山域 朝日連峰
コース 大鳥〜以東岳〜狐穴小屋〜二ツ石尾根〜天狗小屋〜大井沢
〜朝日連峰再び〜
日程 2015年6月20日〜6月24日

昨年のウスユキソウの大群落や釣りの楽しさに味をしめて、またもや、朝日連峰に行ってきた。
今回は距離を稼ぐということはなく、朝日連峰の秘めてる奥深さを体感したような山旅となった。
データ 山と高原地図;朝日連峰

アプローチ

池袋駅23:10-東京第一ホテル鶴岡6:05/鶴岡駅前7:52-登山口9:02

コースタイム
6月20日(曇り時々晴れ)
 大鳥9:10〜泡滝ダム12:37〜大鳥小屋16:49(宿泊)
6月21日(晴れのち雷雨)
 大鳥小屋5:32〜以東岳10:33〜狐穴小屋12:56(宿泊)
6月22日(ガスのちくもり)
 狐穴小屋7:01〜二ツ石山10:08〜天狗小屋13:20(宿泊)
6月23日(晴れのちくもり)
 天狗小屋5:51〜出谷川7:26/11:33〜天狗小屋13:55(宿泊)
6月24日(晴れ)
 天狗小屋5:02〜南俣沢8:57〜大井沢(湯ったり館)10:00


6月20日(曇り時々晴れ)
コースタイム; 大鳥9:10〜泡滝ダム12:37〜大鳥小屋16:49(宿泊)

 鶴岡までは、満席直前に予約が取れた夜行バスでのアプローチ。モコモコさんは大宮から乗ろうというが、乗り換えなど考え池袋から乗ることにした。ところがこれが問題で、乗り場が分からずに迷ってしまった。無事辿り着くことは出来たが、バスに乗る前に焦ってしまった。モコモコさんは「だから乗り場が分かっている大宮から乗ろうと言ったんだよー」と騒いでいた。

バスは定刻で出発したが、今回は席に余裕がない時に取った予約なので、モコモコさんとは席が離れてしまった。それでも寝ているだけだからと思ったのが甘かった。
後ろの席に乗った人が、しょっちゅう足を組み替えているのか分からないが席に足をぶつけられ、挙句の果てには、4:00頃からアラームを5分起きにずっと鳴らしていて寝られない。早くに下りるのかと思ったら、我々と同じ場所で下りていた。アプローチでケチがつくとその後の山行でもケチがつくことが多いので、なんだかいやな予感。

いやな予感を払拭するために、バスでもらった割引優待券を利用して、ホテルのレストランで豪華な朝食をとった。お風呂もこの優待券で格安に入れるが、そこまで時間はないので、ゆっくりコーヒーを飲んでバス乗り場へ移動した。

バスは我々のみの貸し切りかと思ったが、何人か利用していた。しかし、大鳥に着くころにはやはり貸し切りとなった。
朝日屋さんで登山届を出して、支度をしていると、おかみさんが掃除の為に外に出てきたので挨拶をすることができ、大旦那さんが小屋へ入っていると教えてくれた。そのすぐ後に旦那さんも出てきたので、挨拶をして登山道の様子を聞くことができた。懸念の登山道の残雪状況が分かり助かった。

蒸し暑い中、重い荷物を背負って出発。
汗が早くも出てくる。
その横を土砂を積んだダンプカーが何台も往来している。モコモコさんによると、大鳥までの道の途中でトンネルを掘っていた(そのとき居眠りしていたので、モコモコさんしか見ていない)ので、その土砂を捨てに行くのだろうとのこと。

ダンプカーのほかに、給水車が途中の沢の所で停まっていた。水の補給をしていたのかな?ダンプカーが通るので、道は埃がすごい。舗装されているのが救いだ。
暑いよーと言いながらも、蘇岡発電所に到着。ここで大鳥川を渡る橋を通過するが、猛禽類やら、つばめさんなどの鳥さんがたくさん飛んでいた。
ここからは、砂利道の狭い林道となる。
物凄い埃りを覚悟していたが、先ほどの給水していた車が散水してくれていたので、思ったよりも埃が立たずに済んだ。

道幅が狭いので、ダンプが来るたびに路肩の薮によけていたが、待避所の数字を見ると、だんだん数字が小さくなり、とうとう2になった。そのすぐ先でブルドーザーやシャベルカーが作業をしている音がする。やっと土砂捨て場まで着た。直前に待避所で対向車を待っていた運転手さんにどこまで行くのか声を掛けられ、励まされた。
土砂捨て場では、ダンプカーとシャベルカーの連係プレーが見事だった。

ここをすぎると、一気に静かになった。
何台か車が通り過ぎて行ったが、すぐに引き返してきたりしたので特に用があるわけではないらしい。道の終わりを確認したかったのかな?
泡滝ダムまではまだまだ遠く、モコモコさんは靴ずれができてパワーダウン。

大鳥から泡滝ダムまで3時間かけて歩いてやっと入山だ。
登山道に入る前に少し腹ごしらえした。
当初懸念していた滑落の危険性がある大鳥川へダイブするような残雪がなく助かった。一か所だけ、昨年は残雪に簡単に乗ってさくっと通過した所は、なぜかすっぱりと登山道の所で切れ落ちていて残雪に乗れず、一度沢床へ降りて通過したが、特に問題なく通過できた。

このあたりにはおいしい水場があるので、休憩していると、残雪の手前から見かけていた日帰りの方が続けて下山してきた。車があると、軽い荷物で行き来できるんだなと少し羨ましくなった。
長々と歩いて相変わらずよく整備されている、当たり前だが揺れる吊橋を渡り登りに入る前に休憩をとった。
休憩時にまた一人の下山者と遭遇。以東岳まで行ってきたとのことだが、生憎山頂では雨、下りてきたら晴れてきたとのことだった。

吊橋からはつづら折れの登りだ。モコモコさんがこの登りって何回折り返すんだっけ?と聞いてきた。わからないと答えると、登りに入ったこともありモコモコさんも無口になった。後でモコモコさんから聞いたところによると、何回曲がるか数えていたそうだ。結局のところ何回曲がったか忘れたが、15までは数えたらしい。

水筒いらずの登りに入ると、飲みやすいように柄杓がきちんと備え付けられているので、特に喉が渇いていなくてもごくごく水を飲んでしまう。
おなかをタプタプいわせながら登って行くと、傾斜がきつくなってきた。
もうすぐ小屋かな?と思っていると、二人下山してくる方が見えた。そのうち一人は大鳥小屋の管理に入っていた朝日屋さんの大旦那さんだった。

挨拶をすると、朝日屋さんから連絡が行っていたようで、我々の入る場所を準備しておいてくれたとのこと。ありがたいことです。
お会いできて喜んだのもつかの間、「釣りに来たんだって?今週は釣れないみたいだよ。先週は釣れたらしいんだけど。ここ最近異常に暑かったら釣れなくなったみたいだ。」と愕然とする内容の言葉。
直後に以東岳に登ってきたという方とも挨拶を交わす。以東岳はガスで何も見えなかったとのこと。七ツ滝沢の吊橋を渡った所であった方も、上は雨で下りてきたら晴れてきたと言っていたので、今日は登山も釣りもさっぱりだめといった様子。

一気に、これまでの疲れと、重荷がズシッと堪えてきた。
やっとの思いでたどり着いた大鳥小屋。朝日屋さんのお陰で、我々が入る場所はござが敷かれて確保されていた。結構な人が入っていたので、助かりました。
止めようかどうしようか迷ったが、折角なので疲れた体に鞭打って釣りに入った。
土曜日とあってライバルだらけ。(宿泊者20数名)

それなのに、釣れた様子の人はいない。
嬉しそうにしている釣れた人を見ると、釣れたのはヒメマスではなくイワナちゃん。足回りを見ると、沢靴だ。東沢のほうまで足を延ばして沢に入らないとどうやら釣れないようだ。
池を見て絶句。GWに薄々感じていたが、今年は雪解けが異常に早い。そのため水温が上がったので、ヒメマスちゃん達は大鳥池の涼しい奥深くまで潜っていたのではないかと思われる。今年は2週間ほど遅かったのかな〜?結果はと言いますと、ちびイワナ数匹(もちろんリリース)でヒメマス釣れませんでした。泣き(ToT)/~~~・・・。
大鳥小屋で寂しい反省会となり、気持ちと並行するように外にはガスが下りてきた。ヒメマス釣りが空振りに終わり、空しく大鳥小屋の夜は更けていった。

6月21日(晴れのち雷雨)
コースタイム:大鳥小屋5:32〜以東岳10:33〜狐穴小屋12:56(宿泊)

翌日、起きてみると天候が良いので竜門小屋まで足を延ばす予定。
昨日の様子を見てもどうせ釣れないだろうと、今日は釣りをしないで行くことにした。
寂しい昨日とは気持ちを切り替えて、今日は寒江山のウスユキソウの群落が見られることに期待をする。
最近暑い日が続くので、涼しいうちに登りを済ませようと早めに出発したつもり。
釣り人は、今朝も糸を垂らしているが・・・静かだ・・・。

大きなブナの木を見ながらときおり大きく掘れた登山道をえっちらおっちら登って行く。今回予備日を含めて長く日程を用意してきたので、その分嵩んだ食料が重い。
北面で日がまだあまり当たらないのが救い。それでも汗が出てくる。

標高1200m辺りを過ぎると、ブナの木が突然なくなって灌木帯になってきた。あまりにもきっちりと線引きされているのがなんだか不思議だった。
三角峰の巻きに入る手前にあるピョコが近くなってくると、灌木も低くなってきて視界が開けてくる。その分一気に日が差し込んできて暑くなった。

秋になるとよく見える唇池(勝手にそう呼んでいます)はどこだったっけ?と探しながら歩いていると、猛禽類らしき鳥さんが飛んで木に留まった。
遠目だが、あまり木に留まった大型の鳥を見ることがないので、再び飛び立つまでしばらく観察した。

そこから少し登ると、ピョコ手前にある展望台で、そこからは化穴山へと続く稜線が良く見えた。
ピョコと三角峰の巻きに入る間はちょっとした残雪があり、涼しいので休憩した。ここからまたもや線引きしたように一気に森林限界となる。

残雪を少し歩いて続く登山道へと難なく入ると、花の盛りは終わってしまったが、チングルマがちらほら見られるようになった。
ニッコウキスゲはまたつぼみの準備中で、ヒメサユリがポツポツ見られる。
水場の標柱まできたところで、これまで確認したことがない水場を見に行こうと少し踏み跡を辿ってみたが、なんだか遠そうなので止めた。

オツボ峰手前からウスユキソウが見られるようになった。
なかなかいい感じで何枚も写真を撮りながら行くと、何度も重荷でかがむことになるのでとても時間がかかって疲れる。それでも次々とでてくる花に励まされながら進むと、前方から大鳥小屋でみかけた高校生がやってきた。

挨拶をしてすれ違う。こちらは登りなので、顔をきちんと見ることはなかったため、誰が顧問の先生(大人の付き添い)かわからずお話を伺うことなくそのまま交差終了。
この時期のこのあたりが活動範囲となるなら学校の山岳部もいいものだな、となんだか爽やかな気分になった。

気分とは裏腹に、以東岳にはガスがかかってきた。天気予報ではお昼くらいから不安定な天気になるとのこと。昨日見た予報でも今日の午後3時には本格的に雨が降るらしい。
登り始めてからコースタイムを大幅に上回ってオツボ峰に到着。
朝日や飯豊は、花や見どころが多いので数歩歩いては立ち止まって見入って、写真を撮ってと歩く以外のことに忙しいのでコースタイム通りには歩けないのが我々の定番だ。そのため日程に余裕をもっているが、少し遊びすぎたか?

それでも反省しない我々は、15:00まで遅くとも16:00までには竜門小屋へ着けるだろうとますます歩みを遅くする。熊の毛皮だー、チングルマ凄い、以東小屋が見える、ガスが晴れた、バカ虫うるさい、お腹すいた、熊の毛皮ー(以下繰り返し)とことごとく足を止め、以東岳に着いたのはなんと出発して5時間もたってからだった。コースタイムを1時間以上オーバー。これぞ山モコスタイル。この後どれだけオーバーするのかな?

山頂から一下りして松虫岩。ここの岩の一つにオットセイ岩と勝手に名付けて喜んでいる所だ。
更に下る所では、花がきれいだが、ハクサンイチゲは終わってしまったらしく株はあるが花はあまり見られなかった。
一気に傾斜が緩んで歩きやすくなってからは、まだ草が成長して間もない感じで、草原になるまであと一歩というところか。

辺りから雷がゴロゴロと鳴り出し不気味な感じになってきた。
相模尾根や後の以東岳を見ると、相模尾根には黒い雲が掛り始め、以東岳にも黙々と雲が立っていた。
少し遊びを控えて歩きに集中することにした。

中先峰手前のミズスマシ池(勝手に命名)まで着たところで、雷がゴロゴロしているのにモコモコさんは何も言わずザックを下ろした。
「三度目の正直、今日こそ捕まえるのだ。」と池に手を突っ込んで何度か挑戦したところ、見事に捕獲成功。
水の上ではあれほどの猛スピードでスイスイ泳いでいたのが、水がないと全くといっていいほど動けないようで、軍手の上ではおとなしくしてくれたので写真を撮ることができた。念願かなった。

中先峰を目指していくと、雷の音が近づいてきた。
「まだ相模山の向こうだ、狐まで間にあう」となんの根拠もなく言いながら、歩いていく。中先峰すぐ先の小さなピークはモアイ岩(勝手に命名)があってお気に入りの場所だ。この前の辺りにはウスユキソウの群落があってなかなかきれいだ。
後ろを振り明けると、以東岳はすっかりガスの中で、黒雲に覆われつつある。

遠くから見ると平坦ですぐに狐穴小屋に着けそうな稜線も、実際歩いてみると、緩やかなアップダウンがあり意外に遠い。
雷はどんどん近づいてきて、小屋手前の登山道が再び笹原の中の道になった辺りで、とうとう雨がポツポツ落ちてきた。
「三ツ石のときみたいになるのヤダー※」と急ぎ足になった。ところが、本人は走っているつもりで足を動かすが、荷物が重くて登り調子なので走れない。夢の中で、何かから逃げるときに足が動かないというのがあるが、それが現実に起きたようだった。それに伴ない、雷がどこかに落ちた音までする。ここは大平原、我々は雷様の格好の的だ。寒江山の標柱を思い出す。小屋がすぐそこに見えているのに・・・。動かない足がもどかしかった。
※裏岩手の三ツ石山荘まであと10分というところで、土砂降りに合って雨具を着る間もなくびしょ濡れになった。

小屋直前の残雪まできて、「うわーこれじゃ早く歩けないよ」と焦ったが、思ったよりも雪上は歩きやすく、雪から下りるのも簡単で助かった。
これを過ぎれば小屋まで数m、滑りこみセーフで逃げ込むことができた。小屋に一気に駆けこんで「間にあったー」と一気に胸をなでおろす。
そうそう、うかうかもしていられない。頭上の空も真っ暗だ。

急いで顔を洗って水汲みを済ませて小屋へ入った途端、物凄い勢いで雨が降ってきた。数m先は見えないほどだ。
間一髪だった。水汲み中にこの降りにあったら、数秒といえどもびしょぬれ確実だった。
そうそうすぐには止まないだろうから、靴を脱いで小屋内へと上がる。

その後も、激しい雨が短時間だが降り続いた。
小屋で荷物を広げて寛げば、外はまだ雷が鳴っているし、時折雨はザーッと降るし、寒気の影響か寒くなってくるしで竜門小屋へどうしても行くという考えはすっかりなくなった。

当初の予定では、竜門小屋(泊)〜大朝日岳〜角楢小屋(泊)〜五味沢だった。大鳥池のみならず荒川でも釣りをするために、このコース設定にしたのだが、今日中に竜門小屋へ入れないことで諦めることにした。
しかし、折角、竿を担いで来たのだからということで別の意味で欲が出た。そこで、朝日連峰を代表する八久和川(出谷川)で釣りをするという目標に変更となった。

なぜか朝日連峰主稜線に来ると、意図的が多分にあるが狐穴小屋に泊まることが多い。今回も狐穴小屋泊は全く計画に入れていなかったが、蓋を開ければこの通り。狐穴小屋に呼ばれたのだと勝手に解釈して、のんびりと小屋生活を満喫することにした。
着替えを済ませて、狐文庫(小屋備え付けの本)の「死ぬかと思った」を読んで一笑した後昼寝を楽しんだ。

一寝してから外を見ると、いつの間にか雨は止んでガスがとれている所も出てきた。そんな中、以東岳方面の眺めが見事だった。
もともと人が少ないこの時期でこの天気。我々のほか誰もおらず小屋はこのまま貸し切りとなりそうだ。日没を迎えると、小屋内からはっきりと日が沈む様子を見ることができた。
月山や鳥海山方面も見えた。


6月22日(ガスのちくもり)
コースタイム:狐穴小屋7:01〜二ツ石山10:08〜天狗小屋13:20(宿泊)

狐穴小屋は貸し切りでゆったり過ごすことができた。
天候は雨が降っておらず、ガスっている状態。
寒江山のウスユキソウの群落を見るのも朝日連峰へ足を運んだ一つの理由であるが、今回は見送ることにした。
そうと決まれば主稜線の縦走に未練はなくなり、昨日立てなおした予定通り、「八和久川で大物を釣りたい。」ということで本日は天狗小屋まで移動とすることにした。

小屋を出発してすぐにある狐(コン)浴?!風呂は、朝夕はそこまで暑くないのでまだ営業前といった感じだ。
以東岳は残念ながらガスでまだ見えない。
出発時はガスで、気温も高くないので雨具を上に羽織っていたが暑くなったので、高松峰辺りで脱ぐことにした。途端に、バカ虫(ブヨ)がわんさか湧いて出てきたので、防虫ネットを装備することにした。これから痩せ尾根が連続するため、ただでさえうっとうしいバカ虫にたかられると面倒だ。持ってきて正解だった。

最近一番多く通っている気がする二つ石尾根であるが、いつ通っても新鮮な気がする。
標高が低いので高山植物の楽しみは全くないと思っていたが、ヒメサユリが咲いていたりとガスで周りが見えなくても目の保養になった。
高松峰のザレた露岩の下りでは、砂で滑りがちなので慎重に下降。
ここは登りでも下りでもちょいと面倒だな。雪がちょうどいい軟らかさで残っているときに登りとるのが、一番楽に通過できると思った。

一気に降りて、さらにじゃんけん岩(雪が残っていると、狐穴小屋側から見た場合に岩がチョキを出しているように見えるとのことでモコモコさんが勝手に命名)を巻き下りる。巻きの直前がザレているところがありここも慎重に通過。ここは雪があってもなくても二ツ石尾根中一番いやらしい所だと思う。
オバラメキ辺りは、ガスがかかると逆に格好が良く見える。

続く痩せ尾根や切れ落ちた斜面すれすれに続く道を順調にやりすごすと、オバラメキコバラメキのど真ん中になったという感じがする。
後ろを振り返ると、主稜線は濃いガスの中。これでは主稜線の縦走を続行してたとしても視界はきかなかっただろう。
標高の低い二ツ石尾根はガスのかかったところは少なく、逆にガスが周りを格好よく見せる演出をしていた。
サイコロ岩(これも勝手に命名)を越えれば、岩場は終了。

二ツ石の水場へどんどん下降。
標柱前の熊さんの糞はまだあった。平坦なので、そのまま雪が溶けても残ったようだ。標柱はあまりにもボロボロなので、毎回通るたびに、「ボロボロだなー」とあとどれぐらい踏ん張ってくれるのか心配になってしまう。がんばれ!!熊さんの攻撃に耐えてくれ。

いつもなら休憩する所だが、昨日の雨で下がぬれているので通過することにした。その直後、朝日名物巨大ナメック(我々はナメクジのことをこう呼んでいる)発見。見つけてしまったので、写真撮影せねばなるまい、と喜んでモコモコさんに声を掛けるが、「気持ち悪いから見ないよ」と先へ行ってしまった。
写真が撮れたので、「上手く撮れたよ、後で見せてあげるよ」と教えてあげるが、「そんなの見ないよ、それより(採り頃の)竹の子ないなー」とあっさり話題を切りかえられてしまった。

確かに竹の子がない。この辺りはこの時期竹の子が採れること多いので、時にはそのままかじって食べたりするのだが、今年は暑さの為に既に伸びてしまっている。それでも食い意地が張っている我々は、なんとか食べられそうなものをブチブチと手折りながら進んだ。二人で時間をかければ、登山道だけでも結構な量になるものだ。このうちどれだけの量が食用になるかは後のお楽しみだ。

二ツ石山に登る前にさすがの尾根もガスにまかれてしまった。
ここから主稜線を見ることができなかったのが残念だ。
湯沢峰を越えた先で、雨が降り始めた。雨具なしでも行けるかと思ったが、結構本降りになったので雨具を慌てて着こんだ。
「こういうのって雨具を着た途端やんだりするよね」とモコモコさんが言う通り、雨はすぐ止んだ。そこで脱ごうかなと思うと再び降ってきたりということがしばらく続いた。
やがてガスが晴れてきて完全に雨がやんだので、雨具を脱いだ。こういうことをしていると、平気で10分20分過ぎてしまう。

湯沢峰を過ぎてからは、灌木の背が高くなり、時折樹林の道となる。灌木帯で見附川側に付けられた登山道は、雪が年々木や草を巻き込んで土を落としてしまうので、崩壊している場所を通ることが多くなってくる。
登山道が崩壊に巻き込まれた場所は、薮を開いて道を付け替えてくれているので歩きやすくなっているところが所々見られる。管理されている方には感謝だ。

ウツノシマを過ぎた先の一瞬平坦になる所では、雪消えして間もない感じだった。
やがて鞍部を過ぎて、登りに入ると、崩壊したところがますます増えた。完全に落ちてはいないので歩くには支障ない。
こんなに登るならなんでここまで高度を下げるかなといつも文句を言いたくなる登りだ。出発時は、小屋に着いたら釣りに行こうかなと話していたが、二ツ石山を過ぎた辺りからモコモコさんが「私は今日行ってくるの時間的に無理かも、一人で行ってくる?」「一人だったが行ってこられると思う」といった事に変わっていた。その内、だんだん釣りどうしようかな?になっていた。それでもこの時点ではまだ釣りに行く気は半分は残っていた。
やがて掘れた登山道が岩溝になると、「これが出てくれば急な登りはもうすぐ終わりだよ」とモコモコさんからの嬉しい言葉。

どれどれと先を見ると、上が明るい。
今日の登りはもうすぐ終了だ。登りが終わったと同時にそれまであった釣りに行くという気持ちは吹っ飛んでしまっていた。
モコモコさんにも「釣りは明日行くよ」と伝えた。土俵でなんとか電波が拾えたので、小屋へ降りる前に天気予報を見てみる。
明日はまだ天気が不安定ながらも、日中はなんとか雨は大丈夫そうだ。

小屋手前はまだ少し残雪を横切る所があったが、ほぼないに等しい。
のんびり足を運んで、天狗小屋へ到着。
今日も短い行程でお昼過ぎに行動終了、と言うなんとも贅沢な山旅。小屋へ入ると、男性が一人「2階空いていますよ」とわざわざ下りてきてくれた。

荷物をおろして、水汲み。水場には豊富に水が流れている。雪渓のお陰で痺れるような冷たさ。顔を洗い体を拭けばすっきりだ。ビールを冷やせばあとは夕飯までまったりするだけ。

2階に上がり一角を陣取った。
荷物を広げて、宿泊者ノートに記入したりと一通り済ませると落ち着いた。落ち着いた所でひと眠りしようかなとしたら、竹の子の処理があるのを思い出した。
本数だけはあるので、二人で剥けばちりも積もれば山となるで、食べられることも思ったより得ることができた。その分ごみとなった分も大量。
水場で冷やしたビールは最高だった。

夕方4人パーティーが到着。

単独の方としばしお話を楽しんだ。今後参考になることも教わり有意義な時間だった。
早くから飲んでいたので眠くなり、明日に備えて早く寝た。


6月23日(晴れのちくもり)
コースタイム;天狗小屋5:51〜出谷川7:26/11:33〜天狗小屋13:55(宿泊)

今日は釣りの日。
日帰りの装備で足取りも軽やかに出発。
出谷川への下降路は、八久和川撤退のときに通ったきりで全く覚えていない。
急な登り一辺倒だったと思ったら、主に標高1150m辺りまでは意外にアップダウンがあったり緩やかな所があった。
記憶なんてあてにならないものだ。

どんどん標高を下げて行くが、まだ標高1000m切らないよーとモコモコさんがうんざりした声で言う。
ブナの大木が目立つようになってくると、沢音も大きくなってきた。この辺りでモコモコさんは「ワクワクが止まらない」状態だったとのこと。

尾根の末端まできたところですっぱりと切れ落ちており、登山道は一度尾根を外して急下降する。ここは土が崩れていて、後ろ向きに下りた。
すぐに道は尾根下へ回り込むようになると、絶好の幕営地になる場所に着いた。
ゆっくり休憩をとって、釣りに入る。

本流で釣りたいというモコモコさんに釣らせてあげるが、全くあたりなし。今年は雪解けが早いとはいえ、まだ流れが早いので思った通り釣れなかった。
しぶといモコモコさんは、場所を変えながら岩屋沢出合下の落ち込みでなんとか釣りあげた。でもリリースサイズだ。

本流へもっと入り込んで釣りたそうにしていたが、登山靴なのでそれもかなわぬ夢。支流の岩屋沢で釣ってみることにした。
しかし登山靴で行ける範囲でちょろっと出しただけなので、結果は知れている。それでもねばった甲斐があり、何匹か釣ることができ1匹をお刺身として頂くことにした。
ヒメマスが釣れなかったのは残念だが、一度天狗小屋をベースに出谷川へ釣りに出かけるというのをやってみたかったので満足した。

もっと遊びたいが、帰りは登らないといけないので引き上げることにした。
下りがきついということは登りはもっときつい。
前回は、ここまで遡行してきた後によく登ったなと我ながら感心した。

今日は小屋まで戻った後で下まで降りようと思えば降りられるが、その後難民になりそうなのでそのまま連泊することにした。
のんびり周りを見ながら登り返していると、遠くで雷鳴がする。雷雨が気になったが、やがて雷は近づくことなく静かになってくれた。
この登りで今日も巨大ナメック発見。モコモコさんに喜んで報告するが、「そんなの別にどうでもいいよ」とほぼ無視され状態。仕方がないので、ナメックのどこに魅かれるのかを延々と説くが、理解されなかった。

小屋戻り、さすがにシャツが汗臭くなったので、体を拭くだけでなくシャツとパンツを洗うことにした。
体を拭いて着替えれば昨日以上にすっきりだ。
モコモコさんはというと、着替えたシャツが濡れるのがいやだといって着替えを水場までもってこないで洗ったらそのまま着ると言っている。どうなることやらと思ったら、結局冷たくてシャツは着られず羽織っているだけ。前から見るとほぼ裸で「冷たいよー」と言いながら小屋へ駆け戻っていたのは笑えた。
そんなこんなで、モコモコさんは手ぶらで戻ったので水筒等全てを持って帰ることになった。ヤレヤレ。

ひと騒動した後は、天日干し。
洗ったものだけでなく、靴や靴下全て外に出したところで、宴会開始だ。
今日は貸し切りかな?誰か来ても昨日の男性のような人だったらいいなと話していると、夕方単独の男性到着。

この男性とはなんだか話をしなくてもいいなと思ってしまったので、ひっそりと宴会を続行して7:00過ぎにはシュラフに包まった。
外はまだ明るいので、鳥さん(主に鶯)が鳴いている。そういえば今日は夏至だったな。「鳥さんまだ鳴いているね」というモコモコさんに「鳥さんは夏至とか何も知らないんだよ」と返した。そう自然に生きている鳥さんにとって、夏至は長く鳴いていられるときということだけが重要なのだ。これから段々日が短くなっていくので寂しい気がするという人間の感情は関係ないのだ。


6月24日(晴れ)
コースタイム;天狗小屋5:02〜南俣沢8:57〜大井沢(湯ったり館)10:00

長かった山旅もあっという間に下山日。
帰宅ラッシュに合う前に帰りたいので、早めに出発。

以前6月に下山した時に雨量測定小屋手前に急な残雪があったので、こちらにルート変更した時に残雪状況を心配していたが、これは1泊目に天狗小屋で同宿した男性から雪はないとの情報を得ていたので問題ない。それよりも今度は石段のヌルヌルが心配になった。幸い滑ることなく下りられた。

淡々とした下りに飽きてきてラジオを聞きながら歩くことにした。ラジオはいつも通りモコモコさんのザックのサイドポケットに入れた。
また、以前雪がべったりついていた竜ヶ岳のトラバース部分は残雪上を歩く所がとても短く簡単に抜けられた。
トラバースから尾根に戻った所で、森林管理の方が登ってきた。挨拶をしてお話を伺うと、やはり2〜3週間ほど季節の進みが早いとのことだった。
風が通らなくなり、むうっとした空気の中滑らないように注意して行くと、急下降が終わって樹林の中の長い道となった。ここまでくれば下りは終わったも同然。
すると急に、「湯ったり館、今日休みじゃないだろーな」と俗っぽいことが頭に浮かんだ。これまでいっさい頭に浮かんでこなかったのが不思議だ。

ここまでで、今日もまた巨大ナメックを発見していた。昨日同様喜んでモコモコさんに知らせるが、ほぼ無視状態。そこでナメックの魅力を延々と・・・(以下略)。

台地から少し降りれば登山口だ。
南俣沢まで道がきれいに整備されており、南俣の眼鏡橋も見事に架け直されていた。
大井沢まで林道歩きをこなしていると、いままで、大井沢への迂回案内があった場所にはなにも設置されておらず元のままになっていた。

橋へ向かうと、橋も見事に復旧されていた。
渡渉することなくすんなり通過。橋の凄さやありがたさを思い知った。

湯ったり館まであとわずか。昨年という前例(場所は違うが、月一の定休日に当たった)があるので不安だ。歩くのが遅いモコモコさんに先駆けて一足先に湯ったり館へと向かうと、駐車場には車が結構ある。確認すると営業していた。よかった。ほっとしたところでモコモコさん到着。来るなり「ラジオ止めてー、早くー」と訴えてきた。いきなり何だと思ったら、ラジオから「げろげろげろげろクワックワックワッ、げろげろげろげろクワックワックワッ、げろげろげろげろクワックワックワッ、げろげろげろげろクワックワックワッ♪、(続いている)」と流れていた。突然、「かえるの合唱」が流れ始めてずっとこれが続いていたらしい。
最後にへんな落ちがついた。

湯ったり館のお風呂も復旧したらしく、一時温泉でなかったが今回は温泉が出ていた。
男女とも貸し切りでゆっくり入ることができてとても気持ち良かった。

予備日が余っていたら、逆にラッシュをずらして帰りを遅くするのでバスを使う所だが、早く帰りたい今回はバスだと乗り継ぎが悪いため、今回はお金はかかってしまうが、呼んでおいたタクシーに乗って左沢駅まで出て、久しぶりに山形から新幹線で帰宅した。(左沢駅前のそば屋さんはおいしくボリュームがありまた立ち寄りたい)

登山メモ
今年は雪解けが早いのでアイゼンは持参しなかった。
念のため、コース変更した場合の、銀玉水付近と小朝日岳から鳥原山への下降時又は天狗小屋からの下山における雨量観測小屋へ下降時の残雪対策として、ピッケルを1本だけ持参した。結果としては一切使用しなかったが、保険にはなった。
泡滝ダムからの登山道については、昨年一切残雪対策を必要としなかったが、本年も必要なかった。
大鳥池の釣り券だが、50円値上がりしていた。(1050円となった)。小屋使用料は、1,500円で変更なし。相変わらず綺麗で快適な小屋。この時期は登山者よりも釣り人の宿泊客多し。


朝日屋さんを振り返る 鳥さんにしてみると我々の歩みなど止まっているに等しい
トンネルの土砂捨て場 雨が少ない影響か
泡滝ダム 水量が少ない? 斜面にへばりついている
残雪に乗れず、沢床に下りて通過 七ツ滝沢吊橋
水筒いらずの七曲がりの登山道 快適な大鳥小屋
2日目
釣れないので、釣り人も暇そうだ 鏡のような大鳥池
以東小屋が見えた 色鮮やか
この日一番天気がよかったとき 見事な開花状況
今年は残雪の距離も短い(三角峰手前鞍部) 以東岳にガスがかかってきた
まだ咲いていてくれた オツボ峰までなだらかだが長い
姫小百合ロード もう咲いている
今年も見事なものが見られそうな予感 ここは段々お花畑状態
対称的な色合 写真を撮ってばかりで全く進まない
白さではぴか一 立木も負けていない
つぼみや開きかけだと全く違う花に見える しばらく樹林の道になる
毛皮の足部分がわかるようになった さすがにこの辺りは稜線近くまで残雪あり
鳥(ウソ)さん つがい? ここはまだ盛りだった
残雪を背景に 主稜線が見えた
以東岳に近付いてきた 花と大鳥池
以東岳手前のピョコ 以東岳の登りからピョコを見る
まだつぼみ 以東小屋とお花
以東岳から以東小屋と熊の毛皮(大鳥池) 山頂から少し降りた所から
以東小屋とお花 以東沢源流部
松虫岩の前は、静かで綺麗な道 松虫岩付近から
松虫岩 一下りして振り返る
笹原の道 まだ寒江山が見える 以東岳とモクモク雲
狐穴小屋までなだらかだが、意外に遠い 中先峰付近の池 ミズスマシが活発に活動凄いスピードでスイスイ移動
3度目にしてようやく捕獲成功 ウスユキソウの群落と相模尾根
雷が鳴って雨も降ってきたので小屋へ駆け込む 雷雨のピークを過ぎると幻想的な雰囲気になった
狐穴小屋から以東岳 日が沈む 狐穴小屋から以東岳 日が沈んで 
3日目
一瞬だが朝日を拝むことができた 小屋そばの標柱が顔を出していた
冷たくておいしい水に感謝 ガスの中出発
狐(コン)浴風呂 営業前 三方境からの道との合流点
気温が上がってバカ虫(ブヨ)がたかってきた 二ツ石尾根のヒメサユリロード
高松峰の下りはザレた岩場 高松峰
雪があってもなくてもいやらしいジャンケン岩付近 主稜線はガスの中
着た所を振り返る 見附川側
標高1300mほどとは思えない景色 モコモコさんとサイコロ岩
撮らずにいられないボロボロの標柱 二ツ石山手前にて
毎年削られていく ウツノシマ峰 付近
ヒメサユリ5輪 ヒメサユリの歓迎を受ける
小屋が見えた 5月にあれだけあった雪がこんなに少なくなっている
4日目
エズラ峰と以東岳 うねる二ツ石尾根と主稜線
熊さんのパワーは計り知れない 樹間からエズラ峰
出谷川目指して急下降 岩屋沢出合に降り立つ
出谷川本流 登り返す
ブナの尾根を登る ここからが結構長い
戻ってきた 障子ヶ岳と粟畑
5日目
主稜線 大朝日岳方面 街は雲海の下
お世話になりました 残雪
今回は恐怖の坂道にならなくてホッ ミズバショウの群落を過ぎると
ありがたい猟師の水場 春に歩いた稜線
こんなにゴチャッとした感じは初めて見たかも 復旧した大井沢川不動橋



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