吾妻連峰 
高湯温泉〜家形山避難小屋〜吾妻小舎〜高山下り〜土湯温泉
〜寡雪&重い湿雪の高山下り〜
2012年1月20〜22日

 先週足慣らしと装備点検を済ませたので準備は万端。
 気になるのは南岸低気圧だ。
 家形避難小屋から浄土平までの間の強風に警戒していたが、実際に足かせとなったのは、超重〜い湿雪だった。


地形図;
板谷、天元台、吾妻山、土湯温泉

アプローチ

東京駅6:20−福島駅西口8:15/9:26−高湯温泉10:05

コースタイム

1月20日(雪時々やむ)
高湯温泉10:21〜慶応山荘入口15:02〜家形山避難小屋15:44(泊)

1月21日(雪時々やむ)
家形山避難小屋8:10〜五色沼のコル9:03〜前大テンのコル10:55〜浄土平11:40〜吾妻小舎12:14(泊)

1月22日(くもり)
吾妻小舎7:39〜鳥子平9:31〜高山山頂11:40〜林道17:00〜林道除雪終了点(男沼、女沼へ通じる車道)19:00



1月20日(天気;雪時々やむ)
 高湯温泉〜慶応山荘入口〜家形山避難小屋(泊)


南岸低気圧接近中の為、自宅を出るときから雨降り。北上するにつれて白くなっていくようだ。新白河駅辺りでは完全な雪。
福島駅ではまだ雪は降っていなかった。バスを待つ時間を利用し、いつも通りシールを張り付け支度を済ませた。

バスに乗って10分もしないうちにとうとう雪が降り始めた。昨晩さらっと降ったようだが、バスはチェーンを巻かずに無事高湯温泉に到着。
高湯温泉(花月ハイランド入口)から準備体操をして出発。
除雪終了点には一台の車が駐車してあった。良く見ると自衛隊の車両だ。留守番している隊員さんがいたので、挨拶をするときにいつもの訓練なのか尋ねてみると、今日は訓練の偵察に来ているのだそうだ。

偵察隊の方のトレースをありがたく使わせてもらう。
登山道との分岐で登山届を出して登り始めたところで、偵察隊の方が戻ってきた。さすが皆さんの足取りがとても軽やかだった。

モコモコさん先頭で進む。
30分程歩いたところまででトレースは終了となったが、潜るのは平均5〜10cm程度で先日までのトレースがまだしっかりしているので、ほとんど苦労なしの登りだ。しかし、雪が降っていても暑いのでやはりいつも通りようやくスカイライン横断点が近づいてきた感じとなった。
スカイライン横断点にはほぼ予定通りに到着した。ここで少し休憩をした。

ここからはモコモコさんと先頭を交代した。
重荷が応えて賽ノ河原に着いたときには長めの休憩をとった。

さらに井戸溝で休憩し最後のきつい登りに備えた。
井戸溝の橋はまだ埋まっていない。

雪は相変わらず降っているが積雪量はあまり増えていかないので、日没までまだ余裕がある時間に慶応山荘分岐に着けた。
山荘入口には「命惜しんで定休日」とあった。ここで一息入れている間に、モコモコさんが先行してくれるということになった。分岐からは少しラッセルになったようだ。硯石でモコモコさんに追いつく。今日は天気が良くないが、ちゃんと明るいうちに避難小屋につくことができそうだ。

プチラッセルとなったが順調に進み、無事明るいうちに小屋に到着できた。
小屋前にはほとんど雪が積もっていなかったのですぐに入ることができた。また窓周りも除雪不要だった。
落ち着いたところで早速乾杯。先週いただいた日本酒を小屋にデポしていたので、早速引っ張り出して頂いたが最高においしかった。
いつまでも宴会をしていたいところだが、明日の山越えに備えて早目に休んだ。



1月21日(雪時々やむ)
家形山避難小屋(泊)〜浄土平〜吾妻小舎

昨晩は、あまり風もなく穏やかだった。
出発時には、少し風が出てきて雪も降ってくるようになったが、この時期の吾妻では穏やかな方だ。

いつもは硯石まで戻って夏路通りに登るが、午前中までは気象条件もさほど悪くないので、今回はしみけんさんのアドバイス通りガンチャン落としを登ることにした
ちょっとしたラッセルの登りとなったが、確かに硯石まで戻るよりもずっと早い。五色沼のコル到着前に少し休んだ。
ガンチャン落としを登るといいところは、強風により雪がついていない板担ぎポイントが終わった五色沼の淵(家形山のトラバースへ入るところ)へ直接出られるところだ。
家形山のトラバースはいつも通り念のためお互いの間隔を開けて通過した。
大倉深沢から吹きあげてくる強風地帯も今日は穏やかで難なく通過し樹林帯に入って登りに入る直前で休憩した。

次は前大テンのコルを目指し登っていくと、森林限界を超えたころから太陽が少し顔を出すようになってきた。
視界が良く迷うことはないが、これまで雪が降り積もっていなかったせいか時折はい松を踏みぬいたりして意外と時間がかかってしまった。

下降地点となる前大テンのコルに着いても風はさほど吹いていないので、あとは浄土平へ下るだけで楽勝だとこのときは思っていた。
シール大好きな我々はいつも通りそのままで下降開始。
視界と雪質は比較的いいが、雪が少なくヤブがまだ埋まっていないので少し時間をかけて酸ヶ平避難小屋に下った。
小屋の扉を試しに開けてみると、開けることができた。ところが閉めようと思うとなかなか締まらず焦ってしまった。なんとか無事扉を閉めることができたときはほっとした。

いつもガチガチバリバリに凍っている酸ヶ平の雪面は珍しく柔らかい。
風が穏やかなので、快適に浄土平へと滑り込めると思ったが、あまりにも雪が少なくいつもはツイーとトラバースして滑りすぎるところが変に反り返った雪壁になっていて沢床へと追い込まれてしまった。
そのまま沢床をいこうとすると岩が埋まっていないので滑り下りることがなかなかできずに時間がかかってしまった。
浄土平も真っ白な雪原とはまだ言えない状態だった。スカイライン直前の小沢も完全には埋まっておらず、この時期としては初めて橋を使って小沢を渡った。
さらに驚くことに、スカイラインでストックを突くとアスファルトに当たるほど雪が少ない。
この調子だと桶沼経由ではヤブがうるさくて大変ではないかということで最初は兎平から周りこもうとしたが、少し進むとモコモコさんが「このあたりはストックがアスファルトに突かないよ、桶沼で大丈夫じゃない?」と言うので、モコモコさんに先行してもらいいつも通り桶沼で吾妻小舎に入ることにしたが、失敗だった。

桶沼を巻く斜面へと取り付くとすぐに中途半端に積もった雪でヤブになってしまい行く手を阻まれる。
失敗したなと言いながらヤブをなんとかかわして小舎へ到着した。

吾妻小舎の屋根には雪が積もっているもののその量がとても少ない。冬季用入口が使えないどころか、無積雪期用の階段もほとんど表れている状態だった。
一番除雪が必要となる裏へまわって様子を見たが、まだ屋根と雪面が完全に離れており、除雪をするには梯子を掛けて屋根に上がらないとできない感じだ。
これはちょっと我々では除雪はできないので、そのまま小舎へ入ることにした。

小舎に入る前に雪摂りを済ませてしまえば後は外に出る必要はない。
小舎内に入り早速ストーブに着火。ストーブが安定してからは快調に燃え、順調に室温が上がっていった。
室温が上がるのとは反対に外は雪が本格的に降り始めてきた。

水作り(といってもストーブの上に乗せておくだけ)をしたり、装備を整理しているとあっという間に時間が過ぎて行く。
双方落ち着いたところで乾杯だ。あまりにも快適な吾妻小舎での至福の時を楽しんだ。



1月22日(くもり)
吾妻小舎7:39〜鳥子平9:31〜高山山頂11:40〜林道17:00〜林道除雪終了点(男沼、女沼へ通じる車道)19:00


ゆっくり休めたので快適な目覚めだ。
小舎まで来られれば後は高山まで頑張るだけだとこのときはお気楽ムードだった。

昨日から降っていた雪でトレースは完全に消えていたが、雪そのものは止んでいた。
しょっぱなからラッセルとなりスカイラインまで時間がかかった。スカイラインに出てからもラッセルのままで、風もなく気温も低くないので暑くなった。二人ともジャケットを脱いで、交代でラッセルをして進んだが時間ばかりが過ぎて行った。
鳥子平に着く直前になんだかエンジン音が聞こえた。何だと思っているとスノーモービルが突然現れ、我々の脇を通り過ぎて行った。こんな爆音と排気ガスをまき散らしに来るなら「せめて1時間早く来てくれればなあ」とモコモコさんと思わず文句を言ってしまった。
鳥子平からも相変わらずラッセル。気温が高いので雪がだんだん重くなってきた。交代で休んだりラッセルするがなかなか進まない。また中途半端に埋まったヤブに迂回を余儀なくされた。ようやく高山山頂に着いたときにはいつもの倍近くの時間がかかっていた。

少し進んだところでいつもシールをはずすが、今日はとてつもなく重い湿雪でシールをはずしても進まないだろうと思い、しばらくシールを付けたままで行くことにした。
高度をぐんと下げたところからは麦平までいつも気持ち良く滑っていけるところなのでシールをはずすことにした。ところが少し進むとブルドーザー状態でスキーが全く滑らずに止まってしまう。
これはちょっと大変そうだ。

麦平までほとんどラッセル歩き。そこからはちょっとした登り返しもあるのでシールを貼り直して進んだ。
尾根に乗り直した所で今度こそとシールをはずす。しかし滑らないのは相変わらず。滑りそうなところを選んだり、ヤブを避けてと行くといつの間にかルートを外しがちになり、そのたびに修正したりと無駄に時間を消費していく。
通称フンドシ手前の緩やかな平坦地は、いつも快適に距離を稼ぐポイントで今回も楽しみにしていたが全く滑らずラッセル歩き。長期戦を覚悟した。
フンドシ付近は二人ともヤブにはまったりと苦労した。視界が良ければ市街地が展望できる尾根上にたどり着いたときには、いつもなら林道どころかとっくに土湯温泉に着いているはずの時間となっていた。入山前にモコモコさんは「錦滝(※)のお風呂にゆっくり浸かるの楽しみだな〜」と言っていたが、「錦滝でお風呂に入るのは無理っぽいな」と到着が遅くなるのを覚悟した。

※錦滝:土湯温泉の錦滝旅館のこと。いつも快くお風呂に入らせてくれる旅館で、下山後には毎度駐車場でお店を広げて荷物整理させていただけて感謝しています。


その後もさんざんヤブに邪魔されながらとにかくひたすらラッセル歩き。
やっとボブスレーコースに突入し、いつもはスピード出しすぎ注意となるはずであるが、ここでもうんざりする下りラッセル。林道直前の数100mでようやくスキーは滑ったが時遅し。林道到着したときにはすでに日没直前。これからまだ長い林道歩きだ。ヘッドランプをいつでも取り出せるようにして残業開始だ。
数メートル歩いたところで暑くなったので、ジャケットを脱いだ。

最初はモコモコさんも先頭を交代してくれたが、やがて疲れが出てきて結局山人が先頭を務めた。
ようやく九十九折状になったところでとうとうヘッドランプを点灯。ここで少し林道の屈曲部をショートカットできた。ふと周りを見ると、男沼にテントらしきものから明かりがもれているのが見えた。
ほとんど平坦になってしまう標高700mあたりを汗をかきながらひたすら歩くと、やっと不動湯への分岐があるゲートに到着した。ここには車が入った跡はなかったが、先ほど見えたテントの人のトレースが途中からでてくるかもしれないと期待した。

そこで少し休憩して作戦会議。二人の体からは湯気が上がっている。
いつもは土湯温泉への最短距離となる登山道へと入るが暗いので道なりに進み、除雪完了地点に出たらタクシーを呼んでしまうかを考えようということになった。

通行止めになっていない道でも相変わらずのラッセルとなるが、これまでに比べて少し楽になった感じだ。
やがて期待通り男沼方向からのトレースがでてきた。途端にスキーが滑るようになった。このトレースの主は車で来ていたのですぐにきっちりと圧雪された道となったが、タイヤ分の幅なのでスピードが出すぎても制御できない。そのため、圧雪されていないところを使って片足はブレーキにして進む。非常に疲れるがこれまでの歩きのことを考えると雲泥の差のスピードが頑張らせてくれる。

当たり前だが滑るとスキーは早い。嘘のように簡単に除雪終了点に到着。
ここで板をはずし、最初に、心配しているであろう吾妻小舎の雅子さんに下山の連絡を入れた。
今なら歩いていってもバスに間に合うが、モコモコさんが「道路が凍ってきたから重荷でここを歩いたらきっと私は滑って転ぶ。だから歩くのやだ。タクシー呼ぼう。」と訴えてくるのでタクシーを呼ぶことにした。

タクシー会社の言うことには、市街地から行くので40分程はかかるとのこと。片づけをしていればその程度は時間が潰せるだろうということで迎えを頼んだ。
片づけを済ませたところで時計を見てみると、タクシーを呼んでから25分ほど経っていた。お腹がすいていたので、おやつを食べながら待つことにした。
そうこうしているうちに呼んでから50分が過ぎとうとう1時間近く経った。
さすがにこれはおかしいとモコモコさんが言い始めタクシー会社にもう一度連絡を取った。
すると近くまで来ているが、チェーンを巻いているので遅れているとのこと。寒いのとお腹がすいているのでモコモコさんはイライラが隠せない様子。とうとう「寒くて待っておれん。歩いていく。」と言い出し荷物を担いで歩きだした。さっきは道路が凍っていて歩くの嫌だと言っていたのにと思ったが、山人もモコモコさんと同じく寒かったので同意して歩きだした。

数100m歩き始めてようやくタクシーが現れた。待ちくたびれたよ。
結局バスに乗った方が早く駅に着いたようになってしまったが、バスに乗っていたとしたら荷物整理する時間はとれなかったと思うので結果としてはよかったかもしれない。

新幹線の時刻を確認すると、最終の新幹線の時間まであと1時間弱あるので駅のスーパー銭湯「極楽湯」で汗を流した。
次はすっかり遅くなってしまった夕飯の調達。新幹線改札内のコンビニはおにぎりやサンドイッチの類は売り切れ。同じようにおにぎりを調達しようとしていた人がいたが売り切れにがっかりした様子。その人の連れの人が車内販売で買おうと慰めると「東北新幹線は車内販売がなかなかこないんだよ」と我々にとってはとても恐ろしい内容の言葉を発した。その言葉に、我々はこのままでは東京駅に着くまでご飯にありつけないかもと、泣く泣く菓子パンとおつまみを買って車内販売でお弁当があることを祈って新幹線に乗り込んだ。

荷物を置いたところで早速車内販売のワゴンを探す。最初に先頭方向を探したがいない。
次に山人が代表して後方の車両へと探しにいくと運良く近くの車両にワゴン発見。これまた運がいいことにお弁当が数個残っていた。
これでようやく落ち着いた。
高山下りで初めて残業となったが、終わってしまえばいい思い出。いつものお楽しみ車中で乾杯をした。


自衛隊の偵察部隊 登山口
スカイライン横断点を越え、本格的な登り 標識
井戸溝 慶応山荘分岐「命惜しんで定休日」。思わず笑い。
家形山避難小屋 がんちゃん落としを登る
振り返る 五色沼
稜線。がんちゃん落としルートのお陰で板を脱がなくて済んだ 五色沼の斜面をトラバース
一切経山と前大テン鞍部方面 鞍部付近
酸ヶ平へ滑る 酸ヶ平避難小屋、扉開いた。雪が少し吹き込んでいた。
浄土平へ向けて降りる。岩が出ていたりするので慎重に行く。 スカイラインにでる途中の橋。
吾妻小舎。ストーブの温もり。 スカイライン途中の橋。ラッセルするモコモコさん。
スカイライン最高高度地点 鳥子平
高山 高山山頂
安達太良山が雲海からひょっこり 高山、直下の一番いい斜面が滑らない
1230m辺り 1000m辺り、笹がこんにちは
林道に出てもトレース無 除雪終了点に飛び出た。


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