山域 南会津
コース 小豆温泉〜三ツ岩岳〜ミチギノ沢右俣(下降)〜御神楽沢〜会津駒ケ岳〜桧枝岐
〜台風一過の沢は豪快だった〜
日程 2013年9月14日〜19日

 本当に今年は季節を問わず、週末に当てるかのように悪天候になっている。
 9月に入ってからは台風までやってくるようになった。今年の一大イベントとして、南会津の沢の遡下降を計画していたが断念することとなってしまった。
 本当に腹立たしいが、天気には勝てない。
 幸い、台風の後は晴天が続くらしいので、計画の一部に組み込まれていた御神楽沢のみを遡行することにした。
 

地形図;内川、高幽山、会津駒ケ岳、桧枝岐

アプローチ
浅草駅6:20−会津高原尾瀬口駅9:25/9:50−小豆温泉10:48

コースタイム
 9月14日(晴れ)

小豆温泉11:17〜黒桧渡渉点11:57〜尾根コース分岐13:59〜三ツ岩小屋15:59
 9月15日(雨のち晴れ)
三ツ岩小屋13:39〜三ツ岩岳14:15〜三ツ岩小屋14:48
 9月16日(暴風雨夜曇り)
停滞
 9月17日(晴れ)
三ツ岩小屋7:17〜三ツ岩岳窓明山鞍部7:44〜ミチギノ沢1202m二俣10:50〜御神楽沢出合14:03
 9月18日(晴れ)
BP6:57〜御神楽沢出合7:01〜岩畳8:34〜10mナメ滝9:29〜ムジナ窪沢出合手前BP15:40
 9月19日(晴れ)
BP6:51〜1750mの二俣8:25〜会津駒ケ岳12:07〜駒ケ岳登山口14:42〜バス停15:00


9月14日(晴れ)
コースタイム;小豆温泉11:17〜黒桧渡渉点11:57〜尾根コース分岐13:59〜三ツ岩小屋15:59

結構通いなれてきた会津高原行の快速でのアプローチ。
今日は一日いい天気らしいが、明日・明後日と前線と台風の為悪天候になるのが確実なので停滞も確実。
駅のお土産屋さんでていたん分のアルコールを追加で仕入れて、登山道ならもう少し荷物を重くしても大丈夫、というモコモコさんに荷揚げをしてもらうことにした。
今日の天気はいいので、バスにはそこそこ乗客がいた。

我々は登山口となる小豆温泉バス停で下車した。
バスを降りたところには広場があり、三ツ岩を登る人達のいい駐車場となっている。3台ほど駐車されていた。
登山届入があったが、予め計画書は県警に送っておいたので体操をしてそのまま出発。今回の御神楽沢は、岩盤が発達しているので、アクアステルスのソールで挑んだ。モコモコさんは、ぬめっているといやだし慣れているからということでフエルトでの入山。

この登山道を黒檜沢の下山で通ったことがあるが、スノーシェッドの上を歩くのと、途中にヤマネちゃんの死骸があったことしか憶えていなかった。
そのため、取り付きからわからなかったので珍しくモコモコさんの記憶が役に立った。
スノーシェッドの上を歩いてから登山道へと取り付くため階段を登ると、土の道となった。
2011年の水害の影響がまだ残っている所もあり、途中大きく崩壊した斜面や水が流れたあともみられたが歩くには全く問題はなかった。
台風の影響で蒸し暑くて水の消費が激しかったが、黒桧沢渡渉点までは冷たい水が湧きでていたり小沢を何か所も横切るので不自由しなかった。

黒檜沢渡渉点では沢床まで階段を使って登り降り出来るようになっているが、水害の後ここを通ったという方に聞いていた通り階段が見事に削られて2〜3段分が単なるコンクリートの斜面になっていた。
渡渉が終わると黒桧沢から離れ高度を稼いでいくようになった。
渡渉点で水を汲んでおかなかったので、水が無くなってきた。
地形図をみると、尾根を回り込んでから沢の源頭を横切るように道が付けられているので恐らく水はそこで汲めると思ったが、もしだめな場合は水無しで敗退となる危険がある。
そこで完全に尾根に乗ってしまう前に小沢を降りて水を汲んでくることにした。かなり降りないといけないような状態だったが、運良く枝沢から水が流れ込んでいたのであまり降りなくて済んだ。

少し急登をして尾根を回り込むと、黒桧沢の支流を見下ろすことが出来るようになった。
ここからは高度を上げながらのトラバース道だ。しっかりと踏まれていて歩きやすかった。

ふうふういいながら登っていくと、うれしい発見。ブナハリタケが出ていた。思わぬ収穫に「ブナハリタケだ!!」と喜びの声を上げたが、小屋に着くことしか考えていないモコモコさんは黙々と先へと登って行ってしまった。
単独で収穫をして後を追った。その後もう一か所収穫できたところがあった。

懸念の水だが、トラバース道では、よほどの渇水でなければ枯れることはないと思われる小沢を地形図で読める通り数本渡るので、水筒いらずだった。お陰で喉の渇きとは無縁で無事尾根コースとの合流点に到着した。
ここからの標高差がおよそ500m、分岐に設置された案内図では分岐-小屋間のコースタイムが100分となっていた。我々の力では重荷を担いでいることもあり100分を越えるなと計算した。

これまでの緩やかな傾斜から本格的に登りにかかった感じだ。
暑いので汗がだらだら落ちてきた。

標高1600m辺りになると、暑いだけでなくバカ虫までまとわりついてくるようになって鬱陶しさが増した。
早く小屋へ入りたい。それだけを思い登っていくと、やっと傾斜がゆるんできた。
小さな湿原が出てくれば小屋は間もなくだ。

小屋は針葉樹林帯の中にひっそりと建っていた。
水が確保できるかが心配だったが、小屋直前の登山道に水の流れがあった。ということは水が出ているはずだということで心配もなくなった。
今晩は快適な夜が過ごせそうでうれしさがこみあげてきた。

前回は、小屋の中を覗いたときに暗くて外の方が気持ちが良いと中に入らなかったが、実際中に入ると、観音開きのガラス窓の外側に同様に観音開きの雨戸があり、どちらも開けられるので中を明るくすることができた。
明るくしてみると、とてもきれいだった。

荷物を降ろして早速水汲み。流れ自体はとても細いが、つめたくて美味しい水だった。
顔を洗ってさっぱりしてから夕食の準備に取り掛かった。
初日分だけだが、保冷材代わりに缶チューハイを凍らせたものを隠し酒としてモコモコさんが持ってきており、それで早速乾杯した。暑くて汗だくになった今日はとても喉に沁みておいしかった。
収穫したブナハリタケは、油で炒めてしょうゆで味付けをしただけだがとても香りが良くて歯ごたえがあっておいしかった。
これからの雨でどうせダメになるのだから、もっと取ってくれば良かったと後悔した。

今後の日程を考えるとお酒も節約しないといけないので、早目に休むことにした。
明日の午前中は天気が悪いので、特に起床時間を決めることなく眠りに就いた。


9月15日(雨後晴れ夕方からガス)
コースタイム;三ツ岩小屋13:39〜三ツ岩岳14:15〜三ツ岩小屋14:48


何時頃からかは憶えていないが、天気予報通り夜間から雨が降り始めた。
目が覚めてからも雨は続いていた。予定通りに停滞決定、二度寝した。

雨は全くやむ気配がなく、時計と無縁の生活を送ることになった。要するに、お腹がすいてきたら食事をとり、またシュラフに包まってゴロゴロしたりして過ごした。
こんな天気では誰もこないよなーと、のほほんとしているといきなり登山者が現れた。こんな天気でも登ってきたことに驚いた。
地元の方で、小屋で少し休んだ後山頂ピストンへと出かけていった。雨は少し小降りになったかと思うとザーッと音を立てて降ったりと外に出るのもいやになる天気だ。
それでもお二人は山頂をしっかりと踏んで、昼食をとった後下山して行った。余談だが、お二人のザックには例のブナハリタケで膨らんだビニール袋がしっかりと収まっていた。あーあ、本当にもう少し収穫しておけばよかった。

お二人を見送った後再びゴロゴロしていると、外が静かになり更に明るくなってきた。
今日の天気予報では、午後一時的に回復すると言っていたがここも例外ではなかったらしい。念のため携帯(小屋から繋がったDocomo)で雨雲の様子を見てみると周辺には雨雲が全くかかっていなかった。山頂往復している間は雨の心配はなさそうだ。
急いで支度をして山頂ピストンへと出かけた。

登山道には水が流れている所もあったが、沢靴なので問題なし。
最初は樹林帯、だんだん灌木帯になると湿原が出てきたりと、傾斜はきつくないがなかなか変化のある楽しい登山道だった。
登っていくにつれて日差しも出てきた。
山頂に着くに合わせて晴れた。
遡行した黒檜沢や、会津駒ケ岳方面へと続く稜線がきれいに見えた。

景色を堪能して下りにかかった。
小屋に戻り、明日は一日中暴風雨の荒れた天気になるらしいので、水汲みを明日の分までして落ち着くことにした。
夕食の支度をしているときに窓枠に小さな茶色の鳥(ミソサザイだと思う)がやってきてなんだかうれしかった。
日が陰ると一気に気温が下がってきた。

昨日同様節約しながらだが、お酒を飲みながらつまみをつまんだりして夕食を済ませた。


9月16日(暴風雨夜曇り)

当たってほしくない予報ほど良く当たる。
ラジオで何度も注意喚起していた台風がとうとう接近してきた。
当初の予報では、台風は関東をかすめてから太平洋に抜けるものだったのが、東日本縦断ツアーをすることに決めたらしい。本当に迷惑な台風で、朝起きてラジオを付けると、いきなり近畿地方で災害をもたらしていたというニュースが流れた。

こちらも結構な雨が降っている。まだ遠く離れた場所で台風そのものの雨でないのにこれだけの降りだ。小屋前の登山道は既に沢の状態だ。出発前夜は、小屋で台風をやり過ごすと言っていたモコモコさんに反撥して少しでも進むことを主張したが、今回は言うことを聞いておいて正解だった。

日差しが無いため小屋内はひんやりしていて寒いので、昨日同様時計とは無縁の生活を送ることにしてシュラフに包まりゴロゴロして過ごした。
10:00頃にお腹がすいてきたので、朝昼兼ねてラーメンを食べた後は再びシュラフに包まってゴロゴロして過ごした。
しばらくするとモコモコさんが騒いでいた。
なんだなんだと起き上がると雨が吹き込んできていた。原因は2階の冬季用入口を兼ねた小窓が風で少し開いてしまったらしく、そこから吹きこんでいるようだ。
2階に上がり窓を閉めたが、どうも閉まりが悪くすぐに開いてしまう。
更に窓枠と壁との隙間からも強風で雨が入り込んでしまっているようだ。

そこで、窓が開かないように小屋内にあった雑巾タオルを挟んで固定した。
次に雨が入り込んでくる隙間には、荷づくりテープが小屋にあったので、テープを隙間に詰めてふさいだ。
どうやらこの対処がよかったようで、雨の吹き込みは治まった。

雨は益々強くなり、とうとう台風は福島県への上陸が決定したらしく、近くの南会津町には土砂災害警戒の警報がでてしまった。
早く行ってくれないかなと祈りながら早目の夕食の支度にかかった。
うす暗くなった頃ようやく雨も治まってきた。
風は強いままだ。
今晩の内に沢の水も引いてくれることを祈りながらシュラフに包まった。


9月17日(晴れ)
コースタイム;三ツ岩小屋7:17〜三ツ岩岳窓明山鞍部7:44〜ミチギノ沢1202m二俣10:50〜御神楽沢出合14:03

待ちに待った高気圧がやっと来てくれた。
冷え込んでとても寒かったが、これからの好天気が約束されているかと思うと起きることができた。

3日もお世話になった小屋の掃除を済ませ、昨日施した雨漏り対策を外して元の状態に戻してから出発。
本当に小屋には感謝だ。

昨日沢のようになっていた登山道も平常に戻っていた。
最初に窓明山との鞍部にある湿原を目指して歩いていく。
湿原は、地形図通り小さなピョコを越えたすぐ先にあった。

ミチギノ沢へはこの湿原から下降を始めた。
笹藪を少し漕いで行くとすぐに窪が現れ水流も出てきた。
ヤブっぽいところもあるが、思ったよりもすっきりしていた。

右に左に小さな小沢を合せていき、あっというまに立派な沢になっていくのを体感しながらどんどん下降していった。
左俣のときもそうだったが、この沢はガレッぽく途中モコモコさんはガレに足をとられてバランスを崩して派手に転倒していた。このときにふくらはぎを打ったようで痛そうにしていたので、少し荷物を背負ってあげることにした。

下降を続けていくと、浮き石は多いもののガレはなくなってきた。
天気もよくて日が差し込んでくるようになってきてうれしい限り。さらにうれしさが増したのが、今日も見つけることができたブナハリタケ。
昨日の暴風雨でもしっかりしていたので、今日は心残りのないように2人で収穫した。

荷物は多少重くなるが、気持ちは明るくなった。
だんだん沢幅が広がるにつれて岩盤も発達してきて楽しい下降となった。
右俣は、安越又沢を乗り越して下降する左俣よりも渓相がいいと思った。
傾斜が緩んでゴーロ歩きが始まると1200m付近の二俣だ。

ここから先は下降したことがあるが、ゴルジュがあった程度の記憶しかないのでほとんど初めてに近い状態だ。
すぐに沢は狭まりゴルジュとなる。
傾斜自体は緩いので大きな滝はなく、滝がでてきてもクライムダウンできた。
淵はバンドが上手い具合に張り出していることが多く、泳いだり浸かったりはほとんどないが、昨日までの大雨で増水している沢は迫力があった。

一度ゴルジュが落ち着くと一旦開けたが、2011年の水害で大きく流された形跡があった。
ゴルジュで少し体が冷えたので、長めに休憩をとった。
この時点では、御神楽沢へ入って少しでも進んでおこうと思っていた。

出合まではわずか700m程の距離であるが、再び沢は狭まり以外と時間がかかった。
下降できない滝を右岸から巻いくために岩棚に乗り上げた所で、そういえば前回もこんなことしたなと思いだした。
しかしその先を憶えておらず、少し行ったり来たりを繰り返してしまった。
結局最初下降しようとしたルンゼから降りることにし、枝を使って5mほど降りると捨て縄があったので懸垂下降した。

巻いたのはここだけで、後は順調に出合に到着した。
前回泊まった、多少の増水はやり過ごせて少人数ならば快適な泊まり場となっていた高台は、噂通り水で崩されてしまって泊まれるような状態ではなかった。
先へ進むことも考えたが、御神楽沢はミチギノ沢より大きいだけあって増水していることもあり水量が多いので、この先進むのは時間がかかりそうだ。少し早いが行動を終了して出合い付近で泊まることにした。

手分けして泊まれそうな所を探した。
モコモコさんは本流の出合から下流まで見てみたが、泊まれそうでも暗くて不快な感じで成果なし。
結局、ミチギノ沢の右岸に、出合から50m程上流にブルーシートが流されずに残っていた所に戻り、少し上の樹林へ上がると二人なら横になれる藪の薄いところがあったので、今晩の宿に決定した。
恐らく大出水前はこの下がいい泊まり場だったのだろう。
二俣より下の右岸にいい所があった憶えがあるが、正確な場所までは憶えていないのでここのことか、長い休憩をした所にもあったのかはわからないままだった。

数年前に同じ時期に奥利根へ行った際、とても冷え込んだ記憶があったので今回はツエルト持参できた。
日が陰ると途端に気温が下がっていったので、ツエルトを持ってきて正解だった。また、焚火のありがたさが身にしみた。
収穫したブナハリタケのお陰でおかずが増えてうれしい夜だった。


9月18日(晴れ)
コースタイム;BP6:57〜御神楽沢出合7:01〜岩畳8:34〜10mナメ滝9:29〜ムジナ窪沢出合手前BP15:40


放射冷却によるものかとても冷えた朝だった。
あまりにも寒いのでツエルトの中で朝食をとった。

ミチギノ沢はあまり水量が変わっていない様子だ。
御神楽沢出合まで50m程下降するが、単なる河原歩きでも水が冷たく動きが固くなってしまう。
御神楽沢は増水したままだったが、それでも昨日よりも5cmは減水していた。

御神楽沢は北面の沢で日も差し込まないので、寒いくらいだ。
いきなり登れない滝が出てくるが、右岸の岩棚から少し登るとはっきりと踏み跡があるので全く問題なく越えられた。

その後も、高低差がほとんどないので滝は少ないが、河原はほとんどない。岩盤が発達しているので、へつりと渡渉を繰り返していく。
水量が多く、見た目より流れが速くて太いので渡渉の場所は慎重に選んだ。
大きな釜を持つ5m幅広滝は、水流沿いを簡単に登れたが、水が冷たいので指がかじかんだ。
少し沢が開けたときは、沢床にまで日が差し込む所があったのでほっとした。

再び沢が狭まり淵の先で直角に右に曲がった先にかかる小滝は、右壁に残置スリングが掛っており平水ならば問題なく越えられそうだが、今日は水量が多くモコモコさんにはきつそうなので淵の手前で入る小沢から小さく巻いた。

すぐにでてくる2つの滝を難なく越すと、逆くの字滝10mが出てきた。
滝の左壁が階段状になっており快適に登ると、とうとう御神楽沢のシンボルとでも言うべき岩畳に着いた。
長さは短いが、ナタでスッパリと割ったような溝を勢いよく水が流れており見事だ。
この岩畳、なんでもつい最近までこの溝に大岩が詰まってしまっていたとのことであるが、今回は溝の入口に大岩が鎮座している程度で、溝に詰まった岩はきれいに流されていた。ほぼ復活したといってもいいかと思う。

岩畳を抜けるときれいなナメが続き、V字谷となった沢に日が当たって暖かくなって気分も上々となった。
ナメを楽しんでいくと豪快な音をたてて落ちる2段20m滝だ。
釜の出口を右岸に渡り段差のある壁を登りバンドの上へと這い上がる。モコモコさんにはお助け紐を出した。後から登ってきたモコモコさんによると途中に残置ハーケンがあったとのことだ。
この一登りを頑張ると、枝沢を登り落ち口までは簡単に出られた。あまりにも迫力があるので、落ち口の水流間際まで近づいて覗いてみた。ものすごい勢いで、厚く流れ落ちる水流に引き込まれそうな迫力だった。

少し沢が開けたのも束の間、すぐにゴルジュ状に戻り、これまでにない豪快さでかかっている滝が前方に見えた。
この沢の最難関といわれる10mスラブ状大滝かな?と言いながら遡行していく。
スラブ状大滝手前の前衛の滝とも言える、くの字状の淵を持つ8m滝は、水面下にあるバンド上をへつっていき左壁を登った。この滝のすぐ先が、やはりこの沢の最難関といわれる10mスラブ状大滝だった。
下の滝はスラブ状の右壁を登り、水量が少ないと左に水流を越えて渡って左壁を登っていけるらしいが、平水でも無理といわれているルートなので増水している今日はそんなことは考えもつかない迫力だ。
1段目のスラブ状は容易。
2段目は直瀑で登れないので右壁の残置スリングが見えるところから取り付いた。短いながら垂直に近いのでザイルを出した。

ここが思ったよりも段差があった。上に残置スリングが下がっていても、重荷だと少々面倒そうなので空身で登ることにした。

スリングを掴むことが出来ればほぼ突破できたようなものだが、その先数m草付きを登らないといけないのでまだ気は抜けない。
岩が露出しているところまで登り、さらにしっかりとした灌木帯まで登り、ここでザイルを固定した。
次にモコモコさんに登ってきてもらう。やはりスリングになかなか手が届かないため掴むのに苦労したようだ。

モコモコさんを迎え入れてから、懸垂下降をして荷物を取りに行った。登り返しはザイルをゴボウで強引に登った。
荷物を回収して戻ると、今回フエルトで来たモコモコさんはピンソールを装着していた。なんでも、草付きが雨の後でやたらに滑ったので下降に備えたとのこと。
しかしそれは杞憂に終わることになった。ザイルを仕舞って下降を始めたところ、安定した斜面を数m降りるだけで滝上の大岩の上に簡単に降り立つことができた。

この巻きを済ませてしまうと、沢は一変して開けて穏やかになり、まるで湯檜曽川の十字峡付近のような渓相となってナメやナメ滝が数多く現れるようになってとても楽しい。
ちょうどお腹もすいてきたので、大休止することにした。30分程休んだ所で再出発。
まだまだナメやナメ滝が続いていく。一か所ナメ滝の上右岸の岩からキバのように水が出ているところがあって面白かった。
珍しく狭まったトイ状の滝は、右岸を巻いたが下降のときに念のため懸垂下降した(残置スリングあり)。懸垂しなくても上手く降りられるようだった。

特に困難な所もなく進んでいくと両岸が開けてゴーロ歩きになってきた。
ゴーロ帯が結構長かったので、しばらく歩いて再び傾斜がでてくる標高1384m付近のところでまたもや大休止。

思った通り、滝を掛けてくるようになるが簡単に越えて行けるので逆に楽しい。そして50mナメ滝。
落ち口までは水流左のスラブ状を快適に登っていけた。落ち口では段差が大きく外傾しているので、フエルトのモコモコさんにはお助けを出した。
50mナメ滝の上はナメ、連瀑帯となりやがて巨岩帯へと変わっていった。
滝は快適に登っていけ、逆に巨岩の方がルートを見つけるのに時間がかかったような気がした。
再び連瀑帯を順調に越えると一気に穏やかになった。どうやら巨岩と連瀑帯は終わったらしい。

ここまでくれば、今日残った課題は10m直瀑の滝のみだ。
側壁が高くなってくれば10m直瀑滝だ。
滝手前のルンゼに取り付くのに水に浸かることになるのが辛かった。
ルンゼは最初は登りやすかったが、後半ニュルニュルなのでモコモコさんにはザイルを出してさらにピンソールを着けてきてもらった。
この巻きでは踏み跡があるらしいのだが、我々はなるべく低く巻きたかったので落ち口すぐ脇から張り出している岩を乗り越す形になるように棚へ直接登るようにルートをとった。

ザイルを仕舞う前に下降点を偵察してみた。
落ち口の方へ少し移動すると水面が割と近くに見えた。どうやらザイルなしで降りられそうだ。
下降する斜面にはしっかりと灌木が生えており、さほど傾斜も強くないので確保なしでほぼ落ち口上に降りることが出来た。

ほっとした所で、今日の泊場を探しながら歩くことわずか。整地された絶好の場所が現れた。
即座に行動終了決定。
巻きの時に大量のバカ虫を引き連れてきてしまったので鬱陶しい中、泊まる準備を整え焚き木集めにとりかかった。
しかし、薪にする流木は流されてしまったのかもともと少ないのかは分からないが、とにかく薪が無い。
周辺の立ち枯れたような木は片っ端から切り取られていたので、もともと薪に乏しいのかもしれない。
ほぼ諦めていたが、モコモコさんの執念でなんとか一晩分の薪を集めることができた。

標高が比較的高いのになぜか針葉樹の薪がないので、着火するのにかなり時間がかかったが、夕食の準備に本格的に入った頃には安定してくた。
昨日以上に冷え込んでタープにはあっという間に露がびっしょりついた程だったが、たき火は偉大だ。冷えた体を温めてゆっくり眠ることができた。


9月19日(晴れ)
コースタイム;BP6:51〜1750mの二俣8:25〜会津駒ケ岳12:07〜駒ケ岳登山口14:42〜バス停15:00

穏やかな天気が続いてくれ、しかも明日は十五夜ということもあり月明かりで影が出来るほど明るい夜だった。
いよいよ下山日。できれば14:50発のバスに乗りたいものだ。

できるだけ早立ちしたいが、やはり寒いので結局7:00の出発。
ただでさえ寒いのに水に足をつけるととても冷たく、足指がかじかんでくるほどだ。
すぐにムジナ窪沢を合せて更に中門岳からの沢が左岸から出合うまでしばらく源流部のような河原歩き。

中門岳からの沢との出合から先は、連瀑帯となった。
いずれも快適に越えて行けるので、水の冷たさも少し忘れられた。
どれが何m滝などと野暮なことは言わず、ひたすら滝登りを楽しんでいると、とうとう今日の核心部電光形の滝だ。
3段(4段にも見える)の滝がまさしく稲妻のようにかかっており、上手い名をつけたものだと感心した。

下から2段目の途中(4段だとすると下から2段)は右壁を簡単に登れた。
その上は、水線右のカンテ状の岩を登るが、濡れているのでお助け紐を出した。
登り自体は簡単だが、傾斜が緩んでから幅50cmほどの濡れた岩を数m平均台のように歩かなくてはならなく、重荷を背負っては危険な感じなので跨って移動した。
モコモコさんも無事クリア。ちなみに、山人は気が付かなかったがモコモコさんは途中残置ハーケンを見たそうだ。

電光形の滝の上には更に黒くぬめった2段5m滝がかかっていた。これは登れないので水流を跨いで右岸に移り、電光形の滝落ち口左のバンド状の岩棚へ登って巻きあがることにした。
バンドには簡単に上がれたが、巻くためにはもう一段上に上がらないといけない。それにはバンドを一旦下流方向に2mほどトラバースする必要があるが、ちょうど手掛かりが乏しくなる所で岩が張り出しており体を外に振り出すような感じになる。さらに足場として一番欲しいところは一段下がるか跨ぐことになり慎重さが要求された。

バンドをトラバースできればもう一段登るのは手掛かりがあるので問題なかった。
高さはそれほどないが、落ちればそれなりのダメージがあるのでモコモコさんにはお助け紐を出した。
張り出した岩の通過でやはり苦労していたようだが、無事登ってきた。紐を外したモコモコさんにはそのまま進んでもらって先の様子を見てもらい、行けそうなら笛で合図をしてもらうことにした。

笹藪の中へガサガサと入っていって間もなくでOKの笛の音が聞こえたので、後を追った。
なんとも楽ちんな下降で、ササヤブを数m進むと、5m滝上に張り出している岩に直接乗ることができた。そのまま岩を登って上段も越えられた。
沢は、ゴルジュ状で日が全く差さないのでとても寒く水が冷たいが、核心を越えたことで気持ちが楽になった。
右に直角に曲がる所にかかっている5m滝を左から登ればゴルジュ終了だ。

小滝を数個越えていくと1750mの二俣だ。
この二俣は小さいが両門の滝をかけて出合っていた。右俣に入り小滝を越えると日当たりが良いところがあったので休憩した。
お日様の力は偉大だ。それまで足指が冷えを通り越して痛くなっていたのが温かさを取り戻すことが出来た。
2段4m滝は登れそうだったが、一度水につからないと取り付けないので直登は遠慮して、隠れ階段のようになっている手前のルンゼから登るとちょうど滝上にバンドが続いており濡れずに簡単に越えることが出来た。

これで越える主要な滝はほぼ終了だ。
1850mの二俣は左に入り、1980m付近で一度右沢に入ったがすぐに水涸れとなってなんだか違う気がすると行ったり来たりしてしまった。結局一番開けている左沢を進み窪が別れるときは右に右にと入って行ったが、どんどん会津駒ケ岳に東寄りまたは山頂に出てしまいそうになった。
そこで窪が途切れたら、笹藪で大変だがヤブが薄そうな所を右にトラバースし窪が出たらしばらく登り途切れたら右にトラバースを延々と繰り返した。
悩ましいのはハリブキだ。行こうとする方向を塞ぐかのように生えているので2人ともハリブキ攻撃に悲鳴をあげることしばしばだった。
木イチゴが豊富だったのには救われた。

登山道は見えるのだが藪でなかなか進めない状態を我慢していると、なんとかまた窪に入ることが出来たので、窪を登っていくことにした。登りり始めてわずかでいきなり湿原に出た。
やったと思った途端「うわっ」と声を上げてしまった。
なんと湿原にウエーダーが放置されており、それが死体に見えたのだ。なんでこんなところに放置したのか理解不能だ。
湿原を少し登ると木道にすぐに出られた。どうやら会津駒ケ岳山頂から中門岳へ向かうと最初にでてくる湿原に飛び出たらしい。

休憩をとることもなく山頂へと向かった。
山頂には立派な道標が建っており、予想をはるかに超えた沢の素晴らしさに感謝し思わず手を合わせてしまった。
記念撮影をして下山にかかった。
会津駒ケ岳はさすがに大人気で、平日であるにも関わらず小屋前のベンチには団体さんが休憩しており、我々の他にも下山する人数名、更に登ってくる人にも10名程は出会った。

沢の中ではあれだけ恋しかった太陽も、下山になると「あの、もう少し控えていただいても・・・」となり、暑いので半袖シャツに着替えた。
最初は順調に降りていたが、重荷の為か右ひざがとても痛くなりペースダウンしてしまった。
登山道に出たときは14:50発のバスに間に合うと思っていたが無理そうだ。
次のバスに乗ろうということでゆっくり下りた。

長いなーと思いながら膝痛を我慢しながら下っていくと、先行していたモコモコさんから「道路だ」とうれしい知らせ。
やった、これで少し楽になる。
やはり段差がないと膝も楽になる。
しかし途中のペースダウンが大きく響いて、バス停に到着したのは15:00だった。

駒の湯までもうひと歩きして汗を流した後、さらに歩いてお蕎麦屋さんへ移動したが、折角歩いてきたのに無情にも「本日終了」となっていた。
これにはがっかりだ。バスの時間までまだあるので、少し戻った所にある酒屋さんでビールとおつまみを買って時間を潰した。
会津高原駅の売店で何かを仕入れようと思ったが、そこも終了しているのではといやな予感がした。
思った通り、売店も締まっておりお腹をすかせて帰ることになった。

最後の最後で食事にありつけないという少し残念なことが起こってしまったが、全体を通じていい沢旅になったと思う。
また、御神楽沢は水量が多いこともあって迫力満点の楽しい沢だった。今度は渇水のときにのんびりお気楽にもう一度行ってみたいと思った。


階段が削られていた ブナハリタケ
分岐にあった案内図 お世話になった三ツ岩小屋
三ツ岩岳山頂は目前 山頂から会津駒が岳へと続く稜線が見えた
以前遡行した黒檜沢が見えた 登山道に水が流れる
台風一過の朝 窓明山との鞍部にある湿原が見えた
湿原から下降開始 ミチギノ沢右俣は左俣より岩盤が発達している
1202m付近二俣 二俣から下はゴルジュとなる
大雨の後で増水して白く泡立っている 岩がバンド状になっているので水線通しで下降できる
水量が多いので迫力があった 巻き気味に下降した
こんな水量なので時間がかかった 巻き降りた滝(モコモコさん沢床へ下降中)
ミチギノ沢御神楽沢出合から下流方向 昨日より5cmは減水したがまだ水量が多い
平瀬に見えるが水圧が強い 落差が小さい滝でも迫力がすごい
上から見たところ 水流沿いを簡単に登れた5m幅広滝
水線通しの突破はあきらめた 今日のこの水量では巻いて正解だった
日が当たっているともっときれいだろうな 飲みこまれそうだ
逆くの字滝10m 御神楽沢のシンボル 岩畳
少し前まで岩が詰まっていたらしい 岩畳を抜けると日当たりがよくなった
豪快な2段20m滝 落ち口に立ってみた
青く澄んだ水 再びゴルジュ状になった
淵をへつっていき、左壁を登った 登ってから覗いてみた
10mスラブ状大滝 大滝の上はナメが続く(その1)
大滝の上はナメが続く(その2) 天気が良くて最高
滝上の岩から2条の水流が たまにはこんな所もでてくる
上から 50mナメ滝
ナメ滝の上にもまだまだナメやナメ滝が続く しばらく巨岩帯
倒木のかかった連瀑帯を過ぎると・・・ 10m直瀑
10m直滝落ち口に巻き降りた 滝上は一変して穏やかな流れ
幕営地 薪が極端に乏しい 連瀑帯に突入
快適に越えていく 電光形滝
2段5m滝を越えた所 5m滝
1750mの二俣で右俣から左俣を見た ヤブ漕ぎをして湿原に出た
燧ケ岳を見ながら下山開始 途中の小湿原



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