南八甲田連峰 
黄瀬川〜黄瀬沼〜猿倉温泉
〜青森観光と沢旅〜
2011年8月19日〜8月21日

以前からモコモコさんが狙っていたところであるが、とにかく遠征費用と時間がかかるのでなかなか行けずにいた。
 ところが、今年とうとう新幹線が青森まで延長した。費用の面はなんともならないが、時間を稼げるようになったのでいってみることにした。
 結果、派手さはないがとにかく美しいところだった。
 

地形図;
陸奥焼山、八甲田山

アプローチ

東京駅6:28-八戸駅9:58/10:20−紫明渓バス停11:51  の予定だった

コースタイム

8月19日(晴れときどきくもり)
青森駅10:18−紫明渓バス停9:55
紫明渓バス停9:55〜黄瀬(トイレ)10:05/10:32〜林道松見の滝入口13:21〜滝上入渓点13:54〜長根沢出合い16:40(B.P.)

8月20日(晴れのちくもり)
B.P.6:30〜黄瀬沼への支流出合11:55〜黄瀬沼12:30〜地獄峠14:14〜矢櫃沢橋16:01/16:57〜猿倉温泉18:14


 8月18日
  今年はなんだか沢の体にする調整ができず(やる気が起きなかった)癒し系の所を選んでいる。こうなったら今年の夏は、前回の八幡平同様に癒し系の沢としてまとめてしまおう。
 ちょうど新幹線も新青森まで延長したのでチャンス到来だ。モコモコさんは更に「はやぶさ」に乗ることも狙っていたが、残念ながら、行きは出発時刻が遅く都合が合わない、帰りは、まだ運転本数も少ないためすでに満席となり断念。次の機会へと持ち越しになった。

 新幹線はやてに乗ってひたすら北上する。
懸念事項は、前線の通過。予報では入山日には前線が通過し終り天候が回復しているはずであったが、福島駅を通過して新幹線が減速をするのに合せるかのように、北上するにつれ雲行きが怪しくなってきた。仙台あたりから雨が強く降る所もでてきた。携帯電話で天気予報を時折チェックしていたが、とうとう今日一日雨マークとなってしまった。天候回復が遅れているらしい。
「この雨じゃ、沢は無理だな」「今日は青森の夜を楽しもう」とすっかり観光モードになる。
そこで、八戸駅へ着くまでの時間を利用して作戦会議。

『  ・議題1 今日はどこまでアプローチしておくか(今晩どこに泊まるか)
   ・議題2 お金はあるか(一番重要!!)
   ・議題3 ルートはどうするか

 議題1について
  @予定通り八戸からバスで最寄りのバス停へ向かう。その後は天候を見ながら林道歩きだけは済ませておく。
  A八戸に泊まり、そのまま一日予定を持ち越す
  B青森駅へ移動して泊まり、翌日バスで八甲田へ入る

 議題2については、あるかないかをお財布を覗いて確認するだけ

  議題3について
  @予定通りのルート(遡行後南八甲田の湿原巡りをする)
  A短縮し、遡行は黄瀬沼へ出ることで切り上げて湿原巡りはせずにそのまま猿倉温泉へ下山。

 議題1を検討したところ、@折角行っても今日は水が引かず林道歩きだけで終わるだろうから濡れるだけ無駄、A及びBバス代は高くなってしまうが、青森駅からのバスの方が八戸駅からのバスで行くよりも目的のバス停へ早い時間に到着できる
 議題2は、お財布とも相談したところGOサインが出た。

 結果
  ・これまでの雨で増水してるしわざわざ濡れに行くのもなんなので、予備日を十分取っていることも幸いし一日入山を遅らせる。
  ・お金の面はなんとかなりそうなので、今晩は青森駅周辺で泊まることにし、アプローチそのものを変更して翌日青森駅から八甲田へ入ることにする。
 
 *八戸駅及び青森駅から八甲田方面へ行くJRバスは、予約が必要(定員オーバーの場合乗車不可)。
   東京駅で予約をとるか迷ったところ、窓口の方が座席残数を見てくれて、60席以上あり始発から乗るなら大丈夫でしょうと教えてくれた(東京駅丸の内口のみどりの窓口はいつも親切だ)ので予約はしていなかったため予定変更は簡単にできた。』
  
 幸い予備日を1日設けていたので、下山後の打ち上げが前倒しになった形になった。
 ここまで決まったところで新幹線は八戸駅へ到着。八戸周辺は結構な雨が降っていた。八戸で降りると空気がすっかり入れ替わっていて、早朝から蒸し暑い関東から来たそのままの服装だと肌寒いくらいだった。
 八戸駅に着いてすぐに青森駅の近くのビジネスホテルに予約を入れた。
 まずは青森駅へ移動だ。青森までの鉄道は新幹線開通後は第三セクターとなってしまった「青い森鉄道」を利用。かなり利用客がいたが、ほとんどが八戸駅で降りたので並んで座ることができた。
 電車の移動時間を利用して、議題3の検討に入る。
 帰りの新幹線の予約をとっているので、それに合せて計画を組み直した。やはり湿原巡りをすると新幹線の時間には間に合わなくなるので、湿原巡りは中止し、詰めは黄瀬沼として早目に登山道へ出ることにした。

 作戦会議が終わると、今日一日宿へ入れるまでどうするかに話題が移った。青森遠征なので、下山後青森を観光しようとして予め情報を集めておいたのが役に立った。
 モコモコさんの一番目的は、かつての青函連絡船「八甲田丸」を見ること、山人の目的は、市場へ行くこと、共通の目的(というより希望)は秋田犬の「わさお」に会って本当にいつもベロを出しているのか確認すること。残念ながら「わさお」に会うことは交通の便の関係で断念。
 車窓を楽しんだりしてどんどん青森駅へ近づいていく。さすが青森ホタテの殻の山があった。ここまでになるとりっぱな貝塚だ。

 青森駅に着いた所で、観光案内所前に荷物を置いて、まずはお腹も減ったことだし青森市場に突入。旨そうなホタテや中トロがひしめき合っていた。海鮮丼を頼んで食べた。
 次に向かったのは八甲田丸の見学。青函連絡船の歴史をじっくりと見学。
 モコモコさんは、かつて青函連絡船を良く利用していた北海道出身の人から「時化のときは、船が揺れて横になっていると転がったりした、乗船名簿は列車に乗っているときに予め書いておく」など当時の話を良く聞いていて青函連絡船に憧れていたらしく、ここは絶対に見に行くと宣言していたところだ。
 「津軽海峡冬景色」の歌詞通りで駅から船へ乗り変える通路がまだ残されており、一部はそのまま利用されているらしい。
 船へ入ると展示用にすっかり改造されてしまっているが、寝台室やグリーン席の一部、操舵室等はそのまま残されていた。
 興味はつきないが、宿へ入れる時間となったので船を後にした。

 宿に戻って、汗を流して青森の夜を満喫した。
 いつもの如く、翌日山へ行くことを忘れて飲みすぎてしまった(反省)、やはり泊まるのは下山後がいいな。



8月19日(くもりどきどき晴れ)

なんとか、起きることができた。

昨日までの雨は上がっていた。まだ空はどんよりとしているが、天気予報では晴れてくるとのことだ。
昨晩飲みすぎたせいで体が重いが、変更後の予定通り出発。

バスは平日ということもあり15人位かな。
途中何か所かで休憩をしながら2時間近くかけて目的の「紫明渓(しめいけい)」バス停へ到着。ちなみに登山地図に乗っている「黄瀬」バス停はなくなってしまったとのことだ。
バス停から10分程歩くと黄瀬川林道入口。林道へ入ったところすぐにきれいなトイレがあったので、ここで身支度を整えた。なぜかこのトイレには手洗い用の水道がなく、二人とも大用を済ませてしまった後にこれに気が付き、しばらく気持ち悪い思いをすることとなってしまった。

林道は、奥で工事をしていたので、手入れされており歩きやすく順調に距離を稼いでいく。黄瀬川は濁りはないものの着色しており水量も多い。昨日入っても結局減水待ちか、相当苦労しただろう。
黄瀬川沿についている林道は黄瀬川を渡り、高度を上げる。
橋を渡ってからは、尾根上の道となるので水は一切得られない。日差しはあまりないが蒸すのでペースは上がらない。
延々3時間かけてようやく下降点に着いた。

ヤブの切り開きを辿って少し下り、はっきりとしたやせた小尾根となるところで滝の上流側へと向かうように笹の切り開きへと入っていく。数m進むと踏み跡が出てきたのでそれに従ってさらに進む。踏み跡が見つからないときはすぐ横のルンゼを下るといいかもしれない。結局踏み跡もルンゼに入りそのまま降りて行くとすんなり滝上の黄瀬川へ降りることができた。
増水はまだ完全に収まっていないようだ。また、緑の絵の具を溶かしこんだように水が着色していた。濁っていないので遡行にさし障りはない。

靴ひもを締め直すなどして出発。
最初は樹林の中の河原歩き。もともとやせている河原らしく、水に足を浸けて歩くことがほとんどだ。
30分も歩くと変化が表れて岩盤が発達してくる。
難しいところや困難なこともなく、楽しんで快適に進めた。

目立つ滝は、4〜5m程のが3つ。
どれも水流沿いに左右どちらかを登ることができた。敢えて言えば3つとも大きな釜を持っており、釜のへつりのほうがあと一歩というところで少々難しく感じる所があるが落ちてもドボンで済む。

1つ目の水流右に甌穴を持つ滝は、一歩を水に浸かって凌いだところ簡単に通過できた。滝自体はホールドが沢山あるので見ためよりも快適に登れた。最初モコモコさんにお助け紐を出したが、結局は使わずに済んだ。
2つ目の滝は、やはり釜のへつりがポイント。
途中のあと一歩のところでホールドが遠く重荷だと緊張した。モコモコさんはどうしても届かず、無理をして伸ばしたところ絵に描いたようにドボンしたらしいが、逆にこれが幸いで楽に上がれ突破できたらしい。
3つ目は中間でホールドが乏しくなりフリクション頼りになるところがポイント。

思ったよりもカラッと晴れずに少し肌寒くなってきたが、これらの滝を越えるとわずかで長根沢出合いに到着した。
出合い右岸に高台があり、大雨の後のせいか、少しじめじめしていたが泊まるのにいい場所があった。

薪を頑張って集めて初の青森の沢の夜を楽しんだ。

8月20日(晴れのちくもり)

今日も天気はよさそうだ。
出発をしてすぐに沢はナメが出てきたりと気分良く遡行して行く。
途中ゴルジュも出てくるが、簡単に通過でき、出口には見事な柱状節理が見られた。
派手な滝はないが、飽きさせない渓相だ。

右に左に沢はカーブし、右岸のスラブがこれまでになく見事なところを通過すると、大岩に守られた緩やかなナメ滝がでてきた。
その後もナメとゴーロが交互に出てきたり、ちょっとした小滝を難なく通過。右岸から小さな流れが入るところで休憩をとった。ここで作戦会議。
最初の予定はこのまま本流を詰めていくことだったが、入渓日を遅らせたので黄瀬沼へ出る支流へ入ることは予め決めていた。問題は今晩どうするかだ。沢で泊まるには時間が早すぎるし、かと言って今日中に家に帰るのは、バスの時間に到底間に合わないので無理。情報に寄れば、途中の水場近くに何とか泊まれるところがあるらしいので、そこで泊まることを候補に入れる。モコモコさんは、今日中に猿倉温泉まで降りてしまい、温泉のところには屋根つきの休憩所があるのでそこで泊まろうと主張してきた。

とにかく先へ行くしかない。この辺りからはひたすらゴーロ歩きが続く。
途中枝沢かと思うほど大きなインゼルとなるところには、何とか泊まれそうなところがあった。
黄瀬沼から流出してくる沢へと入る。途端にヌルついた流れとなり、思ったよりも時間がかかる。そのうちヤブがかぶさるようになってきたり蛇行をこれでもかと繰り返してくる。ヤブで完全にふさがれたところは流れのすぐ横の湿原に上がってやり過ごしていくと、とうとう幾重にも流れがあるような湿原となったので流れから完全に上がってみた。黄瀬沼の方向を目指していくと、沼に無事辿り着いた。
とてもきれいなところで、こちらに詰めあがることにして正解だったと喜んだ。

ここからは登山道があるから下山できたようなものだと思ったが、ここからが長かった。
道ははっきりしているが、刈り払いがされていないのでとにかく時間がかかった。
地獄峠へ出るといくらかはましであるが、やはりヤブっぽいのには変わらない。
それでも宿泊予定地へたどり着いたときはやったと思ったが、モコモコさんは「・・・・・」と明らかに不満そうで作戦会議となった。結果、ここで泊まるのはやめて、猿倉温泉に泊まれたら泊めてもらおう、もしだめならこの先横断する矢櫃沢へ下りて泊まれるところを探そうということになった。

さきほどの作戦会議場所から約1時間程のところで携帯電話が通じるところがあったので、猿倉温泉に連絡を入れてみると、残念ながら本日満室ですとのこと。
次に目指すのは矢櫃沢だ。矢櫃沢には登山道のヤブと対照的に新しく立派な橋がかかっていた。
矢櫃沢を30分程下降しながら泊まれるところを探したが、見つからない。そうこうしているうちに雨がぱらついてきた。
モコモコさんが、やはり猿倉温泉まで降りてしまおうと強く言うので、今度は山人が大いに不満だったが時間も時間なのでこのまま下山することにした。ここで1時間のロス。

途中、モコモコさんがトイレ休憩を取ろうとしたそのときに、男性2人が降りてきた。地獄峠辺りで足跡を見かけたがどうやらこの方々のものだったらしい。
追い抜かされるときに挨拶を交わす。ふと見ると腕にパトロールの腕章を付けていた。
日も暮れてうす暗くなってきたころにようやく猿倉温泉に到着。

温泉のところにはモコモコさんの情報通り、トイレがある屋根付きのりっぱな休憩舎があった。トイレ出入り口にはちゃんと水道があったが、飲料不適とのことなので荷物を置いて、登山口へ戻り近くを流れる沢へ水を汲みに行った。

休憩舎は雨の心配がないのはいいが、とにかく蚊が多い。持ってきた蚊帳を張れればいいが、支点がとれないのでそれも不可能だ。服の上から刺されないように雨具を着たりして蚊と格闘しながら夕食をとっていると、完全に暗くなってからしばらして蚊がいなくなって落ち着くことができた。
寝るときは蚊帳を掛けて寝たので虫に脅かされることなく寝られた。
最初は不満だったが、結果としてモコモコさんの主張通りにして正解だったらしい。

8月21日

今日は帰るだけで、バスの時間も遅いのでのんびり寝坊しての起床。
起きると登山者が結構来ていた。
そのうち2人の男性から話しかけられ、この方々も腕章を付けていた。昨日とは違う方だ。地元の山岳会でパトロールをしているとのこと。
(ヤブがひどいので遭難を防止するのにとても大きな役割を果たされていると思った。)ヤブを刈りはらわないのか聞いてみると、山岳会もまた環境省も刈りはらおうとしているが、少しでも刈り払いをすると、なんだか一部の環境保護団体?みたいなのが「環境破壊だ、訴えてやる!!」とヒステリックに騒ぎだすらしい。モコモコさんが思わず「ヤクザみたい」と漏らすと、地元の方も「環境やくざだよあれは」と言って当惑していた。八甲田はとてもいい山だが、色々と難しい問題を抱えているようだ。

またお風呂情報をと思い、尋ねてみると猿倉温泉も今の時間だったらお風呂に入らせてもらえるでしょうとのこと。少し詳しく聞いてみると夕方とかになると登山者が入浴するのにいい顔をされないとのことだ。確かに普通の登山道ならまだしもヤブ藪の登山道を歩いてくるので汚れがひどいのかも。一人二人ならまだしもこれが大勢となると・・・と想像した。
もともと酸ヶ湯温泉に入るつもりでいたので、酸ヶ湯温泉のことも聞いてみると断然こちらの方がお勧めとのことだった。

その後も何人か入山して行くのを見送りながらパッキングをした。
猿倉温泉のバス停は、軽い登り坂となる車道を5分程歩いたところにある。バス停について時刻表をみるとガーン!!下山日が一日後になったことで予定していたバスは、運行終了となってしまっていた。しかし、酸ヶ湯始発のバスがでているのでその後のバスになっても温泉にはゆっくりと入っていける。

酸ヶ湯温泉はとても開けているが、ごちゃごちゃした感じはせずいいところだった。酸ヶ湯温泉名物「千人風呂(折角の男女混浴だったが、女性はおばあちゃん達しか入っていなかった)」も入ることができて大満足の旅となった。


青函連絡線の寝台で行われていたサービスらしい 毛布は偉大だ 林道途中から松見の滝上へ下降
かなりの出水の跡があった。松見の滝落ち口方面 増水気味で水に色が付いていた
滝自体は簡単。釜のへつりが課題 長根沢出合
翌日は小滝を快適に越えて行く 明るくきれいなところ
みごとな柱状節理がみられる 見事な甌穴と、水に磨かれたところはきれいな青い岩
巨岩が護衛しているナメ 快適にナメを行く
天気もよく明るい沢に御機嫌 黄瀬沼へはこの支流に入る
黄瀬沼 サワギキョウが花盛りだった
猿倉温泉にある休憩所 猿倉温泉(AUは通話可能らしい)


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