吾妻連峰
高湯温泉〜家形避難小屋〜東海大緑樹山荘途中まで往復
〜超強力寒気と歩荷訓練〜
2013年1月25日〜27日

 
 前回足慣らしと装備点検を済ませたので、高山下りをする予定だった。
 ところが、我々が山越えをする日を狙い撃ちするかのように、寒冷前線を伴った低気圧が接近通過し、その後猛烈な寒気が南下して超強力な冬型となる予報となってしまった。
 稜線に出れば猛地吹雪による視界0+低温+強力な風と悪の3条件が揃ってしまい、撤退も出来なくなりそうなのでおとなしく高山下りは中止とした。家形山避難小屋までならば樹林帯の中での行動なのでなんとかなる。
 更に折角3日の日程をとっていたので、2日目は気になっていた東海大緑樹山荘まで偵察に行ってくることにした


アプローチ



コースタイム

1月25日(くもり一時晴れ、昼ごろから雪)
高湯温泉(花月ハイランドホテル)10:32〜スカイライン横断点12:02〜慶応吾妻山荘入口14:51〜家形山避難小屋15:54

1月26日(雪ときどき止む、昼頃から雪夕方から特に風強まる)
家形山避難小屋9:40〜東海大緑樹山荘方面1340m付近11:00〜家形山避難小屋13:05

1月27日(雪のち晴れ 早朝まで強い風)
家形山避難小屋9:02〜慶応吾妻山荘9:48/11:05〜スカイライン横断点12:55〜高湯温泉(花月ハイランドホテル)13:55


1月25日
(くもり一時晴れ、昼ごろから雪)
コースタイム
高湯温泉(花月ハイランドホテル)10:32〜スカイライン横断点12:02〜慶応吾妻山荘入口14:51〜家形山避難小屋15:54


 いつもの慣れた行動で高湯行きのバスに乗り込んだ。
 チェーンを巻かないで行かないよう祈っていたが、バスは途中からチェーンを巻いて高湯へと登って行った。
 バスを降りるときに、チェーン巻き職人さんから「慶応山荘の管理人昨日登って行ったぞ」との情報をもらえた。
 まだ低気圧は来ていないらしく、時折青空も見える。
 山中で使わないものをデポして出発。

 昨日は雪が殆ど積もらなかったようでトレースが残っていた。
 除雪終了点からは坪足のトレースがあった。登山届を出したところからもほとんど潜らずに済んで助かった。
 もしラッセルとなると小屋に着くのが遅くなるどころか、今日は午後から荒れる予報で小屋そのものに着けなくなる恐れがあるので幕営道具一式背負っての入山だったのでいつも以上にラッセルなしであることがうれしかった。
 重荷でフーフー言いながらも順調に高度を稼いでいけた。
 スカイライン横断点までで、いずれも不動沢まで行ってきたというスノーシュー二人組と単独の男性の3人とすれ違った他はその先誰にも会わなかったが、前日入った大柿さんのものと思われるトレースがまだ残っていたので、重荷であっても空身でラッセルするよりはずっと速いペースで進めた。
 山鳥山までに随分と風が出てきたので、モコモコさんからしつこく引き返した方がいいのではと言われたが、先もトレースが続いているので行けると判断して歩を進めた。
 湯ノ平まで進むとモコモコさんも小屋へ行けると判断したらしく引き返そうとは言わなくなった。
 この先慶応山荘分岐までも、雪に潜るのはせいぜいくるぶしから足首くらいまでだった。

 井戸溝の橋は随分と埋まってきていたが、まだ手すりが埋まっていないので慎重に蟹さん歩きで上り下りして通過した。
 慶応山荘分岐まで登りきったところで時計を見ると15:00前だった。ここからはトレースが一切なくなるが明るいうちに着けると確信した。
 「命懸けて営業中」に快適な営業小屋泊まりにとても惹かれたが、予定通り通過した。
 ここからは天気のいい土曜休日以外は大抵ラッセルとなる。これまでラッセルはないものの重荷で先行してきて疲れてきたのでモコモコさんに先頭を交代してもらった。

 風が強くなってきたが、明るいうちに小屋へ入れると解っていれば不安もない。
 硯石から回り込むと尾根の風の遮りがなくなり雪が直接吹き付けるようになるが、すぐに樹林帯に入るので普通に行動できた。
 重荷でいつもより時間がかかったものの井戸溝で見込んだ時間ピッタリに小屋に到着できた。

 小屋外の温度計は-12℃を示していた。
 小屋中へ入ると、温かく感した。雪が保温の役目をしていたのか−6℃だった。

 明日はさらに冷え込むらしい。貸し切りなので担いできたテントを小屋内に張って寝ることにした。


1月26日(雪ときどき止む、昼頃から雪。夕方から特に風強まる)

家形山避難小屋9:40〜東海大緑樹山荘方面1340m付近11:00〜家形山避難小屋13:05

 寒さというより冷えて目が覚めた。
 ラジオでは昨日は風が強く、各地で最大瞬間風速が25m/sを超えたようなことを言っていた。
 山や尾根の陰に建っているこの小屋でも風の音が聞こえたので稜線はかなり強い風が吹いたのだろう。

 今日は午前中は少し風が弱まり小康状態になるらしいので、東海大緑樹山荘まで散策に出かけることにした。
 このコースは五色温泉へ下るクラシックルートらしいが、近年下る人も稀で地形も小沢や小尾根が入り組んでいてルート取りに気を使うらしい。

 寒いので外が薄明るくなってからシュラフから這いだした。
 テントを開けるとひんやりした空気が入り込んできてブルっとした。
 外に出て温度計を見ると-16℃まで冷え込んでいた。道理で寒いわけだ。

 ゆっくり朝食を済ませて日帰り装備で緑樹山荘目指して出発。
 地形図の登山道通りだと遠回りになるのと、沢の処理が面倒そうなので、標高1480m付近の登山道が90℃屈曲する辺りにコンパスを合せて直線的にコース取りをすることにした。
 出発するとすぐに東海大ワンゲル部(T.W.V.)が付けてくれたらしい赤布が見られた。
 数箇所までは順調に追っていくことができたが見失ってしまった。後でわかったことだが、最初の沢を我々は標高1580m付近で渡ったが、T.W.V.ルートはもっと上部でかわすようになっているらしい。地形図を良く見てみるとその方が沢が浅いところで渡れるので余計な登り返しがなくて済むのかもしれない。
 ちなみに沢を渡り返して少し進んだ所で赤布と青木小屋の標識を発見できた。
 赤布はこまめに付けてくれているようだが、雪のため撓った枝の下に隠れていたりで発見するのはルートを知らないと難しい感じがした。
 我々はすぐに見失ってしまい、コンパス頼りに進んだ。
 
 コンパスの方向へとひたすら進んでいくが、樹林帯で小沢と小尾根が交互に出てくるのをかわしながら行くと標高1500m付近で小さな尾根状となるところに出た。そのままコンパスの方向へ進めばいいのだが、がくんと傾斜が強くなっているので戻ったりして時間を浪費してしまった。
 標高1500m付近からは再びコンパス通りに素直に進めるようになった。
 と同時に赤布も発見できるようになった。しばらく直線コースなので順調に我々の進行方向と赤布が一致してたのしい歩行(積雪のため下りラッセルぎみでシ全く滑る要素なし、もちろんシールは貼り付けたまま)だった。

 山荘まであとは順調に行けると思っていたが、標高1380m付近でルートを見失ってしまった。
 下に沢状となっていてそこを下っていけばいいとは思うが、なんだかヤブがうるさそうで沢に入る気にならない。樹林感覚が広く快適そうな尾根の横腹を1340m付近まで下ってみたが、どんどんルートをはずしている感じだ。
 ルートを外すにつれて風が出てきた(北風直撃の所にいた)。天気予報で言っていた午後になると再び風が吹き出し・・・が始まったのか?
 帰りのことを考えて引き返すことにした。

 帰りは方向がはっきりしているので歩きやすい所を探しながら行こうとしたが、登りでラッセルがきつくなるので結局は行きのトレースを追った。
 当たり前だがトレースがあると早い。

 13:00丁度に小屋へ戻れたので、ラーメンを作ってお昼ご飯とした。
 まだ時間がたっぷりあるので午後はイグルー作成の訓練をするつもりだったが、モコモコさんからスノーソー1本ではイグル―はできない(今回はスノーソーはモコモコさん持参の1本だけしかなかった)、それよりもブロックを作るのだったらトイレの場所をブロック壁で囲んでと強く主張された。
 不満たっぷりであるが、外に出てみると強い風雪が吹き始めていた。確かにこの状態の中でのトイレは大変そうだということでイグル―作りは諦めてブロックを積むことにした。

 ブロックを積んでいくと、壁を円形劇場のようにするには確かに角を削らないとうまくいかない。ブロック切り出しでスノーソーを独占していたのでモコモコさんは手刀で削っていたがうまくいかず土台が不格好になってしまった。
 なんとか強風は凌げることができるようにブロックを積み上げたところで終了とした。

 気温は相変わらずだが、昨日や今朝よりは寒さを感じなかった。少しであるが寒さに慣れたのかな?
 日が暮れると風は強さを増した。小屋のありがたさが身に沁みる。
 モコモコさんもブロックのお陰でトイレが怖くないと、外は暴風雪でもリラックスムードだった。

 
1月27日(雪のち晴れ 早朝まで強い風)

 昨晩は本当に荒れた。始終風が吹く音が続いた。
未明の頃には、小屋は一瞬揺れたのではないかという突風があったり、時折ボンッと大きな音をたてて風が吹き抜けて行った様子が中からもよく分かった。

 今日は午後に向けて一時天候が回復するとのことなので明るくなってからのそのそ起きだした。
ラジオで告げていた通り、強い寒気は東へ抜けたらしく昨日ほどの寒さはなかった。
ただし風は強いままで、ブロックを積んでいてもトイレ用の穴はすっかり埋まっていた。
朝食の準備をしている間に、モコモコさんは穴掘りに外へ出て行った。

 ゆっくり出発準備と後片付けをして出発するころには、風はまだ強いもののかなり治まっていた。
硯石まではいつものことだがラッセルとなった。硯石を過ぎるとそれまでバカバカ降っていた雪がピタリと止んだ。尾根一本挟んだだけでえらい違いだ。
慶応山荘分岐で「命懸けて営業中」を確認してから山荘へと進路をとった。
強風のお陰で雪が飛んでしまったのか、夏路通りに行くとほとんどラッセルなしで山荘に着いた。

 山荘入口の鐘を鳴らしてみる。・・・・・。2度ほど同じことを繰り返しても気配がない。
思い切って中のドアを開けて声をかけてみると、大柿さんが出てきてくれた。
今年の挨拶をしていなかったので顔を拝見できてうれしい限りだ。
大柿さんも「こんな日に(笑)」といいながら、暖かく迎え入れてくれた。

ちなみに到着したときに山荘の外側の扉前に雪がほとんどなかったのだが、大柿さんによると早朝は除雪が必要なほどあったのが風で全部飛ばされてしまったのだとか。

 楽しい時間に別れを告げて、快適な山荘を後にして軽いラッセルで山鳥山まで進んだ。
強い西風は相変わらず。吹きさらしのスキー場を下るのはつらいなということでそのまま夏路を下ることにした。
賽ノ河原を過ぎたあたりで、3人組の男性(皆さん青色ジャケットで最初訓練の人かと思った。)が登ってきた。なんとそのうちの1人は2週間前に顔を会わせていた方だった。

 水飲の沢への下りとなる直前から急によく踏み固められた状態となった。
どうやら訓練隊がここまで上がったらしい。

 あまりにもよく踏まれていて滑りすぎるので慎重にくだった。
スカイラインの不動沢駐車場の柵が見えるようになった辺りで訓練隊の方々の隊列が通過するのとちょうど交差することになった。
思ったよりも規模が大きかった。
隊列が通過した跡が正規のルートよりも広く立派だったので、後を付いていった方が早くて快適ではと思ったモコモコさんが隊列がどこへ抜けるのか尋ねたところ、シャクナゲゲレンデの上(旧ゲレンデで一番急なところ)に出るとのことだった。これを聞いてそのまま登山道を行くことに決定した。

 スカイラインに出ると見事に圧雪されていた。
登山道を降りるのは私には無理とわめくモコモコさんに配慮してスカイラインを下ることにした。
久しぶりにスカイラインを下ったがやはり長い。「あーあ、あのまま登山道下ってればとっくに着いてるのに」と思わず愚痴をこぼしてしまった。圧雪されているとはいえ歩く部分が多く時間がかかった為、今回もバスの時間に合わせると花月のお風呂に入ることができなかった。

 パッキングを済ませると本当にいい天気になってポカポカ陽気で暖かい。
 吾妻小舎へ予約を入れていたので、雅子さんへ小舎へは行かなかった旨報告の電話を入れて、さらにバスに乗り込んでからは心配していたであろうチェーン巻き職人さんにも挨拶を済ませた。

 雅子さんやチェーン巻き職人さんが言っていた通り市街地にも結構な積雪があったようで、バスはいつもチェーンを外すところからもそのまま外さずに福島駅へ走った。

 駅の極楽湯で汗を流してからお弁当を買いこんで新幹線へと乗り込んだところ、各駅停車であるもののE5系(「はやぶさ」として使用されている車両)だったのでゆったりと帰ることができて少し得した気分だった。

もう少しで井戸溝の橋が埋まりそうになってきた 風雪が強くなってきた
悪天候時には特に小屋のありがたさが分かる ルートを外してしまったので引き返す
モコモコ雪 この後モコモコさんがつついて落ちてしまった
雪の丘 慶応吾妻山荘
思ったよりも規模の大きな訓練だった ここからがとてつもなく長く感じた



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