吾妻連峰
高湯温泉〜家形山避難小屋〜吾妻小舎〜高山下り
〜今世紀最強クラスの寒気を体験〜
2013年2月21日〜24日

 比較的長く山に入れるようになったので、高湯から入り東吾妻山、中吾妻山を越えて久しぶりに二十日平コースでグランデコへ降りるルートを計画した。
 心配なのはやはり天気で、寒気の南下がいつもは東北地方あたりまでで終わるのが今回は関東南部まで来そうな予報でなんだかいつもと違う気がする。
 下山してからこの寒気は今世紀最強クラスの寒気だったことが分かった。
 2日の予備日を持ったのに、結局高山下りとなってしまった。


アプローチ

東京駅6:20-福島駅8:15/9:25−高湯温泉(花月ハイランド)10:03

コースタイム

2月21日(雪)
高湯温泉10:35〜スカイライン横断12:28〜山鳥山14:00〜慶応山荘入口15:24〜家形山避難小屋16:10

2月22日(晴れ、昼前から雪)
家形山避難小屋7:30〜家形山トラバース開始地点8:28〜大倉深沢左岸1778mP9:00〜姥ヶ原11:00〜浄土平13:00〜吾妻小舎13:30

2月23日(晴れ 強風)
吾妻小舎9:40〜標高1700m地点11:50〜吾妻小舎12:30

2月24日(暴風雪)
吾妻小舎7:40〜鳥子平10:17〜高山11:10〜緊急そり置き場12:05〜林道15:15〜土湯温泉バス停16:50



2月21日(くもりのち雪)
コースタイム

いつも通りに高湯行きのバスに乗る。
チェーン巻き職人さんはいつもと違う人だったので特に話すこともなく終点に到着。
花月ハイランドからの新しいトレースはなかったので慶応山荘の大柿さんは入山していないらしい。
先日天気が良かったお陰かスキーは潜ることなく除雪終了点まで順調に進むと、なんだか見たことある車があった。

除雪終了点から先にはトレースがあった。運がいい。
いつもより入山期間が少し長いのでザックもその分重いがトレースのお陰でいつもより少し時間がかかったくらいでスカイライン横断地点を通過できた。
不動沢駐車場からの道を合せた先で休憩をとった。

この辺りから強まった冬型の影響がでてきたのか雪が降り始め冷たい風も吹いてきたが、樹林帯なので問題なく行ける。
トレースに助けられ山鳥山まで来られた。ここまで来るのが結構大変なのでまずは一安心。山鳥山の辺りは風が吹き抜けたためかトレースが無くなっていた。もしかしてトレースの主はこの先まで行かずに旧スキー場へ降りてしまったのかなと少し残念に思って進むとすぐにトレースが再び現れた。正直助かった。
雪が降ってきてトレースに積もりつつあるが、沈まないで済んでいる。

井戸溝への登りにかかる手前で、前方からありがたいトレースの主である単独の男性が降りて来るのが見えた。
お互い顔を見て驚く。
今シーズン何回か顔を合わせていた方で除雪終了点の車の主だった。五色沼の見える大岩まで行ってきたとのことだ。
トレースのお礼を言い先へ進んだ。

こんな天気だと誰かに会うと元気が出る。お陰様で井戸溝からの登りを頑張れた。慶応山荘入口で小屋の営業状況を見ると、「命惜しんで定休日」となっていた。
慶応山荘に着いた時刻で家形山避難小屋までの時間が概ね算出できる。明るい内に着けそうだ。

硯石からはいつも通り突然のラッセルとなるがもうすぐ小屋と思うと頑張れ、予想通りの時刻に小屋へ着けた。
今晩も乾いた床で風雪に悩まされることなく生活できる小屋は本当にありがたい。

外の様子を伺うと風も穏やかになり、天気予報でも明日は冬型が一時弱まる様な事を言っていた。明日はもっと快適な吾妻小舎泊まりだ、頑張ろう。



2月22日(晴れ夕方から雪)

風は吹いているが、冬の吾妻では普通の風だ。
雪崩が怖いがガンちゃん落としを登った。前回は強風にさらされたが今日は拍子抜けするほど穏やかな条件で家形山のトラバースを終えることができた。
普通は前大巓のコルへそのまま登るのだが、今日は東吾妻山へ登ってから吾妻小舎へ入るつもりなので前大巓の西面をトラバースして姥ヶ原へ出る魂胆だ。

谷地平へ降りた時のように大倉深沢左岸の標高1796mポイントを目指して、あとは姥ヶ原まで高度を落とさずにトラバースして行けば楽勝のはずだったが、実際トラバースを始めると、最初は調子良かったが、すぐに樹林が混んでくるようになり西面なので強風の影響をもろに受けた波打つ斜面となってしまった。

波の斜面を避けていくので時間と労力を無駄に消費していく。
姥ヶ原手前の目標地点としていた標高1798mのピョコへ着いたときはほっとした。
次に目指す予定だった東吾妻山は雲の中だった。
あっさり諦めて、前回吾妻小舎へ入ったときと同じように積雪期の東吾妻登りルートへ入って浄土平へ降りた。

スカイラインには前回のトレースがまだ残っていた。また、風で飛ばされてもともと雪がほとんど付いていなかった部分はアスファルトが見えていた。
今回も兎平から小舎へ向かった。
小舎は先週あれだけ雪降ろしをしたのに結構雪が積もっていた。

一歩小舎へ入ると少しだけ暖かさを感じる。
今日は誰もいないので、早速ストーブを点けた。一番強力にしたが元々の室温が低かったのでなかなか暖かくならない。
それでもストーブは偉大だ。夕方には室温差20℃以上上げてくれ寒さに震えることなく過ごすことができた。

ラジオの天気予報では、今晩大雪のピーク第一波がくるらしい。
モコモコさんはこの時点で縦走の短縮又は中止を呼び掛けてくる。
明日起きてから判断することにした。


2月23日(雪のち晴れ 終日強風)

朝外を覗くと雪が降っていた。
風も強いので停滞を決定した。
ゆっくり朝食をとったりしていると、晴れてきたのでまずは試しに東吾妻山へ行ってみることにした。

一歩外へ出ると、想像以上に積もっていた。
昨日のトレースは全く残っていなかった。

浄土平から登るが、ラッセルが大変でなかなか進まない。
なんと標高差たったの100m登るのに2時間近くかかってしまった。
天気はいいものの冷たい強風が始終吹いており、全く進まないし先を見ると山頂がえらく遠く見えた。心が折れた。
撤退決定。

来たところを戻るが、傾斜が緩いので全く滑らず。
少し傾斜が出ると滑ることを期待するが、下りラッセル状態だった。

吾妻小舎へ戻り、行動食としてもっていたものを食べてから軽くだが小舎の屋根の雪下ろしをした。
その晩は風もなく穏やかで、月明かりで幻想的な風景がとても美しかった。

明日は強い寒気がやってきて北日本は大荒れになるとの予報だか本当かなと思ったくらいの静かな夜だった。


2月24日(暴風雪)

昨晩の穏やかさが一変して天気が悪い。
吾妻小舎は樹林に囲まれ、山の陰で風の影響をほとんど受けない場所に建っているのに風で窓ががたがた音を立てている。

昨晩天気がよかったので予定通りいけたよとモコモコさんに文句をいったが、この荒れようにモコモコさんの言うとおりにしておいて正解だったと思った。
あのまま突っ込んでいたら、予定通りに降りられなかっただろう。それどころか普通なら1日で降りられる高山下りでさえ2日がかりで降りることを覚悟しないといけない状況となっていた。

昨日のトレースは今日も消えていた。
スカイラインまで初っ端からラッセル。

スカイラインに出てもラッセルは変わりなく、膝まで時折膝上のラッセルとなる。ほぼ平坦なスカイラインでこれだ。高山の登りになったらもっときつくなるだろうと思うと、疲れないようにこまめに先頭を交代して進む。

スカイラインが東吾妻山方向へと向きを変えたときは、山頂から吹き下ろして来る冷たい強風にさらされて辛かった。
鳥子平で一息ついてからいよいよ高山の登りだ。
傾斜が出た分ラッセルが大変になるが、樹林なので風が直接吹き付けてくることが無くなった分ましな気がした。
標高が上がり樹林の背が低くなると、強風で雪が飛ばされた状態となり大変なラッセルからは解放された。

山頂直下はさすがに風が強く小さな木の陰で息をつきながらわずかづつ進んだ。
山頂の反射板下を横ぎるときは出来るだけ樹林のそばを歩いたので風に突き飛ばされるようなことはなく通過できた。

いつも尾根の陰となり風が穏やかとなる所も今日は強風が吹き抜けているのでそのまま下降に移る。いつものことだがシールは付けたままだ。
開けた斜面は強風と雪で視界が悪いので、出来るだけ樹林帯へ入るように下降していく。

山頂からの強い吹き下ろしの風でとても寒い。
やっと緊急そり置き場に着いたところで休憩した。
寒気と低気圧に寄る悪天に追いかけられているようで、東へ進んでも標高を下げてもどんどん寒く雪の降りが激しくなってくる。

前回は殆ど迷うことなく進めたった10日前に通った所であるが、今回は完全に距離感が狂ってしまったようで迷いながら下りラッセルをすることになった。
冬ルートだと下りラッセルになりしかも迷いやすいので、夏路通りに早目に尾根に乗ることにした。
これが正解で尾根上は風で雪が締まっており、ラッセルから解放された。

やっと冬ルートが夏路に合流してきたところまで辿り着いたが、これからまた下りラッセルとなる。
このペースは昨年えらく時間がかかったときと同じペースだ。本当に今日は幕営になりそうだ。重くなるが一番暖かいシュラフを担いできて正解だったと思った。

早目にいい幕営地を探さないといけないなと話しながら交代で下りラッセルをしていく。晴れていたら市内を一望できるはっきりと尾根状になるところで既に14:30。
いつもだったらとっくに林道に出てかなり進んでいる時間だ。
林道に16:00までに出られなかったら幕営だなと覚悟を決めたところで、このときは先行していたモコモコさんから、「亀裂?この時期こんなのできてるのなんて初めて見た。」となんだか変な言葉がでた。

モコモコさんが代表して近づいてみるとありえない言葉が聞こえた。「トレースだ!!」
幕営を覚悟していた我々に救世主現わる。
トレースは標高を下げていた辺りなのでまだ寒気の影響をさほど受けておらず綺麗なままだった。

トレースに乗ってみるとこれまでの苦労が嘘のように良く滑る。
一気に距離と時間を稼いだ。
トレースは我々がいつもとるボブスレーコースを外して降りていた。一瞬迷ったがトレース跡の方が滑るからいいだろうと後を追うことにした。
途中混んだ植林帯では少し苦労したが、無事林道に降りることができた。

ここでやっとシールを外していくことにした。
シールを外してワックスを塗ってと作業していると、気温がどんどん下がり雪の降りが激しくなってくる。

本当に寒気と追いかけっこをしているようだった。
土湯温泉に無事到着できた。前回入ろうと楽しみにしていた錦滝旅館のお風呂を今度こそと楽しみにしていたが今日もお風呂はだめらしい。
前回下山連絡を雅子さんにしたときに、錦滝は3月一杯で営業終了するとのことを聞いていたのでせめてあともう一回だけでもと思っていたのでとても残念だった。
 ちなみに福島駅の極楽湯も今年の3月で営業終了ということで、どこでお風呂に入ればいいのだろうといまから悩ましい。

 パッキングをしている間にも雪の降りが強くなってきたので、待合室があるのが助かった。雅子さんへ下山連絡を済ませたりしている内にバスが到着した。
 雪は更に強くなり、バスに乗るときに降りる人を待っているわずかな間に荷物に雪が積もっていた。
 バスの運転手さんによると、駅周辺は地吹雪状態だったとのことで予定よりも到着が遅れるかも知れないとのことだった。途中乗ってくる人は皆雪だるま状態になっていた。

 ほぼ時刻通り福島駅に着いた。
 新幹線の時間までにお風呂とお弁当の買い出しを済ませて駅へと向かうとなんだか既視感。
 そう現実の時刻と、発車案内の表示が合っていない。以前強風で新幹線に遅れが出ていた時と同じ雰囲気だったのだ。
 東北新幹線は大丈夫だろうと思っていたが、この寒気で遅れがでていた。山形新幹線は・・・・既に息をしていないらしい(運行中止)。

 予定よりも1時間程遅れて我々の乗る新幹線が到着した。
 郡山駅に着くと驚くほど雪の降り方が弱く、新白河辺りでは雪は降っていなかった。しかしながら、計画通りに進んでいたら我々が乗るはずだった磐越西線は運休していたので、無事に降りてもどこにも行けず駅前で幕営できたならましで幕営地を探し求め続ける難民という最悪の状態になっていたかもしれなかった。
 
 大風呂敷を広げたものの結果として高山下りということになってしまったが、色々と勉強になった山行だった。
 余談だが、高山下りの救世主はなんと初日に出会った方だったということが後日判明した。
この場でお礼申し上げます。ありがとうございました。

トレースに助けられて山鳥山まで来た 井戸溝の橋が綺麗に埋まっていた
寒いが風雪のお陰で樹林が綺麗 硯石からの尾根に雪庇ができていた
相変わらずひっそりとしていた ガンちゃん落とし上部 青空が見えてうれしい
五色沼と一切経山 今日は風も穏やかだ トラバースは混んだ樹林と波打つ雪面で時間がかかった
小舎の裏側の屋根の雪 結構積もっていた 天気はいいが撤退。
微力ながら雪下し 高山山頂直下
いつもならここから快適に滑るところだが・・・ 横殴りの雪の中、林道に無事到着



活動記録に戻る

トップへ戻る