たテントに雨が入り水溜りになってしまった。
水を掬い出してから、モコモコさんが念のためと持ってきたブルーシートを張ってテントに水が入らないようにした。
また、芝倉沢の水は濁ってしまっており、水を汲んでおかなかったのでタープから落ちる水をビリーカンにためて水を確保する。
ビリーカンはあっという間に一杯になるので水の確保は楽にできた。
ようやく落ち着いてからラジオをつけると、なんと大雨洪水警報が発令されていた。
ガイド(白山書房「朝日・飯豊連峰の沢」)で「大雨洪水警報が発令されるほどの雨で・・・枕元まで水が迫り・・・・なんとか登山道に・・・」の一文があるが、同じようなことが起こるとは夢にも思わなかった。
なんだか神経が高ぶってしまい、眠れないので、明日以降の相談をする。
そのおおまかな内容は次ぎの通り。
このまま水が引かないと、本流遡行は無理かもしれない。
芝倉沢は比較的早く見ずも引くだろうし、多少の増水でも大丈夫だろうから、芝倉沢にエスケープしたほうがいいんじゃないか。
明日の朝の様子をみないとわからないが、中俣沢遡行するには明日の朝に出発できなければ完全にあきらめるしかない。
本流遡行断念のタイムリミットは等々。
やがて雨は依然として降り続いているが、それまでの激しい雨も一段落したようなので、我々も眠りに入る。
しかし、時折雨が強まるごとに外の様子を伺うという行動を朝まで繰り返すことになった。
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林道から見る八久和ダムバックウオーター |
踏み跡は、まだまだ先へ伸びている |
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フタマツ沢出合の本流渡渉点 |
カクネ沢先で八久和川に降り立つ。まだまだ川だ |
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長沢と芝倉沢の間にある屈曲点 |
芝倉沢出合で泊る |
2日目
8月17日は増水のため停滞
停滞日
踏み跡を使った初日のことは、さらっと書くつもりだったのだが、2日目が停滞となったため初日のレポがやたらと長くなってしまった。
長くなったついでにつまらない停滞レポを。
雨は一晩中降り続き、大雨のピークは越して普通の降り方にはなったものの朝になっても雨は止まない。当然水も引かず濁ったままだ。
雨がやまないとお話にならないということでしばらく停滞となる。
ラジオをずっと聴いていたが、今日の天気は雨が止むのは夕方らしい。
今日一日の停滞が決定した。
カヤライズの外は蚊などが集まって中に入りたそうにしている。このときほどカヤライズを持ってきてよかったと思ったことはない。
明日以降の予定をモコモコさんと改めて相談した結果、明日の朝起きて本流の水が引かなければ先に行くことも戻ることもできない。支流の芝倉沢ならば水の引くのも早いし、少しくらいの増水でも遡行可能だ。明日の朝本流の流れを見て、芝倉沢をつめて大鳥に出るか本流の遡行続行かを決めることにする。
モコモコさんは地形図を眺めて、芝倉沢の中流部が深く狭いゴルジュになっていて、つめも大変な様子を想像したようで、しばらくうなっていた。
しかし、天気が相手ではどうしようもなく、開き直ったようでシュラフに包まり(寒冷前線が通過したためシュラフカバーだけでは寒くなった)。
そのうちラジオの音にまぎれて寝息が聞こえてきた。
雨も小降りになり明るいので安心したのだろう。モコモコさんにつられ居眠りをする。
14:00頃になると水滴がタープにあたる音がしなくなった。
モコモコさんが外に出て様子を見ると、雨は止んでくれたらしい。
14:30頃シュラフからでて着替えをする。
そうこれから昨日の続きで焚火をするのだ。
ほどよい薪は流れに持っていかれてしまい、集まった薪は水に長く浸かっていたような感じのものが多いが、なんとか集めて燃えてくれた。
早めに夕食を作り、翌日の朝早くても着替えがいやにならないように焚火に当たって着干しをする。
良く燃えた焚火のお陰ですっかり服も乾いた。
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1日目 モコモコさんが座っているところは・・・ |
二日目朝 すっかり流れの中 |
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対岸の砂の台地もほぼ流れの中 |
三日目朝やっと水がひいた。 |
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