山域 南会津
コース 栗生沢〜黒滝股山〜上海岳〜大川峠〜栗石山(往復)〜大川峠〜大川林道〜栗生沢
〜地形図だけでは測れない〜
日程 2017年3月11日〜3月14日

遅ればせながらやっと雪山にどっぷり入ることになった。
雪も締ってきたであろうということでスキーではなく、軽いワカンで行動したい。
できれば昨年断念したルートを歩きたいが日程的に無理なので、別の県境部分を歩くことにした。
データ アプローチ
浅草駅6:20−会津田島駅9:45/(タクシー)−(栗生沢)小出原(約\3000)

地形図;
1/25,000−栗生沢、日留賀岳

コースタイム
3月11日(晴れときどき曇り)
小出原10:52〜1095mP12:20〜1216mp(幕営地)16:15
3月12日(快晴)
1216P付近7:07〜黒滝股山9:30〜上海岳(1501m)16:20〜1438P付近17:55(幕営)
3月13日(ガスのち晴れ)
1438P6:55〜大川峠8:51〜栗石山12:16〜大川峠13:00〜836M付近17:30(幕営)
3月14日(曇り氷雨)
標高836m6:17〜栗生沢8:03

ルート図はこちら


3月11日(晴れときどき曇り)
コースタイム;小出原10:52〜1095mP12:20〜1216mp(幕営地)16:15

春休みでもないのに浅草駅では、電車を待つ人が結構いた。
今回は会津田島駅までで、いつもの会津高原で降りるときとは違って前の方が都合がいいので一番前の席に座った。
荷物を固定して、朝ご飯を出してと出発に向けて準備をしているとなにやら見たことのある女性がやってくる。なんと山仲間のakoさんだった。
今回も小立岩から登ってぐるっと一回りする計画とのことだった。
趣向が似ているとはいえ、予め同行の約束をした山行よりも偶然のほうが出会う回数が多いなんて、akoさんとの出会いは偶然ではなく必然だったのだなと思う。
北千住から乗り込んできたsugiさんとも挨拶を交わして一路南会津へ。

一足先に下車するakoさんsugiさんと別れ我々は終点の会津田島駅まで乗車。
駅で最終的な仕度を済ませてタクシーに乗り込む。
栗生沢集落のはずれにある小出原まで入ってもらう。予定では除雪されていないと思っていたが、予想に反してかなり奥まで入ってくれた。これはうれしい誤算だ。

早速ワカンを履いて出発。犬のお散歩の後のような足跡を辿っていくかのようにしばらく林道らしき所を歩き、黒滝股山から北北西に延びる尾根の標高1095mPに突き上げる尾根に取り付いて登る。
傾斜があるが、登りやすい斜面だ。順調に登り、1095mPに着いた。テープ印や木に付けられた赤印もあり結構人が登っているのかもしれない。

ここから黒滝股山まで尾根はほぼ直線に延びており、距離はたった2km、登り返しを除けば標高差は300m余りだ。これは早い内に県境稜線まで抜けられるかもとこの時点では楽勝モードだった。
広葉樹林帯の快適な尾根歩きが始まったな、とアップダウンがあっても楽しく歩いていると、わずか30分ほどでなんだか雰囲気が怪しくなってきた。

これまでの広葉樹林帯から、尾根上だけがなぜかアスナロを中心とする針葉樹林帯となってしまった。それでも最初は「これってシャクナゲ?シャクナゲってこんなに真っ直ぐ背が高く伸びるものだっけ?なんだか違う気もするなあ」と言い合うくらいの余裕はあった。
進むにつれ、樹林が混み合うようになり、引っかかったり踏み抜くようになことが頻繁に起こるようになった。また、地形図には現れない小さなポコが次々と現れて、それを越えようとすると、樹林に邪魔されたり、急な波打つ雪面の段差が大きくて、足場を作ろうとすると、表面は固いくせに少し蹴り込むとすぐに割れて中はグサグサスカスカの雪質で崩れてしまい足場が作れない。ワカンでなくてスノーシューだったら即敗退だったな。

そんな状態が続き、たった1km弱進むのに1時間20分もかかっている。なんじゃこりゃー!!の尾根だ。
尾根は益々痩せて輪を掛けて登りにくくなってくる。とうとう曲りくねった木にグサグサスカスカ雪がついたこれまでにない大きな段差が出てきて、そのまま登ろうとすると、足場は崩れるしザックは引っかかるしでどうにも登れない。結局荷揚げをしてよじ登った。
見た目は快適に登れそうなのに、快適に登れるところは一向に出てこない。

やっとの思いで1216m地点。ここだけ別世界のように一時的に尾根が広くなるいいところだった。
この先もこんな状態が続くといいなと願って先へ進むと、目前に黒々とした針葉樹の生えた小さなピークが見えた。
歩きやすければどうってことなく今日中に越えられる程度のピークであるが、これまでの様子から一筋縄ではいかないに決まっている。越えるのには中途半端な時間でピークの手前にいい幕営地もなさそうなので、もう少し行動したいところだが、1216m地点で幕営することにした。
幕営地としてはこの尾根随一だと思えるほど、平らで風も当たらないいい場所だった。

落ち着いたところで地形図を眺める。たった2kmの距離もこなせなかったことに愕然とする。今日中に県境稜線まで抜けていないと予定通りにこなせない。明日もきっとこの調子だなと想像すると「男鹿岳一本で終わりかあ?」と口に出てしまった。
外が穏やかで快適なテント生活とは裏腹に、明日以降どこまで進めるか大きく不安の残る一日だった。

会津田島駅に到着 予想よりもかなり奥まで入ってくれたタクシーに感謝
尾根取り付き 動物さんも登る尾根
傾斜が緩んできた 赤印のある木が立つ1095mPに到着
尾根は痩せてくるがまだ快適 いきなり植生が変わった
シャクナゲ?でもなんか違うような・・・ こんなちょっとの登りでも苦労する
こんなのは序の口だった キツツキさん?癒やしの瞬間
一見快適に行けそうに見える 実際は踏み抜きとスカスカ雪で足場が作れず苦労する
こういう所ばかり 結局尾根通しには行けずに巻く
あの黒いピークを今日中に越えるのは無理だ 奇跡的にあった幕営適地


3月12日(快晴)
コースタイム;幕営地1216P付近7:07〜黒滝股山9:30〜上海岳16:20〜1438P付近17:46〜幕営地17:54

予定ではとっくに県境稜線にあがっていたはずなのに、未だその手前の黒滝股山まで届いていない。
この時点で「今回は男鹿岳一本かあ?」と昨晩話した通り、早々に計画の短縮を考えなければいけなくなった。
そうなると、なんだか気が滅入ってきて出発の準備になんだか時間がかかってしまった。

昨日見えた、うんざりするような黒々とした針葉樹のピークを越えるべく出発する。
一日経っても雪質の状況が良くなるどころか、相変わらず踏み抜いて、益々濃くなるアスナロや雪面の凹凸が激しくなったことでペースが全く上がらない。
尾根にデーンと座っている岩場を巻いたり、アスナロが通せんぼしている所をよじ登ったりで疲れる。
出発してから、踏み抜くかアスナロに引っかかるか、スカスカグサグサ雪で足場が作れない急斜面を這い上がるか、雪で横たわった細いアスナロを足場によじ登るかといったことが延々と続いて昨日以上に進まない。

特に巨大なアスナロの根が岩を覆うようにして生えているところは雪質傾斜ともに最悪で、足場を作ったそばから崩れてしまい登れない。仕方が無いので、空身で一度登ってある程度ルートを築いてから登り返した。
後続のモコモコさんはモコモコさんで、一度登ったところも次々と崩れていく雪質なので苦労して登ってきた。これは正直男鹿岳どころか黒滝股山ピストンで終わってしまうかもと不安になった。相変わらずの踏み抜きにうんざりしていくと、どうやら下から見た黒々したピョコまで来たらしい。

やっと尾根が広がってきて広葉樹林が生えている斜面になったときは「やっと普通の斜面になったよー、ワカンでなかったら本当に敗退だったな。」と思わず声を声を上げた。
たった約500m進むのに1時間半もかかってしまった。昨日と比較にならないほどの酷いペースだ。
交代で雪の斜面を登っていく。ようやく黒滝股山に着くと、那須へと続く稜線がばっちりと見えてこれまでの苦労が報われるいい眺めとなった。

黒滝股山山頂にはこの界隈でよく見かけるMWVの青いプレートがあった。
山頂から少し県境稜線に寄ったところで休憩しつつ作戦会議。こんな場所ですでにこの時間ということは当初の計画はとうてい無理だ。男鹿岳までということにして、無理そうならば戻ってこようということになった。モコモコさんは、「こんな所戻るのはやだなー」と文句を言っていた。それもそうだな、それよりもこの先に見える鞍部からの登り返しの尾根がとても悪そうに見えて、果たして登り返せるのかどうかの方が二人とも気になっていた。

稜線までの僅かな距離が以外にいやらしかった。小さいながら一丁前にジャンクションピークとでもいうのかピョコになっているところは木が濃くて踏み抜きが酷いので巻気味に下って県境尾根に乗った。
鞍部までは傾斜があるが雪も柔らかく落ち着いていて降りやすかった。

懸念の登り返しはというと、案の状、黒滝股山への尾根同様針葉樹林の生えた痩せた尾根だ。表面は固いくせに踏み込むと簡単に割れて中はグサグサスカスカ雪だ。
一度取り付くが、これまで以上に悪く急なので、アイゼンピッケルで登る。
崩れる雪に慎重に足場を選んで少しずつ登る。木が生えていなければ登れなかったかもしれない。標高差たった20m登るのに30分も費やしてしまった。
先に見える上海岳がやたらに遠く見える。

この先こんな状態が続いたらどうなることやらと本当にわからなくなったが、幸いここが一番悪いところだった。相変わらず踏み抜いたり、簡単に割れる固い表面の中はグサグサスカスカ雪といった所もほとんどなくなった。
やせ気味であるがしっかりと雪の着いた尾根となり、幾分ペースが上がった。1360mPまで上がるとようやく上海岳が目の前に現れる。その手前の1445mPへの登り返しが少々気になるところだ。

少し降りてみると鞍部付近が見える。どうやら先ほどのような悪いところはなさそうでほっとする。
鞍部まで気持ちのいい下りで楽しい。登り返しも上から見るほど急でなさそうだ。
思った通り潜るものの悪いとこがない登りで、モコモコさんが先頭を登ってくれるような場面もでてきた。

高々標高1300mちょっとであるのに、登って行くにつれて雪堤や雪庇が立派になっていき素晴らしい景色に感心する。
お陰で、大変であるがここの登りがこの山行中一番楽しかった。
1445mPに着くとこれまでと様子が一変した。

これまでの痩せた尾根と違って広い雪堤状の尾根となってブナの木街道となっていた。気持ちがいいので休憩した。雪面に光が反射して七色にキラキラ輝いているのがとても美しい。
上海岳に近づくにつれて、兎さんの足跡が増えてこれぞ南会津といった雰囲気になってくる。栃木県側にはいい幕営地になりそうなところが何カ所も出てくる。
ここで泊まる訳にいかないのがとても残念だ。

風もなくいい天気で、珍しくモコモコさんが先行することもあった(が長く続かない)。
視界がいいこともあるがやっと周りの景色を楽しむ余裕ができた。
七ッヶ岳やその肩からひょこっと見える窓明山〜三岩岳へと続く稜線も確認でき、「今頃akoさん達、どこ歩いているかな?近くの山で仲間が歩いていると思うと元気が出るね。」と向こうの山で頑張っているであろう姿を想像することで、とても励まされた。
上海岳まで意外に遠く、重い潜る雪で辛いが頑張ろうと思った。

上海岳東の肩までくると、男鹿岳とその前衛の栗石山がデーンと聳えているのがよく見える。遠いな。
それだけでなく上海岳から先はまた尾根が痩せているのがよく見える。先ほどまであった幕営適地に本当に惹かれるが、今日はこの後も天気がいいはずなので明日のことを考えて出来るだけ進んでおきたい。

うねりでボコボコしている雪面を登ってようやく上海岳(1501mP)に到着。山頂は狭く時間も押しているのでそのまま通過して下降にかかる。
最初は問題なく楽々下れるが、すぐに尾根が痩せてうねって波打つ雪面となった。
こうなると踏み抜きが面倒になってくる。

踏み抜かないように、うねりの段差が大きいところを避けて、などとしていると僅かな距離を進むのにあっという間に時間が過ぎていく。
すぐ目の前に幕営地になりそうなところがあるのに、なかなか近づかないのがもどかしい。モコモコさんの企みによれば1422mP付近で幕営したいらしいが、この調子だと届かなさそうなので、その手前の1438mPで幕営地を探すつもりらしい。

動物さんが簡単に通過している尾根を、済み抜いたりして四苦八苦する。
やっと鞍部まで降りてあとは登り返すだけだといったところで事件が起きた。
一歩足を踏み入れた途端に小さな小さな雪庇が足下から音を立てて崩れた。幸い崩れた方ではなく尾根に重心があったので落ちないで済んだが、真下を転がり落ちていく崩壊した雪塊を見た。モコモコさんの欲望が詰まった「20キロ超ザック」で転げ落ちたら、体勢を整えることもできずに重力に従って谷底一直線コースだった。

ほっとして後ろを振り返ると、なぜかモコモコさんが亀裂にはまって脱出しようともがいているところだった。ザックや足が藪に引っかかって外せないらしい。手伝ってあげて脱出した後訳を聞くと「雪庇が崩れたので咄嗟に尾根側に除けたら亀裂にはまったとのことだった。」お互いけががなくて何よりだ。
もう少しで幕営予定地のはず。気を引き締め直した。

1438mPに近づくにつれて雪が少なくなり笹や亀裂がはっきりと現れるようになった。期待の1438mP自体も思ったよりも雪がなく藪が出ていて幕営地として不適。少し下降すれば適地がありそうなので次に期待を掛ける。
少し降りて鞍部付近になんとかなりそうなところがあり、時間も時間なので荷物を下ろした。
整地に少し時間が掛かってしまい、テントに潜り込む頃にはすっかり暗くなってしまったが、ここまでくれば大川峠からなんとか下山できる。
お互いの労をねぎらって一日を終えた。

幕営地から上海岳 この黒いピークを越えればなんとかなりそう
足場が片っ端から崩れるので這い上がる あまりのスカスカ雪で一度空身で登ってトレースをつけた
やっとまともな斜面になった やっと黒滝股山に着いた
山頂から県境稜線と那須連峰 その1 山頂から県境稜線と那須連峰 その2
県境稜線に向かう これから進む県境稜線 男鹿岳(奥の中央の山)が遠い
その前に鞍部から登り返せるのか? ようやく県境稜線に乗った
鞍部までは快適な下り 手強そう
固い表面の下はスカスカ雪な為アイゼンピッケルで登った 悪いところが終わり普通の登りになった
1360mPが見えた 黒滝股山を背景に登る
最高の天気  上海岳
上海岳の登りが迫る なかなか辛い登り
たかだか標高1300mほどなのに立派な雪庇 辛いけれど楽しくなってきた
登ってきました 那須の山々
七ツヶ岳とその向こうに窓明山 動物さんが歩き回る
兎さんの足跡と交差する これぞ南会津といった感じの雪の街道
男鹿岳 上海岳山頂が目前になった
気温が上がって雪が重い 上海岳から振り返る 時間と苦労の割に進んでいない
まあいいや、幕営地求めて下ろう あの小ピーク(1438mP)まで行けばいいかな?
なんだか面倒そうな感じ 上海岳
雪面が波打ってきた 動物さんが先行していた
踏み抜きが多くなってくる 踏み抜きを恐れ怖々下る
この辺りはやせ尾根で雪が落ちるのも早そうだ 雪庇を踏み抜いて落ちそうになった
落ちていたら谷底まで行っていたかも・・・ 1438mPは雪着きが悪い
幕営地としては不適 月が昇っているがあと少し進もう


3月13日(ガスのち晴れ)
コースタイム; 1438P6:55〜大川峠8:51〜栗石山12:16〜大川峠13:00〜836M付近17:30(幕営)

幕営地に着いた時刻が遅かったので、あまり風対策をしなかったせいか寒くて目が覚めることがあった。
外を見るとガス気味だが、天気はまずまずのようだ。
昨日の疲れのためか今日も遅めの出発となってしまった。

幕営地からは昨日の雪庇事件現場がはっきり見えた。
まずは目の前の1422mPに登る。
ここまでくると尾根が広がってきたので希に踏み抜くこともあるが快適に歩くことが出来る。
1422mPは平らでブナの木が生えているいいところだった。昨日ここまで来たかったなあ。

1422mPから尾根が2本伸びているが、方向がはっきりしているので迷うことなく目的の大川峠へと向かう尾根に入ることが出来た。雪面は少し固い感じで潜らないので、快適に霧氷が付いたきれいな森の雪堤をずんずん下っていけた。

下っていくと雲の中に突入し尾根も痩せてきた。
さすがに亀裂がでてくるので、はまらないように慎重に歩く。亀裂を避けるように樹林帯に回り込んだりしながら順調に進んだが、雪堤に戻ってすぐに体が宙に浮いた。
隠れた亀裂の落とし穴に落ちてしまった。
完全に落ち込んでしまったので、空身で脱出をはかる。脱出ルートに雪がかぶっているので、後続のモコモコさんに雪を崩して落としてもらいなんとか抜け出すことができた。

ヤレヤレと気を取り直して亀裂にはまらないように気をつけながら行く。時折踏み抜きながらも間もなく大川峠というところでカメラの部品を落としていることに気がついた。さきほどの落とし穴のところで落としたのだろう。
荷物を置いて探しに引き返した。
しかし見つけることは出来なかった。気がつかなかっただけでもっと前に落としたのかも知れない。残念ながら諦めるしかない。

大川峠はひょいっと言う感じで着いた。
峠でこの先のことについて一騒動。男鹿岳へ往復してきたいのに、モコモコさんが先の長い林道歩きと明日の天気のことを考えてこのまま下山したいと主張してきたからだ。
結局、時間制限を設けて往復してくることにした。
荷物を峠において軽い荷物で出発する。
大川峠から男鹿岳へ往復する人が結構いるらしく、テープ印も見られた。
登りはじめてしばらくは細身の尾根で雪面がうねっているので結構時間が掛かる。黒滝股山や昨日のスカスカグサグサ雪を思い出させる部分もあったが、僅かであり簡単に突破できた。
やがて尾根が広がってくると、うねりも少なくなり歩きやすくなってきた。

反面モコモコさんは遅れがちで、待つことが多くなってきた。どうやらお腹の調子が悪いらしい。これまで登ってきた中で特に危険なところや迷いやすいところもないのでモコモコさんは下山することとなった。
単独となりモコモコさんを待つ必要もなくなったので、登りやすくなった斜面をずんずん登っていく。

モコモコさんが引き返した辺りはガスの中だったが、山頂に向かうにつれてガスが晴れてくる。
タイムリミット20分前に栗石山に着いた。
男鹿岳にかけてはくっきりと晴れてきれいな青空だ。男鹿岳へ往復してくると1時間はかかりそうだ。ここまで来たことで一区切りついたということにして、残念だが引き返すことにした。
下りは早い。あっという間にモコモコさん引き返し地点まで降りてきた。
トレースを見ながら引き続き降りていくが、モコモコさんはトレースを忠実に踏んで降りているようで、全く別のラインのトレースが現れず本当に降りているのか途中で消えてしまったのではないかと不安になったと同時に、よくこんな降り方できるなと変に感心した。モコモコ係数を掛けなくてもいいので、栗石から40分足らずで大川峠に戻ってこられた。

行くときは気がつかなかったが、峠には乗り捨てられた車が雪に埋まっていた。
気になるモコモコさんは無事に降りていたようでデポした荷物がなかった。雪に12:45と書かれた跡があった。どうやらこの時間に出発したらしい。

パッキングと休憩を済ませてモコモコさんの後を追う。
林道の雪面はうねって潜るので、先行したモコモコさんの苦労が窺える。
思ったよりも早くに追いついてしまった。やはり潜る雪に苦労していたようで、汗をかいていた。
気温が上がって雪が腐ってきて重いので大変なようだ。

休憩をした後、先頭を交代しながら進んでいく。
うねる雪面や雪崩れた所をズボズボ潜りながら乗り越えてひたすら歩く。
休憩を同時に取っていると効率が悪いので、交代で休みながら踏み跡をつけていく。林道が大きく曲がって尾根を回り込むと、沢の対岸にこれから歩く林道が延々と見えてがっかりする。

心配していた林道の崩壊箇所は1ヶ所あったが、雪がしっかりついているので斜面をトラバースして簡単に通過できた。雪が消えるとどうなっているのか気になるところだ。橋の崩落は一切無く助かる。林道の向きにより雪が締っていたり、腐れ雪になったりするが日が暮れてきて気温が下がってくると少し楽になる。
これまでの行程でかなり水を消費してしまい二人とも水分不足をはっきりと感じてくるようになる。そんな中林道の雪が途切れているところが見えた。もしかするとと近づくと思った通り水が出ていた。
思わず一気飲みする。生き返った。

延々と林道歩きをしてまだここかと何度もうんざりしてきたが、林道が崩壊気味になっているところを通過して、沢の方に目を向けると別の林道が見えた。あの林道が見えれば明日確実に下山できる所まで来たと言うことだ。
かなり日が暮れてきたが、まだ幕営するのにいい場所がないのでひたすら足を動かす。
するとスノーモービルらしき跡がでてきた。これはありがたい。スノーモービルがここまで来たと言うことは、この先林道の崩壊場所等はないということだ。明日の早い内の下山が約束されたようなものだ。
スノーモービルの跡は全く沈まないという訳ではないが、これまでと比べれば雲泥の差で歩きやすくなった。

やがて開けた植林地帯を林道が通るようになった。この辺りはどこでも幕営できそうな雰囲気だ。
出来るだけ進んで、結局標高836mの林道合流点となる平らな植林地帯が明るくて風の当たりもほとんど無いので荷物を下ろした。
昨日と行動終了時刻は同じだが整地が楽にできたので、昨日よりも早く落ち着くことができた。
計画の半分もこなすことが出来なかったが、それでも充実感はある。男鹿岳まで繋げなかったことだけが心残りだった。

冷え込んだ朝だった 朝日が昇る
昨日の雪庇踏み抜き現場 歩いてきた上海岳からの尾根
雲海に浮かぶ那須連峰 今日も天気が良さそうだ
最初に1422mPを目指す 昨日と違い歩きやすい
1422mP 霧氷の森
サクサク歩ける気持ちのいい下り 霧氷
亀裂に気をつけて歩いていたが・・・ 落とし穴に完全に落ちた
モコモコさんに雪を落としてもらって脱出 少し登り返して
一くだりすれば 大川峠
荷物を置いて出発 気になる木 枝から別の植物が生えていた
上海岳を振り返る 早く行きたいよあの峰へ
この辺りでモコモコさん下山 ガスが晴れてきた
栗石山から男鹿岳 栗石山山頂
下りは楽々 雪に埋もれた放置された自動車
モコモコさんを捕らえた 雪崩れた斜面を慎重に通過
水が取れたのでがぶ飲みした 栗石山と男鹿岳も見納め
スノーモービルの跡と植林地帯 今日はここまで


3月14日(くもりのち氷雨)
コースタイム;(幕営)標高836m6:17〜栗生沢8:03

昨日の朝と違って暖かく過ごせてぐっすり寝られた。
今日は林道歩き数時間だけだが、天気が下り坂なのと電車のことを考えて早めに出発することにした。
雪面はほどよく締っており、ワカンでほとんど沈まないので快適に歩くことができる。

林道の支線を合わせて周りが開けてくる辺りで、パラパラと音を立ててとうとう降り始めた。幸い雨ではなく小さなアラレ状なのが助かる。昨晩は「男鹿岳へ行って適当なところで泊まればよかった。」と文句を言ったが、早々に天気が悪化してきたことにモコモコさんの言う通りできるだけ降りてきておいてよかったと思った。
テクテク歩いて行き川を見下ろすと、池が見えた。ここまでくれば間もなく林道も終わりのはずだ。
少し休んで、後は楽ちんコースだと思っていたが、川を渡ってから林道は微妙な上り坂となり予想していなかった登りに面食らって疲れてしまった。
僅かであるが登り切って、ふうーっと息をつくと先に家が見えた。

畑だと思われる広い雪原の中の道を歩くと、とうとう除雪終了点に着いた。
除雪された道はアスファルトが見えている。携帯電話が通じるのでその場でタクシーを頼んだ。
タクシーが来る時間を利用してワカンを外したりしていると、ほとんど待つことなく迎えのタクシーが来てくれた。
偶然にも、入山時に我々を運んでくれた運転手さんと同一人物だった。お陰で駅までの車中寛ぐことが出来た。話しは全く変わるが、駅まで戻る途中に、かわいい柴犬とりっぱな秋田犬を見ることができて、我々にとってうれしい下山の贈り物となった。

気分が良くなったので、会津田島駅でお弁当を仕入れて乗り込んだ電車は「AIZUマウントエクスプレス号」だったので、乗り心地が良く車内販売があるので会津ワインをさらに仕入れておいしく頂くことが出来た。
雨が本格的に降っているので、お風呂は一切外に出ることなく済ませられる湯西川温泉駅で途中下車して、温泉に入りゆっくりして帰った。

植林地帯であるがいいところだった 林道支線合流点
この橋の先の登りが微妙にきつかった 無事下山
会津田島駅で仕入れた 安くておいしいお弁当
車内販売でワインも仕入れた 快適な「AIZUマウントエクスプレス号


活動記録に戻る

トップへ戻る