南アルプス |
大井川信濃俣河内〜茶臼岳〜聖岳 |
〜南アルプスの沢デビュー〜 |
2013年8月8日〜12日 |
例年雪国の沢へ行くことにしているが、奥秩父の快適さ(虫がいない、稜線に上ってからも涼しい)に味をしめてしまった。
東北地方や日本海側は未だ天候が不安定で、連日集中豪雨のニュースばかりだ。
急遽、行き先を南アルプスに変更した。
例の如く喧嘩をしながら2転3転どころか5転してようやく決定した沢は、以前からモコモコさんが行きたいと騒いでいた信濃俣河内となった。
この沢は南アルプスの入門の沢となっている割には記録が以外に少ない。そのような中でも確実に言えることは、悪場はなく水量だけが遡行の快適さを決定するというものだった。
気象庁のアメダスや統計を見てみると、まとまった雨が最近降っていないらしいので、楽しい遡行になりそうな予感がした。
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1/25,000地形図;畑薙、光岳 山と高原地図;塩見・赤岳・聖岳 (南アルプス)
アプローチ
毎日アルペン号にて 竹橋22:40(集合22:25)−畑薙ダム(臨時駐車場6:30)
コースタイム
8月8日(晴れのちときどきくもり)
畑薙ダム臨時駐車場6:27〜畑薙第一ダム信濃俣林道分岐6:43〜広場7:14/7:30〜林道下降7:40〜ダムバックウオーター8:03〜堰堤8:57〜西河内沢出合10:15〜三俣11:29〜BP14:30
8月9日(晴れ)
BP6:30〜オリタチ沢出合6:43〜第二廊下帯入口7:18〜(釣りをすることあり)〜箒沢出合10:00〜西沢・南沢出合13:35/13:55〜C1700m付近(BP)14:15
8月10日(晴れ)
BP6:11〜二俣9:40〜稜線10:28/10:45〜希望峰11:26〜仁田岳11:46〜茶臼岳13:04〜茶臼小屋13:35
8月11日(晴れ)
茶臼小屋5:03〜上河内岳の肩7:04〜聖平小屋8:47/9:19〜聖岳11:18〜奥聖岳11:33〜聖平小屋13:25
8月12日(晴れ)
聖平小屋4:55〜聖沢登山口9:10
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8月8日(晴れ)
コースタイム;畑薙ダム臨時駐車場6:27〜畑薙第一ダム信濃俣林道分岐6:43〜広場7:14/7:30〜林道下降7:40〜ダムバックウオーター8:03〜堰堤8:57〜西河内沢出合10:15〜三俣11:29〜BP14:30
バタバタしながら偶然見つけた毎日アルペン号。
アルプス方面に行きなれた方にはおなじみなのだろうが、とんと縁のない、モコモコさんに至っては初南アルプスとなるので、畑薙ダムまでのアプローチ方法を見つけることがいきなりの核心となった。
なんとか予約をとることができて一安心と思ったら、どこの沢を登るかで大いに揉めた。信濃俣河内に決定し、折角稜線に上がるのだから聖岳を登ろう(ここでも光岳を主張するモコモコさんと対立した)と言うことになった。
乗車するバスは道路事情の関係で小型バスであるにもかかわらず、予約した時期や日取りが良かったのか一番後ろの座席だったので乗り心地が割と良く結構寝られた。
途中清水SAと井川ダムで長めの休憩をとってから早朝に畑薙ダムへ到着した。余談だが、清水サービスエリアの大きさと充実した施設設備に驚いた。さすが日本の大動脈の高速道路のサービスエリアと思った。
東海フォレストのバス乗り場となる臨時駐車場で支度をした。ここには仮設のトイレと水場があった。
畑薙第一ダムまで歩いて移動した。そのときに東海フォレストのバスが駐車場に向かっていった。一番早い時間で8:00発となっていたが、平日でもお盆シーズンは臨時便を出しているらしい。
畑薙第一ダムの堰堤を渡る前に分岐する信濃俣林道へと入った。
この辺りはヒルが生息しているとの情報があったが、連日の晴天のお陰か姿は見なかった。
林道に入り30分程歩くと前方にヒョコっと何かが顔を出した。なんだと思ってよく見ると、鹿さんだった。
いきなりの遭遇に興奮気味で歩くとすぐに、大きく林道が左にカーブするところに広場があった。広場には何かの小屋と少しダム湖方面へ目をやると観測所のような建物があった。
広場には地元ナンバーの車が一台駐車されていた。釣り人のようだ。
ここで少し休憩をとり、そのまま林道を数分歩くと吊り橋が見えた。この吊り橋を渡ってからダム湖へと降りるつもりなので、吊り橋へと降りる道を探しながら歩いた。
少し崩壊している所があり降りられそうなところがあった。モコモコさんが先を偵察してくるといって少し先まで歩いた所なにやら発見したらしい。
吊り橋へは、林道もろとも大きく崩壊している手前から降りるらしいので、先を見てみると確かに大きく崩壊しているところがあった。
過去の記録を見ると、この崩壊地にはワイヤーが張られていて崩れやすい大きなザレをザイルを出したりしながら横断して林道を奥まで行くものもあったが、ダム湖は完全に干上がっていたので、降りて歩いた方が安全で早い。ちなみにワイヤーはとうとう支点が抜けてしまったらしく、張られていないように見えたので、益々渇水ならばとっとと降りた方がよさそうだ。
我々は予定通りに迷わず吊り橋を渡ることにした。
吊り橋への下降点は、林道の路肩が短いが石積となっている所から踏み跡ができていた。
踏み跡に従ってぐんぐんと下ると吊り橋に出た。
吊り橋は所々ワイヤーや針金で補強されており、怖い思いをすることなく渡れた。
吊り橋を渡り終わったすぐ下は立った岩場なので、ここからすぐには下に降りることはできない。
下流方向へとはっきりした踏み跡があったので、これを辿ると早く入渓出来るかもと一瞬思ったが、踏み跡は尾根へとすぐに上がってしまう感じだったので、素直に上流方面へうっすらとある踏み跡を辿り、降りられそうな所を見つけて無事ダム湖へと降り立った。
ダム湖といっても土砂が完全に埋めており、かなりの大雨のときでなければ水流が現れることもなさそうな感じで、ダム湖なのに砂漠を歩いている感じだった。上流へと歩き始めてすぐに、我々が渡った吊り橋を渡る男性2人を発見。一瞬釣り人かと思ったが良く見ると測量用の棒のようなものを持っていたので、どうやら仕事で入ったらしい。さらにその後にも数人が吊り橋を渡り始めるのが見えた。この吊り橋は現役で、補修がなされていたことが分かった。
少し上流へ向かうと壊れた吊り橋の下をくぐる所があった。
広々とした砂漠状のダム湖を歩いていくが、天気が良く暑い。できるだけ日蔭を探して歩いた。水音がするのでいよいよ水流が出てきたのかと期待したが、支流の水音で、出合いは土砂で埋まっており水をとるには一汗かかないといけないようだ。
ここで鹿の親子と出会った。水を飲みに来たのだろう。
かなり奥まで歩くと、ダム湖(相変わらず水流なし)が大きく回り込むあたりで、胴が長そうな動物が横切った。一瞬だったので何の動物かはわからなかった。
これに合わせるかのように、モコモコさんが「なんだか土のような泥のような匂いがする」と言い始めた。てっきり尾根が降りてきているからかなと思ったら、回り込んだ先から水流がいきなり現れた。なるほど水があったから動物がいたのかと納得した。
水も人も近道をしたい習性なのか、我々の行く方向と流れが一致することが多く、何度も渡渉を繰り返した。水量自体は少なく、せいぜい深くて一瞬膝までくればいい方なので渡渉自体は楽だ。
林道歩きは短かったが、そこからが長いなと何度も地形図を見ながら歩いていくと、「あっ堰堤」といきなり現れた。堰堤自体は土砂に完全に埋まっていたので近づくまでまったく気が付かなかったのだ。
やっと現在地を確実に特定できる所まで来た。堰堤のすぐ上流で出合う戸立沢も、出合はガレで伏流していた。
しばらく辿っても渡渉は依然として楽だ。ここでこれだけの水量ということは、快適な遡行が約束されたも同然だと思った。
水流は相変わらず右に左に蛇行を重ねていく。流れがだんだんと普通の川らしくなってきたところで、釣り人と出会った。広場に駐車していた方だろう。
早速モコモコさんが情報収集(こういういやらしさはモコモコさんには敵わない)し始めた。
やはり車の主だった。この方の話では、やはり今日の水量は平水か少し下がっているとのことで、このままの状態で上まで行けるだろうとのことだった。また、地元の釣り人の間では、この沢での釣りはどうしても登れない滝がありそこが日帰りの場合引き返すポイントとなっているとのことだった。
貴重な情報提供と快く先へと通してくれたことにお礼をいい、歩を進めた。
釣り人と出会ってからほとんど距離を稼いでいないうちに西河内出合に着いた。西河内出合は明るく開けた渓相で出合っており、本流は暗い感じだ。
本流に入ると瀬戸と呼ばれるゴルジュ状になるようだが、もともと問題なく抜けられるとのことで、水量が少ないせいかそれらしく沢幅が狭まったりしたもののあっという間に抜けてしまった。
この沢は、とにかくぐねぐねと屈曲しており数m先ですら見通せないことが多いので、何事もない渓相でもワクワクさせられた。
また、動物の気配が濃く、カモシカさんが草を食んでいるところを見ることができた。カモシカさんを目撃すること自体は珍しくないが、食事中の場面は初めて見た。そっと近寄って写真を撮ろうと思ったが、やはりそこは野生動物。いち早く我々に気が付いてあっという間に流を渡って対岸の斜面を駆けあがって行ってしまった。
そんな楽しい出来事があったりで、思ったよりも早くに三俣に到着した。
ここの三俣は正確には二俣で、中俣沢を少し入ると小沢が出合うようになっていた。なんだか朝日の大鳥川の三俣を思い出した
当初ではここで泊まるつもりでいたが、まだ御昼前で十分第一廊下帯を抜けられる時間なので先へと迷わず進んだ。
どこからどこまでを第一廊下帯というのか正確にはわからないが、ここでは、三俣から先の最初の滝からオリタチ沢までを第一廊下帯としておく。
ゴルジュ状になって最初に出てくる滝は、小滝ながらも立派な釜を持っていた。
釜の右壁沿いに進むと、足が付かないくらい深いところもあったが、難なく越せた。
次々と淵や小滝が出てくるが、楽しく越えて行けた。
今回、稜線の長い歩きと下りに合わせて、我々にとって禁断のラバーシューズをとうとう履いてしまったのだが、さすが評判通りでフリクション抜群だった。フエルトだと絶対無理だろうという所までペタペタはりつくように行けるので、フエルトに戻れなくなりそうになっていた最中だった。倒木が折り重なってできた落ち込みを突破することになったのだが、これが今まで体験したことがないほどの見事な滑りようで、一番苦労した。滑る場合についても皆の報告通りだった。モコモコさんはここで左ひざを強打したようだ。
沢が右に曲がる所にかかっている小滝は、右をへつってから這い上がってとりついたが、這いあがりでモコモコさんが多少苦労した程度で問題なく越せた。沢は小滝ノ上で直ぐに左に曲がっており、5m程の滝を掛けていた。
少し取り付いてみたが、巻いた方がよさそうだ。
左岸の取り付きやすそうなところから取り付いたが、最初の2m程がもろい岩場となっており岩場を登ると今度は落石注意となって気を使った。
モコモコさんは最初の一歩がどうしても上がらないらしく、荷揚げをしたが、それでもホールドが次々と剥がれてしまい登れないと騒ぐのでザイルを出して登ってきてもらった。登ってしまえばザイル不要で巻き降りることができた。
しかし全体的にザレテいるので、スリップと落石には要注意だった。
少し沢が開けて、また右に曲がると5m程の滝が出現した。一見登れそうだが巻いた方がよさそうなので、ここも左岸を巻いた。巻きの最後の登りと一歩の足場がもろいが、お助け等も不要でそのまま上流方面へと向かうと自然と沢床へと降りられた。
この上は急に巨岩が連なり、左岸からの岩の押し出しが凄い渓相となった。
巨岩帯が落ち着いて、岩の押し出しがなくなると再び狭まった先に3m程の滝がかかっていた。てっきり第一廊下帯を抜けたものと思っていたので、なんだかがっかりした。さらに、ここはどこ状態で少し混乱した。
しかし、もともとは三俣で泊まるつもりであったし、何より土砂が堆積したほとんど整地不要のいい場所があったのでここで今日の行動を終了することにした。
今回は稜線でテント泊をする予定なので、重くなるがテントを担いできた。テントを張ると快適な宿ができた。
薪を集め終わったところで、さてくつろぐかとスパッツを外すとなんとヒルが1匹裾についていた。これまで全く見かけることなく済んだので驚いた。幸い血は吸われておらず、すぐにモコモコさんが虫よけスプレーで退治したため両者被害0。
もともと信濃俣河内は、人によっては3大ヒル沢として挙げるほどヒルの生息地として有名らしいので、これくらいで済んで助かった。連日の好天気のお陰だ。
小さな騒動なのですぐに落ち着いて、集めた薪に早速点火。
さほど早い時間から焚き火を囲んでいたわけではないのだが、あまりにものんびりと出来ていることにモコモコさんが「何でこんなにのんびりできるんだろう。いつも何か追い立てられている感じなのに。」と疑問を持ったようなので、「虫(アブや藪蚊)がいないからだよ」と答えると納得したようだった。
楽しい時だったが、夜行で疲れていたのでまだ明るいうちに寝ることにした。
8月9日(くもりのち晴れ)
コースタイム;BP6:30〜オリタチ沢出合6:43〜第二廊下帯入口7:18〜(釣りをすることあり)〜箒沢出合10:00〜西沢・南沢出合13:35/13:55〜C1700m付近(BP)14:15
昨晩は風もあって少し寒かったが、テント内は暖かく快適に寝られた。
また、いつの間にか曇り空になっていたので放射冷却もなく予想に反して暖かい朝だった。
今日は核心となる第二廊下帯と第三廊下帯の通過が待っているので、珍しく早目の出発となった。
一晩寝て冷静になったところで地図読みをした所、現在地は、オリタチ沢出合から400〜500m下にある崩壊地が終わり左に曲がる手前にいるのではないかということになった。
泊まり場すぐ上の滝は、ホールド豊富な左壁を登った。
少し遡行すると、正面から沢が合流した。本流はここで直角に左に曲がっていた。今朝の地図読みが合っていたのと、第一廊下帯が終わったことが確実となったので安心した。
本流を辿ると、なんだか右岸にゴミが見えた。猟小屋の近くはゴミがひどいと記録にあったので、少し斜め上方を見てみると小屋発見。
沢は川原となっており、先で左に大きく曲がるので、近道するように小屋へと上ってみた。
小屋の外見は古くてあまり中を見たくないような雰囲気だが、実際戸を開けてみると引っ掛かりもなくすんなり開いた。
どれどれと覗きこむと、骨組がしっかりしており、落ち葉が吹き込んでいるものの履き掃除をすれば(箒もあった)悪天候の際には安心して泊まれそうだ。(天気がいいときは、もちろん外で泊まる方が快適だが)
めずらしく平瀬で屈曲のない穏やかな流れを歩いていくと、だんだん日が差すようになってきた。
ぐるっと尾根を回り込むように流れが屈曲すると、側壁がいきなり立ち塞がるようになった。
第二廊下帯入口を思わせる雰囲気だ。
この辺りで狭く暗い中一筋の光が差し込んでおり、まるで地獄への曲がり角の手前に天国からの梯子が降りてきているようだった。
数m進んで左に曲がると第二廊下帯に突入だ。
見事なゴルジュだ。しかし水に浸かったりすることはあっても困難なところはなく楽しい。
第二廊下帯の出口となる、左壁に残置スリングがかかった釜を持つ3m滝に着いた。
最初スリングを使って越えようとして少し取り付いてみたところ、モコモコさんから別ルートをとった方がいいと主張された。言われたルートは、滝の右には流水溝のようになっておりそこを登ったらどうかというものだった。
釜が白く泡立っており深さが解らないので躊躇していると、モコモコさん自ら挑戦してみると言い出した。取り付けなかったら引き戻してと念のためお助け紐を着けて釜に入っていった所、なんと釜が埋まったのか上手い具合に石があって流水溝に這いあがってしまった。流水溝上部には石がつまっていたのだが、空身でここもクリアできた。でかした!モコモコ!!ということで山人も続いた。
モコモコさんが残したザックを荷揚げしてから這いあがれば第二廊下帯も終了だ。
短いが充実した所だった。
終了した所にの正面はザレており、本流はここでまたもや右にグイッと曲がっていた。
側壁は高いままで、小滝を掛けていることもあるが、ほぼ巨岩とゴーロ帯となった沢をのんびり進んだ。
この沢は釣れるということだが、水温が高いためかこれまで魚影を全く見ることができず、竿を出してみたりもしたが全くアタリもなかった。
なんでだー、といいながらとうとう第三廊下帯の入口近くまで着てしまった。
左岸が大きくザレているところで竿を出してみた。
まずはモコモコさんに竿を預けてみた。やっぱり駄目かあ?と半ばあきらめていると「釣れた!!」の声。引き上げてみると、なかなかの岩魚を見事釣りあげていた。
2匹目の岩魚を狙って今度は山人も竿を出してみたが、駄目。場所を少し変えてもう一度挑戦するとやっと釣れた。
モコモコさん曰く、“私は運で釣った”ということでツキを逃さないようにリリースし、山人が釣った方を今晩のオカズに頂くことにした。
第三廊下帯も小滝からスタート。
左岸から箒沢を合せて右に曲がると直登できない滝が出た。少し戻って巻くかなと思っていると、モコモコさんからここ登れないかなと言われて良く見てみると倒木がかかった石の詰まったルンゼのような溝があった。
登ってみると少しザックが引っ掛かったが登れた。モコモコさんも無事クリア。
これまでより攀じ登るところが出てきたが、悪い所がないので逆に楽しく進んでいく
第三廊下帯も結構進んだような気がした頃に、左岸に凸角状の岩が張り出した2段滝に着いた。これは登れないので、左岸巻きとなった。
巻きの取り付きはルンゼ状となったところから簡単に取り付けた。トラバース出来そうな所まで登ると、踏み跡があったのでそれを辿った。途中一歩のトラバースが微妙だったので念のためお助け紐を出して通過した。
ここから数歩登ると滝下で見えた凸角状の岩の上に出られた。
さらに上へ登ろうか見まわしてみる間にモコモコさんが岩の上から下を覗いてみると、旨い具合に滝上に降りられるようになっていた。ここを見逃していたら、ガイドでも出来るだけ小さく巻かないと懸垂下降で降りることになると記載されていた所なので、モコモコさんのファインプレーだった。
クライムダウン出来そうだったので少し降りてみたが、思ったよりも高度感があったので念のため懸垂下降することにした。
足場やホールドはしっかりしていたが、我々は懸垂下降して正解だったと思った。
降りた先は、側壁は高いままだが巨岩と小滝が続く渓相に戻って、第三廊下帯一番の核心部が終わったと感じさせるところだった。
すぐに、なにやら一際大きな音を立てて落ちる滝が出現。
大きな釜を持ち、滝の落ち口左に大きな岩があるのが特徴的だ。全く登れそうもなく巻くとしてもかなり戻って大高巻きになりそうだと怖々近づくと、なんと左に小さな滝を掛けているではありませんか。分流した流れが作りだしたものらしい。
ここでも竿を出して結構粘ってみたが、にわかでは釣れないのは明らかだ。
おとなしく先へと進んだ。
分流の小滝は簡単に登れた。
ここまでくれば翌日はよほどのことがない限り稜線に上がることができるので、気が楽になった。
まだ滝は掛っているがどれも簡単に越えて行けるので、のんびりと遡行して行くと、右岸から西沢・南沢出合となった。ここから本流は大春木沢という沢名になるらしい。
この辺りに岩小舎があるらしいのだがわからなかった。また出合の高台にいい泊まり場があった。この沢の上流部にはいい泊まり場が少ないとのことなので、貴重な場所だ。
我々はまだ時間が早いので、休憩した後もう少し先に進んだ。
巨岩帯を暑いと言いながらぐいぐい登って、出合から20分程度の左岸高台に快適に泊まれそうなところがあった。
もう少し先に進んで見ることにしたが、幾らも進まないうちに連瀑帯となり沢が狭まってしまった。
先ほどのところに泊まることを強く主張してくるモコモコさんと、先へ進んだ方がいいと言い争いなるが、今日のモコモコさんは運が良い。大いに不満だが、言う通り(運が良い方に便乗する)にしておいた方がよかろうということで戻った。
場所は標高1700m程の正面に大きなザレ場が見えるところで、すぐ傍にヌタ場があるのが気になるが、焚き木も苦労せずに集められた。ここ最近泊まっていないのか整地が少し必要だったが大規模な作業は不要で快適に泊まれそうだ。
焚き火に点火して落ち着けば今日も楽しい時間の始まりだ。
快適な遡行と、標高がさらに上がり虫を全く気にせずに済むので心から落ち着くことができた。稜線は少しガスが掛っているが、ここは天気がいいままで雨の心配もなさそうだ。
ラジオをつけてみると、こことは正反対に東北地方中心に豪雨となっているらしかった。
焚き火の熱にあおられて暑い暑いと何度か幸せな逃避をして過ごした。明日はいよいよ信濃俣河内のフィナーレ頑張ろう。
8月10日(晴れ)
コースタイム;BP6:11〜二俣9:40〜稜線10:28/10:45〜希望峰11:26〜仁田岳11:46〜茶臼岳13:04〜茶臼小屋13:35
今日も天気がよさそうだ。
いつも通り体操をして出発。
昨日入りかけた連瀑帯は思ったよりも長く、意外に狭まった状態だったが、どれも簡単に登れた。
連瀑帯が落ち着いた右岸から小さな沢が入ると、開けて明るくなった。
この沢全体に言えることだが、開けて明るくなっても、左右の斜面からの崩壊が激しく、きれいなナメやナメ滝には残念ながらガレや岩が乗ってしまってナルミズ沢や八久和川の源頭部のような牧歌的な雰囲気とはなっていなかった。
下流部では支流の沢が出合ってもガレで埋まっていたりして水流が見られなかったり細い流れでしかなかったものが、ここまで標高が上るとシッカリと水が流れている沢として入るようになっていた。
右岸の大崩壊地が始まる手前、標高2000m辺りで焚火の跡があったが、昨晩のところが一番良かったようだ。
順調に標高を上げていくと、一度崩壊が治まる辺りで珍しく10m程の大きめの滝が掛っていた。ホールドが豊富だが、中段での1,2歩が少し脆く段差が大きいところがあったので、モコモコさんにはお助け紐を出したが、問題なく登ってきた。
この滝上の先から右岸の崩壊が一際大きなものになった。
大崩壊が終わる辺りで左岸から入る支流があったが、少し場所の特定に戸惑った。今思うと沢床の高さが歴然と違うので何を迷っているのかという感じだが、空身で先を偵察するとすぐに大きな滝が掛っていることがわかったので、そのまま進んでもいいことが判明した。
ガイドでは巻くとなっていた滝だ。良く見ると2段の滝となっていた。登れそうだなとモコモコさんに言ってみたが、岩はもろいし、今回は登攀具を一切持ってきていないからだめと即却下された。
今回のモコモコさんは運が(略)ということで、おとなしく巻きに入った。
巻自体は難しくないが、少し踏みこむとすぐに落石が発生するので要注意だ。
尾根の末端に登ったところで、そのまま登ってザクッと巻いてもよさそうだったが、滝落ち口に向かってトラバース開始した。獣道のようなものがあったのでそれをたどっていくと、滝上に降りられそうな斜面となった。先にはまだ小滝がかかっていたので、先に降りて偵察してみたところ登れる滝であることが分かり、モコモコさんにも降りてきてもらった。
この滝は容易に登れた。
登ったすぐ上には右岸から小沢が入り、本流は直角に右に曲がり10m以上の登れない滝を掛けていた。
小沢を少し登り取り付きやすい所から小尾根へと斜面を登ると獣道があったので、獣道を辿ってすんなり滝上に降りられた。
この二つの大滝を越えるには、我々のように一度沢床へ降りなくても一気に尾根へ上がり小沢を横切っていくのも楽でいいかもしれないと思った。いずれにしても懸垂下降等は不要の巻きだ。
滝上は、一気に平凡な源流部となってしまった。
二俣を慎重に探しながら進みここだと思って入ってみたが、すぐに水涸れとなってしまった。しかし目指す稜線までの標高差は約150mすぐに着くだろうと思っていたが、前回の奥秩父のことがあったので多めに水を汲んだ。
すると沢はあっという間に窪になり、すぐにガレや倒木で埋まった行き止まりの斜面となってしまった。
やはりツメが甘い我々は間違ったかと後悔したが、幸いヤブ漕ぎがない斜面なのでこのまま登っていった方がいいだろうとそのまま斜面を登ることにした。
運がいいのか悪いのか、天気が良すぎて暑い。数歩登っては汗を拭いてを延々と繰り返すと斜面の上方に青空が見えた。もう少しだ。
お互い励まし合いながら登っていくと開けた斜面となった。益々暑くなったが登山道は真近だ。傾斜が緩んで少し樹林をいくとひょっこりと登山道に出た。
なんだか予定した所にヤブコギなしで上手く出られたようだ。
昨日は、早く着いたら聖平小屋まで行ってしまおうかと話していたが、茶臼小屋まででお腹いっぱいですとなってしまった。
結構長い間休んだが、通ったのはトレラン風の男性1人だった。
希望峰への登りに取り掛かっても、大荷物の単独の男性と昨晩横窪沢小屋に泊まったという女性2人組に会った程度で静かな登りだった。ふと谷へと目をやると、あのまま進んでいたら結構な急斜面を登ることになりそうだったので、我々の選択は正しかったなと少しうれしくなった。
最初はすぐに希望峰に着くと思ったが、これがえらく長く感じた。
やっと着いた希望峰は以外に広いところで、立派な道標が建っていた。また仁田岳へ言っていると思われる人達のザックがあった。
折角なので、ここに荷物を置いて仁田岳へと往復してくることにした。我々と入れ替わるようにザックの持ち主の方達が戻ってきた。
近くに見る山は遠いの言葉通りだ。最初はいい眺め、「あっ、ホシガラスだ」とワイワイ遠足気分だったが、ちょっとしたピークに登ったらその先が仁田岳だったのが分かるとモコモコさんは例の「私ここでいいや」が出たので、代表して一人で仁田岳へ往復した。
希望峰へ戻ったときにちょうど、光岳へのピストンから戻ってきたという男性も到着した。暑くて大変だったようだ。
少し休憩して男性よりも先に出発した。
この男性は「疲れたー」と言いながらも、先に出発した我々にあっという間に追いついてきた。足音もなくいきなり後ろに現れたので忍者かと思った(以降忍者兄さんと呼びます)。
天気がいいとはいえ何でこんなに暑いんだ?暑くて全く先に進まない。湿度は低いし飯豊や朝日の方が蒸して暑いのに、体調が悪化したか?と話しているうちに気が付いた。今回水にどっぷり浸かることを想定して新調した、話題のファイントラックを着込んだままだったのだ。
道理で暑いわけだよと半袖に着替えたところ、涼しく快適だ。一気に体が軽くなった。
そこからは楽しい縦走だった。
確かに山頂が見えてからが長いが、今日はあれを登れば終りだし涼しくなってきたしで歩きやすい。
茶臼岳山頂には立派な山頂標識が建っていた。
ここまでくれば小屋が見えるかもと期待したが、小屋は全く見えない。
先を見ると希望峰で我々と入れ違いになった団体さんが歩いているのが見えた。もしかしてもう少し先にあるわずかなピョコを越えないといけないのかと不安になってきた頃に、ちょうど小屋から山頂をピストンしに来たらしき男性が登ってきたので小屋の場所を聞くと、すぐ降りたところに分岐がありますよと教えてもらい安心した。
一気に降りてのびやかな尾根となったところに小屋への分岐があった。
ここから小屋までは結構下った。小屋はちょうど山頂からの斜面に建っているので見えなかったのだった。
辿り着いた茶臼小屋はこじんまりとしているが、きれいだった。
帰りのバス(一泊以上小屋に泊まる(素泊り可)のがバスに乗車できる条件)のことを考え、この小屋か、明日の聖平小屋のどちらかは小屋泊まりにしないといけない。
昨日から相談した通り、グレードアップした方がいいということで今晩はテント泊とした。
早速受付を済ませて、テントはお好きなところにどうぞということなので適当に選んで張った。
小屋すぐ横の水は枯れ気味だが、テント場そばの水は冷たく豊富に出ていて、顔を洗うととても気分がよくなった。後はお決まりのコースだ。
ビールだけでなく、トマト(300円)が美味しそうに冷やされていたのでつまみに買ってのんびり過ごした。
また、忍者兄さんとも楽しいお話をすることができた。このお兄さんとても気持のいいさわやかな方なので、希望峰で会った団体さんのおば様方にモッテモテでした。
寛いでいる間にも続々と小屋へと登山者が到着した。
ラジオをつけると、東北地方が昨日の豪雨でとんでもないことになっていると告げていた。良く聞いてみると、被災した場所は我々がよくお世話になる山域ではないか。ここでは、一滴の雨も降っていないのにとなんだか複雑な気持ちになった。
夕食時になるとさすがに落ち着いてきた。
テント場も小屋そのものもさほど混み合わず、我々も含めてそれぞれが楽しく快適な夜を過ごしたようだった。
8月11日(晴れ)
コースタイム;茶臼小屋5:03〜上河内岳の肩7:04〜聖平小屋8:47/9:19〜聖岳11:18〜奥聖岳11:33〜聖平小屋13:25
今日も好天気が続くということで、予定通り聖岳へと向かうこととなった。
聖岳のピストンは結構時間がかかるので、早目に出発した。
稜線へと登り返して少し歩くと、昨日の忍者兄さんが今日も軽快な足取りで追いついてきて我々を追い越していった。その直後忍者兄さんがピタリと足を止め「雷鳥だ!」と指差して我々に教えてくれた。
ホシガラスの鳴き声が聞こえていたので、そちらの方に気をとられていて全く気が付かなかった。
良く見ると、雷鳥のヒナだった。
親鳥はどこだろうと辺りを見ると、ちゃんとそばに親鳥がいて我々を先導するかのように歩き始めた。
トコトコと歩いていく親鳥の後を必死に追うヒナ鳥がとてもかわいらしく、応援しながら後をついていった。やがて雷鳥さんの親子はハイマツ帯へと潜り込んでいった。
南アルプスでは雷鳥さんとの遭遇率が高いが、まさか初っ端から会えるとは思ってもみなかったのでラッキーだった。
前方に上河内岳が大きくそびえたっているのが見える。また、そこまでの稜線歩きは小さいながらもアップダウンがあって大変そうだと思いながらいくと、登山道は急に下降を始めた。もったいないなーと思いいながら歩くと、樹林帯に入り、歩きやすい平坦に近い道となった。わざわざ稜線のポコを越えていかなくても済むように道が付けられていた。
上河内岳登りの森林限界へと登りにかかる前に吾妻の浄土平を思わせるような所があった。
後で分かったことだが、この辺りは「礫質多角形土(亀甲状土)は大型で、大きさは現在、大雪山や北極域で見られるものに匹敵する」とあり天然記念物になるほどのものだったらしい。
しかし、モコモコさんがお腹が痛いと言い始め、「昨晩何も掛けずに寝てたから冷えたんだよ」等のやり取りをしていた為、写真は撮ったものの全くの素通りをしてしまった。
ちなみにモコモコさんはとうとう我慢が出来ず、ハイマツ帯へと潜り込んでいった。モコモコさんを待っているうちになんだか自分も催してきたのでここで時間をとられてしまった。
登りに入ると、日が当たり暑いので半袖になった。しかし、西側の斜面を歩くときは日陰で強めの風が吹いていたので今度は寒くなり長袖へと着替え、また東側になりと半袖へと着替えてと忙しかった。
森林限界になると聖平方面から来た登山者と何人もすれ違うようになった。
涼しいので、あまり苦にならない登りをこなすとひょいと上河内岳の肩に着いた。
上河内岳の山頂へはピストンせずに、そのまま聖平小屋を目指すことにした。
もったいない程に降りていくと、登山道は直ぐにトラバースするようになった。この辺りの高山植物の花が見事だった。
しばらくすると樹林帯に入った。樹林帯に入ると日陰で涼しい。
時折見晴らしのいいところに出たりすると、今日の宿泊地聖平小屋が見えるようになってきた。
やはり見えてからが長いが、順調に小屋分岐に到着した。分岐付近には、鹿対策のフェンスがあちらこちらにあり、食害の深刻さが感じられた。
分岐から小屋まではほとんど標高差がなく楽だった。
早速受付をする。食事付きも視野に入れていたが、素泊まりの場合の寝場所等を尋ねると、とても条件がいいので素泊まりにした。
また、寝具は小屋のシュラフとなるらしいのだが、折角シュラフを持ってきているので自分ので寝たいと思い「シュラフは自分の・・・」と言いかけると「それでは¥1000(一人当たり)割引しますね」と言われた。
なんとシュラフ割引があるらしい。お陰で今晩のビール代が出てしまった。
素泊まりの宿泊場所は、冬期小屋となっているところで土間が作られて寝所は蚕棚状になっているという我々にとっては馴染みのある作りだった。平成十八年に建てられたとかでとてもきれいだった。トイレも水場の条件も食事付きの方と一緒で、炊事も小屋内(スペースがある)で行ってもよいとのことで、とても快適だ。
聖岳へ行く準備をしていると、小屋のスタッフの方から今日は混み合うので、赤字の数字(詰めた方)の区画割りで寝てくださいとのお願いがあった。ここ南アルプスも、7月の連休は天気が悪く、この時期に一気に集中することになってしまい、方々と連絡をとって今現在分かっているだけでも相当数の人が小屋へ来ることだった。
茶臼小屋で小屋泊まりにするか迷ったので、今日テントにすれば良かったかな?と少し後悔した。
沢で強打した左膝に昨日から違和感があり、今日はさらに膝の調子が悪いというモコモコさんは明日の下山に備えてゆっくり休むということなので、久しぶりに単独登山へと出かけた。
ザックに地図と水と行動食と雨具だけを入れて向かうことにした。樹林帯の中をぐんぐん登る。空身同然で、ペースがつかめずどうしても急ぎ足になってしまう。汗をダラダラかきながら登ると見晴らしの良い小聖岳だ。前聖岳がデーンと姿を現す。西側の聖岳大崩壊地というのは凄まじく圧巻だ。どこを進むのか登るルートを観察するとザレザレの斜面を小刻みにジグザクに登っていくようだ。
途中、上から猛烈なスピードで降りてくる女性を発見。小さなサブザックを背負い良く見ると沢靴でストックを片手に束ねている。あられちゃんの「キーンでございます〜」という勢いだった。あっという間に下っていった。
小刻みに上をひたすら目指す。ようやく傾斜が緩むと前聖岳は目の前だった。100名山ということで人だかりが凄いので、静かな奥聖岳へ向かうことにした。途中2人の男性とスライド。山頂には誰も居らず、落ち着いた静かな時間を独り占めした。ここまでゆっくり休んでいなかったので長い時間休むことにした。
冬季ルートの聖岳東尾根が伸びている。興味が湧いてきた。
赤石岳、百間洞山の家、赤石沢が望める。いつかは行きたいと妄想が膨らむ。天候が良く、遠くの山々も良く見えた。ジックリ休んだので、前聖岳へ戻ることにした。相変わらず山頂の石杭は人気で、写真だけ撮って下山することにした。
ザレザレの道はステレスラバーのお陰で滑らずに済んだ。小刻みなステップで鞍部まで一気に下った。小聖岳からは調子乗ってここまで来たせいか疲れてしまいここからゆっくり下ることにした。
行きは薊平の分岐を確認できなかったが、落ち着いて良く見ると西沢への道がしっかりあった。
樹林帯のお陰で日陰ができて歩きやすい。前半飛ばしたせいか早い時間に小屋に到着しそうだ。
小屋へ戻ると、「お帰り、早かったね」とモコモコさんは驚いた様子だった。
内心小屋が人でいっぱいだったらどうしようかと思っていたが、まだ空いている状態でよかった。
時間があり余るほどあったモコモコさんが色々と設備を見て回ったようで、外で気持ち良く使える水場(テント場の水場)なら足を洗えると教えてくれたので、水場へと向かった。
冷たい水で顔や足を洗えば気分爽快だ。
早速ビールを買いに行くと、モコモコさんの飲み物(缶チューハイ)は売り切れ御免だった。がっかりしたモコモコさんの前に天才現る。
小屋のスタッフの方からの「いいちこのCCレモン割にして自分で作ったら」とのアドバイスで、即問題解決した。
小屋前の屋根つきのテーブルは人で一杯だったので、水場近くにあるテーブルで乾杯することにした。
テーブルは水場のすぐそばでトイレにも行きやすい絶好の場所にあるが、炎天下だったので誰も座っていなかった。
その為乾杯のときは暑かったが、ビールがよく冷えていたので逆に美味しさが増した感じだ。
その内、丁度太陽を覆うように雲がでてきて風も吹き始めてテーブルに座っているのが心地よくなってきた。
続々到着する登山者や、テントを張る場所を探す人、小屋内が混んでいるため外のベンチで夕食を待つしかない人を横目に、のんびりと快適に過ごせた。先ほどのCCレモン割のアドバイスをくれたスタッフの方に、通りがかりに「まったりしてますねー」と声をかけられる程、大混雑の中で場違いのように長閑に見えたようだ。
小屋の夕食までの待ち時間を過ごしにテーブルについた方々と楽しいおしゃべりをすることができた。
我々はゆっくりと夕食を済ませたところで撤収した。
小屋に戻ると、宿泊者は増えてはいたがさほど混んではいなかった。
結局、食事付きは大混雑だったようだが素泊りの場所はぎゅうぎゅう詰にはならず、ほどほどの埋まり具合で落ち着いた。お陰でよく寝られた。
ここで、茶臼小屋と聖平小屋の感想
・両小屋ともきれい。
・水場;テント場のすぐ近く及び小屋前(横)に水場があり快適。
・食事;頼まなかったが、茶臼小屋ではびんちょうまぐろのお刺身が出るらしい。
・売っている飲み物等;種類も多く、両小屋ともビールと缶チューハイがあった。茶臼小屋では、トマトなど山で不足しがちな生野菜を手に入れられたのがうれしい。聖平小屋では、我々はいつもわざわざ担ぎ上げているポカリスエットの粉末まで売っていた。
・飲んだり食べたりすればお世話になるもの、所謂トイレについて;両小屋とも使用済の紙は備え付けの箱へ捨てる。茶臼小屋は水洗ではないが、足を置く場所が丁度ペダルになって用を足すときに穴が開く仕組みなので臭いはほとんどない。聖平小屋は簡易水洗だった。悩ましいのは両小屋テント宿泊者だけでなく小屋のスタッフでさえも、全員が外へ出て少し歩く必要があることくらい。ということで、雨の時は勿論のこと、調子に乗って飲みすぎての転倒に注意ということですね。
・テン場について;両小屋共通でテント場のすぐそばに水場がある。茶臼小屋は段々畑のように小区画が点在しており、混み合っていてもストレスを感じさせない。聖平小屋はとても広いが今回の最繁忙シーズンだと一杯になる。よく観察してみると、小屋から見ると左最奥にあるテン場スペース聖沢左岸は穴場のような感じだった。聖沢登山口から登ってきた方は最初に出くわすテン場。
8月12日(晴れ)
コースタイム;聖平小屋4:55〜聖沢登山口9:10
いよいよ下山日。
昨晩も快適に寝られ、体調も良い。心配していたモコモコさんの膝の具合も回復したようだ。
食事付きの寝所はやはり混んでいたようで、夜中モコモコさんがトイレに起きたときには、外の屋根付きのテーブルの上でシュラフ(小屋の)に包まった人(頭まで潜り込んでいたので性別不明だが、大きさから見て男性ではとのこと)が気持ちよさそうに寝ていたそうだ。
以前、朝日連峰の竜門小屋の管理人である遠藤さんから伺った、大混雑ぶり(定員40名程のところに100人以上泊まった)のことを思い出した。なんでも、大混雑しながらでも最初は中で皆おとなしく寝ていたが、翌朝起きて様子を見たら半分以上の人が外で寝ていたとのこと。今回あまりに混むようだったら、下の土間か外で寝ようと密かに思っていただけに余計思い出したのかもしれない。
予約していた井川観光協会のバスに間に合うように出発した。
最初はほとんど傾斜のない道だが、聖沢を橋で渡ると急登りとなった。
基本的に斜面のトラバース道だが、こういった道は、沢が入り込むと急な登り降りをさせることが多い。御多分にもれずこの登山道もそのように作られていた。
しかしながら、よく揺れる吊り橋を渡って滝見台に着くまでは水筒いらずで助かった。
我々にとっては吾妻連峰でおなじみのホシガラスさんを、ここでも多くの回数を見ることができた。中でも、まだ雛らしくうまく飛べないのか枝を飛び移りながら移動している姿は微笑ましかった。親鳥はあれだけガアガアと大声で鳴くのに対して、雛はほとんど鳴き声を上げず見つけ難いのでここでも運があった。
小屋跡で休憩してからが長かった。
延々と下っていくとようやく2本目の吊り橋に着いた。沢沿いは涼しいのでここでも長めの休憩をとった。
植林地帯のトラバースがひときわ長く感じた。
やっと急下降を始めるともうすぐ登山口だ。
登山口にはバス待ち用に運動会で使われるテントが立っていたが、テント下の半分は日が差し込んでいて、残った日陰には先に着いていたバス待ちの人が肩を寄せ合って座っていた。
我々は少し離れた木陰でパッキングをし、待機していたバスの運転手さんが教えてくれた水場で顔を洗ってバスの時間を待った。
バスに乗り込む段になって一騒動。
予約者数と実際の乗車数が一致せず、全員乗れるか危なくなったのだ。それぞれが予約を入れたと主張、しかし運転手さんの持つ予約表には全員分は載っていない。
なんとか全員が乗ることができたが、途中ヤレヤレ峠から降りてきた人は予約表に記載されている人以外は乗れずに待っていてもらい、もう一度迎えに行くことになったらしい。
予約表のリストから漏れてしまった人はどうやら山小屋が予約の連絡を代行してくれたとのことなので、そこで手違いが生じたのだろう、入山前に予約していた我々はなんとか大丈夫だったらしいと安堵したのがいけなかった。
この後とんでもないことになった。
車がなく公共の交通機関を使って帰る我々にとって重要なのは入浴施設だ。井川観光協会のバスに乗ると、温泉施設まで乗せて行ってくれるのが助かる。
お風呂を済ませて、食事をゆっくりとって軽く昼寝をして、そろそろバスの時間となったのでバスへと向かうと、なんと予定よりも早くにバスが出発するところだった。
モコモコさんが慌ててバスに駆け寄り、予約をしていることを告げると「予約は1件も入ってないよ」と運転手さんから言われた。「●月×日△時に予約を確かに入れました。」と言うと、もう一度予約表を確認してくれたがやはりリストには載っていなかったらしい。「なんなんだ、あの観光協会はー」と怒りに満ちた声であるが、このバスに乗れないと帰れなくなるので絶望的な表情を浮かべたモコモコさんに同情したのか運転手さんは「早く乗って!」と言ってくれた。
慌てて乗り込んだ。
乗り込んでから運転手さんに白樺荘でバスに乗ることを言ったかなどを聞かれ、こちらは予約を入れていて安心していたのでそういったことは一切告げていないと答えると、いつも出発前に白樺荘に客がいるかどうか尋ねているとのことだ。予約が入っていても登山中仲良くなった人に送ってもらってキャンセルされることがしょっちゅうあったり、逆に先程の登山口や我々のように予約したのにリストに載っておらず、最悪な場合バスに乗ることができなくなり揉めることがとても多いという事情を伺った。
これは予約を受け付ける観光協会に大きく問題がありそうだ。このバスを逃したら家に帰ることができなくなるところだったのだ。
バスの運転手さんは一見ぶっきらぼうなようだが、しっかりしてよく事情をわかっている仕事のできる方で我々は救済された。
鉄道に間に合ったことで、予約が入っていなかったことに茫然とした我々、最終の鉄道に間に合うか内心気が気でなかった運転手さんとの緊張が、「間に合ってよかったね」との運転手さんからの一言で一気に解けた。
本当に助かった。
あまりのことに、駅では電話が通じたので観光協会にクレームを入れた。「無料送迎サービス」なのだから少しくらい予約表から漏れてもいいだろうなどと思われていたら困るのだ。
こういったときの交渉ごとはモコモコさんの役目となっているので、電話してもらったモコモコさんから結果報告。
予約の電話を入れたときの方と別の方が出た。この方はとてもしっかりしていたので予約の時にこの方だったらトラブルなく済んだんだろうなとのこと。また、生まれて初めてクレームの電話を入れちゃったよと少し落ち込んでいた。
今後観光協会のバスを利用される方は、山小屋に頼むのではなく入山前に予約を入れておく、白樺荘からのバスを利用する方は白樺荘又は運転手さんに予め伝えておくとよい。予約表への記載漏れか連絡ミスかは分からないが、「(電話での)予約なんて当てにならない」と運転手さんもこぼしていたが、出来るだけスピーカーとなって関連する人に乗ることを伝えておいた方がいいようだ。
折角順調だったのが、最後に落とし穴のようにトラブルがあったりでなんだかなといったことができてしまったが、井川駅から乗り込んだ鉄道が日本で唯一のアプト式の鉄道だということで良い思い出で締めくくることができた。
余談だが、鉄道ネタ
井川駅から乗る鉄道の車掌さんはガイド放送もこなしていた。
アプト区間は目て見てもはっきりと分かる急勾配区間だった。
冷房が付いていないため、標高が下がるにつれて暑くなっていった。乗車前に冷たい飲み物の購入をお勧めします。
井川駅から千頭駅の間は勿論のこと、千頭駅からJR線の金谷駅までも車より遅い速度で走るためのんびりと車窓の風景を楽しむことができる。反面えらく時間がかかる。
無事静岡駅に着いて、当初は、静岡駅から各駅停車で帰るつもりだったが、なんだか面倒になったので奮発して新幹線で帰ることにした。
お盆であるが、前半期間の東京行への“こだま”だったので空いていて快適だった。
初めての南アルプスの沢の印象は、虫がおらず快適だった。
岩が脆く、斜面はガレていることが多いので落石に厳重注意。
灌木についても、かなりの太さがあってもぐらぐらしたり、枝が簡単に折れるので掴んで体重を預けるときは要注意。
反面、雪渓の心配があまりなく草付き泥付きがないのがよかった。
信濃俣河内に限って言わせてもらえば、悪い所はなく快適に遡行できた。
しかし水量が多いとかなり大変になりそうだ。今回は気象庁の過去の統計を見て水量が少ないと判断して入渓した。
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畑薙ダムへの道幅事情により小型バスでのアプローチ |
施設が充実していた |
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臨時駐車場で東海フォレストのバスを待つ皆さん |
ダム堰堤横の林道を入る |
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畑薙第一ダム |
林道途中にある広場 |
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林道を離れ釣り場足へ向けて下降開始 |
吊り橋を渡る 下は完全に日上がっていた |
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ダム湖?から吊り橋を見た ダム湖は砂漠状態 |
壊れた吊り橋があった |
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土砂に埋もれた堰堤 |
西河内出合 |
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渇水で瀬戸らしき所はあっさり通過 |
食事中のカモシカさんに遭遇 |
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大慌てで逃げていった |
三俣 |
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第一廊下帯初めの方にある滝 足が着かない瞬間があるが問題ない |
モコモコさんが来るのを見守る |
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快適に越えて行けて楽しい |
とにかくぐねぐね屈曲する沢だ |
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左岸を巻いた滝 |
この滝も右から巻くと・・・ |
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巨岩帯となった |
巨岩帯が終わった先の堆積した土砂の上で幕営 |
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翌朝、出発してすぐにゴルジュ状になる |
すぐに開けてオリタチ沢出合 |
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猟小屋 |
第二廊下帯入口を予感する |
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第二廊下帯を行くモコモコさん |
残置スリングのある滝 |
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第三廊下帯が始まる |
凸角状の岩がある滝 |
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登れない滝のすぐ脇に通路のような小滝 |
良く落ちないなあと思わせる大岩 |
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明るい滝 |
釜が大きい |
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西沢・南沢出合 |
ゴーロ帯に咲く花 |
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ゴーロ帯で標高を稼いだ |
正面にザレを見る高台に泊まることにした |
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翌朝、すぐに連瀑帯に再突入 |
ナメも出てきたりする |
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珍しく大きめの滝 |
大規模な崩壊地を振り返ってみた |
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二俣手前の巻く滝その1 |
落ち口から覗いてみた |
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二俣手前の巻く滝その2 |
滝上は既に源流部 |
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汗をたらしながら登っていく |
もうすぐ登山道のはず |
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仁田岳へ行く途中、大崩壊地と登った斜面が見えた |
仁田岳山頂からはこれから辿る稜線が見えた |
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仁田池 |
茶臼岳山頂までもう少し |
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山頂に着いた |
茶臼小屋は目前 |
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テン場近くの水場。冷たい。 |
小屋近くの水場。ビールランド |
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トイレ |
トイレ。綺麗。 |
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富士山のシルエットを眺めて出発 |
雷鳥さんの親子が先導してくれた |
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水の流れがあると浄土平に似ているかも |
風化が進んでいるのかな?文様が面白い |
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上河内岳への登りから茶臼岳方面 |
上河内岳への登りから聖岳 |
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ちょっとした高山植物の観賞地帯 |
明るい日差しに良く映える |
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聖岳側からだと丸く見える上河内岳 |
聖岳がどーんと見えるようになった |
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聖平小屋の冬期用(素泊まり用)小屋 |
山人単独であの頂きを目指す |
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鹿が食べない植物は繁栄 |
小聖岳から前聖岳。どこを登るか目を凝らす。 |
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聖岳大崩壊地 |
聖岳大崩壊地、水が湧きでていた |
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小聖岳方面 |
奥聖岳より前聖岳 |
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百間洞山の家方面と赤石沢の雪渓 |
聖岳 3013m |
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聖平小屋名物 ウェルカムフルーツポンチ |
テント村ができつつあった |
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聖平小屋のトイレ |
水場 |
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テン場より聖平小屋 |
聖沢の支流。 |
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ホシガラスの雛 まだうまく飛べないらしい |
吊り橋 |
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井川駅から鉄道の旅 |
今ではこういった切符は珍しい |
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急勾配でブレーキをかけてくれるアプト君(期間限定で目がついている) |
長島ダム |
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アプト君切り離し中にパチリ |
千頭駅で乗り換え |
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