飯豊連峰
蒜場山〜烏帽子山〜大日岳〜北股岳〜門内岳〜赤津山〜二王子岳〜二王子神社
〜もう一度、更に飯豊の奥へ〜
2010年4月29日〜5月4日 

飯豊の残雪期限定藪尾根ルート。
蒜場山尾根は昨年歩いたが、全く天候に恵まれなかったので、今年こそはともう一度挑戦することにした。
めでたく休暇も長く取れたので、欲張って二王子岳まで踏破してしまおうという魂胆だ。

山と高原地図;飯豊山、2万5千分の1地形図;東赤谷、蒜場山、大日岳、飯豊山、二王子岳、上赤谷


アプローチ

東京駅7:08〜新潟駅9:30/9:46〜新発田駅10:20


コースタイム

4月29日(天気;雨のち曇り)
 ゲート爼倉山登山口13:15〜登山口13:56/14:05〜独標15:40〜岩岳16:34〜幕営地16:45
4月30日(天気;晴れのち曇りときどき雪)
 幕営地5:15〜山伏峰8:00〜蒜場山8:25〜高立山11:28〜稲葉ノ平12:00/12:20〜丸子カル14:50〜幕営地14:55
5月1日(天気;曇りガス濃い+強風)
 幕営地5:55〜烏帽子山鞍部7:10〜キンカ穴峰11:01〜実川山12:50〜西大日岳14:06〜大日岳14:55〜御西小屋16:55
5月2日(天気;晴れ+強風、次第に弱まる)
 御西小屋7:06〜梅花皮小屋10:32/11:42〜門内岳13:17〜二ッ峰15:41〜幕営地16:45
5月3日(天気;晴れ)
 幕営地6:11〜岩崩レ6:38〜藤十郎山8:50〜赤津山11:33〜ヤンゲン峰14:05/14:38〜桝取倉山(幕営)17:03
5月4日(天気;くもり)
 桝取倉山6:11〜雷岳7:30〜長バナ7:51〜二本木山10:04〜二王子岳10:55〜二王子神社13:40 


1日目

4月29日(天気;雨のち曇り)
 コースタイム; ゲート爼倉山登山口13:15〜登山口13:56/14:05〜独標15:40〜岩岳16:34〜テンバ16:45

週間天気予報ではまずまずの好天気になるらしかったが、出発日が近づくにつれて連休最初のほうがどんどん悪くなっていく予報になっていく。後半はよさそうで少し安心。
天気の様子を見ながらのんびり登ることになりそうだ。

前日の悪天気も回復して良い天気だ。今日は蒜場山の山頂まで行ってから少しでも先まで行っておきたい。
朝一番の新潟へ向かう新幹線に飛び乗った。

新発田駅に着く前に雨が降ってきた。
支度をしてタクシーにすぐ乗り込もうとしたが、本格的に雨が降っている。先が長いため、初っ端からこんな天気で歩くのはいやなので、しばらく待合室で待機。待合室はテレビが見られて温度も適温で快適。おまけに新聞も4種類ぐらいあり読み放題。近くにデイリーヤマザキがあるので食料調達には不自由しない。ただし、アルコールは厳禁となっている。

天気予報では午後には止むとのことなので、待合室でゆっくり身支度を進める。
時間をもてあましているうちに御昼近くになってきたので、駅の近くの食堂で昼食をとった。

食べ終わった頃外を見ると雨がやんだ。
早速タクシーに乗り込んでいざ、加治川ダムへ向かった。(6880円)
昨年は閉まっていたゲートも今年は開いているだろうと期待したが、今年も無情なことに爼倉山の登り口の琴沢でゲートで行き止まりとなった。
加治川ダムまでトボトボ歩くことになったが、昨年と違い雨が降っていないのが救いだ。途中のさくらは今年も満開だ。一時間ほどで登山口に到着。

米平新道はとりつきから急だ。重荷にあえいで数歩登っては息をつくといった具合でなかなか進まない。登山道は良く整備されており登りやすいがとにかく急だ。
ようやく独標に到着。
時間は既に16:00近くになる。山頂は無理と判断して適当なところがあったら泊まることにして、岩岳まで登った。岩岳で泊まるには整地を頑張らないといけないので先の様子を見てみる。少し進んだところに泊まれそうなところを見つけた。ここを候補の一つにして少し下ったところにあるブナ林まで行ってみることにした。
予想通りほとんど整地不要のいいところがあったので、即決断した。

明日は天気がいいといいなと祈りながら食事を済ませてシュラフに包まった。


2日目
4月30日(天気;晴れのち曇りときどき雪)
 コースタイム;幕営地5:15〜山伏峰8:00〜蒜場山8:25〜高立山11:28〜稲葉ノ平12:00/12:20〜丸子カル14:50〜幕営地14:55

月明かりで明るい。
少しぼんやりした月だ。
風もなく、冷え込みもなかった為、良く眠れた。

昨日と比べてさほど軽くなっていない荷物にあえぎながら今日も登る。
烏帽子岩の手前でところどころ雪が付いていた所もあるが全くないのと同じように歩けた。
烏帽子岩を越えると雪のついてるところが多くなってくる。
標高1100m付近でアイゼンを着けた。
山伏峰へようやく到着。蒜場山へ一頑張りして出発2日目にして到着。

蒜場山からは、これから行く稜線と大日岳が良く見えた。これはこの先期待できると思って休憩をした。
山頂からは、前回と同様に雪堤で波打つ尾根ではなく蟹沢の源頭部を下降して、最も尾根と蟹沢が近づいたとこで尾根に戻るルート取りだ。
さで、では下降に掛かりましょうかねとなったところで、蟹沢の下りに差しかかる頃には大日岳の上部が見えなくなってしまった。おいおい、折角なのになんなんだ。
救いは、昨年と違い周りの視界が良いことだ。
どんどん蟹沢を下り、尾根が近づいたところでトラバース気味に登って尾根に戻った。

豊富な残雪に助けられてどんどん進む。
少し登り返した小さなピョコからは同じように尾根が派生しているが、ルートは90度に曲がるようにカーブをして下降する。この辺りに赤いプレートのようなものが木に打ちつけられているので目印になる。

この辺りはどこでも幕営可能で、できれば昨日のうちにここまで来たかった。昨晩は最高の幕営地だったのは間違いないが。
どんどん下降していく途中でカモシカに遭遇。さらにタヌキのような動物が横切って行った。
登山道もなく、林道も近くにないこの辺りは動物の楽園となっているようだ。
そんなこんなで、とても楽しい歩きだ。

アイゼンも不要になったので、アイゼンをはずして楽しく歩いていくが、やがて雲行きがどんどん怪しくなり、ときどきあられになる小雨が降り出した。
しばらくは雨具の上だけでやり過ごす。
高立山前の鞍部からは雪堤が切れていたり、落ちているところが多くなるので藪の中の獣道を使わせてもらうことになる。濡れた藪の中を歩くため、雨具のズボンも履くことにした。
獣道があるので、時間を稼げる。
獣道は高立山へは直接行かず巻くように通っている。天気もよくないしヤブを漕がないといけないので、山頂はすぐそこであるがパスした。

獣道はさらに続いて稲葉ノ平の手前までお世話になった。
稲葉ノ平の手前で熊の足跡らしきものがあった。
稲葉ノ平で休憩した。休憩中には雪が降ってきたかと思うち明るくなって雲が切れたりとめまぐるしく空の様子が変わって上空は風がかなり強いようだ。

前回といい、何ですっきり晴れてくれないのだろう。
いいところだが、こんな天気でなんとなく寂しい気分になって稲葉ノ平を後にして丸子カルへの登りにかかる。
丸子カルの肩への登りはどきどき急なところがあり、重荷を背負っているので足がすぐに止まってしまう。
それでも順調に丸子カルの肩へと到着。ここからは緩やかな尾根歩きだ。

丸子カルから少し降りたところで、狭いが風が避けられる場所があった。
まだ時間はあるが、天気もぱっとせず疲れてしまったのでここで終了することにした。

少し天気が回復してきたようで、ときおり青空が見えるようにもなった。
明日は期待できるか?と夕飯を食べながらラジオを聞くと、今夜から明日にかけて気圧の谷が通過するとのことだ。
まったくなんなんだ。
連日のはっきりしない天気にうんざりだ。
まあ、昨年はガスで全くみられなかった景色が今年はきちんと見えたので良しとするか。


3日目
5月1日(天気;曇りガス濃い+強風)
 コースタイム;幕営地5:55〜烏帽子山鞍部7:10〜キンカ穴峰11:01〜実川山12:50〜西大日岳14:06〜大日岳14:55〜御西小屋16:55

今日は大日岳を越える日だ。
天気は、烏帽子山の上部からは濃いガスで、風も強い。
天気予報では、午後には回復して晴れるとのことだが…本当か?

烏帽子山までは長い登りだ。
先が見えないためいつ終わるか分からず、余計に疲れてしまう。
多少は軽くなったとはいえまだ重い荷物にペースが乱れがちなので、ゆっくり登るように心掛ける。

時折下の方が見えるようになるのが救いだ。ガスと強風の中、黙々と登ると、北峰と南峰の鞍部に到着。昨年南峰に登ったしこの天候ではということで、南峰はきっぱりと諦めて先を急ぐことにした。烏帽子山の下りが核心の一つ。天候の良いときに下りたかったが、仕方がない。GPSと昨年の記憶を辿って下降することができた。視界が効かない割には、スムーズに降りられたので良かった。

マグソ穴峰は藪が出ていたが問題ない。マグソ穴峰を越え鞍部へ。
次は、大きく見えるキンカ穴峰への登りが待っている。ズボズボと足を取られたり、亀裂にはまったりしながら高度を上げる。加治川を挟んで、赤津山方面の稜線が見える。後方の烏帽子山も見える。標高1600mぐらいまでは何とか見渡せる。しかし標高を上げる進行方向は濃いガスのままで、雲も物凄い速さで流れて行く。本当に天候は回復するのだろうか?

実川山までは、強風とガスで何も見えない。ひたすら、目の前に現れてくる雪の斜面を登るだけだ。
実川山を越えると、いよいよ大日岳の領域に入る。視界が悪いので稜線から誤って落ちないように注意を払う。
とにかく風が強いので、風を少しでもしのげるように、休憩するときはザックをマット代わりにして体を横にして風をなるべく受けないようにして休んだ。
薬師岳を通過し、西大日岳は置いてある石が姿を見せていたので、確認できた。
ガスはますます濃くなり、大日岳への登りで、一度、リングワンデリングしてしまった。

見覚えのある地形がぼんやりと見えてきた。ここを越えると大日岳だ。
手前で少し休んで、下りに備えた。
14:55大日岳山頂到着。山頂の標識にはエビの尻尾がびっしりと張り付いていた。「大日岳」の看板は根元に下がっていた。強風のため、長居は無用ということで山頂から離れて下降にかかる。山頂から少し離れたところ、猛烈な風が西から吹きつけてきた。
とても立って歩ける状態ではなく、モコモコさんと地面に伏せるような感じで耐える。気を抜くと谷底までもってかれそうだ。退却するか、強硬突破するか二つに一つ。迷っている暇はない。御西小屋まで2時間の距離。御西小屋での快適な生活と強風の中のテント暮らしと天秤に掛ける。御西小屋の魅力が勝り行くことにする。

 いずれにしても尾根上は進めないないので、少し風が弱まる東面斜面に逃げる。風下に入ると落ち着くことができた。
そのまま下り気味に尾根横の斜面をトラバースした。下の斜面はガスって見えないが、もし見えていたらより緊張したと思う。本来下るべき尾根上へ直登して戻ろうとも思ったが、トラバース気味に登り返すことにした。ある程度トラバースしたところから、ルートの尾根に上がるのには20mほど急斜面を登らないといけない。安全を優先して、ピッケルで一段一段、足場を作って一歩一歩登った。上部になると、雪面が氷化していたので、ヘタに取り付かなくて良かったと思った。

尾根に上がると、風は強いが十分に行動できる範囲。GPSで確認しながら慎重に下る。大日岳は別格だった。
後は御西小屋を目指すだけだ。それでも飯豊川から吹きつけてくる風は強烈。中でも、文平ノ池付近の鞍部では風が吹き抜けるので、最高潮の風速。ここでも耐風姿勢をとって凌ぐこととなった。大日岳の風よりは弱いので、動くことはできる。モコモコさんは這って進んで通過していた。

ホワイトアウトと強風の中、GPSの力を借りて御西小屋に無事到着。1階の扉は雪におおわれている。雪面も固いのでとてもじゃないが掘り起こせない。ザックを背負って梯子を登り、扉を開けるとなんと、人が居たのでびっくりした。向こうもこんな時間にこんな天候の中、まさか人が来るとは思っていなかったのでお互い驚いてしまった。
 
今晩の同宿の方は、神奈川県川崎市から単独で来た男性で、4月29日に川入から入山。30日に本山にいるときに急にガスがかかり始め、ホワイトアウトの中コンパスを振りながら御西小屋に到着。後は悪天候な為、御西小屋に到着した4月30日、5月1日と停滞していたとのこと。

川崎の方と、「GWはポカポカ陽気でのんびり歩くものだと思っていた。小屋も人の暖気で暖かく快適になっていることを期待していた。」と思わず愚痴をこぼしたが、外はビュービューの風でも中は静音そのもので、小屋のありがたさに感謝だ。

御西小屋の木の香りに癒される。トイレはまだ雪に埋まっており、掘り出さない限り使用できないが、小屋に泊まれるありがたさをしみじみ感じる。水を作りながら大日岳を越えた安堵感で一杯になった。
モコモコさんと無事に越えられて本当に良かったと思う反面、あんな天候の中行動して果たして良かったのだろうか?山は判断が悪かった時しか教えてはくれないとすれば、今回は正解だったのだろうと受け止めることにした。

とても疲れたので、お酒も飲まずに寝ることにした。結局後には誰も来ず、我々の他は単独の方のみのままで寒いので、小屋の中でテントを張って寝ることにした。相変わらず外では風が吹き荒れて、氷の欠片を窓に打ち付けていた。


4日目
5月2日
(天気;晴れ+強風、次第に弱まる)
 御西小屋7:06〜梅花皮小屋10:32/11:42〜門内岳13:17〜二ッ峰15:41〜幕営地16:45

テントを張ったので暖かく寝ることができた。ゆっくり5時起床。我々が起きると、単独の方が既に出発の準備をしていた。北股岳をピストンしてくるとのことだ。外の様子を伺うと、晴れていますとのこと。冬期用入口の扉からどれどれと見てみると晴れているが風が強い。

単独の方を見送り、ゆっくりと朝食を食べる。昨日さんざん風に痛めつけられた我々は、昨晩の内から、もし翌日風が強かったらここで停滞しようと決めていた。そうこうしていると風が弱まってきた。これなら行けるということで、まずは梅花皮小屋まで頑張ろうと、完全武装で準備を進める。
7:00頃、先ほど出発した単独の方が戻ってきた。引き返す目印と考えていた大日岳にガスがかかってきたので、天狗の庭付近で引き返して来たとのこと。
風は強いが、行動するには問題ない程度の強風とのありがたい情報をもらう。

確かに風は早朝よりは、衰えたようだ。昨日の風に比べたら、普通の強風だ。視界が良いので気分はいい。天狗の庭までは先ほどのトレースがあるが、そこから先は自分達だけの世界。後ろを振り返りながら登る。大日岳方面のガスは次第に薄くなっていった。烏帽子岳の登りは夏道が出ていたので助かった。烏帽子岳、梅花皮岳にはトレースがあった。

梅花皮岳からは、石転び沢を登ってくる多くの登山者が見える。天気が回復したので、待ってましたとばかりに登山者が出動したようだ。
山頂から一下りしたところの梅花皮小屋は、多くの登山者で賑わっていた。
取りあえず、2Fに上がり御茶を飲みながら作戦タイム。出発当時は、風に嫌気がさして梅花皮小屋で泊まろうということだったが、風も弱まり視界も良いことから進めるだけ進むことにした。

北股岳を目指す。他の登山者も我々に続くかのように登ってきた。門内岳までは稜線歩きを満喫した。
モコモコさんが「あ〜あ、天気の回復がもう一日ずつ早かったらなあ」としきりにつぶやく。
いよいよ後半戦に突入だ。なぜか、単独のスキーのトレースがあった。我々とは逆走だ。門内岳周辺の沢を滑ったのだろうか?

気温が上がったので、雪が一気に緩んで二ツ峰までは雪に足を取られながら進む。
心配していた二ツ峰の岩尾尾根の登りだ。15mほどだろうか、急だが両脇には灌木が茂っている。鎖と古びたお助け紐のようなものも途中まで伸びている。足場もしっかりしているように見える。しかしザックの重さが20キロを越えているので一抹の不安を覚え、安全を優先してここまで担ぎ上げた30mザイルとスワミベルトを装着して行くことにした。

途中の安定したところでピッチを区切る。少しだけ雪の斜面をトラバースする。これが終わると山頂。胎内尾根が良く見える。いつかここも歩きたい。先を急いで下りにかかる。

途中で、男性の登山者に会う。スパイク長靴を履いて、独特の雰囲気が漂う。この上で焚き火は出来るか?良いテンバはあるか?など情報交換して別れる。少し下ると、女性の登山者が登ってきた。黒のポーチに見覚えがあり、先ほどの男性の焚き火の件と、頭の中のパズルが解けた。もしかしたら、リンク先のブナの沢旅のakoさんではないですか?と質問すると「どうして分かったの〜!」と驚いている様子。そうなると、上の男性はmt-samさん。mt-samさんとは昨年のGWに続いて2回目の出会い。運命の出会いってこれのことか?

こんなところでお会いできるとは光栄です。もっとお話ししたかったのですが、お互い先が長いので別れることになりましたが、素敵な出会いでした。

お二人と別れた後は、少し頑張って歩いたところにテン場適地がちょうどあったので泊まることにした。予定では岩崩レまで行きたかったのだが、疲れていたので明日に持ち越しになった。風もなく穏やかな夜だった。


5日目
5月3日
(天気;晴れ)
 幕営地6:11〜岩崩レ6:38〜藤十郎山8:50〜赤津山11:33〜ヤンゲン峰14:05/14:38〜桝取倉山(幕営)17:03

今日は朝から晴天で風もない。入山してから一番良い天気だ。
岩崩レ手前でまたもや熊らしき足跡を発見。大物の予感がする。藤十郎山に到着。ここまでかなり時間がかかってしまった。
我々のこれから行く先である赤津山から下ってくる3人パーティーが見える。藤十郎山からの下りは、一部藪が出ているので、胎内川の斜面を巻いて通過した。

さきほどから見える赤津山方面から来るのは、女性1人と男性2人の3人組だった。残雪状況などの情報交換をして別れた。
万石平、千石平は木がなかった。稲葉ノ平とは一味違う。個人的にはブナのある稲葉ノ平のほうが好きだ。
今山行中、一番いい天気となり、気温が上がった。ふうふういいながらたどり着いた赤津山の山頂には、三角点とピッケルで作った標識があった。先には雨量観測小屋が埋もれていた。西ノ峰へ続く稜線も興味が湧く。良く見ると先にトレースがあった。登ってきた(下っていった)のかは不明だが、かなり下まで足跡は続いていた。

赤津山からの下りは急だが、雪が軟らかいので滑落の心配なく降りていける。登ってくる2人パーティーが見える。逆走する方がいるとなんだか励まされる。急斜面が落ち着いたところで休憩。さらに進むと、先ほど確認した二人(男性2人のパーテー)がクレバスから滴り落ちる水を取っているところだった。情報交換をして別れる。

ヤンゲン峰手前の1240m付近はのんびりと歩けるところだ。
振り返ると男性2人のパーテーが赤津山へ登っている姿が見え、再度励まされた。

ここからヤンゲン峰へ向かうところで、いよいよヤブがでてくる。できるだけ残雪をつないで行くが、どうしても雪が付いていないところはヤブコギとなる。
距離は短い割に、からみつくヤブで時間を浪費してしまう。
これまでの疲れもあり、ペースがあがらず予想以上に時間がかかって、やっとたどり着いたヤンゲン峰でゆっくりと休憩をとる。
辿りついてみると、思ったよりもヤブコギする距離が短くて助かった。
ヤンゲン峰周辺は快適に泊まれそうだが、もう少し先へ頑張ることにする。

次の幕営候補地の桝取倉山はなんだか遠そうだ。
ヤンゲン峰〜桝取倉山間が一番ヤブがでているようだ。
桝取倉山への登りでは、やはり稜線にはヤブが出ているので、ヤブを漕いだり、ヤブ懸垂下降したり、尾根の左右に残る崩れそうな雪を繋いだり、内ノ倉川側の尾根の斜面に残る雪面をトラバースしたりして山頂を目指す。

桝取倉山山頂には2か所、テン場跡地があった。利用させてもらおうとも思ったが、折角眺めが良いので、自分たちで新たに整地して泊まることにした。今日も良く歩いた。二王子岳がいよいよ迫ってきた。明日にはお風呂に入れそうだ。
気分良く、ラジオを聞いていると、♪サンドイッチマ〜ンサンドイッチマン 俺らは街のお道化者♪と妙に印象に残る歌が流れた(このせいか、下山後急にサンドイッチが食べたくなり、実際買って食べてしまった)。
風も穏やかで、明日に備え早目に休んだ。

しかし、ローケーションを重視して、標高も割と低いからと風を考慮しなかった為か、その夜から吹き始めた風に叩かれてモコモコさんは良く眠れなかったらしい。


6日目
5月4日
(天気;くもり)
 コースタイム;桝取倉山6:11〜雷岳7:30〜長バナ7:51〜二本木山10:04〜二王子岳10:55〜二王子神社13:40 

 いよいよ、最終日。
風が強く、生憎天候は曇りだが視界はまずます。
先を見ると、最低鞍部である長バナまでヤブが心配だが、ここまできたら突進あるのみ。

雷岳まではヤブコギはあるものの、思ったほどヤブは酷くはない。ここは例年早くからヤブが出てしまうためか、踏み跡ができつつあった。
雷岳からはありがたいことに雪堤がほとんどついていて、ヤブコギはないに等しく、雪を使って行けた。
長バナにもテン場跡地があった。風は治まらないままなので、この跡地を利用させてもらい休憩した。

長バナからは、二本木山を目指してゆっくり今までの行程をかみしめるようにして登る。
最後の急斜面を登りきると緩やかな稜線に飛び出た。二本木山はすぐそこだ。二本木山には標識が立っていた。そこから、二王子岳までは目と鼻の先。二王子岳は人がたくさんいるだろうということで、手前の鞍部で休憩。二王子岳は、証拠写真をサクッと撮って下山しようと話し合った。

 予定通り、二王子岳でサクッと写真を撮って下山開始。
タクシーを頼みたいので、モコモコさんが、道路状況を聞くため一人の登山者に声をかけた。二王子神社まで問題なく車で入れるとのこと。

多くの登山者でトレースはバッチリ。我々が下るときも、続々と登ってくる。重装備の我々は浮いている存在。
定高山付近で、携帯電話でタクシーを呼ぼうとしたが上手く繋がらない。ああだこうだしていると、先ほど山頂で声をかけた登山者が降りてきて、送りますよと申し出て下さった。本当にありがたいことだ。一緒に下ることになった。

途中、山菜に疎い我々はこごみのレクチャー受けた。(山菜のお土産は家に帰っておひたしでおいしく頂きました。)
最後の最後に、油断したのか、20分ほどで二王子神社到着というところで、足を滑らせて登山道の左を流れる沢に後ろ向き転んでしまった。下半身のお尻側がパンツまでびしょ濡れ。左手ひじ下もびしょ濡れとなってしまった。トホホ・・・。
ザックがクッションとなって頭を岩にぶつけないで済んだのは不幸中の幸い。テレビドラマのように後頭部を打ちつけてポックリにならなくて良かった。(汗)

気を取り直して、ゴールの二王子神社に無事到着。


一歩一歩の積み重ねでようやくたどり着いた。長いようで短い6日間だった。
昨年、蒜場尾根を辿った時、ガスで景色が見えなかったというのがこの縦走の発端だった。今回は、期間前半(蒜場尾根)の内、烏帽子岳〜御西小屋間は前回同様はっきりとせず、一部消化不良の感が残るのは否めない。
今更ながら、山の成功と達成感は天候に左右されるものだと思った。

しかしながら、期間後半(門内岳〜二王子岳)は天候に恵まれ記憶に残る素晴らしい縦走となり、達成感・充実感でいっぱいだ。


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