山域 志賀高原
コース 野反湖〜三壁山〜赤石山〜岩菅山〜切明温泉
〜魚野川を見下ろしながら〜
日程 2013年10月13日〜15日

 久しぶりに谷川連峰をじっくり歩こうと思ったが、初日は北風がとても強く、15日は台風の影響で余り天気が良くないらしい。
 迷った挙句、魚野川や雑魚川外ノ沢を遡行した時に詰め上げた志賀高原を歩いてみようということになった。ここならば、森林限界上を歩く部分が少ないので強風でも行動が出来るだろうと読んだ。
 急遽決定したので、情報を集める余裕もなく、持参した登山地図は昭文社が2001年に発行した古い山と高原地図。なんだか奥秩父のときを思い出させるような・・・・・。
 
データ アプローチ
東京駅6:08-高崎駅6:58/7:25−長野原草津口駅8:51/(タクシー約1時間 約11500円)〜野反湖

コースタイム

10月13日(くもりときどき晴れ 強風)
野反湖10:16〜三壁山11:40〜カモシカ平12:26〜大高山13:11〜五三郎小屋分岐14:28〜オッタテ峠15:00/15:36〜オッタテ峰15:55〜ダン沢ノ頭登り口辺り16:30(幕営地@)
10月14日(晴れ)
幕営地@5:10〜ダン沢ノ頭5:32〜湯ノ沢ノ頭6:27〜赤石山7:29〜金山沢ノ頭9:29〜岩菅山11:49〜裏岩菅山11:50〜中岳14:13〜烏帽子岳14:50〜最低鞍部手前の切開き15:39(幕営地A)
10月15日(くもり)
幕営地A5:30〜笠法師山先の広場7:22〜切明温泉9:42〜国道分岐で車に拾われる9:55-和山温泉バス停


10月13日(くもりときどき晴れ 強風)
コースタイム; 野反湖10:16〜三壁山11:40〜カモシカ平12:26〜大高山13:11〜五三郎小屋分岐14:28〜オッタテ峠15:00/15:36〜オッタテ峰15:55〜ダン沢ノ頭登り口辺り16:30(幕営地@)


今回も前日に急遽行先が変更となった。
入山地点の野反湖までは魚野川遡行のときに行ったことがあるが、夜間だったので景色を見たのは今回初めてとなったため新鮮な気がした。
観光シーズン中はバスが通っているが、時間が合わないので大枚はたいてタクシーでのアプローチ。
車はダムを渡ったバンガローの建つ辺りまで入ることができた。

このあたりは、キャンプや釣りのために整備されていて、きれいなトイレもあるので準備するのにも勝手が良い。
冷たい風が吹いているので、雨具の上を着て出発した。

最初はバンガローサイトの中に付けられた道を行く。バンガローは野反湖を見下ろすいい所に建っており一度ゆっくり泊ってみたいと思った。
案内板に従っていくとやがて登山道となった。
けっこうな登りが続いた。途中水場らしきものがあったが、完全に枯れていた。

風が強いが、背丈以上の濃い笹藪と灌木に囲まれた道なので全く影響はなく、思ったよりも急な登りが続くので逆に暑くなってシャツを脱ぐことになった。
針葉樹林の山ということで、元から紅葉は全く期待していなかったものの、思ったよりも早くに散ってしまっていたようで少し残念な感じだ。
振り返ると野反湖を見下ろせる眺めの登りを続けていくと、やがて針葉樹林の中の道となっていく。
予定よりも時間がかかって三壁山(みつかべやま)に到着。
今日の内にできるだけ進んでおきたいので、休憩せずそのまま通過した。

下り始めるとすぐに笹原を切り開いた道となってトラバースを始めるようになった。ここは気持ちのいい所だった。
トラバースが終わると間もなくまた樹林帯の道となった。ここで男女2組、更に軽快な足取りのトレランの男性1人とすれ違った。
野反湖周辺は日帰りの周回コースを色々ととることが出来るので結構人が入っているのかもしれない。

高沢山分岐を過ぎるとぐっと人気がなくなったと同時に、北風強い今日は特に風の通り道になっているので一気に寒くなった。
行動食をかじって一枚シャツを着ることにした。
ぐんぐん下るとカモシカ平の広い笹原が見えた。ここの下りはきれいに刈り払いされているが、実はこの道が曲者で刈り払いされた笹でとても良く滑るようになっていた。
強風の中スリップに注意していくと、水場の標識が建つ鞍部に着いた。
更にカモシカ平の解説板もあったので読んでみると、単なる笹原に見えるが夏はニッコウキスゲの群落になるそうだ。
鞍部であるため風が特に強く、水場へは往復30分と地図に書かれていて遠いため水場の確認はせずに通過した。
天気が良く風が弱ければいい休憩場所だと思った。

大高山へはすぐに着くかと思ったが、急な登りが続くかと思うと緩くなりもうすぐかと思うとまた急な登りとなる、といったことが長く続く結構な登りだった。
この山頂にも立派な道標が建っており、現在地をはっきりと確認できた。
あの頑張りはなんだったのかと思うほど、どんどん下るとこれまた立派な道標が現れた。五三郎小屋分岐だった。
少しだけ行った事前学習だと、水が豊富だとあったので水汲みを兼ねて小屋を見に行くことにした。

水筒だけ持って空身で小屋へと向かう。
小屋までは5分程で着いた。ボロボロで酷い状態と何かで読んでいたので崩壊しているのかと思ったら意外としっかりしていた。
泊まるとなると、完全に土間で少しボコボコしているのでそれなりの準備は必要だが、雨風は十分に凌げる状態だった。
肝心の水場はというと、小屋のすぐそばにあり確かに水はきちんと出ていたが、超小型枝垂れ花火のようにポタポタ水滴が横並びに垂れている状態で汲むのにはとても時間がかかりそうだ。
少し下れば汲めるようになると思うが、まだ先が長いので次の水場マークのある所に掛けることにした。

期待していただけにがっかりしたが、分岐に戻って行動食をかじって気を取り直して出発。
次のピークは小高山。疲れる登りだった。この時点で予定時刻を大幅に遅れていた。幕営予定地までは到底無理になってしまった。
今日の幕営地をどうするか考えないとなと話しながら一下りすると、少し尾根が広がったオッタテ峠に到着。ここも立派な道標が建っていたので見逃すことはなかった。

地図ではここで水場があるように記載があったが、水場を示すものは見当たらなかった。
さてどうしようと脇を見てみると、窪のようなところに水が溜まっていた。
ここで水が採れないと、この先水場は無いに等しいので水汲みに行くことにした。そういった相談をしていると、沢の装備をした男女3人パーティがやってきた。
挨拶をしただけで、3人パーティは鷹ノ巣尾根を下っていった。魚野川かな?ガラン谷かな?と少し推察をしてから水汲みのために窪へと入った。

当初から水が溜まっていたのですぐに水を汲めると期待していたが、すぐにガレ沢となってしまいどんどん下るようになった。
沢なのでやがて水が出てくるのは確実であるが、涸沢で終わったらどうしようと不安になった。途中古い虎ロープが残っていたので水場の沢とされていたのは確実であるが、標識がなかっただけにガレで埋まって用を成さなくなったのかもと色々考えが浮かんできた頃、少し湿り気が出てきた。
これは期待できるかなと数m下ると水が染み出てきた。あまりにも水量が少ないのでさらに数m下ると十分に汲める水量となった。
下降時間5分といったところか。この渇水期にこれだけの下降時間で水をとれるのなら、十分公式の水場として使えると思う。

今回2万5千分の1地形図を持ってこなかったので、少ない下降で水が取れるか全く分からずとても不安だった。帰ってからよく見てみると小ゼン沢の源頭部へ汲みに降りたことが判った。
2人合せて5.5リットル汲んだ。今日のような気象条件なら十分だが、翌日好天になる事を考えるとあと1リットルは必要だった。
登山道へ戻ると時間は既に15:30。水汲み前はこの辺りで幕営することを考えていたが、よくよく見てみると風が結構抜けて寒いのでもう少し頑張ってみることにした。

オッタテ峰へは思った以上に時間がかかってしまった。今日の日没は17:00過ぎ。できればダン沢ノ頭を越えておきたいが、鞍部に着いたときには16:00になっていた。
幕営準備のことを考えるとそろそろ泊まり場を見つけておきたい。
少し焦って周りを見回しながら進んでいくとモコモコさんの足がとまって何やら覗きこんでいた。モコモコさんの視線の先には、登山道から群馬県側に少し降りた笹藪が平坦になっており、テントが張れそうな藪が薄いところがあった。
ためしに下りてみると、なかなかよさそうだったのでモコモコさんを呼んだ。モコモコさんも少し湿っている事が気になるもののいい物件だと思ったようで、今晩の宿泊場所に決定した。

ちょうどテント一張分笹が生えておらず、平坦に近い状態で整地の必要がほとんどない。背丈以上の笹が周りをぐるっと囲んでいるので、登山道では風が冷たかったが尾根の陰であるのと笹藪の壁で完璧に風が遮断されている。
覆いかぶさってくる笹藪を縛ってまとめて、登山道上に放置してある刈り払いされた笹を集めて下に敷くとちょうどいい具合になった。

設営が終り早速中に入ると、笹のマットでの断熱&フワフワになっており、予想以上に快適だった。
冷たい北風は依然として吹き続けているため気温は低いが、幕営場所には風が当たらないので寒い思いをすることなく過ごすことができた。
快適なので少しお酒が進んでしまい、これが翌日に影響することになったとモコモコさんから後で文句を言われたのを除けば、最高の場所での快適な幕営となった。



10月14日(晴れ)
コースタイム;幕営地@5:10〜ダン沢ノ頭5:32〜湯ノ沢ノ頭6:27〜赤石山7:29〜金山沢ノ頭9:29〜岩菅山11:49〜裏岩菅山11:50〜中岳14:13〜烏帽子岳14:50〜最低鞍部手前の切開き15:39(幕営地A)

今日は長丁場のため、珍しく早起き。
冷え込みもなく暖かく寝られたので、寝ざめもすっきりだった。

まだ暗い内にヘッドランプを点けて出発。
きれいに刈り払いされている上に朝露がついていないので、濡れずに済むのがありがたい。
ダン沢ノ頭の登りから始まったが、寝起きの体には少しきつい登りだった。ダン沢ノ頭は刈り払われていたのでここでも幕営可能だが、昨晩は風が吹き抜けて寒いだけだったと思うので行動を打ち切って正解だったと思った。

ダン沢ノ頭の下りは急だった。
一下りすると、尾根が広がり笹原の中に切り開かれた道となった。
ここまでくれば、稜線上で幕営可能なところがでてくる。
特に湯ノ沢ノ頭手前は、刈り払い隊の基地となるらしく絶好の幕営適地だった。贅沢をいえば、沢の源頭部までついでに刈り払って水場への道を作ってくれるとありがたい。

この辺りは平坦な部分が多く、ぬかっていたり登山道上に沼になりかけた水たまりがあって迂回するように道が付け替えられていたりしたが、これまでの、短いが極端な登り下りがほとんどないので楽だった。
湯ノ沢ノ頭はそれらの延長のような感じで、気が付くと辿り着いていた。また、これまでは主要なポイントには必ず立派な道標が建っていたが、珍しく木に案内板が打ち付けられているだけの簡素なものだった。

湯ノ沢ノ頭からは、今回刈り払いの対象区間から外れたのか、幅広く刈り払われていたのが一変して登山道に笹が生え始めている状態になった。いつもながら、笹の復元力の強さには驚かされる。
仙人池までは出発してから一番急な登りになった。
登りきると、一気に傾斜が緩くなって、道の真ん中で伸び始めた笹をポールのようにビヨーンと言わせながら歩くので「スキーのスラロームみたいだな」と軽口をたたきながら歩く余裕も出た。
もう少しで仙人池というところで単独の男性が現れた。この先の登山道の様子を尋ねると、赤石山からはまたきれいに刈られた道になるとのことだった。

仙人池は鳥の声しかしない静かな所だった。
池から10分程で赤石山に着いた。
山頂には小さなかわいい祠が祀ってあった。また、大沼池が良く見え、珍しく大岩があったので登ってみた。一番上に登ると高度感がある。
少し行動食をつまんで金山沢の頭へ向かう。

樹林は濃くないが、背丈以上の笹藪がやたらに濃い中に切り開かれた登山道をひたすら歩く。
小さなピークをいくつか越えて、魚野川遡行の時にはこの辺りに出てきたよなと話しながら樹林帯の登りをこなして金山沢ノ頭に着いた。山頂にはベンチがあった。この山頂は、ロープウエイを使って稜線に上ると最初に踏むピークであるが、樹林で展望が効かないためか予想に反して誰も居らず、我々もそのまま素通りした。

金山沢ノ頭からは、主に魚野川側であるが一気に視界が開けた。
この辺りから登山道も良く踏まれており、人の気配が濃くなってきた。実際多くの人と出会った。
小さなピークがいくつも続き、意外とうねっていて距離も長いが、見晴らしがいいので思ったよりも早くにノッキリに着くことが出来た。ノッキリは岩菅山への最短コースの分岐点になっているだけあって多くの人が休んでいたので、山頂まで頑張ることにした。
皆日帰り装備で、大荷物を背負っているのは我々だけだった。
ここで心配事発生。昨日と違い、風も穏やかで天気が良いので水の消費が思ったよりも激しい。
できるだけ、汗をかいたり呼吸が乱れることがないようにゆっくり登るが、どうしても水を飲んでしまう。

地図には、山頂直下に水場があるように記載されているが、果たして水が汲めるかどうか大いに不安だ。
モコモコさんから「昨日、最後の一杯やめておけばよかったんだよ」と文句も言われた。
だんだんガレてくる急登を通常の時間よりも大幅に上回って山頂に着くと、さすがに山頂は沢山の人が休憩をしていた。
山頂にあるという避難小屋は本当に直下にあった。
石積みのしっかりした小屋で、中を覗いてみると結構綺麗だった。写真撮影のみ済ませて水場を探しながら裏岩菅山方面へと歩みを進めた。

地図で見る限りこの辺りというところを過ぎても、それらしきものは現れない。
谷を覗くと、どう見ても水が出ているように見えない。
そうこうしているうちに、最初の小ピークを越して次のピークへと着いてしまった。
この小ピークでゆっくりと休憩している2人組の登山者がおり、挨拶をして少しお話をする。この辺りの山に慣れているようだったので、水場のことを尋ねてみると、水場を示す案内等は見なかったとのこと。

親切にも、新しい登山地図を見て確認してくれた結果、やはり水場の場所は通り過ぎていた。また、山頂の水場はとても細いとの注意書きもあった。
今は一番水が涸れてしまう時期だ。山頂に泊まるならば、水が出ている所まで降りてもいいが、今日はまだこれからコースタイムで4時間ほどは歩かないといけない。水汲みに費やす時間はない。
がっかりしていると、なんと水を分けてくださるとのことで、モコモコさんはありがたさのあまり涙ぐんだ。
2人で1リットルも貴重な水を頂いてしまった。ここ最近、渇水期でも水の心配をほとんどしなくて済む飯豊や朝日に行っていたので、担いでいく水の量の見込みが甘くなっていたことを大いに反省した。
ここで分けていただいた水は文字通り命の水となって、無事縦走を続けることが出来た。この場でも深く御礼申し上げます。

今まで水不足を気にして我慢を重ねていたモコモコさんは早速水を飲んだところ、これまでののろのろ歩きは何だったんだと言いたくなる程快調に歩き始めた。
この先歩く稜線を見て本当にあそこまで行けるかと不安に思っていたのが、まだ先は長いが頑張れるに変化した。

裏岩菅山は岩菅山より少し標高が高いので、少し足を延ばしてくる人も多いのか、よく踏まれていて登山道はとても歩きやすかった。
裏岩菅山山頂にも休憩している人がいたので、そのまま通過した。
山頂を境に一気に人気がなくなり、登山道から踏まれている感がなくなった。

標高差50m程の急な下りを済ませてから休憩した。
ここから登山道は、樹林帯と背丈以上の笹藪を切り開いた状態に戻った。珍しく地塘(涸れていた)のある湿原も見られて少しほっとする所だ。
この辺りにも刈り払い基地が見られた。笹藪がかなり濃いので刈り払いも大変なのが容易に想像できる。
裏岩菅山と中岳の中間辺りにあるピークでほぼ直角にコースは曲がるのだが、濃い笹藪と樹林帯で周りが見えないので気がつかないうちに取り過ぎていた。
そのため距離感がつかめず、ずっと遠くにあると思っていた中岳手前の小ピーク(ここではニョッキリピークとします)がいきなりニョキっと現れたときは驚いた。
ノッキリからこの辺りの間は、外の沢遡行のときに一度歩いたことがあるが全く憶えておらず、新鮮だった。

ニョッキリピークは見た目通りの急な登りだった。岩場を通るように見えて緊張したが、しっかりした土の足場があり藪も補助として使えたので全く問題なく登れた。短い距離だったが、重荷なのでそれなりに息が上がった。

ニョッキリピークの下りはさほど大きくなく、すぐに中岳への登り口になった。中岳の基部は立った岩場となって、一見どこを登ればいいのかわからない。
直前まで近づくと、登山道は正面の立った岩場をかわすように回り込み、登りやすい岩場になっている部分へ導いてくれた。先行するモコモコさんがストックを仕舞っているのを見て、自分もストックを予め仕舞っていくことにした。
見た感じ、メジャールートだったら鎖やロープが着けられるだろうなと思わせられた。
実際岩に取り付いて登ると、足場はしっかりして重荷でも簡単に登れるが、結構立っているので両手をフリーにしておいて正解だった。
ここは鎖等は一切ないので、下りや濡れているときは転滑落に注意だ。

短いが岩場をよいしょと越えると、すぐにしっかりとした普通の登山道となった。
尾根は一段とヤセて切れ落ちているが、低いながらも両側に灌木があるので安定感があった。それなりに登るとひょこっと三角点のあるピークに着いた。
ピークには、烏帽子岳とかすれた文字でかかれたものと、烏帽子岳はこの先を示すようなものとの二つの案内板があって、?????となってしまった。時間と距離や地形から言うと中岳だが、地図には中岳に三角点があるようには記載されていない。しかし、先にあるピークはペローンとなだらかな山容なので、烏帽子という形から言うとこのピークが相応しい気がする。ここが本当に烏帽子岳なら今日の行程はもうすぐに終了でうれしいことだが。

ピークからは急な下りになるので少し信じたが、あまりにも下る標高差が小さすぎる。また、下りきると尾根が広がるのにそのようにはなっていない。やはり先ほどのは中岳で合っていたのだ。
それでも現在の時刻は14:00を回ったばかりだ。予定よりも早く幕営予定地に着けそうだ。

烏帽子岳へはゆるい登りだ。登山道は右側に傾いているので少々歩きにくいが、刈り払いされているので周りの景色を楽しみながら歩くことができた。
今朝出発した魚野川を挟んだ稜線も見えた。馬蹄形状に連なっているので、歩いてきた所がはっきりと見えるのが魅力的だ。
烏帽子岳の三角点は、裏岩菅山が良く見える位置ではなく、少し奥へ入った刈り払われた広場のような所にあった。
山頂を示すような大きな道標もないので、刈り払われていなければうっかり通り過ぎてしまうかもしれない。

写真撮影だけ済ませて下りにかかる。
最初は広く刈り払われた気持ちのいい道を、正面には苗場山や鳥甲山、眼下にはスラブとその下がすとんと切れ落ちているような眺めを堪能しながら下った。
先を見ると直下とも言えるような下の台地に道が付いているのが見え、あそこまで降りないといけないのかとため息が出た。
どう回り込んで降りるのかと考える間もなく、すぐに傾斜が急な樹林帯の中の下りとなった。
この下りは回り込むということを一切せず、直下降という言葉がぴったりの怒涛の下り坂だった。これがまた滑りやすく、歩く人が少ないためか足場もあまりしっかりできておらず今日一番大変な気がした。
下るのに夢中で、視界が効かないのもあるが写真を撮る気もおきなかった。

怒涛の下りを済ませるとやっと笹原の道となった。ここまでくると一気に緩やかになり、周りを見る余裕が出てきた。
降りてきた方向を見ると烏帽子岳の切明側はストンと切れ落ちた岩壁になっており、正しく烏帽子だった。
なんども振り返りながら笹原を進むと樹林帯となり、すぐにきれいに刈り払われた場所に着いた。今日の幕営地だ。

思ったよりも広く奥まで刈り払われていた。後ろには誰もいなかったしこの時間登ってくる人もいないだろうが、できるだけ奥へ入った所にテントを張ることにした。
テントを張って早速水汲みだ。
ありがたいことに、水場の沢へは笹をきれいに刈ってあるのでヤブ漕ぎすることなく沢の窪へと入ることができた。
沢筋ははっきりしているが、傾斜がゆるい区間が以外に長いので本当に水が汲めるのか心配になってきた。
ようやく傾斜が出てきても涸れ沢の状態が続いた。かなり降りることを覚悟し始めた頃に水がやっと染み出てきた。
水を汲める状態になったのは、そこから数m下った所だった。テント場からここまでは、周りを観察しながら&モコモコ係数を掛けても7分程だった。距離はあるが標高差はさほどないと思うので、いい水場だと思った。

明日は短い工程だが、昨日の教訓を生かしてたっぷり汲んで戻った。
周りは広く刈り払われているものの、風そのものがあまり吹いておらず、風が吹いても周りの笹藪がシッカリと風を止めてくれるので昨日以上に寒さを感じることなく快適に過ごすことが出来た。
この縦走路中一番の幕営地だと思った。
最高の幕営地に恵まれたので、月明かりに照らされる中、ささやかであるが宴会を楽しむことができた。


10月15日(くもり)
幕営地A5:30〜笠法師山先の広場7:22〜切明温泉9:42〜国道分岐で車に拾われる9:55-和山温泉バス停


いよいよ下山日。
台風が近づいており、早いとお昼頃から雨が降り始めると天気予報で告げていたので、午前中には下山できるように今日も暗い内に出発した。

幕営地は最低鞍部ではないので、最初は下りから始まる。
昨日は少し暖かかったためか、露がついていた。しかし、登山道はこれまでと同様に広くきれいに刈り払いされていたので、雨具やスパッツを着けなくても全く濡れず快適に歩くことが出来た。

最低鞍部に下り切り、笠法師山への登り返しにかかる辺りでヘッドランプなしで歩けるようになった。
この登りは登山地図にヤセ尾根と書かれているところだ。最初は確かにヤセ尾根だがどこにでもある普通の道から始まり、尾根はどんどん痩せていき、尾根をトラバース→攀じ登って尾根上に戻る→トラバース・・・を何度も繰り返してどんどん高度を上げていった。

空が開けてくると再び笹を切り開いた尾根道となった。
昨日烏帽子岳から見えた辺りに着いたのだろう。このままの状態で登っていくのかと思った矢先、再びヤセ尾根となりどーんと大岩が行く手に立ちはだかった。
ここでなんだが強烈に○○○したくなりお腹が痛くなってきた。ヤセ尾根だがなんとか用足しできるところを見つけて一安心。最近ヤセ尾根になるとウン気が起きる気がして困った。

大岩は少し回り込んで越えていくようにルートが着けられていた。ここはロープが張られているが、かなり古いので触らないのが賢明だ。
実際取り付いてみると、足場がシッカリしていてホールドもあり、登りそのものが短いのでロープを使わなくても全く問題なかった。

本縦走通して岩場はこれで終了だった。
あとはひたすら刈り払いされて間もない、右下がりの登山道で笠法師山の山腹を延々とトラバースしていく。
この辺りの笹の切り口の直径は2〜3cmもあろうかというとても太いもので、刈り払いはさぞ大変だったと思う。実際、我々の歩みで言うと1時間程の間隔で刈り払いの基地があったので、かなりの労力と時間が必要だったことが窺えた。

笠法師山を背後に見るようになって登山道が直線状に着けられるようになってしばらくで、切り開かれた広場に出た。水場がここまでの間にあるらしいのだが、昨日と違い水に余裕があるせいか探すのを忘れてしまった。
広場はテントが張れる程広く刈り払いされているが、水場はなさそうで昨日泊まったところが一番の幕営地だったようだ。

ここからあと2時間で切明だ。
余裕かと思ったが、意外と曲者だった。白毛門の下りと同じようにうんざりした。
特にシャクナゲが出てきたあたりは、粘土質となり余りにも滑るので2回も転倒してしまった。
モコモコさんも転倒こそしなかったものの、藪を掴んでそろそろ降りたり後ろ向きで降りたりと、時間ばかりが過ぎていき、急斜面であるのに全く高度を下げているようには思えなかった。

スリップに注意しながら降りていくと、ブナ林となって傾斜がゆるんだ。やれやれと歩いていくと、突然発電所の施設に出た。
ここからは、保守点検用に使われているだけあって、さすがによく整備されていた。
沢の音が聞こえてくるようになったなと思うと、またもや発電所の設備(建物)があった。ここで道がバッタリ途絶えてしまい一瞬迷うが、どうやらこの建物を通り抜けるようだ。
建物の中へ入り、導水管へと繋がる水槽上を横切るとまた普通の保守点検用の山道となった。

ここからは導水管沿いに付けられたジグザグの山道を下るようになった。
余談だが、モコモコさんはこの導水管が怖いらしい。理由は本人にも不明。導水管に出くわすのではないかと戦々恐々で、いままで先頭切って歩いていたのが先頭を交代しろと言ってきた。
変なの〜と先頭を変わって歩いていくと、導水管が目の前に見えるようになった。直径が身長以上もあるとても太い管で低いうなり音が聞こえた。
モコモコさんに教えてあげると、「そんなの分かってるよ!!」と言いかえしてきたが、こちらを見るどころか顔を隠してやってきた。なんでもうつむいているだけだと視界に入るかららしい。本当に変なの〜。

幸い、この道はジグザクを切って下っているので、右ターンをする直前だけしか見えない。先行する山人が導水管が見えるところ見えないところを教えてあげながら降りていくと、無事発電所敷地に降り立った。
目の前にかかる吊り橋を渡れば切明温泉だ。

この吊り橋の下を流れる川は、少し上流へ行くと、河原湯があるらしい。また、切明にはきれいな宿があって是非汗を流していきたいところだが、我々はバス停までまだあと1時間近く歩かなくてはならないので入浴は断念。
思ったよりも規模の大きい雄川閣の脇を通って、これまた思ったよりも観光客がいる駐車場入り口に着いた。
ここには案内板があり、現在地を確認した。

現在の時刻9:42。バスの発車時刻は10:27。とうてい間に合わない。「待ちぼうけかあ、やっぱり出発がおそかったか」と少し後悔してバス停に向けてトコトコ歩き始めた。
まああと1時間歩けばいいだけだからと思っていたが、ところがどっこい、この道いきなりの上り坂。
汗をかかされてしまった。

登りきった所で分岐となった。この分岐には、我々が歩こうと思っている方向の左の道路には「通り抜けできません 和山集落には行けます」、右には「小赤沢へはこちらを」となっていた。どちらへ行けばいいか地図を開いて見てみる。
確かにバス停は和山なので左へと進むのが正しい。しかし通り抜けできないとあるからバス停から先は通行止めなのでは?歩きなら大丈夫でしょ。それならバスはどうやってそこ(バス停)までくるんだ?やはりここは指示に従って右に。それだと遠回りになる。と一向に結論が出ない。

あーだ、こーだとやっていると一台の車がやってきて我々のそばに停まり「どうしたの?」と声を掛けてくれた。
バス停までの道がわからないと伝えると、なんと「ちょうどバス停まで行くから乗っていく?」とありがたいお言葉が。
躊躇することなくお願いしてしまった。

我々を拾ってくださった車は、切明温泉の宿「雪あかり」のご主人で、なんと、たまたま宿泊客の方をバス停まで送る途中だったとのことだ。
本当にありがたいことで、乗りたかったが到底無理とあきらめていたバスに余裕で間に合ってしまった。
バス停までの道すがら伺った話では、5年前までは切明までバスが通っていたとのこと。確かに我々の登山地図(10年以上前に発行のもの)にはバス路線が切明まで伸びていた。
このときは、和山より奥には集落がないため、補助金等が出ないので3軒しかない切明の宿でお金を出し合ってバスに入ってもらっていたとのことだ。しかし、あまりにも利用者が少ないので各宿で送迎するのが良いだろうということになり、和山でバスは終点となって現在に至るとのことだ。
驚いたのが、これほど山深くすれ違うのがやっとというほど細い道であるが、除雪はしっかりとされて冬期も営業しているとのことだった。

バス停は単なる広場といった具合だが、簡素ながらトイレがあった。トイレの建屋外にある蛇口からはちゃんと水が出て手が洗えた。
発車時刻まで少し時間があり、バスで帰るという宿泊者の方(宿泊者さんとさせていただきます)から宿のパンフレットやお品書等を見せていただいた。とてもいい宿だったとおっしゃるだけあって、宿の建屋そのものが我々好みで、お品書がすごかった。また、携帯電話は通話不能とのことで、観光客は多くいたが、今なお秘湯であると思った。時間とお金に余裕があったら下山後に是非泊まってみたいものだ。

さて、気になる道路事情だが、和山バス停を発車してすぐのところで大規模な法面工事をしており工事用車両が頻繁に行き来していた。
道そのものが狭いので、確かに一般車両は通行止めにする必要があるな、とバスの中に貼ってあったお知らせを改めて見たところ、このバス自体も和山まで入れるようになったのは10月に入ってからだったということだ。バスだけが通行できるのか。これであの案内板の表示の謎が解けた。

懸念の雨にも降られずに、無事津南(下車したバス停は「役場前」ここから接続する越後湯沢行のバスに乗ることが出来る)に到着した。
本当に我々は運が良かった。
越後湯沢行きのバスを待っている間に、宿泊者さんから「山から降りてきたんじゃお腹減ってるでしょ、これ食べない?」とおにぎりとおもちの差し入れを頂いてしまった。なんだかここまでくると、運がいいを斜め上に飛び越してもらい乞食だなあ。
今回の救世主の一人である宿泊者さんとは越後湯沢駅で別れて、我々は改装されて間もない「ぽん酒」館で3日分の汗を流した。

歩いてみた感想
 とても地味で、特に野反湖〜赤石山の間はこれといった特徴もない感じだが、以外にアップダウンが多く歩きごたえがあった。
 岩菅山からは、視界が開けアップダウンもさほどなくなるので距離の割にどんどん進めた感じ。
 全体を通して、岩菅山周辺を除けば、とても静かな歩きができるいい所だ。
 魚野川を挟んで、群馬・長野の県境の野反湖〜赤石山は群馬県の要素が、岩菅山〜切明は新潟の要素が出てくるようになり、全く趣が違って面白い。雑魚川外の沢や、魚野川を遡行したときは気がつかなかったことだ。
 中間地点辺りで分けて、軽い荷物で早朝から歩けばどちらも日帰りも可能かと思うが、繋げて一気に歩いた方が一層良さが分かると思った。
 我々もあと天気がいい日を一日もらえたら、更に切明から野反湖まで繋げたかった。


きれいなバンガローが立ち並ぶ 野反湖を背後に登る
きれいに刈り払われていた カモシカ平へ下降
登り返してから振り返った 長閑に見えるが実際は寒かった 五三郎小屋
五三郎小屋の水場 この窪を下って水を汲みに行った
標識はしっかりしている(水場の案内はなかった) 5分程下ると水を汲めるようになった
下草の生えていない笹藪の中で幕営した 夜が明けてきた
ダン沢ノ頭から急下降 湯ノ沢ノ頭周辺は幕営適地が点在した(水場はなし)
朝日を浴びて仙人池へ登る 静かな仙人池
赤石山から鉢山方面 赤石山から大沼池
赤石山山頂のかわいい祠 金山沢ノ頭までは長くつらい 魚野川を見ることが唯一のなぐさめ
岩菅山はまだ遠い 魚野川の見晴らしが良い
延々とアップダウンが続く ようやく岩菅山への登りに取り付く
岩菅山の登りから来た道を見る 岩菅山直下にある避難小屋内部
水場はわからずに通過してしまった(岩菅山を振り返る) 岩菅山-裏岩菅山間は珍しくなだらかでのびやかな尾根
これから行く稜線 途中にある湿原
裏岩菅山 結構荒々しい 中岳手前のニョッキリピーク
中岳の取り付き ちょっとした岩場を登る
岩場の上から ニョッキリピークと裏岩菅山 中岳を過ぎると再び見晴らしがよくなった
尖った中岳(逆光が残念) 今日越えるピークはあの烏帽子岳で最後だ
魚野川の対岸(今朝の出発点) 岩菅山も遠くなった
烏帽子岳山頂は広く刈りはらわれていた 枝尾根の方に地塘があった
明日通る笠法師山 烏帽子岳のスラブ その下は凄いことになっていそうだ
下に見える樹林帯まで一気に下らなければならない 最初は歩きやすかったが・・・・・
写真を撮る余裕もない怒涛の下降だった 緩やかになった笹原をあと一下り
きれいに刈り払われた幕営適地 5〜7分程下った沢で水を汲めた
切明から見ると正しく烏帽子岳 広場から笠法師山と烏帽子岳が見えた
ここから登山道は作業道となった 吊り橋の下を流れる川には河原湯があるらしい



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