山域 朝日連峰
コース 大井沢南俣〜粟畑〜二ッ石尾根〜狐穴小屋〜以東小屋(往復)〜狐穴小屋〜大朝日小屋〜鳥原小屋〜朝日鉱泉〜頭殿山〜黒鴨
〜紅葉当たり年〜
日程 2017年10月6日〜10月9日

今シーズン3回目の朝日連峰。
地元ならまだしも、関東から同じ年に何回も同じ山域に出向くとは我ながら物好きだなと思うが、好きな物は仕方がないということで朝日連峰へ。
データ アプローチ
東京駅八重洲通り22:50-《Tokyoサンライズ》-寒河江営業所5:05/-(タクシー)−南俣

コースタイム(天気)
10月6日(くもり)
南俣6:40〜猟師の水場9:10/9:40〜粟畑11:10〜天狗角力取山11:30〜二ッ石山13:40〜高松峰16:10〜狐穴小屋16:50
10月7日(雨一時やむ)
狐穴小屋11:00〜中先峰11:40〜以東小屋12:40〜以東小屋12:50/13:10〜中先峰14:00〜狐穴小屋14:30
10月8日(晴れ)
狐穴小屋7:20〜寒江山8:30〜竜門小屋9:20/10:10〜西朝日岳11:30〜大朝日小屋13:00〜小朝日岳14:50〜鳥原山16:10〜鳥原小屋16:40
10月9日(くもり)
鳥原小屋6:40〜金山沢渡渉点7:50〜朝日鉱泉10:00〜頭殿山登山口10:10〜水場11:50/12:00〜稜線の見晴台12:20〜頭殿山13:10/13:20〜林道終点14:40〜黒鴨16:30



10月6日(くもり)
コースタイム;南俣6:40〜猟師の水場9:10/9:40〜粟畑11:10〜天狗角力取山11:30〜二ッ石山13:40〜高松峰16:10〜狐穴小屋16:50

当初の計画ではのんびり、初日は天狗小屋に泊まり2日目は二ツ石尾根をのんびり登り狐穴小屋宿泊の予定だった。ところが、一番紅葉が楽しみな二ッ石尾根歩きの時に雨の予報になってしまった。
慌てて計画変更し、初日に一気に狐穴小屋までを伸ばすことにした。
直前での計画変更であるが、最初に予約していた山形行きの夜行バスをキャンセルし、無事寒河江に行く夜行バスの予約を取り直すことができた。

東京から夜行バスで寒河江営業所まで、値は張るが寒河江からはタクシーを利用して天狗登山口まで入るつもり。
連休前日であったので、バスは予定通り寒河江に到着。
前日までのニュースや天気予報で言っていた通り東北地方に数日前から寒気が入っていて、まだ寒さに慣れていない体にはとても寒い朝だった。
バスを下りて小さな待合所へと荷物を持って移動すると、予約していたタクシーの運転手さんが挨拶に来てくれた。営業所近くのコンビニで買い物をしてタクシーに乗り込む。

外はまだ薄暗い中、朝日連峰目指していくと運転手さんから月山には雪が降ったことを教えてもらう。
かなり強い寒気が入ったようなので、紅葉も一気に進んだことだろうと楽しみになった。
いつもは山形駅から左沢線とタクシーを乗り継いで延々と行く道も、寒河江からだとあっという間に感じる。

高速道路を使うこともなく1時間ほどで南俣の駐車場に到着。
今は駐車場に止められている車は0台だが、天気がよくなる連休後半はものすごいことになるのだろうなと想像しながら腹拵えをして出発。

急登になる手前の樹林帯でモコモコさんは既に汗をかいて薄着になった。
前日に見た天気予報では、一日中曇りで午前中には一時的に晴れ間が見られるとのことだったが、山の天気は悪い方向に当たるものでずっと曇り。
登るには涼しくていいが、標高が上がっていくにつれて少しずつ色着いてきた紅葉もぱっとしない。

今回は翌日(二日目)の悪天候による停滞(要するに宴会)に備えてきており、そのための欲望満載のザックを担いでだとさすがに暑くなってきたので、一枚また一枚と脱いでいくとようやくトラバース開始地点に到着。
猟師の水場で長めの休憩をとり、狐穴小屋までの水を汲んだ。

尾根に戻ると登山道は時折ぬかるんだ道になり、途中モコモコさんがストックのキャップをぬかるみにとられてしまった。
キャップの場所はわかっており深く埋まっているわけではないので回収にかかるが、かなりの泥の粘着が強いらしく抜き取るのに随分と苦労していた。
尾根に乗ってから地図で見るよりも長く感じる歩きでようやく雨量観測所に到着。
ここから苔でツルツルナメナメの恐怖の石畳の道が始まる。前回ここを通ったときはフエルト底だったが今回はゴム底の登山靴なので、特に慎重に一歩一歩確かめながら登った。

粟畑の付け替えられた道に出れば一安心。付け替えられて間もない道であるが、以前の外傾したザレ気味の道と比較すると格段に歩きやすが上がった感じで、道を開いてくださった方に感謝だ。
粟畑山頂から見る紅葉は一段と色を濃くして見事の一言。
紅葉の海に漂うかのような天狗小屋や、これから向かう二ッ石尾根も色鮮やかで行くのが楽しみだ。
あーあ、明日天気が良ければなあと思いながら粟畑を通過し二ッ石尾根へと向かう、何度も振り返っては粟畑の紅葉を眺め、モコモコさんは例によって土俵の修復をしたりで、全く足が進まなくなってしまった。

そんなこんなで、ここまで特に長く休んだわけではないが、ずいぶんと時間が掛かってしまった。
後ろ髪を引かれながら、うねってアップダウンの続く二ッ石尾根へ突入。
いつ来てもここまで登ってきたのはなんだったのかと思う急下降で、あっという間に標高を下げる。
ようやく下りが終わり登り返す段階になってきたところで、落ちた枝にブナハリタケが生えているのを見つけ、採取することにしてザックを下ろした。収穫量は僅かであるがうれしい。
採取が終わりさておしっこでもしていくかねと用を足し始めたそのとき、ナメコを発見!慌てて止めたが時遅し!!おしっこがかかってしまったのだ!!!

モコモコさんに伝えると、「あーあ、勿体ない、無事なのある?」と覗き込んだ瞬間、「ブナハリだ!!」と声を上げた。
登山道から少しヤブを進んだところにブナハリタケが生えているところがあった。これは嬉しい誤算だ。無事だったナメコとブナハリを採取できた。
尿意に感謝。キノコを採ったことで重いザックが益々重くなったが、気持ちは浮き上がった。

嬉しいことがあったことに気をよくしてウツノシマ峰へ登り返す。
二ッ石尾根は全体的に尾根が痩せており、積雪に登山道が削られて外傾した細い道が続いて歩きにくい印象があったが、ここ数年歩かないうちに歩きやすいように道幅を広げて刈り払いがなされてとても歩きやすくなっていた。といってもモコモコ係数<1(コースタイムよりも早い)となることはなく、相変わらずのモコモコペース(モコモコ係数>1)で、順調にウツノシマ峰を通過。
見晴らし台を過ぎて二ツ石山へと向かうあたりから、行く先になんだかガスが漂い始めた。
おいおい、折角楽しみにしてきたのにやめてくれーと祈りながら鞍部へと下降し、二ツ石の水場道標へ到着。熊さんの攻撃により一層痩せてここ最近新しく削られた様子の道標がとても心配だ。

キノコで興奮したせいかすっかり休憩を取ることを忘れていたので、猟師の水場以来のゆっくりとした休みを取った。
人が居心地がいいところは熊さんも居心地がいいものと見えて、古いが熊糞があった。数年前の残雪期にも同じ場所に熊糞があったので、本当にここを気に入っている熊さんがいるらしい。

時間があればさらにのんびりとしていきたいところだが、あまり余裕もなく冷たい風が吹き始めてきたので一枚羽織って出発。
この先は一層痩せた尾根が連続するので、浮かれた気持ちを切り替えて歩きに専念することにした。
ブナの雰囲気が最高の樹林帯から再び抜け出して灌木帯になると、見事な紅葉地帯に再突入。
ところが、休憩中に主稜線はすっかりガスで覆われてしまっていた。のんびりしすぎた。

ここからはひたすら歩きに専念することにした。
さいころ岩(毎度のことながら勝手に命名)は真っ赤な紅葉の花道になっていた。
ちょっとした急な登りは普段はつらいところだが、涼しいのとガスでも紅葉が美しいためかあまりきつく感じない。
見附川側にスッパリと切れ落ちたところは、ここ怖いねと言いながらも順調に通過。

相変わらず主稜線はガスに包まれているが、幸運にも我々の周囲はまだガスは来ていない。晴れていればなーという気持ちはもちろん大きいが、それでも満足できるほどの見事な色付いた木々に圧倒される。
先程の休憩で歩くのに専念しようといって出発したが、結局写真を撮りまくることになりあまり進まなかった

ジャンケン岩(これも勝手に命名)の巻きとその次のロープの張られたザレから尾根への巻きあがり辺りまで来たところで、ガスが押し寄せてきてとうとうガスの中に突入。
お腹が空いてきたので、足元が安定したところで腹拵えをして高松峰への登りに備えた。
濃いガスとなってしまい先が見えない中進むと、いよいよ高松峰への登りらしくざれた岩の斜面が見えた。
ロープの垂れさがる露岩の斜面を黙々と、モコモコさんは「この斜面は途中休ませてくれないよー」と騒ぎながら登って、再び灌木の中の道を途中熊の糞を確認したりしながら進むと高松峰だ。

するとなんと!我々が高松峰に上がるのをまるで計ったかのように、主稜線を覆っていたガスがみるみる晴れていくではありませんか!!!
これには感動して、歓声を上げながら「おおー以東岳凄い良く見える!」「寒江山の斜面のグラデーションがはっきり見える!」とにかく「凄い凄い!」を連発して写真をここぞとばかりに撮った。
前方には今晩の宿狐穴小屋も見えるようになった。

稜線の眺めと支稜線の紅葉を堪能しながら歩いていると、やがて小屋がはっきりと見えるようになってコン浴までたどり着いた。
焼峰までの登りでびっしょりと汗をかかされたが、ガスと冷たい風が吹いている今は入浴は遠慮して小屋へと足を進める。

相変わらず気持ちよくドバドバと出ている水場を過ぎて小屋へと入ると、狐穴小屋は貸し切りかと思われたが意外にも人がいた。
2階にはすでに10名ほどおり我々は1階に寝床を確保することにした。
我々の後にはさすがに到着する人はおらず、宿泊者は我々含め13名ほどとなった。20時頃就寝。

雨量観測所 付近 雨量観測所 上部より
天狗小屋 天狗角力取山より二ッ石尾根
サイコロ岩(勝手に命名) 晴れていればな〜
見事 高松峰より
小屋周辺 狐穴小屋


10月7日(雨一時やむ)
コースタイム; 狐穴小屋11:00〜中先峰11:40〜以東小屋12:40〜以東小屋12:50/13:10〜中先峰14:00〜狐穴小屋14:30

2日目
朝起きるとシトシト雨が降っている。
予定通り?我々は停滞決定。我々の他にも停滞を決めた方もちらほらおり、山小屋の朝と言えないほどなんだかのんびりした雰囲気。
本日移動される出発組の方々も、我々がのこのこ起き出す頃には既に出発される方もいたが、ほとんどの方がゆっくりの出発。
それでも8時頃には、出発組と停滞散策組と分かれてそれぞれの目的地へ向かい始めた。

2階がすいたので我々は2階に引っ越し。
その間に1階で同泊していたはるばる岡山から遠征されてきた方は、以東小屋から来たという10名ほどの団体さんから稜線の風は大したことないということを聞いて予定通り大鳥方面へと出発していった。
2階には、停滞予定のKさんとYさん、さらに出発のタイミングを伺っている男性2人組みがゆっくりとくつろいでいた。

我々もそれにならってのんびりする。
間もなくKさんが相模山へ散歩に行ってきますとお出かけし、Yさんも高松峰へ散歩に出かけて行った。
男性二人組とこれからの予定を話すと、この方々は今日は大朝日小屋へ泊り以降は葉山へと縦走するとのこと。明日は天気がいいらしいので絶好の縦走になりそうだ。次いで我々の予定を話すと、頭殿山の場所がわからないとのことで地図にて指し示そうとするがなぜか地図が見つからず、お二人の地図を見せてもらうことになった。
広げてびっくり。最新の地図には頭殿山の朝日鉱泉から黒鴨へと我々が歩く予定のコースが破線ではあるが、きちんと記載されていた。
これには大きく勇気づけられた。

大朝日小屋へ移動するお二人も出発し、ふと外の様子を見ると中先峰がはっきり見えるようになった。
停滞の準備(要するに宴会の為のお酒とおつまみ)を念入りにしてきたが、新築された以東小屋のことがどうしても気になるので、モコモコさんを置いて一人で雨が弱くなった隙に以東岳へ行くことにした。
こんな天気なので連休初日というのに誰にも会わず少し寂しい気もするが、モコモコさんという足枷がないので余裕で以東小屋に到着。
以東小屋では管理人さんに小屋の説明を20分ほどお聞きすることができた。ありがとうございました。

帰りも一人旅。誰にも会わなかった。
小屋に戻ると管理人の安達さんがいらっしゃり、5月のお礼を申し上げることができました。

余談だが、以東岳から戻りながら無線のやり取りを聞いている(無線を持参しており小屋の定時交信する周波数帯に合わせていた)と、なにやら騒動が起きている。なんでも竜門小屋に宿泊予約している10数名の団体さんが着いていないが、狐穴小屋に立ち寄っていないか、または立ち寄ったら知らせてほしいと竜門小屋から連絡が入っているようだ。こんな天気で心配になったので、交信が終わったのを見計らって、安達さんに狐穴小屋と以東小屋の間ではそのような団体は見かけていないことを無線連絡を入れて伝えた。
結局、それらしき団体さんと話をした停滞組や今朝大朝日小屋を出発して早めに狐穴小屋に到着した人の目撃談を総括して、件の団体さんはどうやら今朝狐穴小屋に立ち寄った団体さんであり大朝日小屋へと向かったらしいという結論に達した。

避難小屋であるから予約を入れて場所を確保というのもあれだし特にキャンセル料とかが発生するわけではないが、この一番混み合う時期に10名以上で宿泊することだけでも考え物なのに何の連絡もなしにキャンセルするとは・・・。団体さんが通過するときに管理人さんがいなかったかもしれなく、団体さんは仕方ないねということでそのまま通過したのかもしれないが、小屋には宿泊者ノート等紙とペンがあるのだから、一筆書いて置いてくるだけでこんな騒動は起きなかったのにな。団体さんが来ることを想定して小屋のスペースを空けているわけだし、行くといっている人が来なかったら何かあったのではないかと心配するのはわかり切っていることだし、なんだか残念な出来事だった。

小屋内を見回すと、停滞組の他に大朝日小屋から来た男性二人組が増えていただけだった。男性二人組によると、驚くことに昨晩の大朝日小屋の宿泊者は4名だったとか。いつも大賑わいの大朝日小屋にもそんな日もあるのだなあ。
騒動も収まって、小屋回りの作業を色々行っていた安達さんも落ち着いて、もうこれ以上は来ないだろうと夕食準備前のなんともいえないまったり感が漂った。こんな時がとても好きだ。
さて、そろそろ一杯やりながら夕食の準備でもしましょうかねとなった中、16時頃だったと思う女性2人Pと男性2人Pが到着した。一気ににぎやかになったが、さすがに本日はこれで打ち止め。結局宿泊者は9名。
少人数なので、皆さんで居酒屋のような状態になり色々話し込んで夜は更けていった。
御一緒された方、ありがとうございました。


なめこ汁とブナハリパスタ 狐穴小屋 
新潟県側 きつね色
お気に入りの池 以東岳はガスの中
笹緑ときつね色 以東小屋
以東小屋 裏側 バイオトイレ
しっかり読んで正しく使おう。 2F
神棚 玄関を開けて入口

10月8日(晴れ)
コースタイム; 狐穴小屋7:20〜寒江山8:30〜竜門小屋9:20/10:10〜西朝日岳11:30〜大朝日小屋13:00〜小朝日岳14:50〜鳥原山16:10〜鳥原小屋16:40


3日目
朝起きると少しガスっていたが、やがて快晴になった。
名残惜しいが、安達さんとお別れ。また来シーズンの再会を祈って。お世話になりました。ありがとうございます。
今回も最終出発者となった。

最初の目的地、竜門小屋を目指す。
小屋を出てすぐに作晩以東小屋に泊まった方と出会い、しばし談笑。我ながらスタートが遅いな。
それでもえっちらおっちら進むと、途中の寒江山の登りでうれしい再会。
snafkinさんを先頭に、山楽番さん御夫妻、パノラマ写真で見る日本百名山のfukaさん。聞きたいことやお話したいことがたくさんあったが、またの再会を楽しみにお別れ。

嬉しさに気持ちも軽くなって、「寒江山の石はなんだか滑るんだよなー」とモコモコさんが毎回騒いでそのたびに相手をするのがこの区間の定番だが、今日は軽く流したり、写真を撮っていて聞こえないふりしながらで足取り軽く竜門小屋に到着。

水場では、管理人さんが担ぎ上げたビールだけでなく、小屋宿泊者の冷やした飲み物でパンパンになったバケツに水がドバドバと注ぎこまれている。本当に狐穴と言い竜門小屋といい、水が豊富でありがたい。
ここでは管理人の石川さんとmaki2015さんに再会することができた。大変貴重なお話をお聞きし、驚愕と感動の嵐。ジックリ休憩することが出来た。また、頭殿山に実際登った方がおり情報を得ることができて助かった。

出発時にふと小屋の屋根を見ると、鳩が止まっていた。休憩中に石川さんから小屋の外にレース鳩がいると聞いてたがそのレース鳩だろう。鳩をしばらく眺めていると小屋の外に石川さんやマキさんが出てきた。鳩がまだいることを伝えると石川さん達も鳩の観察を始めた。その間もなく鳩は飛び去って行った。
羽音が大きく飛ぶ早さもその辺の公園にいる鳩とは段違いで早い。
後々よく思い出してみると翼も普通の鳩よりも長かったような感じだった。

さて元気をもらって、竜門山へと登り返し、いよいよ朝日連峰でいえばメインコースともいえる大朝日岳への縦走路へと入る。
竜門小屋から先は、さすがにメインコースだけあってすれ違う人も出てくる。モコモコペースで進んでいき、稜線や支稜線の景色に見とれているとモコモコさんの手にヒラヒラと蝶が舞い降りてきた。嬉しくて写真を撮っていると、時同じくして男性二人組が前方からやってきて蝶の写真をまじかに撮ることができたと喜んでいた。この男性方は「シャツ(の色)を花と間違えて寄ってきたんだな」と気を使ってくれたが、きっとモコモコさんの放つ汗臭さになんだか吸い寄せられてきたに違いないと思った。

昨日までと大違いの、にぎやな紅葉街道朝日連峰をグイグイと進んで大朝日小屋に到着。
大賑わいの大朝日小屋はスルーして、銀玉水で冷たい水を補給してゆっくり休憩。
水分と休憩を充分にとって小朝日岳の登りに備えた。この間も大朝日小屋へ宿泊するであろう人が続々と登ってくる。今晩の大朝日小屋は物凄い混雑となるだろうことが簡単に予想される。

熊越えまで一気に下ると、今日最後のまとまった登りとなる小朝日岳。鳥原小屋へ行くには必ず越えなければならないピークだ。モコモコさん曰く「セミも登らぬ道※」だそうな。小朝日岳の登りは憎たらしい登り。だが、紅葉はとても絵になる。それだけを心の支えにひたすら登る。

※モコモコさんが初めて小朝日岳へ登った時の話
 小朝日岳の巻道分岐から登り始めてまもなく、セミくんがどこからか飛んできて帽子に止まったそうな。そのまま登っていたらやがてセミ君は頭上で鳴き始めた。耳のそばなのでさすがにうるさく感じるがそのまま放っておいたら山頂に着いた途端に飛び去って行ったとのこと。それ以来この登りは、セミでも自力で登るのが嫌になる登りと印象付けられたらしい。

やっとのことで小朝日岳に到着。
せっかく登ったのに一気に急斜面を下って、さらに下って、たまにロープを掴んでグイグイと下れといった感じの道がしばらく続く。この下りはザレ気味の露岩部分が何か所かあり、ロープがないと少し怖いところもある。
一下りして小朝日岳から見えていた錦秋のじゅうたん状態の樹林帯までくればばなだらかな道になり、紅葉ロードを楽しみながら緩やかに上れば鳥原山に到着。

そこから30分ほど懸けて湿原にたどり着く。
小屋手前の水場であらかじめ水を汲んでいくか迷ったが、ここまで歩いてきた木道には昨日今日のうちに修理補修をしたような箇所があったので、この連休中に管理人さんが入っているだろうと判断して、水は汲まないで行くことにした。
ようやく鳥原小屋に到着。
予想通り管理人さん在中。管理人さんが在中し発電機を回している間は小屋前まで水が引かれているので水汲みに行かなくて済むのだ。ありがたい。
管理人さんにご挨拶。若い管理人さんMさんと山慣れた感じのKさんとのお二人で管理しているようです。

好きなところにどうぞと言われ、2階に上がることにしたら先に出発していたYさんが既にくつろいでいた。
この日の鳥原小屋は宿泊者10名ほど。稜線の小屋は大混雑と思われるので、天と地の違いかな?。
鳥原小屋は、管理人さんが居るときは自家発電で小屋に明りが着き、小屋前の水場(ポンプアップ)が利用できる。(実際の水場も歩いて3〜4分ほどかな。)
狐穴小屋で一緒だった、Yさんと3人で夕食を囲み朝日連峰最後の夜は更けていった。


狐穴小屋の2Fより 以東岳上部はガス
見送る 竜門小屋へ向かって
レース鳩 立ち姿もすらりと美しい 皆さんの帰りを待っています
竜門小屋 新潟県側
健気なマツムシソウ モコモコさんに舞い降りた蝶
イチゲちゃんも頑張っている 西朝日岳方面
振り返る 大朝日岳
枝尾根 小朝日岳
小朝日岳 鳥原山へ向かって
鳥原山 もうすぐ鳥原小屋


10月9日(くもり)
コースタイム;鳥原小屋6:40〜金山沢渡渉点7:50〜朝日鉱泉10:00〜頭殿山登山口10:10〜水場11:50/12:00〜稜線の見晴台12:20〜頭殿山13:10/13:20〜林道終点14:40〜黒鴨16:30

4日目
朝日鉱泉14:30発の登山バス(*)に予約を入れているYさんを除いて、例によって我々が最終出発者となった。

*朝日鉱泉登山バス
3000円/人で朝日鉱泉から左沢駅まで送ってくれる。要予約で、Yさんによれば、Yさんが予約を入れたとき最後の一席だったとのことで、さすがこの連休は大人気らしい。ちなみに我々はこのバス代もケチった・・・。

鳥原小屋から朝日鉱泉へのルートは初めてだ。
昨日はあまり見る余裕がなかったが、改めて景色を見てみると小屋の近くの池塘と紅葉がマッチして素晴らしい。

途中の金山沢渡渉点までは歩きやすい下りで足に優しい。
処理が間に合わなかったらしい最近倒れた木が登山道に横たわっているところがあっただけで、とても歩きやすい。ちなみにここを通過するときに、偶然登ってきた男性二人組がおり、モコモコさんはこの方々に熊と間違えられていた。モコモコさんは、「昔から、私よく熊に間違えられるんだよね。」と言っていた。
どうでもいい話は置いておいて、よく手入れされた登山道のおかげで、思ったよりも早い段階で渡渉点に着いた。これは楽勝で朝日鉱泉に早いうちに着けると思っていたが、そこからが曲者だった。
尾根を登り返してからしばらく伸びやかな尾根歩きとなるのだが、地図で見るよりも長く感じる。下り始めたかと思うと登り返してと、大きくはないがアップダウンが幾度も続くので地味に足に来て時間がどんどん過ぎていく。

ようやく急下降が始まっていよいよ終わりが近づいてきたかと思うと、また先程の尾根のような感じになる。いつまで続くんだ?といい加減飽きてきたところ、やっと急下降が続くようになった。急下降と言ってもよく踏まれて手入れされているのでいやらしいところもなく降りていける。
沢音が聞こえる頃、更に急な下りを終えれば中ツル尾根の分岐に到着。

吊り橋までの途中に弘法の水場があり生き返る。この水場は登山地図には載っておらず、管理人さんに教わった水場だ。水場のことだけでなく、登山道の状況やら管理人さんから情報を仕入れていたモコモコさんの作戦がよかったらしい。結局ここから頭殿山の水場までまともに水を汲むところがなかったので、ありがたかった。
水場で行動食をかじったりして少し長めの休憩。
その間にも何組かが通過していった。

吊り橋を渡って、ちょいと登り返した高台に朝日鉱泉が見える。吊り橋はしっかりしており、三面コースの一本丸太橋や角楢小屋手前の橋とは違って、掴みやすい位置にワイヤがあって渡れるが、ストックがワイヤに引っかかり気味になるので、ここはストックを仕舞って行けばよかったと思った。
吊り橋を渡った先に、朝日鉱泉へはこちらという案内があったにも関わらず、その方向とは別の方向に舗装された林道が伸びていたので、つられて最初林道を歩いてしまった。少し歩いて、なにやら違う気がして地図を見てみるが、今一つわからない。
とにかく朝日鉱泉へ案内通りに行った方が確実だということで、案内に従って登り返すと朝日鉱泉の建屋前に無事到着。
ちょうど鉱泉のご主人らしき方がいらしたので、頭殿山の登山口を聞くことができた。
通り過ぎただけであるが、今度ゆっくりと泊まってみたいと思わせるいい雰囲気のところだった。

鉱泉で教わった通り朝日鉱泉から林道を進むと、林道が沢を渡りちょうど左に大きくカーブ(カーブミラーあり)を始める直前にある駐車場のような広場の手前に登山口があった。朝日鉱泉から約400m先に進んだところだ。登山口には「頭殿山登山口」と書かれた小さな案内板があった。

さてここから本番。
標高差約650mの登りの始まり。
最初は杉の植林地のブル道をジグザクに上っていく。 林道は時折大きく掘れていたり、亀裂が入ったりしているが歩く分には全く問題ない。それどころか最近刈り払いされたのか、草が被ることなくとても歩きやすい。更に、天気がうまい具合に味方してくれているのか、気温が上がり始める時間帯であったが、曇り空で風も吹いているので涼しくてちょうどいい感じだ。

標高700m辺りまで来ると、寝そべっている木片に赤字で「入口」と書かれてあるシンプルな標識が現れた。
ここから急な登りの始まりで、本格的な登山道の登りに入る。
最初はふくらはぎが伸び切ってしまうような急傾斜で、足場もまともにないような尾根の登りになったりするが、すぐに落ち着き、トラバース主体のジグザグ道となる。

大きく尾根横や山腹の斜面を使って登るトラバース主体の道だ。そのため、時折急斜面につけられたトラバースとなると道が足幅ほどしかない部分(長さはほんの1、2歩)もでてくるが、ブナ林の中の登りで、曇り空でも光が入り明るく、足がすくむような高度感もないので気を付ければ問題ない。

数回折り返しながら、延々とブナ林の中をトラバースするように登ると途中沢を横切るので、水を得ることができた。この先これといった水場はないので、腹ごしらえをして水を汲んだ。水場から20分ほどで朝日町と白鷹町の稜線に到着。ちょうど刈り払いされて、そこが展望台となっていた。ここは頭殿山から愛染峠へと続く林道が稜線沿いに伸びているのだが、そちらは全く刈り払いされず草ボーボーの状態。

頭殿山へは稜線から少し西側についたきれいに刈り払いされた登山道へ入る。小さな案内標識もあった。
緩やかなブナ林の気持ちのいい稜線歩きとなる。
1086mP(ピーク)手前で大きく右に曲がるところに、まるで道標のように生えた両門の大きな木がある。よく見ると三叉路となっている。うっすらと道の跡のようなものがある直進する方向は、木の枝で塞がれている。ここが山腹を横切るようにつけられていた黒鴨へと続く昔使われていた道かな?
我々はきれいに刈りはらわれている、右に大きく曲がるはっきりとした道を辿る。

1086mPらしきところを通過して少し降りてからゆるやかに登りかえしていると、やがてこれまでの緩やかな登りから傾斜が増した登りとなった。
これまでの登りがジワリと体に来ていたのか、フウフウいいながら登っていくことしばらくで、頭殿山に到着。
我々が山頂に飛び出してすぐのところに、西側に降りている道があった。はたしてこの道はどこへ続くのだろう。今回は時間に余裕もないのでそのまま見ただけで通過した。
小さな祠のある山頂からは大朝日岳の眺めが素晴らしいとの情報を得ていたが、今日の連峰上部はガスに覆われており、残念ながら大朝日岳は見られなかった。天候の良いときは素晴らしい眺めになることは間違いなしだ。タクシー代をケチって付け足しのように登ったような山と思っていたが、とんでもないとても良い山だった。

いい所なのでもう少しゆっくりしていたいが、ここから黒鴨温泉まで標高差約950mを降りなければいけない。そのうち標高差約500mは登山靴にとっては一番つらい林道(車道)歩きだ。
長居は禁物ということで山頂を去り、登ってきた方向とは山頂を挟んでちょうど反対の方向についている登山道に入り、黒鴨温泉へ向けての下りが始まる。
黒鴨へは急下降と痩せ尾根の通過を繰り返していく。最初は特に急で尻餅をついてしまった。
一気に下り、これまでよりも長く続く痩せ気味の尾根道を通過すると、今度は延々とトラバースの道となった。
こちらの方がよく歩かれているのか、道は全体的にはっきりしていた。

延々と続くトラバースに飽きてくると植林地帯のようなところになり、やがて鳥取場と名のついた尖山との分岐に着いた。ここから稜線を外れて緩やかな下りで樹林帯を進むと林道終点。山頂から林道終点までは1時間20ほどだった。
林道終点の広場に駐めてある車はなかったが、ごく最近入ったようなタイヤの跡はあった。

ここまで車入ってこられるなら林道は歩きやすいのかなとかすかに期待したが、その期待膨らむ間もなく終わったどころか、この林道の下りにやられた。
最初は結構な悪路が続いて、歩きでもなんだかいやになる感じ。
しばらく歩くと少し路面がまともになってきて、やがてコンクリート舗装された箇所が出てきた。
舗装されたところは足にはとてもつらいが、ねん挫しそうな凸凹道や底の見えない大きな水たまりよりはましかなと舗装箇所に入って大きく下降となった途端、ツルっといきなり摩擦がなくなる。

林道は暗い植林地帯の中なので、舗装されている部分にはコケが生えていてとても滑る。粟畑から雨量観測小屋へ降りるときの石畳のようなツルツル状態なので注意が必要。石畳は掴むところがあって短い距離で終わるが、このツルツル舗装地帯は何度も出てきて、そのたびに何度もすっ転びそうになり、恐怖の坂道だった。後日、頭殿山へ黒鴨から登った経験のある方から頂いた情報によれば、「林道を制覇できれば頭殿山登頂は8割5分成功」とのことだが、納得の林道だった。
我慢の下りで、予定時間を大幅に上回ってやっとのこと黒鴨温泉に着いた。
林道の悪口ばかりになってしまったが、一言。この林道脇には石仏、草木塔などがあり、降り切った黒鴨には即身仏が安置されていたりとなかなか歴史的にも奥深いようだ。

黒鴨温泉での入浴は時間の関係であきらめることに。
鳥原小屋の管理人さんや荒砥のタクシーの運転手さんの話では、黒鴨温泉は民宿のような小さなお風呂で事前に連絡しておかないと準備の関係で入れないかもしれないとのことだったので、どのみち入れなかったのかもしれない。
黒鴨からタクシーを呼んで荒砥駅へ(約\2500)。
きれいな荒砥駅で着替えをして、列車を乗り継いで帰路につく。途中の米沢駅で牛肉ど真ん中弁当を仕入れることはできなかった(売り切れ)が、峠駅では峠の力餅を仕入れることができた。仕上げに福島駅の極楽湯で4日分の汗と汚れを落として、今シーズンの朝日連峰の山旅に幕を下ろした。



感想
今シーズン3度目となる朝日連峰でしたが、何度通っても飽きることはありません。
素晴らしい紅葉と、出会いと再会、新たなルートの発見とてんこ盛りの山旅でした。
出会った皆様に感謝、小屋や登山道をを管理している方々に改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。山は平等でいいなあ。


早朝
池と小屋 お世話になりました。鳥原小屋
金山沢の渡渉点 触るといやがります
朝日鉱泉 頭殿山 登山口
ブル道が終わり本格的な登山道になる 上部の水場
山頂 石碑
石碑 黒鴨温泉

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