山域 南会津
コース 安越又川道行沢〜梯子沢枝沢(下降)〜上梯子沢 〜坪入山〜ミチギノ沢左俣(下降)〜御神楽沢(下降)〜ミノコクリ沢中門沢〜中門岳〜桧枝岐
〜ヌルヌル南会津継続遡下降〜
日程 2014年9月20日〜9月24日

 2013年の同じ時期に南会津の沢旅を計画したが、台風の為に大幅な短縮となってしまった残念な経緯がある。
今年の7月に一度計画したが、天気の関係で断念していた。今度こそ三度目の正直ということで計画を実行した。
 
データ 地図:二万五千分の一地形図;内川,高幽山,会津駒ヶ岳,桧枝岐、 五万分の一;桧枝岐

アプローチ
浅草駅23:55-会津高原尾瀬口駅3:18/4:20-小立岩5:30

コースタイム
ルート図
9月20日
(くもりときどき晴れ)
 小立岩5:57〜道行沢出合9:00〜1410m鞍部13:00〜上梯子沢出合13:46〜BP@13:55
9月21日(曇り後晴れ)
 BP@6:46〜枝沢出合6:51〜1410m二俣10:15〜坪入山北の尾根12:51〜坪入山14:22〜ミチギノ沢左俣左沢1410m二俣15:57〜1300m二俣16:20〜1202m二俣付近18:00くらい(BPA)
9月22日(曇りのち晴れ)
 B.P.A7:11〜御神楽沢出合10:17〜ダム11:37〜ミノコクリ沢林道分岐12:55〜ミノコクリ沢取水ダム13:25〜13:30(B.P.B)
9月23日(晴れ)
 B.P.B7:14〜下の沢出合8:23/9:04〜ウグイ沢出合10:28/10:50〜奥の二俣11:40/12:10〜1430m1:2二俣14:21〜中門沢1500m付近B.P.C14:59
9月24日(曇り夕方から雨)
 B.P.C6:54〜中門沢1530m二俣7:01〜中門岳西の尾根10:19〜中門岳10:54〜駒ヶ岳登山口バス停15:01


9月20日(曇りときどき晴れ)
コースタイム;小立岩5:57〜道行沢出合9:00〜1410m鞍部13:00〜上梯子沢出合13:46〜BP@13:55

尾瀬夜行23:55でのアプローチ。この車両は短距離ならば乗り心地は悪くないが、夜行としてはシートピッチは狭いくせに余計なフットレストがついていてやたらに狭く、リクライニングはなしという最悪な条件だった。
それでも乗車人数が多くないので、最終乗車駅となる春日部を過ぎてから皆各々座席を移動してゆったり過ごすことはできた。ところが、今度はやたらに寒い。気温は高くないどころか低いのに冷房を入れたままで、会津高原駅に着いたときには冷房はさすがに止まっていたが寒さ対策をしていても寒くてほとんど寝ることができなかった。

バスに乗り換える時間になり、トイレを済ませてサービスのおにぎりをもらってバスへと向かった。
バスは4台出ていた。そのうち3台は観光バスだた。途中下車するので、できるだけ最後に乗り込んだ我々のバスは普通の路線バスの車両だった。
乗り込むと、車内はとても暖かく生き返った。周りの人も暖かさに喜んでいた。

小立岩で降ろしてほしい旨を運転手さんに告げて、前方の座席に落ち着いた。
バスは定刻で出発。
暖かさにうとうとしていると小立岩に到着。
後ろを振り返ると皆爆睡していた。

小立岩集落の奥の林道入口で準備をして、早速おにぎりを食べた。
さすがにお彼岸の会津はひんやりする。会津高原駅で暖かいお茶が売っていなかったので、ガスバーナーで温めて一息ついてから出発した。

水害の復旧工事で林道は意外にも歩きやすくなっていたが、水辺の木は立枯れているものが多く見られた。
安越又川に架かる橋は新しくなっており、良く見てみると平成25年12月竣工となっていた。現在この辺りは山毛欅沢の復旧工事をしているようだ。
橋を渡ると林道は二俣に分かれ、我々は安越又川沿いの林道へと入った。

水害後にこの辺りを通った人の記録を見ると、橋の先の林道は崩壊個所が結構あったようだが、今は復旧工事のお陰で問題なく歩いていくことができた。これは前回のように踏み跡を辿ってかなり奥まで行けるのではと期待した。

しっかりした林道は壊れた堰堤のところでとうとう終了。
その先を見てみるが、踏み跡はかなりやぶに埋もれており、確か沢床よりも結構高いところを通っていたはずで、途中崩れていたりすると厄介なので沢に下りていくことにした。
まだ岩が落ち着いておらず結構動くので、慎重に下りた。
下りてから堰堤を良く見てみると、堰堤本体は無事だが、それを支える左岸側がざっくりとえぐり取られていた。

堰堤そのものは土砂で埋まってしまっているので、なんなく通過できた。
予定よりも早くの入渓となったが、滝などない河原歩き主体なので問題ない。
唯一の懸念は、苔でぬるぬるしていて滑ることだ。フエルトにするか迷ったがラバーソールを履いてきたことが裏目に出てしまったか?

ときどき側壁は立ったりするものの、相変わらず滝もなく穏やかな流れを辿っていくと見覚えのある橋が左岸に見えた。ここまでくれば道行沢出合の三俣まであともう少しだ。
三俣手前では土砂の押し出しが凄まじかった。
今は土砂も落ち着いてきて、絶好の幕営地となってきていた。

三俣は水害でかなりの範囲が流されて、以前は鬱蒼とした感じだったのが開けて明るい出合となっていた。
道行沢出合いは土砂が堆積していた。小さな堆積台地で残りのおにぎりを食べてからいよいよ道行沢へと入る。

出合いこそ荒れていたものの、すぐにすっきりして小さなナメ滝の連瀑となっていてなかなかいい渓相だった。
標高1100mで右に沢を分けると一気に流れは小さくなった。沢が倒木で塞がれているところがしばらく続いたが、沢に自体は小滝が続きどれも簡単に越えられた。

標高1190mの二俣は右に、すぐ先の1220m付近の二俣も右に入るといよいよ源頭に近くなってきた。
それまでほぼゴーロだったのが、珍しく急なナメ滝がでてきた。フリクションが効いて登れたが、初日の重荷ではモコモコさんは登れないと騒ぐので、荷揚げをした。
登ってみると2段ナメ滝だった。
鞍部直下まで水が流れているのが助かった。もしもこの先の稜線に登山道があったら、いい水場となるに違いない。

登りついた鞍部は平らで薮も比較的薄いので、時間がかかってしまったら、源頭から水を担ぎあげていれば薮を刈りはらって泊まることも可能だ。

当初は下梯子沢を下ってから上梯子沢へ入るつもりだったが、徹夜状態で早く行動を終了させたかったので、上梯子沢に1200m辺りで入る大枝沢に下降路を取ることにした。
コンパスを大枝沢に合わせて、引き続き比較的薄い薮を漕いで反対側の斜面が見える場所へと移動した。再度コンパスで確認して笹薮を下降開始した。下降開始して10分ほどで窪に入ることができた。
我々は、下梯子沢と大枝沢を分ける尾根を見てから下降したが、大枝沢へ入るには、1447mピークへ少し寄るように移動してから下降すると早くに窪に入れたのかもしれない。今日は時間に余裕があるし、大きな違いはないだろう。

大枝沢を下降路としたのは正解だったようで、簡単に下りられる小滝を数個かけているだけであとはほとんどがゴーロだった。ぬめっていて滑らないようにするることだけが苦労した感じだった。

右岸からほぼ同水量の沢を合わせると間もなく上梯子沢の出合いだった。
出合いは廊下状の中にあり、暗い感じだ。周りをみても出合付近には泊まり場はなさそうなので、荷物を置いて単独で上梯子沢の上流を偵察に行ったが、草つきのV字渓になっていて、しばらく泊まれそうな所はなさそうだ。

今度はモコモコさんと二人で空身で下流を偵察に行ってみることにした。
ぬめりに注意しながら下降していくと、少し開けて明るくなった右岸に小さな河原があった。
側壁を見てみると段丘になっていそうだ。
上ってみると思った通り、なんとか二人なら横になれそうな小さな段丘になっていたが、結構斜めだ。もう一段上ってみるとやはり斜めで狭いものの下よりはずっといい感じだ。

兎に角、今日は1分1秒でも行動を終了させて、のんびりしたかったので泊まり場に決定した。
荷物を取りに行き、戻ってすぐに幕営準備にかかった。
下草は余りうるさくないが、快適に過ごすために広い範囲を刈り払ったので明るい空間になった。

タープを張り、水汲み等済ませてたき火も熾きができてしばらくのんびりしていてもまだ16:00前だ。
いつも日没ぎりぎりまで行動しているので、たまにはこういうのもいいな。
あまりにものんびりしてたき火で暖かいので16:30頃一瞬寝てしまった。
早くからゆっくりできたので、食事を済ませてたき火に当たっていてもまだ時間に余裕があるが、、夜行での徹夜状態から回復するために適当に切りあげてシュラフに包まった。


安越又川沿いの林道を行く 水害で立枯れていた
東京近郊では珍しくなりつつある月見草 新しく橋がかけられていた(平成25年12月竣工)
壊れた堰堤から入渓した 大水の時にのっかたのかな?
この橋を過ぎると間もなく三俣 三俣(東沢西沢出合)は水害で荒れていた
ちなみに2010年の東沢西沢出合(三俣) 道行沢
道行沢は意外にすっきりしていた なかなかいい渓相だ
簡単だが滑る キノコワールド
鞍部へ到着。思ったよりもヤブが薄い 上梯子沢目指して下降
上梯子沢出合 1日目 テン場 明るいうちからたき火できてうれしい


9月21日(くもり後晴れ)
 コースタイム;BP@6:46〜枝沢出合6:51〜1410m二俣10:15〜坪入山北の尾根12:51〜坪入山14:22〜ミチギノ沢左俣左沢1410m二俣15:57〜1300m二俣16:20〜1202m二俣付近18:00くらい(BPA)

冷え込みもなく良く寝られた。
今日も早くいい場所に着いてゆっくりしたいものだ。

昨日の出合まで戻って、上梯子沢の遡行を開始。
V字状の流れを5分ほど進むと、沢が左に曲がるところに20m滝が現れた。
登れそうに見えるが、ぬめっているのでザイルが必要で結構面倒そうなので巻くことにした。
巻きは滝壺の左岸に入っているガレから取りついた。
トラバースに移りたいが、急な泥つき草つきで思ったよりもガレを登ることになった。薮までの距離が3mほどの砂の斜面となったところで側壁にとりついた。
薮の安定した所に登りついて、お助け紐を垂らしてモコモコさんが登ってくるのを待ったが、砂が崩れてなかなか登れないようだ。

じたばたしてようやく薮の枝に手が届いたようだ。ヒーヒー言いながらやっと登ってきたモコモコさんには少し先行して様子を見てもらう。
急な斜面は最初だけで、比較的傾斜が緩やかなので落ち口目指して楽に移動できた。
沢へは枝をつかんで、懸垂下降なしに下りられた。

側壁は高くないが、ゴルジュ状のなかにかかる小滝をいくつか越えていくと、ゴルジュ出口に登れない6m滝がかかっていた。
左右ともにバンドが走っているが、ぬめっていてトラバースが危なそうなのでおとなしく巻くことにした。
ちょうど滝上は右に曲がっているので、少し戻った左岸の取りつきやすい所から巻きに入った。

薮を手がかりに登り、上流に向かってトラバースしていくと、この界隈には珍しく松の木があった。
松の木を通過してから下を見ると沢床が見え懸垂なしで下りられそうだったので、下降を始めた。最後が少し急だが、思った通り枝をつかんで下りることができた。

ここからは沢が少し開けた。
右岸になんとか2人なら泊まれそうな所があったが、昨日の所の方がいい場所だなと思った。また、昨日中にここまでくるのは、結構つらかったと思うので昨日の場所は我々にとって最高の場所だったようだ。

ぬめっているが、全て登れる滝が次々とたたみかける様に現れ、正しく梯子のような沢だ。
やがてナメ滝帯となり、スリップに注意しながら登っていくと、少しゴーロ状で高度を上げるようになった。滝も一休みといった感じだ。
10分もしないうちに瀑流帯に入る。
ぬめりに注意しながら次々と登っていくと、5mCS滝が現れた。
先行して登り、モコモコさんを見ると、どうやら荷揚げが必要らしく準備をしている。確かに最初の数歩が結構厳しいので、空身の方がよさそうだ。
荷揚げをしてからモコモコさんにお助け紐を出して登ってもらった。

さらに倒木のかかった8m滝があり、登れそうだがぬめっているので、ここはザイルを出して登った。
一段登ってからトラバースするところで支点をとることができた。
後続のモコモコさんもテンションかかることなく登ってきた。ぬめっているので、緊張したとのこと。

北面で小さな沢のせいか全体的にぬめりがひどく、なんでもなさそうな滝でもお助け紐を出したり、単なるゴーロでも滝を登るように気を使ったりしなければならないので遡行ペースが一向に上らず気疲れするばかりだった。初日入渓したときからずっとぬめりが続いているので、つくづくフエルトの靴にすれば良かったなと思った。

この滝のすぐ上で1420mの二俣となった。右俣の方がすっきりしており、覗いてみると、すぐに4mほどの滝がかかっていた。
我々はここは左俣へと入る。
一気に源頭の雰囲気となり、ここまで来てもゴーロの中に次々とかかる滝を越えてぐいぐいと高度を上げていく。
滝もナメ滝が多くなりやがて水芭蕉の生えた所にでた。明るくて気持ちがいいところだ。ゆっくりしていきたいが、これから長い薮との戦いが待っているので目の前の笹薮が被る窪へと入る。

薮はうるさいが、窪は結構上まで続いているのが助かる。その窪もとうとうなくなり、本格的なヤブ漕ぎになった。
まずは尾根までのヤブ漕ぎだ。背丈以上の太い笹薮で全く周りが見えない薮をひたすら漕いでいくと、尾根になんとか上ったらしく、北方面に伸びる尾根の下の方に湿原が見えた。
湿原がこの場所にないかなと願ってしまう。

ぬめった沢に時間をとられ、予定より尾根に出た時間が遅れているが、坪入山を目指してのヤブ漕ぎ開始。
尾根に出てからは、全く薄くならないどころかますます濃くなった薮の中を、今度は坪入山〜稲子山を結ぶ尾根との合流点を目指す。
背丈を軽く超える濃い薮は、1m離れただけでお互いの姿が全く見えなくなる。薮をかき分ける音でお互いの場所を確認し合いながら進む。
かなりの時間ヤブ漕ぎしているが、遅遅として進まない。それでも、何度も息を整えながら辛抱強くやぶをこいでいると、わずかずつでも目的地に近付いているようで、少し傾斜が緩んだ所になった。標高1740m付近の尾根の合流点にやっと着いた。

地形図を見ると、山頂までたった250mだ。あと少しだとこの時点では期待したが、実際はここからのたった250mが一番ヤブがひどかった。
ぎっしりと生えた太いササに灌木の枝に蔓性の植物がびっしりと絡みついて壁を作っており、一度引っかかるとどうにも身動きできなくなることが3m置きに起きる感じでほとんど足踏み状態で全く進まない。
全く進まないのに発狂しそうになりながら、時間だけがどんどん過ぎていく。これから泊まれる場所まで下降する時間も考慮すると、とっくに山頂に着いていないといけない時間だ
口には出さないが、さすがに坪入山の山頂を踏む計画にしたことを後悔した。

ひどい薮であるのには変わりないが、周りのどこをみても現在地が一段高くなっているところに着いた。
三角点は見当たらないが、とうとう坪入山に着いたらしい。最後はたった250m進むのに20分もかかってしまった。つらい長い闘いだった。
折角ここまで来たので、三角点を少し探したが、ヤブがあまりにもひどく、三角点探しに費やす時間もないので、下降に移ることにした。

当初では、高幽山へと続く稜線を1754mピークとの鞍部へ進んでからミチギノ沢を下降するつもりだったが、同じヤブ漕ぎならできるだけ距離が短くなるように、山頂から直接斜面を下降していくことにした。

濃い笹薮なのは相変わらずだが、傾斜のある下りだとこれまでの格闘が嘘のように進める。
それでも何度も引っかかったり、笹に足を滑らせたりしながらも順調に下りていくと、窓明山から三岩岳へと続く尾根と、ミチギノ沢の窪みを確認することができた。
時間に余裕があれば、ゆっくり見ていたいが今はずんずん下るしかない。
できるだけ薮で斜面を下って標高を落としておきたかったが、重力に任せて薮の薄いところを探していくと、窪にでてしまった。
窪は苔むした石が安定していたので、薮を下るよりも楽だった。少しくだると水が出てきたので滝が出てくると厄介だなと一瞬思ったが、そのまま水は増えることなく最初下ろうとしていた沢本流に標高1530m辺りで合流することができた。
我々が下りてきたきた所は、本流からみると、見落としてしまうほど小さな流れで出合う。滝と言えばいえないこともない小さな岩場となって出合っていた。

この時点ですでに16:47、日没まで1時間しかない。泊まれることろがあったら、すぐに泊まることにして下降開始。
上流部の石はあまり滑らず浮き石にだけ気をつけてどんどん下って行けた。
沢が右に左に曲がったり、二俣となる度に泊まれる場所があることを期待するが、水害で荒れてしまったのか、土砂がもっていかれて石だけがゴロゴロしていたり、中州状態になっていたりで、泊まり場がない。

とうとう滝が出てくるようになってしまった。
幸いクライムダウンできた。時間に余裕があれば楽しいなと思われるところも、今は単なる通過だ。
泊まれる場所は一向に出てこない。とうとう坪入山と窓明山の1612m鞍部からの右沢との出合まで来てしまった。
ここから確実に幕営地がある二俣まであと1時間はかかるが、先へ進むしかない。

モコモコさんの記憶では2本ほど懸垂下降が必要な滝があったということだ。
その記憶通り、まずは6mほどの滝が現れた。残置された捨て縄があったが、捨て縄が掛けられた木が枯れていたので、生きている木に新しく捨て縄をかけて懸垂下降した。
問題は次の10m滝だ。一見滝の落ち口横に張り出している棚から懸垂下降できそうだが、支点にとる灌木へ辿りつくときになにかあると一気に滝下へ落ちてしまう。
ここは、一度右岸の薮に入って巻き下りるしかない。
なんとなく思い出した。
薮を進んですぐに下りようとしたが、ザイルが届かない。時間をロスしてしまったが、薄暗くなってきた中、更に先へ進んでなんとかザイルが届く場所が見つかり、やっと下りることができた。そういえば前も同じようなことしたな、とここまでやってようやく思い出した。

ヘッドランプをいつでも取り出せるようにして、先を急ぐ。沢はゴルジュ状が続く。
今思うと、良く怪我しなかったなと思うような状況の中、ひたすら先へと進むと沢が開けた。
少しホッとして周りを見てみると、砂地があった。薪は目の前にある。すでに辺りは暗い。この先幕営地へ行っても暗い中薪を集めるのは困難だ。今晩は雨の心配はないと言っていたし、後ろには、多少の増水でも平気な所へ簡単に逃げられる所となっていたので、荷物を下ろすことに即決した。

真っ暗になった中、設営をして薪を集めて火を点けて米を研いで着替えて、と休む間もなくいつも通りお互い作業を分担して行い、なんとか落ち着くことができた。
泊まり場は増水したら水の中であるが、星を見ながら良く燃えるたき火に当たり寒さを感じることなく快適に過ごすことができた。
万が一に備えて、荷物をいつもよりきちんとまとめた後は、すぐにツエルトにもぐりこみ、昨日の夜行の疲れとは違い、本日は長い時間の激しい行動での疲労のため、横になった途端に夢の世界へと突入した。


2日目朝 初日のテン場 なかなか快適だった 20m滝 ぬめっていたので、左岸を巻いた
ナメ滝 ゴルジュ出口の6m滝登れずに左岸を巻いた
懸垂なしで下りられた ホールドは豊富だがぬめって滑る
ナメ滝帯 薮をつかんでそろそろ登る たたみかけるように滝がかかる
5mCS滝 ぬめるのでモコモコさんのザックは荷揚げした 8m滝 ザイルを出して登った
水涸れ いよいよ薮に突入
尾根に出た 下方に湿原が見える 最初は比較的薮は薄い(以降あまりの激薮の為撮影なし)
坪入山からの下降から三岩岳 1754mピーク
1530m辺りで本流に出た クライムダウンできた
1612m鞍部からの右沢は5m滝をかけて入る 時間に余裕があったら楽しいところ
懸垂下降した6m滝 本日最後の懸垂下降(この後日没のため撮影なし)



9月22日(曇りのち晴れ)
コースタイム;B.P.A7:11〜御神楽沢出合10:17〜ダム11:37〜ミノコクリ沢林道分岐12:55〜ミノコクリ沢取水ダム13:25〜13:30(B.P.B)
 

家でも山でも睡眠時間とは短く感じるもので、あっという間に時間が過ぎていく。
昨晩は綺麗に見えていた星も全く見えなくなり、未明には一時雨がぱらついた。
まだ暗いのでもう一寝して、明るくなり始めたころに起床した。放射冷却がなかったので、冷え込みもなくぐっすりと眠ることができた。

出発準備を始める頃に雨がまたぱらついてきた。
天気予報では、新潟地方では朝夕に雨が降る所があると言っていた。本日は新潟に近付くようなコースとなっている。
日中晴れ間があるという言葉に期待して出発。

出発してすぐに二俣。昨年下りてきたところだ。
出合からわずかに下降した右岸に、本来予定していた泊まり場があり、覗いてみると、絶好の場所だった。
明るいうちについていれば文句なくここに泊まった。雨の心配がなかった昨晩のところは、疲れた体で薪集めをしなくて済んだのであれはあれで良かった。

ここから先、沢はゴルジュ状になっていくことは、さすがに憶えていた。
疲れが残っているのか、雨は止んだものの全く日がささずに寒いせいか体の動きがなんだか悪い。
昨年は大雨の後でかなり増水している中でも順調に下降できたのに、今回はそれに比べてかなり水量が少ないにも関わらずなんだか一歩一歩を踏みだすのに堅くなってしまう感じだ。
それでもいくつかの滝を下降し、最後に大きく巻き下りる滝まで下りてきた。
記憶通りに右岸の薮へ上がると、なんとなく踏み跡ができていた。水害の後林道が崩れたのと、車の回収の関係で、ミチギノ沢右俣を下降するルートが定番になりつつあるようだ。

捨て縄をかけずに懸垂下降できそうな木を見つけ、さてザイルを出すかと荷物を下ろそうとすると、蛇の道は蛇。
トラロープと太いロープの合計3本が垂れ下がっていた。
ロープも、支点となっている木もしっかりしていたので、これを利用して沢床へ下降した。
最初は、傾斜が急であるが灌木も結構生えており、安定して下りられた。途中からは2本目のロープが垂れ下がっており、これに乗り換えて下降を続けると、すぐに足が中に浮くようになった。あわててロープを握りしめる。
2mほど全く土がついていない垂直な岩場となっていた。
この岩のすぐ下には足がきちんと着く草つきとなっており、体勢を整え直して沢床へと降り立った。

途中の岩場が危ないなと思い、モコモコさんに注意を促した。
続いてモコモコさんの下降。最初は薮で姿は見えないが、順調に下りているようだ。
いよいよ懸念の場所だ。
心配していた通り、モコモコさんは滑った。手が小さく握力の弱いモコモコさんでは、太いロープでは力が十分握ることができなかったようだ。
バランスを崩したようで、なかなかその場所から動かないので救出に向かい、自分のバランスの補助としてロープを触ったところ、モコモコさんから「バランス崩れるからロープに触らないで」と怒られてしまった。
モコモコさんは、草つきでなんとか体勢を立て直し沢床へとなんとか無事着地。

下りてきたモコモコさんを改めて見てると、全身ドロドロだった。沢水で泥を洗い流した後、右手の小指がなんだがおかしいとグローブをとると、小指の爪横が切れて血が出ていた。
グローブをしてたのに、些細であるが怪我をしたということは結構どこかに強くぶつけたのだろう。
テーピングをして再出発。

なんだか、朝っぱらから騒ぎになってしまった。
前回は、懸垂下降したのですんなりと通過したが、今回はザイルを出さずに済んだと思ったら思わぬ落とし穴があったという感じだ。
ちなみに、モコモコさんは残置ロープを使って懸垂下降しようと思ったらしいが、ロープが太すぎたのと、途中結び目があったらいけないということで断念したようだ。

騒動の後は、全く問題になることなく河原歩きとなり昨年泊まった所までもうすぐの場所になった。
水害の後、おそらく我々が初めて泊まったであろう場所で、自分たちが見つけたということからなんだか楽しみだなと話しながら進むとやがて、右岸に見覚えのある場所に着いた。

どれどれと上ってみると、見事に泊り場として開拓されていた。
薮がきれいに刈りはらわれて、明るい場所になっており、お日様が顔をのぞかせる様になったので暖かい。これまでゴルジュ状でただでさえ日が当たらないのに、曇りがちなためとても寒かったのでこの暖かさは嬉しい限りだ。
出発からここまで休みなしで来たので、休憩をとることにした。

休憩をとりながら、今日の行程の相談をした。
台風から熱帯低気圧に変わったが、どうやら水曜から木曜日にかけてこの辺りに影響を及ぼすようだ。当初は中門岳へ上がった後、別の沢に下降して沢での泊まりを楽しむ予定だったが、悪天にあたりそうなのと、時間・日程的にも苦しい感じだ。今回は、上梯子沢側に下りること、坪入山に登ること、中門沢を遡行することを目的にきており、すでに前二つの目的は果たした。南会津には、せこせこ焦った登りは似合わない、せっかくはるばる中門沢へといくのだからゆっくりしたい。ということで、この後は引き続きゆっくりと下降して、中門沢へ入っていい所があったらすぐに泊まろう、後の行程はその都度考えようということになった。

御神楽沢出合は50mほど下流へ河原歩きしたところだ。
出合の格好の泊り場は依然として荒れていたが、それでも何人かが泊まるようになったのか整備されつつあった。
御神楽沢の渡渉は、昨年とても大変だった憶えがあるが、渇水の今日はあっけないほどの普通の渡渉だった。
帰宅してから水量を写真で見比べてみると、20cmほどの水量の違いがあった。

御神楽沢への下降へと入る。これまで小さな沢を辿ってきたので、大きいという印象を持った。
右に左に渡渉して歩きやすいところ、水に浸からないよう左右の岩棚に登って淵を巻いたりとしていると、北面であるが日も高くなってきて明るくなって楽しくなってきた。
これまで早く林道歩きしたいな、沢から出たいよと、沢登りに来たのにそれに矛盾する贅沢な願いを口にして下降していたのが嘘のようだ。

やっと楽しくなってきたらあっという間に最後のゴルジュだ。
ここは水に浸かったり、格闘しなくても左岸に巻き道がついて通過できたはずなので、今回も巻き道で下降することにした。
左岸から入る小沢を少し入ったところから取りつく。

側壁を数m登り樹林に入ると、はっきりとした踏み跡が続いている。
この巻きはかなり長かったが、踏み跡がしっかりしており一度通ったことがあるので、思ったよりも早くに林道に着けそうだとこのときは思っていた。
踏み跡はしばらくすると、草つきのトラバースとなった。
モコモコさんは、トラバースへ入る前に急傾斜で上へと上る踏み跡っぽいものを見ていたが、こちらのほうがはっきりとしていたらしい。

少しいやらしいが、無事通過し再び樹林へと入った所踏み跡を見失ってしまった。
手分けして探すが見つからない。仕方がないので歩きやすいところを選んでトラバースしていくと下に少し平坦な場所が見えたので一度下降した。さらに下降ぎみ下流方面へと進むとさらに平坦な所にでた。

ここから先に取水口のコンクリートが見えたので、取水口手前で出合小沢への下降を目的に進もうとすると、物凄い薮に行く手を阻まれた。
どこをどう行こうと、ここを突破しなければいけないようだ。
蔓は山ブドウだった。実がなっていたが、まだまだ青くて食べられない。残念。
激薮地帯はすぐに終わりほっとした。
緩やかな斜面を下降地点を探しながら進んでいくと、なんだかいつの間にか踏み跡に戻っていた。どこでどう外したのか、この踏み跡はどこから出てきたのか狐につままれた感じだが、一安心。
踏み跡を辿り、小沢へと降り立ち、小沢の簡易堰堤のような場所を渡ってから小沢を降りるようやく取水ダムだ。かなりの時間をロスした感じだ。

取水口が見えていた時点で、素直に沢に浸かりながら取水口を行ったほうが早かったと思う。最後に水に濡れたくないという判断が悪かったのかも知れない。


前回は、ポケットバイクバイクが駐輪されていたり、たき火の跡があったりして草もきれいに刈りはらわれて明るい広い場所だったが、林道が崩れてからは入る人もいないのか、幕営跡もなく草が生え始めていた。

前回は迷うことなく辿って行けた踏み跡は、今回しっかりと残ってはいるものの最近釣り人がこちらから入らなくなったためか途中迷いやすいところの手入れ?がされなくなったのだろう。
林道の斜面が崩れていたりして、モーターエンジン、車輪で動くものは全く寄せ付けない道路事情だ。
踏み跡はこのまま自然に還って、本来の山を取り戻すのだろうか・・・。

そんなこんなで、下降に予定よりも時間がかかり、計画をこなすには本日中に行っておかなければいけない場所まで到達することは完全にできなくなった。
やはりさきほどの休憩で立て直した予定通り、いい所があったらすぐに行動を終了しようということになった。
待ちに待った林道歩きだ。

林道は想像以上に草が茂っていたが、路自体はしっかりしていた。
モコモコさんが枝を跨いだときに足をひっかけて転んだりしたが、これまでの沢なかの歩きと違い、ヌルヌルした石で足を滑らせることがなく快適だ。
転んでもビショビショになることもない。

林道歩きを初めてようやく日差しが戻ってきた。
皮肉にも、今回の山行中、一番天気が良かったのがこの林道歩きで、一番気温が高かったのが下山のときだった。それもいい思い出だ。
久しぶりの林道歩きで、収穫物を探しながら進むが、季節がちょうど半端なようで収穫は0だった。
気がつかないうちに袖沢から大きく離れると、これまで比較的落ち着いていた林道には土砂の押し出しや倒木が路を塞いでいる個所が出てくるようになった。
転んだりしないようにやり過ごしていくと、やがてミノコクリ沢を渡る橋となった。
橋を渡りしばらく歩くとミノコクリ取水ダムへと続く林道分岐だ。

この分岐は分かりにくいが、本線?は大きく右に曲がって沢沿いに下流へと向かうので現在地を確認できた。
分岐から先は草の茂った細い道となるので、ここで腹ごしらえをした。

ミノコクリ林道へと入って林道が左へカーブした所で土砂の押し出しがあった。
再び右へカーブした先には、大きく崩落した場所があった。
最近人が入ったのか、良く踏まれて安定はしていたが、足を滑らせると渓底まで一気に転落なので要注意だ。
一番あやしいのはここで、その先にも土砂の押し出しや崩落場所があったが、問題なく進めた。それでも草が茂ったり、大石ゴロゴロをさけたりとそれなりに時間がかかる。
いくつか沢が入ったりしたが、どれもぱっとしない小さなものなので現在地をつかみにくい。
取水ダムは気が付いたらぱっと目の前にあったという感じで着いた。

林道からは、コンクリートに打ちつけられたステップを使って下降し、沢へはさらに一段下りて入渓だ。下りた砂地には足跡があった。まだ新しい感じなので先日の土日に入ったのかもしれない。
流れは比較的広いが、ここも滑っており転倒注意だ。
おだやかな河原歩きを左右きょろきょろしながらいい所ないかな?と探しながら進むことわずか5分。右岸に蕗が茂った、まるで蕗畑のような所があった。
なんだか訴えかけているので、入ってみるとなかなかいい感じだ。
後から来たモコモコさんも気に入ったようだ。モコモコさんは少し奥へと進んでみたが、蕗畑のあたりが一番いいらしい。

少し狭いが、二人なら十分泊まれ、目の前でたき火場所もとれそうだ。本日の打ち合わせ通り、いい場所が見つかったので即行動終了。
早速蕗を刈り、下に敷き、さらに周りの薮を刈りはらうと明るくていい場所になった。
刈りはらった後良く見てみると、入口の灌木には古いノコギリ跡があった。どうやら以前は泊ま場として活躍していたようだ。
公共の交通機関を使って奥只見ダムから林道を歩いてくると、ちょうどここでいい時間になるのかもしれない。

設営が終わった所で、今度は薪集めだ。
河原であるが、水害のせいか痩せてしまって流木もながされてしまったのか薪が少ない。
手分けして集めるが、すぐに使い切ってしまいそうだ。モコモコさんの姿が見えずどこまで拾いに行ったんだ?探しに行くと対岸にいた。
ヌルヌルする沢をいちいち徒渉するのは大変なので、対岸から薪をこちら側に投げているところだった。
頃合いを見計らって回収する。その際モコモコさんの手が滑って、退避していた山人に向かってきたのには焦って逃げようとして尻もちを着いてしまった。
結構痛かったが、本当にすまなそうに謝っており結構な量の薪を集めてくれているので怒る気もなく、引き続き回収を進めた。
投げられる大きさ(重さ)の薪はなくなってしまった頃には、丁度、一晩分には十分な量が集まったので薪集めは終了とした。

整地作業から始めてたき火に熾きができても、普段ならまだ行動している時間だ。昨日の分までのんびりできた。
明日一日も天気がいいらしいが、明後日からは雨が降り出す所があるとのこと。これは大幅に計画を縮小して明後日中に下山した方がよさそうだ。
とういうことで、明日ものんびり中門沢の遡行をして、いい所があったら泊まろうということになった。モコモコさんの読みでは、1500m付近までに泊まり場を確保できそうで、そこまで行けば翌日中の下山が確実だとのこと。

北面の沢なので日が暮れるのが早く、それに伴い一気に気温が下がってきた。
たき火を盛大に燃やして暖をとる至福の時だ。空を見上げると天の川も見える見事な星空。
そろそろ寝ようかということになり、あまりにも見事な星なのでツエルトには入らずに星空を見ながら寝ることにした。
モコモコさんは「付き合いたいけど、風邪引いてるから遠慮しておくよ。寒くなったらすぐにツエルトに入りな」と言ってゴソゴソと中へ潜って行った。

追加した薪にも火がつき、暖かくなった所でシュラフを広げて入り、星空を見ながら横になった。
素晴しい眺めだ。たき火で暖かくいい気分になったところで、なんてこったい、肝心な事に気がついた。
超度近眼が寝ながら星を見るということは、眼鏡をかけていなければいけないということだ。しかし、いつ寝入ってもいいようにするには眼鏡を外さなければならない。目が悪い人は理解できると思うが、視力検査では記号が見えないどころではなく、棒の先端自体が見えないので、どこを指しているかが分からない。そのような目では、裸眼だと星が出ていても暗い空一色にしか見えないのだ。結局の所、何も見えず外で寝ても中で寝ても一緒だということだ。

中にいるモコモコさんに声をかけてツエルトに入った。
モコモコさんから「寒くなった?」と聞かれ「いや。眼鏡外すと星が見えないから。」と答えると、今更であるが、同じくらい目が悪いモコモコさんも妙に納得したようだった。
もぞもぞとシュラフにもぐりこむと、薄い布一枚あるだけで外とは全く違う。中は暖かく、ゆっくり寝ることができた。


二俣はいいところだ きれいなキノコ
巻気味に下りた 昨年よりもずっと水量が少ない
今回も巻き下りた滝 開拓されていた
ちなみに昨年2013年9月の様子 御神楽沢も水量が少ない
この淵を越えた下に入る枝沢から巻きに入った 取水ダム到着
水害でごそっと崩落したミノコクリ林道 ミノコクリ取水ダム
時間は早いが本日はここで終了 蕗畑に泊まった


9月23日(晴れ)
コースタイム;B.P.B7:14〜下の沢出合8:23/9:04〜ウグイ沢出合10:28/10:50〜奥の二俣11:40/12:10〜1430m1:2二俣14:21〜中門沢1500m付近B.P.C14:59

放射冷却で今までで一番冷え込んだ朝になった。
天気予報によると、今日はあまり気温が上がらないらしい。
今日は標高1500m辺りまで行けばいいので、比較的のんびりの行程だ。
ゆっくり朝からたき火にあたりながら朝食を済ませて快適だった場所に別れを告げて出発。

しばらくゴーロ歩きが続く。
下ノ沢までは思ったよりも遠く、時間がかった。
時折ゴーロ滝のような、滝がゴーロで埋まったような場所がでてくるが、おおむねゴーロ歩きだ。途中、手前の沢を下ノ沢だと思ったが、実際の下ノ沢は、沢の岩盤が発達してきた先にあるしっかりとした流れのある沢だった。
下ノ沢出合の手前右岸にいい泊まり場があった。昨日中にここまで来ても十分早い時間からのんびりできたが、昨日は一刻も早く休みたかったのととても快適だったのでよしとしよう。

出合いは日が当たり暖かいので、ゆっくりと休んだ。
下ノ沢を過ぎると、これまで単調で退屈だった沢にも変化が出てきた。
中門沢最初の滝らしい滝(傾斜がある)といってもいい釜を持つ5m滝は、問題なく直登したが、モコモコさんは右岸の階段状のルンゼから巻いてきた。巻き道がうっすらであるができており、落ち口のすぐ上にすんなり出られたようだ。気分によって好きな方を選べる楽しい所だ。
ここまでの滝は、どれも簡単に越えることができ、ぬめるのは相変わらずだが問題なく快適に進めた。

いくつか滝を越えると、河原歩きとなり左岸から下ノ沢よりもずっと水量の少ない金山沢が入った。
金山沢出合のには、以前はインゼルだったような今は広河原丈の中州がいくつも見られた。
しばらく小滝は数個あるものの基本にゴーロ状になり、浮き石等に気をつけていくと左岸から沢が入る。結構水量が多い。地形図ではドングリ沢となっているウグイ沢の出合だ。
当初の計画通りに進むには、最低でも昨日中にここまで来ていなければならなかった所だ。日本登山体系では出合にはビバークするのにいい高台があるとのことだが、見つけることができなかった。月日流れで消滅か?
出合のすぐ上流には良く見ると細い流れが右岸から入り込んでいた。

ウグイ沢を過ぎると、待ってましたとばかりに本格的にナメやナメ滝が連続しするようになった。
全て快適に越えられた。規模や美しさは御神楽沢の方が格段に上で、中門沢は人によっては単純で退屈と思うかもしれない。我々にとっては、中門沢はのんびりしながらも、地味にこつこつこなしていくといつの間にか進んでいたという感じで好感が持てる沢だ。

再び沢が平凡になると、標高1270mの二俣だ。二俣にはウグイ沢から1時間足らずで到着。
晴れてはいるが、気温が低く足が冷たいので日が当たる場所で再び長めの休憩をとった。
時間に余裕があるって素晴らしい。

二俣からは再び快適に越えて行けるナメやナメ滝が続いて楽しい。
多少ぬめってはいるが、上梯子沢よりはずっとましだ。
標高1350m付近になると再び河原歩きとなる。標高1360m付近で幕営跡があった。最近泊まったようで整地されていたが、ここで行動を終了するのには早すぎるのと、翌日の下山があわただしくなりそうなので、標高1500m付近で泊まり場を求めることにして通過した。尚、後日判明したことだが、なんとここは、八幡平の大深山荘でお会いした方が、一週間前に泊まった幕営地だった。日本全国どころか南会津の数ある沢の中、我々とたった一週間違いで同じ所を通過していたとは・・・素晴しい縁に感動した。

中門沢は標高差100mごとに滝場(河原)が続くようで、再び沢が狭まってきた。標高1400m付近から再び連瀑帯になるようだ。
連瀑帯には日が差していない。気温が低いので少しでも日が当たらなくなるととても寒いので、滝場に入る前に日向ぼっこをした。

連瀑帯と言っても、最初はこれまで通りナメやナメ滝で簡単に通過できた。
この調子で標高差100mほどやり過ごせば幕営地が得られるかな?と進むと、右岸から階段状の滝をかけて出合った先で、これまでと少し様子が違いゴルジュ状になった。
ゴルジュといっても、規模は小さく渇水期なので、深いところでもせいぜい股下程度だ。

暗い廊下状に滝が2m、5mと連続してかかっている。2m滝はゴーロ滝でなんなく通過。5m滝はCS滝となっているが、右岸に階段状の岩棚が張り出しておりこれも難なく通過できた。

次の5m滝は、水線は登れないので、淵を小さく巻くように左岸の岩を登る。
最初の一歩の段差が大きく、スタンスホールドともに小さく乏しいので、ヨイショと上ることになったが、ここを登れば後は手がかり豊富だ。最初の一歩がモコモコさんには厳しいかも、と後続のモコモコさんを見守る。
続くモコモコさんは、やはり最初の一歩で苦労している。粘って、一度うまくいきそうだったが失敗。次にいいホールドがみつかったのか少し様子を変えて必死の様子でなんとか一歩上るのに成功。

もたついたのはこの滝だけで、ゴルジュ状はまだ続いたが順調に通過できた。
左岸から再び枝沢が入ると、間もなく沢がゴルジュ状から草つきのV字状へと変わってくる。
そろそろ泊まる場所が欲しくなってきた。V字状渓であるのと沢自体の傾斜がまだあるので、なかなかいい場所が見つからない。
小滝やゴーロ滝でどんどん高度を稼ぎ、3m滝を右岸から巻いた。滝上には亀甲状にひびが入った面白い岩を発見できた。

V字渓のようなゴルジュという状態は続いたが、ヤブが沢まで結構下りてくるようになった。
いくつか小滝を越えてゴルジュの終わりと言えるような4m滝が現れた。滝上は空が広がっている。4m滝は滝横にVIP専用階段のように階段状に溝が入っているので簡単に越えられた。
滝上は一気に傾斜が緩み渓が広がった。

泊まり場を見つけるチャンスだ。
薮が沢床まで下りてきたり、スカンポが茂っているところをのぞいてみたりするが、石がごろごろしていたり傾斜が強かったりでなかなか泊まれそうな場所が見つからない。
そろそろ標高1500m付近で再び沢が狭まり傾斜が強まってくる頃だ。
焦ってきた頃、なんだかテンバの匂いがする。モコモコさんも同じようで、ヤブの中へと入って行った。
先行して沢通しに歩いていると、鋸の跡があった。薮の中のモコモコさんにテンバ近しと声をかける。
思った通り、少し先に広く綺麗に薮が刈りはらわれたいい場所があった。整地して間もないらしく、刈り取ったスカンポもまだ完全には枯れていなかった。

時間に余裕があるからとのんびりしすぎて、到着が予定よりも少し遅れてしまったが、整地されているのですぐに設営にかかることができた。
雪国で標高をここまであげてしまうと、ちょうどいい薪がなかなか集まらないのが悩みの種だが、全泊した方が集めてくれた薪が残っていたのでありがたく使わせてもらった。
それでも焚きつけに丁度いい太さの薪はなかなかないので、モコモコさんが少し遠くまで探しに行ってくれた。
努力の甲斐あり、焚きつけに必要な薪も少ないながらも思ったより集まった。早速点火し、たき火が点き始めて一安心。ところが、薪が少ないのに熾きができる前に直に鍋を置いたたため鎮火してしまった。

これにはモコモコさんがっかり。
モコモコさんも着替えを済ませてしまったので、もはや薪を集めにいけない。
なんとか燃え残ったのを集めて再点火。火は点いたが、ますます少なくなった薪では、さきほどのようにはならずなかなか燃え上がらない。
下の太い木に火が点くまで、そばで過ごしていたが、日が陰って寒くなってきた。
たき火が安定するまでツエルトの中で過ごすことにした。

体が冷えているので温かい物を飲んだりしていると、ようやくたき火は安定したようだ。
今山行中、一番標高が高い場所でのたき火なので、さすがに火が当たってないところは寒いが、たき火は偉大だ。冷えた体を温めてくれた。
ラジオから聞こえてくる天気予報では、明日の夜早いところでは夕方には雨が降り出す所があるとのことだ。
天気予報を聞いて作戦会議。
ここまでくればお昼頃までには中門岳に着けるだろう。明日の夜からは天気が悪いので、日程も考えて沢の下降はやめよう。中門岳や会津駒ケ岳をゆっくり散策して、折角なので駒ノ小屋に泊まろうかということになった。

天気は悪化するらしいが明日のお昼までは雨の心配はないので、今晩もたき火にあたりながらゆったりとした時を過ごすことができた。


4日目朝 蕗畑 快適な所だった しばらくゴーロ歩き
下の沢出合 滝が出てくるようになった
ぬめるが上梯子沢に比べれば快適 幅広の滝
ウグイ沢を過ぎるとナメやナメ滝が続くようになった どれも快適に登って行けて楽しい
ナメ最高 二俣の先は河原歩きもあるが、ほとんどがこんな感じで進める
標高1400m前後から連瀑帯となる 日が当らないととても寒い 右岸から沢が出合う
ゴルジュっぽくなった ゴルジュ状入口を振り返る
この滝を越える最初の一歩でモコモコさんが苦労した ゴルジュの中で右岸から入る枝沢
面白い亀裂 そろそろ泊まり場が欲しい
ゴルジュ出口の滝 4日目 絶好の泊まり場



9月23日(曇り夕方から雨)
コースタイム;B.P.C6:54〜中門沢1530m二俣7:01〜中門岳西の尾根10:19〜中門岳10:54〜駒ヶ岳登山口バス停15:01


曇りのためか冷え込みは少なかった。
それでも遡行用の服に着替えたり、靴下を履いたりするのはつらい。我々の沢シーズンもおしまいだな。
快適に過ごさせてくれた幕営地に別れを告げ、出発。

出発してすぐに沢は狭まりゴルジュ状になった。朝っぱらから水に浸かりたくはないが、ここの水深も浅いので問題なかった。
短いゴルジュの先には滝が掛っていた。
2段の滝かと思ったら、3m滝がかかり、その先で沢は右に曲がって6m滝をかけていた。3m滝は滝横の階段状のバンドをスリップに気を付けて通過。
その次の6m滝は、てっきり2条の滝かと思ったら、実は左の流れは15m滝をかけて入る左俣だった。滝下がちょうど1530mの二俣だったのだ。

6m滝は中段まで並行する左俣の滝を登ってから本流の滝を引き続き登った。ホールド豊富で楽しい登りだった。
滝上は連瀑帯となり、数え切れないほどのナメやナメ滝が続いた。

珍しく堰堤状の3m滝があったりもするが、すぐにナメやナメ滝帯に戻る。素晴しい。
沢の規模が小さいので、ヤブがかかり開けた感はないが十分楽しめる。
どこをどう区切ったらいいかわからなく、いくつも滝を越えていくのでもはや何が何だか分からなくなった頃、トイ状の多段滝が現れた。

多段滝を越えてさらに進んでいくと、10×25mナメとなり、先には2条滝が見える。ナメをひたひた歩き、2条滝下へと向かう。
2条滝は15mほどの高さで、階段状なので快適に登れた。
2条滝上にも2〜3mの小滝の連瀑となっていた。、

連瀑が落ち着くと、左岸から崩壊したガレに埋もれた小さな枝沢が入ってきた。そろそろ1750mの二俣だ。
小滝を越え、3mCS滝を右から巻くと、1750mの二俣となった。
どちらに入っても中門岳に抜けられるが、右俣の方が高いところまで窪が続いているようなので、ここは右に入った。

ゴーロとなったが水は豊富で、どんどんと高度を上げていく。
ここでいつも秋の沢の楽しみとしてイチゴを食べられることを期待するが、イチゴの木は豊富にあるものの残念1週間遅かった。実は落ちてしまい、葉も茶色く枯れる寸前だった。それでも早熟なのもあれば晩生のものもあるのか、いくつかは摘むことができた。

一か所登れない棚状の滝があったので、右の草つきを巻いたが、踏み跡があった。
再び二俣だ。水量比は1:1で、ここは左に入った。左沢はすぐに水が伏流気味となり心もとなくなったので、水を汲んで行く。か細くはあるが水流はかなり上まで続いており、窪も思ったよりも上へと続いていた。

笹がうるさくなり、とうとう10:05に窪がなくなりヤブ漕ぎ開始となった。
できるだけ薮の薄いところ、水が流れた後のような所や立木を目標に中門岳と1987.8mのピークとの尾根を目指す。
ここも背丈以上の密な笹薮が中心だが、素直なので坪入山の薮と比べればかわいいものだ。

先に空が見える様になると、中門岳と1987.8mのピークとの尾根に着いた。

方向を中門岳へと変えてヤブ漕ぎを続けることわずかで、湿原がぽっかりと現れた。
ヤブ漕ぎ中の正しくオアシスだ。日当たりが良く暖かいので周りの景色を眺めながら休憩した。

登山道まではあともう少し。
これまでの笹薮中心から、背の低い栂のような針葉樹が混ざるようになった。
栂は引っかかるだけでなく、葉がふりかけのように降ってくるのが困る。
最後のヤブ漕ぎを大事に?進むと目の前から突然薮がなくなり湿原が目に飛び込んだ。嬉しい瞬間だ。後続のモコモコさんに「出たよー」と声をかけて励ます。
薮をがさごそと音を立てて出てきたモコモコさんも嬉しそうだ。

登山道となっている木道は湿原を挟んだ向かい側にある。そおっと湿原を渡り木道へ上った。
このまま会津駒ケ岳へ向かえば早いが、折角なので山頂湿原を散策することにした。
これが正解で木道は山頂台地へただ一本道で往復するのではなくて、ぐるっと一周できるようになっていた。散策中に単独の男性が我々を追い越して行っただけで貸し切りだ。
御神楽沢を挟んだ向こうの稜線は、今年5月に歩いた窓明山、三岩岳から会津駒ケ岳へと繋がる尾根だ。

計画では2013年秋又は今年の5月には繋がっていたはずの坪入山から始まる窓明山、三岩岳から会津駒ケ岳の稜線に、坪入山と中門岳、会津駒ヶ岳に針の糸を通すように一つのラインを完結できたことに大きな喜びの気持ちが湧き上がってきた。
喜びに浸りながら、あそこの湿原は薮を避けて尾根を巻いたところだ等の思い出話をした。

名残惜しいが山頂を後にして会津駒ケ岳へと向かう。
ぐるっと一周して分岐まで戻りここから先は、詰め上がった尾根にあるオアシスから見えた稜線歩きだ。
これほど尾根の東西で違うのかという感じで、オアシスから見た稜線は、湿原が到底あるとは思えない樹林と笹がこんもりと生えた斜面だったが、ひっくり返す(反対側へ回ると)延々と続く山稜全てが湿原の素晴しい尾根だった。
当初ではオアシスから反対側の沢へ下降する計画だったが、断念して逆によかったかもしれないと思うほどだ。 あまりにも見事で、なかなか足が進まない。

のんびり写真を撮ったり、周りの景色を楽しんだりすると、広い鞍部にある池(中門大池)に向かって木道は下りて行った。
登山地図にある山頂標識はさきほどの山頂湿原ではなく中門大池に立っていた。標識脇にある解説によれば、中門岳とはこの一帯をいうとのことだ。

湿原はまだまだ続き、昨年御神楽沢から上ってきたところまで、さらには山頂直下まで続いていた。
これだけ広く長い湿原で出会ったのは、さきほどの男性一人と中門岳へと向かう単独の男性のみだった。
会津駒ケ岳の巻き道分岐で、例によってモコモコさんの「私山頂に行かない」が出た。分岐にはちょうどベンチがあったので、荷物を置いて山人が代表して山頂を踏んでくることになった。

平日だけあって会津駒ケ岳山頂も貸し切りだった。
分岐へ戻り、少し腹ごしらえして巻き道へ。巻き道と言ってもすぐに山頂からの道と合流したので、荷物を背負って山越えした方が早かったかもしれない。
相変わらず静かな木道歩きをして駒ノ小屋前の池まで来た。昨日話した駒ノ小屋泊まりだが、翌日悪天候になるとのことで今日中に下りた方が良いということになっていたので、そのまま下山にかかった。

さすがに会津駒ヶ岳は人気で、平日でも何組かと出会った。中門岳は時間的に中途半端だったのか往復する人が少ないのか分からないが、折角会津駒ケ岳まで登ったのだったら往復しないともったいないと思った。
のんびりと下山して登山口のトイレで一度荷物を下ろした。
17:00までバスがないので、それまでに入浴と食事を済ませたいと思い、「アルザ」にするか「駒の湯」にするか営業時間等を確かめようとしたのだ。

するとトイレを済ませたモコモコさんが一気に疑問点を解決する物を発見。
温泉情報があったのだ。見てみると「アルザ」は本日営業しているらしい。お風呂としては駒の湯の方に入りたいが、食事をする場所が近くにないため「アルザ」へ行くことにした。距離は登山口からは両方とも同じくらいだ。

アルザの隣にある尾瀬交流センターの食堂の営業時間は16:45までとなっていたので、最初に食事をとり、アルザへ移動して入浴した。
アルザのお風呂は、洗い場こそ囲われてた室内になっているが、露天風呂しかないので今日はまだいいが、これから季節が進むとちょっと寒くて大変だと思った。

5日間分の汚れを落とせ、冷えた体を温めることができて大満足だ。
玄関外に置いた荷物の所でパッキングをしていると、傍の大きな栗の木からイガ栗爆弾が音を立てて落ちてくる。桧枝岐はすっかり実りの秋だ。
イガ栗だけでなく、これまでこらえていてくれた空からはとうとうポツリポツリと雨が落ちてきた。

交流センター前のバス停へ移動し、お土産を見ながらバスを待つ。
定刻でやってきたバスに乗り込むと、なんと運転手さんは行きにも我々を乗せてくれた方で、最近は小立岩で下りる人がいるのは珍しいので我々のことを憶えていてくれたとのことだった。

水害以降は、めっきりバス利用の沢登りの人が減ってしまったとのことだ。それに関連して水害による土砂災害のときの様子など色々と聞くことができた。
雨降りの中、会津高原駅へ貸し切りのバスが着いたときはすっかり夜の帳がおりていた。
一時雨がぱらついたこともあったが、秋なのにほぼ入山中いい天気だった幸運に恵まれ、ヌルヌルには苦労したが、自由な沢旅を満喫できた。
南会津はやっぱりいいな。


両俣とも滝で出合う1530m二俣 ナメが続く
快適に越えられる連瀑帯 珍しく堰堤状の滝3m
どこで区切ればいいのかわからないナメ滝 時折このように変化がある
ナメ滝は続くよ トイ状の多段滝
10×25mナメ 2条滝
2状滝の上にもさらに3段のナメ滝 色づいてきた
片貝スラブが見えた 2038mのピークが後方に見える
ヤブ漕ぎのオアシス オアシスから2038mピーク
中門岳〜会津駒ケ岳の稜線 燧ケ岳
木道が見えた そおっと湿原を横断して木道へ
中門岳の山頂湿原 中門大池 山頂標識が立つ
中門岳〜会津駒ケ岳の稜線 荒れていない稜線の湿原が続く
会津駒ケ岳への登りから中門岳 会津駒ヶ岳山頂を貸し切りで



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