吾妻連峰
天元台スキー場〜東大巓〜中吾妻山〜中津川横断〜グランデコスキー場
2009年2月28日〜3月1日

東大巓と中吾妻山。繋げて歩いたことはあるものの、まだ一気にラインを引いたことがない。
幸い今週は土日とも天気がよさそうでチャンスが訪れた。
中吾妻山からの下りは、議場経由で小野川湖へでるとえらく時間がかかるので、中津川を横断してグランデコへ抜けようということにした。
唯一の心配が中津川への下降と横断だ。

アプローチ

東京駅6:12〜福島駅7:45/8:15〜高湯温泉ゲート9:00

コースタイム

2月28日
 天元台スキー場11:10〜人形石12:05〜東大巓13:30〜継森15:10〜継森中吾妻山間のピーク16:00〜鞍部手前(BP)16:25
3月1日
 BP6:20〜中吾妻山とヒョッコリピークの鞍部(荷物デポ)6:55〜中吾妻山7:10〜デポ地7:25〜ヒョッコリピーク〜デポ地(下降開始)7:30〜標高1600m付近8:30〜標高1100m地点9:20〜中津川下降点10:10/10:30〜中津川横断後11:30/11:50〜登山道11:55〜グランデコ(ゲレンデ)13:10


2月28日

 天元台スキー場11:10〜人形石12:05〜東大巓13:30〜継森15:10〜継森中吾妻山間のピーク16:00〜鞍部手前(BP)16:25


天気予報通り、風も穏やかでいい天気だ。
バスに乗り込むと山へ行くような人はいない。天気がいいから山スキー者0人ということはないはずなので、おそらく朝一のバスに乗っていったのだろう。

順調にリフトトップへ。
シールをつけていると、山へ向かう人が数人到着した。
そのうちの一人の方からは、吾妻の山岳指導をされており、コースの特徴や大平下りの不忘閣ヒュッテを昨年取り壊した等貴重な話を聞くことができた。

天気もいいしトレースもあるので中大巓まで楽勝だと思って登り始めたが、気温が低いせいか妙に滑る雪で、いつもなら楽々とピタピタ登っていく斜度でさえ後滑りして時間がかかってしまった。
森林限界上のクラストした斜面のほうが登りやすい。

斜面が硬い為うっすらとではあるが、人形石付近からトレースが現れる。東大巓方面へ向かっている。
大沢下りだろう。
視界がばっちりなのでコンパス要らずで東大巓頂上へ到着。

ここから先はトレースなしの貸切だ。
前回と違い、シールをつけたままであってもよく滑る雪で、継森に向けて一気に標高を下げる。
相変わらず後滑りする雪であるが、継森と東大巓の間の小ピーク、継森手前のピョコと順調に越えていく。

吾妻の360度の展望を楽しみながら継森山頂へ到着。
ここまではいつもなんとか一気に来られるが、この先が以外に長いのでいつも中吾妻手前のピークとの鞍部から谷地平へ下っていた。
まずは鞍部へ気持ちよく滑る。
鞍部にいい場所があり、そこそこいい時間になったので泊まることも考えたが、天気がいいので先のピークを越えておくことにした。
この判断が翌日功を奏するとは思っても見なかった。

相変わらずのコンパス要らずで手前ピークへ。
山頂は平らで夏はちょっとした湿原になっているらしい。ここは一度した来たことがないが休憩した記憶がよみがえってきた。
一通り写真撮影を済ませてから中吾妻山との鞍部へ向けて下降する。

鞍部へ下りきる前に箕輪山の素晴らしい展望付きのいい場所があり、時間もちょうどいいので幕営地とした。
今年は暖冬小雪なので、イグルーでなくテントの方が暖かく過ごせる気がする。
風もほとんどなく穏やなので、整地だけで済ませてブロックを積まずにテントにもぐりこんだ。


東大巓から継森、中吾妻山 継森へ向かい、登る
継森と中吾妻山 継森を振り返る
中吾妻山手前のピークにて 今日の宿は安達太良連峰の展望台だ


二日目 3月1日
 BP6:20〜中吾妻山とヒョッコリピークの鞍部(荷物デポ)6:55〜中吾妻山7:10〜デポ地7:25〜ヒョッコリピーク〜デポ地(下降開始)7:30〜標高1600m付近8:30〜標高1100m地点9:20〜中津川下降点10:10/10:30〜中津川横断後11:30/11:50〜登山道11:55〜グランデコ(ゲレンデ)13:10




天気予報では昼頃から崩れてくるらしい。
予想以上に雲が多いが、反面朝の冷え込みが少なく助かった。

鞍部まで軽く滑り降り、中吾妻山を巻気味にヒョッコリピークとの鞍部へ。
ここで荷物を置いて、中吾妻山をピストンしてくる。雲で覆われているが、視界はいい。写真撮影を済ませて鞍部へ戻る。次に先を偵察するためヒョッコリピークへ軽く往復してくる。

いよいよ下降開始。
最初の目標は、標高1600mの等高線と廃道の交差点だ。
出だしの樹林が濃いのでシールを付けてある程度まで標高を落とすことにした。
これが正解で、昨日の好天気のせいか、樹林であるのに斜面はひどいモナカ雪となっていた。
シールをはずしていたら悲惨だったろう。逆にシールのままでもある程度滑るので順調に標高1600m付近まで降りてこられた。

ここから傾斜がゆるむのと雪質がましになってきたので、シールをはずして、ワックスを塗る。
アイスバーン気味であるが樹林がひろがり適度な緩やかな斜面で楽しい。
ときどき方向を修正しながら中津川への下降ポイントの目印とした標高1166m地点に無事到着。
予定よりも早く到着できたのでうれしい。
あとはここからの急斜面をなんとかこなせば楽勝のはずだった。

最初はなんとか順調に降りるが、小さな尾根と窪がいくつも派生しているので少し斜滑降をするとすぐに隣の尾根や窪に入り込んでしまう。
だんだん傾斜がつよくなり、横滑りと木の葉落としでそろそろと高度をさげていく。
ところが、標高が下がり西面にあるため、昨日できたのであろう大量の雪まくりや、ぼこぼこの雪面に苦戦する。

とうとうモコモコさんが板をはずして担ぎ始める。
小雪の上、標高が下がり気温が高くなり、深く踏み抜くこと数回苦労している。
ここで予定よりも下流部へ向かって降りてしまっていることが判明。
上流へ向かってトラバース気味に行くが、とうとう山人も板を外していかなければ進めなくなる。
さらに踏み抜くことが多くなり、倒木の障害物や藪が多く、トラバース断念。
ひとまず傾斜が急だが、窪を使って降りられるところまで降りる。

最初は雪も落ち着いているが、だんだん沢が割れてくる。
何歩か踏み抜きながらも、なんとかちいさな平坦地まで降りられた。
続くモコモコさんを下から見守るが、途中踏み抜いてバランスを崩し、滑落・転落するのではないかと冷や冷やした。
なんとかモコモコさんも平坦地へ到着したものの、到着したその場で「緊張したよ〜」といいながらへなへなと座り込んだ。

ここまでくれば中津川沿いにトラバースして東電取水門へ向かえると思っていたが、予想以上に下流(魚留滝から150mほど上流辺り)にでてしまっているらしい。周りを見るが上流も下流も急な斜面や垂直の崖で移動は不可能だ。
中津川自体は流れが緩やかで幅も広くないので川床へ降りられればなんとかなりそうだ。

ここまででかなり体力を消耗したので休憩をとる。
簡単に川床へ降りられると思ったが、休憩中にモコモコさんが偵察したところ「傾斜が急で高さがあるからロープないと降りられないよ」と言ってくる。
「そんなことはないだろう。少し飛び降りれば大丈夫だよ。」と返して山人も近づいてみると、確かに途中からすっぱりと斜面が切れており確保なしには降りられない。

そういえば、このあたり中津川を遡行したときに魚止滝を巻いたあとザイルなしに下降できず東電取水門まで一気に巻いたところだった。
そこで、モコモコさんとの作戦会議。
 ・上流下流ともに移動は不可能
 ・確保が必要な距離(高度差)はおよそ10m
 ・荷下げし、空身ならばゴボウで下降可能
 ・対岸の斜面はなんとか登り返せそうだ
協議の結果、ここから中津川の川床へ下降し横断後対岸を登り返すことにした。
これまでお守りとなっていたロープを山スキーで初めて使うことになってしまった。しかもこんなにのっぺりした山容の吾妻で。

しっかりとした立ち木を利用し、ロープを垂らす。なんとかダブルで下まで届いたようだ。
最初に山人が空身で下降する。
下降器等は一切ないが、幸い斜面には雪が付いており空中懸垂にならずにすんだ。
ロープはぎりぎりだった。降り立ったところは安定した2畳ほどの平坦地でほっとした。

次に荷下げだ。ザックは重いので途中の細い木にもひっかかることなく、簡単におろせたが、荷下げのためのカラビナの引き上げと板の荷下げのときに途中の細い木に引っかかってモコモコさんが苦労していた。
なんとか荷下げ完了。
モコモコさんも慎重に下降し無事平坦地に降り立つ。

次なる課題は中津川の横断だ。
思ったよりも水量があり、深そうだ。
また、上から見たところではいけると思ったところが実は渡れなかった。モコモコさんが少し上流はどうかと偵察したら、なんとかなりそうだとのことで見に行くと、確かに飛び石を利用してなんとか靴の中を濡らさずに渡れそうだ。

板をザックにつけて渡渉開始。
最初の一歩は流れに入らないと滑って転びそうだ。ここでモコモコさんは靴に水が入り少し濡れるがなんとか石に乗ることに成功。
次の石までは少し距離があるが雪がしっかり付いているので、荷物を先に渡して空身で飛びつく。
渡渉の核心は終わった。
最後に雪の積もった岩上になんとか這い上がる。

最後の課題は対岸への登り返し。
最初簡単に登れると思ったが、想像以上のざくざく雪で足場にしようとする先からどんどん崩れていく。
少し下流へ移動すると多少傾斜がゆるいところがあるので取り付いてみる。
なんとか登れる。
ここも踏み抜きがひどく苦労する。
特に登り始めから5mほどのところは踏み抜きが深く重荷では抜け出すのが大変で、最後の登り5mは崩れた雪の下が急な泥つき草つきとなっておりきつかった。
後から登り付いたモコモコさんは靴を泥だらけにして、精根尽き果てて登りきったところで転がり込んでしまった。(地形図でいうと取水門から下流へ向かう登山道の下に950mと記載されているあたりの平坦地へ登り返した。)

モコモコさんに水分と行動食を摂らせた後に、ようやく出たのが「ロープがなければ典型的な遭難事故パターンだったよ。」の言葉だった。
時計を見ると12:00前。なんとたった標高差200mの下降、距離500mの移動に2時間も費やしていた。昨日の1時間の行動による貯金が貴重な1時間となった。これがあと1時間遅かったら体力的にも気持ちとしてもあせっていただろう。
改めて下降してきた対岸を眺めると、よりによって一番急になっていところを降りてしまったようだ。

新たな課題はグランデコへ続く登山道を探し当てることだ。
シールを再装着し、緩やかな斜面に取り付く。
幸いにして、少し登ると登山道というよりも林道と言っても良いくらいの立派な道にでた。
しっかりとした道で雪もしまっていて歩きやすい。

暑いので山人もモコモコさんもジャケットを抜いでシャツだけになる。
いままで苦労がうそのように行程がはかどる。
距離はあるが安心感がある。

グランデコへの車道や駐車場、そしてゲレンデが見えた。
中ノ沢の渡渉をするため、ゲレンデを横目に中ノ沢沿いに沢の上流へと移動する。
なんとか渡れそうな場所で対岸へ。ここでモコモコさんは渡渉に失敗して靴に水が入る(なんと、家へ帰って逆さにしたら水がでてきました!)もゲレンデ脇へ到着。

シールをはずし、ジャケットを着て快適なゲレンデを滑ること僅かでベースに到着。
パッキングを済ませた後、シャトルバスまでの待ち時間を利用して、ケガもなく無事付いたことに乾杯をした。
その際、今回のルートの決定者であるモコモコさんは、「終わってしまえばいい思い出だけど、二度とこのルートは取らない。」と宣言し、「あー、おいしーい♪このポテトフライ!!」と満面の笑みで感想を述べたのでした。


中吾妻山 中吾妻山頂から東吾妻山をバックに
アイスバーン気味だが樹間広く快適 悪雪の急斜面を降りる
中津川床へ懸垂で降りる 登山道(りっぱな林道)にでて一安心


活動記録に戻る

トップへ戻る