吾妻連峰 
高湯温泉〜家形山〜ニセ烏帽子山〜谷地平〜姥ヶ原〜吾妻小舎〜東吾妻山〜蒲谷地
〜厳冬期、少し吾妻の奥まで〜
2012年2月16日〜2月19日

 昨年同様、今年も寒気が居座ったままでなかなか吾妻の奥へ入れないでいた。
 ようやくこの頃になって少し寒気が弱まってくるようになったので、今回は思い切って久しぶりに谷地平まで入ることにした。
 天元台から入れると、連峰横断となって気分が良いのだが山形県側からアプローチするには、気象条件が悪そうなので高湯から入ることにした。
 週間天気予報を毎日にらみながら当日を待つ。天気が良いのは2日目の午前中までで、それ以降は気温が大きく下がるようだが、予想天気図を見ると風はさほど強く吹くことはなさそうなので実行に移してもよさそうだ。
地形図;板谷、天元台、土湯温泉、吾妻山

アプローチ

東京駅6:20-福島駅8:15/9:25−高湯温泉10:03

コースタイム

2月16日(晴れときどき曇り)
高湯温泉10:30〜スカイライン横断12:24〜井戸溝15:15〜慶応山荘入口15:55〜家形山避難小屋16:49

2月17日(晴れのち雪)
家形山避難小屋7:00〜家形山8:15〜ニセ烏帽子山10:53〜大倉深沢渡渉点13:26〜谷地平避難小屋14:00

2月18日(雪)
谷地平避難小屋7:36〜姥ヶ原10:46〜浄土平12:51〜吾妻小舎13:12

2月19日(くもりときどき晴れのち雪)
吾妻小舎6:15〜浄土平6:32〜東吾妻山9:28〜林道12:02〜蒲谷地(入口)12:58





2月16日(晴れときどき曇り)
高湯温泉10:30〜スカイライン横断12:24〜井戸溝15:15〜慶応山荘入口15:55〜家形山避難小屋16:49

いつも通りに花月ハイランドへ向かい、準備をして出発。
早朝少し降雪があったようだ。登山届を出して登り始める。
トレースがあるが、うっすらと雪が被っている。早朝に入った人のか前日までに入った人のかはこの時点では不明。途中、慶応山荘の指導布の周りに踏み跡があるので、トレースの主は山荘の大柿さんではないかと予想した。
前日まで天気がよかったのとトレースのお陰でラッセルとは全く無縁で進む。

スカイラインを横断してからこれまでヤブがうるさかったところがなくなっており、とても登りやすくなっていた。
賽ノ河原の手前で人発見。良く見るとやはり大柿さんだった。
大柿さんはルート整備の作業中だったが、我々の姿を見て「また来たのか」と笑顔を見せてくれた。
挨拶をすると、大柿さんも作業の手を休めてしばしの間我々と話をしてくれた。風邪から無事回復したようで、前回とは違って元気そうだ。大柿さんの話はいつも楽しく思わず時間を忘れて話してしまうが、お互いまだ先に予定があるので残念ながらここで雑談終了。大柿さんは引き続きルートの整備をしながら進むということなので、今度は我々が先行した。

気温がどんどん下がってくるが天気は比較的いいので気が楽だ。
今回はすべて小屋泊まりだが、二泊目の谷地平避難小屋泊まりでの防寒と快適さのためにツエルトではなくゴアライトテントを担いできたので荷物が重い。
ラッセルはあまりないのだが、そんなわけでなかなか進まない。それでもなんとか慶応山荘分岐に到着。

休憩をとることにしたらなんとモコモコさんは休憩を取らずに行きたいと言うので、モコモコさんには先行してトレースを付けておいてもらうことにした。
さすがに山荘分岐からは少し潜る割合も多くなるがなんとか明るいうちに家形避難小屋へ到着した。
家形避難小屋へ早速入ろうとすると、扉の下が凍りついてしまっていて開かない。
出来るだけ氷を取り除いて、モコモコさんのケツ(尻)圧を動員してなんとか開けることができた。

小屋に入るとほんのり暖かい気がした。小屋はやはり快適で明日に備えてゆっくり休めそうだ。


2月17日(晴れのち雪)
家形山避難小屋7:00〜家形山8:15〜ニセ烏帽子山10:53〜大倉深沢渡渉点13:26〜谷地平避難小屋14:00

小屋のお陰でゆっくり休めた。
風も穏やかそうで予定通り稜線に上がっていけそうだ。

まずはガンちゃん落としを登る。ラッセルとなるが底があるのできつくはない。予定通りにコルへ到着しそのまま家形山へ登る。幸いにも風がほとんどなく天気もよくなってきて青空も見えるようになってきた。コルからはほぼ夏路通りに登れた。
家形山はどこが正式な山頂だかわからないが、山頂の一角の日当たりのいいところで休憩をとった。

家形山から積雪期に下るのは初めてだが、とても楽しかった。いつもは逆走してくるので辛い登りとなっていたが、滑るのは楽しそうだと思っていた通りだった。
順調に兵子分岐に来たが、順調すぎて気が付いたら兵子へ登り始めてしまっていた。慌てて戻る。
ニセ烏帽子山との鞍部からは、いつも通り波打つ雪面と入り組んだ木々を避けながらパズルを解くように進まなくてはいけないので距離の割に時間がかかってしまった。

予定では東大巓まであわよくば継森までと目論んでいたが、継森は無理そうだ。それでも東大巓までは行きたいなと思っていた。
ところが、さすがに山の天気は変わりやすい。烏帽子山へ登りにかかる前に雪が降り始めてしまった。折角言っても展望がないのでは仕方がないので東大巓はあきらめることにした。さらにモコモコさんはなぜか烏帽子山を嫌っている(※1)ので、烏帽子山へ登らずにそのまま大倉深沢の夏路の渡渉点を目指して下降することにした。
(※1 烏帽子山について、いつもモコモコさんは「烏帽子山って変だよ。吾妻の県境稜線らしくないよ。なんであの山だけ大岩がゴロゴロしてて禿げてるんだ?絶対どこからか飛んできてあそこに居座ったんだよ。もともとは姥ヶ原辺りにいたんじゃないの?」と訳のわからない因縁をつけている)

夏路が大倉深沢を渡渉する位置にコンパスを合せて下降を始める。といっても延々と山腹を横切るような形になるのであまり傾斜をとることができない。
滑るように進路をとると、大きく高度を下げて方向がそれてしまうので歩き気味に移動する感じだ。
それでも南斜面で樹林間隔がほどよく空いているのでなかなか楽しい。やがて夏路と無事合流できたので、途中出てくる急な斜面は少し回り込んだりすることはあるもののほぼ夏路通りに進んで大倉深沢の渡渉点に到着。

大倉深沢にはスノーブリッジがきちんとかかっていたのでスキーを脱ぐことなく渡れた。
谷地平へ登り返すともうすぐ小屋だ。天気はよくないが、それでも時折背後には烏帽子山、行く方向には東吾妻山をうっすらと望むことができた。
ガスがかかってるわけではないので、順調に谷地平を横断し、小屋へ向かうために必ず通らなくてはいけない谷地平の台地から一段降りる場所へ着いた。
谷地平から降りて姥ケ沢の上流へ沢沿いに歩くと、すぐに小屋が見えるようになった。久しぶりに見た冬の小屋の情景は相変わらず桃源郷のようだった。

小屋手前の姥ケ沢を渡るスノーブリッジはこれまで見た中で一番貧弱なような気がした。
慎重にそっと渡り無事小屋に到着、と思ったら雪の重みでドアのノブが下がってしまった(谷地平避難小屋のドアの取っ手はレバー式で、レバーを下にて開ける)のか少し隙間があいていて雪が中に入り込んでしまっていた。
まずは扉前の除雪をし、少しずつ扉の間にたまった雪をどかして無事開けることができた。
ありがたいことに、この小屋は居住スペースとの境にもう一枚扉があるので小屋の中までは雪が入りこんでいなかった。

風が一切当たらないお陰か小屋に入ると少しだけ暖かい感じがした。実際は小屋内の温度もかなり低かったと思う。
荷物を小屋に持ち込んでまずは水汲み。姥ケ沢から水を汲むのにビリーカンと荷造り用のナイロンロープが大活躍だった。
小屋についてから気温がぐんぐん下がってきたようだ。谷地平避難小屋はとてもきれいだが、雪に埋まっていないので明るい反面、小さな家形避難小屋と違い少々広いのが原因で外気温と小屋内の温度はあまり変わらず寒いので、ゴアライトを張った。

落ち着いたら早速食事の支度だ。小屋到着の時刻が早かったのでゆっくりと夕食をとることができた。それなりに寒いがやはり小屋の中は快適だ。また、ツエルトでなくゴアライトで保温性だけでなく居住性もよかったので重荷を頑張って担いできたかいがあった。
明日は午後になるほど天気が悪くなる予報なので、できるだけ早く出発して吾妻小舎に逃げ込もうということで早目に休んだ。


2月18日(雪)
谷地平避難小屋7:36〜姥ヶ原10:46〜浄土平12:51〜吾妻小舎13:12

早朝は星が出ていたが、あっという間に天気が崩れてしまった。
早くに出発するつもりだったが、なんだかんだで遅くなってしまった。出発時には雪が結構降ってきた。
今日の登りは樹林帯の中なので少しぐらいの悪天は問題ないが、心配は姥ヶ原〜浄土平の間だ。

雪で完全に埋まった部分で姥ケ沢を渡り返す。あとはほぼ夏路通りに登っていく。
これまで何回か登ったときは夏路と程同じだが、適当に樹林が開いている所を通過したが、今回は夏道に忠実に登ったところ、藪がかぶさっていることもなく一番快適に登れた。
姥ヶ原手前で傾斜が出てくるところでは、雪面が意外に固く後滑りするので、斜面を大きく使って登った。
姥ヶ原に出る直前で、防寒・防風対策をとった。また、モコモコさんからこれからの下降ルートについて作戦を説明されるがどうもよくわからない。
なんでもモコモコさんの作戦では、姥ヶ原を大きく東吾妻山の北西斜面へと移動して明日登る予定のルートに入ってから下降するとのことなのだが、自分では鎌沼の横を降りて行くつもりだったので、ここで二人の行こうとする方向が食い違ってしまった。

姥ヶ原に出ると、西風の通り道なのでさすがに風が強く、雪が絶えず降っているので視界がとても悪い。
なんとか指導標や木道を発見しながら鎌沼を見つけることができた。
このまま下ろうとすると、モコモコさんから方向が違うと指摘される。モコモコさんが指し示す樹林帯を目指して少しずつ移動していく。まだこの時点でモコモコさんの意図が読めない。

樹林帯に入り風が避けられるところで地形図を出してモコモコさんから下降ルートの説明を受ける。なんとなくわかってきたが、行こうとしていた方向感覚が体から離れず一度小さくリングワンデリングしてしまった。
モコモコさんに方向を指示してもらいながら、強風のときは体力的というよりも精神的に疲れるので、時折出てくる木の陰で風を避け気を休めつつじわじわ進んだ。

なんとか東吾妻山の北東斜面にある崩壊地に着いたようだ。
少し休んで、崩壊地を越えて思い切り斜面を横切っていくと、明日登る予定のルートに乗ることができた。モコモコさんの作戦が功を奏して、あれだけ強風にさらされていたのが、冬道ルートに入った途端樹林帯であるのと斜面が風をさえぎってくれるので一気に穏やかになった。
少し下降したところで、モコナビの調子がいいのでモコモコさんに先導してもらった。途中モコモコさんがうれしそうに騒いだのでなにかと思ったら、真っ白なうさぎが転がるように斜面を駆け降りるのを見ることができたとのことだ。
冬の吾妻でうさぎを見ると、その後の行程がうまくいくことが多いので幸先がいい。
相変わらずシール大好きの我々は、シールを付けたままなのと(入山から一度もシールははずしていない)傾斜が緩くなってきたので快適に滑るということはないが、気分良く浄土平に到着した。

浄土平は風が吹き降りてきていたが、ここまでくれば今日の行動は終わったようなもの。
今回は兎平寄りに出たので、桶沼回りでなく兎平回りで吾妻小舎へ入ることにした。
スカイラインでモコモコさんが何も無いところで立ちゴケ(なぜかモコモコさんは、必ず1回はなんでもないところで立ちゴケするのが山スキー装着時の基本となっている)した他は何事もなく吾妻小舎へ到着できた。

我々の入る前に2週連続で山岳会の方が吾妻小舎に入ったと事前に聞いていたので、除雪の必要はないかなと思っていたが意外と屋根に積もっていた。
しかし先ほどの強風の行動でなんだか精神的にとても疲れてしまったので、申し訳ないが除雪はせず休ませてもらうことにした。
小舎内は広いだけあって最初はとても寒かったが、ストーブを付けると徐々に室温が上がって行く。本当にありがたいです。

室温が上がっていくのとは裏腹に外気温はぐんぐんと下がっていったようで、室温を保つだけでストーブの燃料をどんどん消費して行く感じがした。
ストーブのお陰で暖かく快適に過ごし、到着時は冷え冷えだった布団も予め干しておいたので就寝時には冷えを全く感じることなく快適に過ごせた。



2月19日(くもりときどき晴れのち雪)
吾妻小舎6:15〜浄土平6:32〜東吾妻山9:28〜林道12:02〜蒲谷地(入口)12:58

あまりの快適さに布団からでるのが嫌になるが、今日は長丁場なため気合いを入れて起きた。
起床直前に一度目が覚めたモコモコさんがストーブを調節して室温を上げておいてくれたので、寒さを感じることなく布団から出られた。
前回はストーブの燃料が余る程度しか使わなかったのが、今回は1袋全て使い切ってしまった。
掃除は前夜にほとんど済ませておいたので、予定通りの時間に出発できた。

積雪量はあまり増えていないらしく、昨日のトレースを使うことができた。
東吾妻山への登りになると、さすがにトレースの上にうっすらと雪が積もっているが、トレース自体はしっかりしているのでとても楽だ。モコモコさんの「風から逃げられる、翌日のトレース付けになる一石二鳥作戦」のお陰だ。

天気の神様も我々に微笑んでくれたようで、たまに青空の一片を見せてくれた。また山頂へ近づくにつれ風が穏やかになってきた。
順調に傾斜が弱まる標高1900mに到着。ここから樹林が一気に小さくなるが風が穏やかなので気温はとても低いものの全く辛くない。
さすがに山頂に近付くと視界はあまりよくないが、迷うことはない程度には見える。
山頂まで何事もなく到着。風は弱いものの気温が低くて留まっていられないので証拠写真だけ撮って通過した。

まずは下降地点となる夏路の指導標があるところまで移動。
スキーが下手な我々はなるべく樹林間隔が広いところ、傾斜が緩いところを降りたいので、東吾妻山から蒲谷地へ降りるのには標高1750m付近までは南斜面を下りることにしている。
出だしで西へ入ってしまったので、すぐに修正すると前回も見かけた謎のアンテナを無事確認できた。
標高1750mまで高度を下げたら、ここで林道が標高1340m付近の平地を通る辺りに合せて方向を変える。これだと標高1650〜1600mの間を歩くことになってしまうがシール大好きの我々は別に苦痛ではないので問題はない。1600m下の少し急な斜面をやり過ごせば林道まで一滑り。

予定よりも早くに林道に到着できた。蒲谷地の林道は良く滑るが、さすがに今回は少し時間がかかるかなと思ったらなんと、うさぎさんの御利益かスノーモービルのトレースがあった。しかも通ったばかりのようで跡が凍っておらず快適に行けそうだ。
ここでやっとシールをはずして(情けない)ワックスを塗った。更に、ここで携帯電話が通じることが前回分かったのでタクシーの予約を入れることにした。モコモコさんに予約を頼んだところなんだか長引いている。予約を受ける人が昨年までと変わったようで色々と注文をつけてきたらしい。
そんなこともあったが、なんとか段取りが付いて最後の一本に入る。
スノーモービルに圧雪された林道は、予想をはるかに超えてよく滑るのでスピード出しすぎに注意となった。

林道入口まであっという間だ。
これから蒲谷地入口まで、板をそのまま履いていけるか担ぐかになるか時の運となるが、今回も運良く最後までスキーを履いていけた。
入口でタクシーを待ちながら片づけを始めると雪が本降りになった。これまた運よく天候悪化は、無事下山してしてからだった。
ちょうど片づけが終わったところでタクシー到着。
中ノ沢温泉へ向かい、バスの時間が迫っていたので少し忙しくなってしまったが4日分の汗を流して帰ることができた。


山行メモ
 ※昨年蒲谷地の方に、近くにdocomoのアンテナが立ったので少し歩けば携帯電話が通じるよ(FOMAサービスエリア(FOMAプラスエリア)内になった)と教えてもらったので、試しに今回携帯電話を使ってみました。
  見事つながりました。。
 ※猪苗代駅前の「かくだい食堂」はがんばって営業しているようです。
  久しぶりに食べたいなと思ったらすでに暖簾が仕舞われていたので無理だったのですが、店の前には食後の満足そうな顔をした若者達がおりました。


スカイライン横断地点 モコモコさんが進む
福島市内を眺める モコモコさん行く
井戸溝 雪に埋もれた小屋
ガンチャン落としを登る 振り返る
振り返る 大根森
五色沼と一切経山 大倉深沢の切れ込み
静寂の谷地平 谷地平避難小屋手前のスノーブリッチ
谷地平避難小屋 ビリーカンで水汲み
小屋の中でゴアライトXで快適 地吹雪の姥ヶ原から逃げて、樹林帯を行く
吾妻小屋 東吾妻山へ登る、吾妻小富士を見る
東吾妻山山頂 蒲谷地


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