山域 |
月山・朝日連峰 |
コース |
肘折温泉〜念仏ヶ原〜月山〜湯殿山〜大越〜鍋森〜赤見堂岳〜紫ナデ〜天狗角取山〜二ツ石尾根〜狐穴小屋〜大朝日岳〜葉山〜白兎登山口 |
〜春山というより夏山縦走のような山旅〜 |
日程 |
2015年4月29日〜5月5日 |
2013年冬の間から計画していたルート。
前回は葉山から北上するつもりで入山したが、悪天候の為大幅カットして日暮沢から入山し直した。しかし、冬に逆戻り大雪となり、途中モコモコさんの負傷により実現できなかった。
今回長期で山に入れるようになった。今年は天気もよさそうで天候が安定している。今度はルートを南下することにして再挑戦。
懸念は、今冬期は雪が多かったにも関わらず4月に入って夏のような高気温の日が続き、急速に雪が融けてしまっていることだ。
雪が少なくなるとその分ヤブ漕ぎが増えるので、時間が読めなくなる。
どうかこれ以上雪がなくなりませんようにと祈りながらの出発だ。
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データ |
地図
1/25,000地形図;肘折温泉、葉山、立谷沢、月山、湯殿山、赤見堂岳、大井沢、(登山道部分は省略した)、羽前葉山
1/50,000地形図;湯殿山、大鳥池(←山と高原地図(鳥海山・月山、朝日連峰)に記載されていない部分)
山と高原地図;鳥海山・月山、朝日連峰
ルート概念図
アプローチ
代々木BT23:30−山形駅5:40/7:06−新庄駅8:23/バス8:35-肘折温泉9:30
コースタイム
4月29日(晴れ)
肘折温泉10:00〜登山口12:45〜大森山14:00〜赤沢川下降点17:55〜赤沢川左俣源頭部(幕営地@)18:00
4月30日(晴れ)
幕営地@5:00〜小岳7:00〜念仏ヶ原避難小屋8:00/8:40〜立谷沢川9:20〜千本桜12:30〜月山15:10〜牛首15:40/16:00〜石跳川源頭部(幕営地A)17:00
5月1日(晴れ)
幕営地A5:20〜湯殿山6:40〜大岫峠8:10〜大越9:00〜1162.2mP 12:41〜鍋森14:10〜砂吹立(1272.0mP)15:20〜赤見堂手前鞍部(幕営地B)17:10
5月2日(晴れ)
幕営地B5:30〜赤見堂岳7:10〜枯松山10:03〜大桧原山12:55〜アオ倉15:15〜紫ナデ17:00〜紫ナデ南標高1300m辺り(幕営地C)17:10
5月3日(晴れ午後一時曇り)
幕営地C5:30〜障子ケ岳6:45〜天狗小屋8:40/9:45〜二ツ石山12:10〜狐穴小屋(泊D)15:45
5月4日(晴れのちくもりお昼過ぎから時々雨 夜雨と暴風)
狐穴小屋5:45〜竜門小屋8:10/8:45〜西朝日岳10:20〜大朝日岳12:40〜平岩山13:50〜御影森山16:56〜中沢峰手前鞍部(幕営地E)17:43
5月5日(くもりのち晴れ)
幕営地E6:45〜中沢峰7:10〜八形峰10:40/11:00〜葉山12:30〜白兎登山口14:50
※Pはピーク、pはポイントの略を表しています(例;1156mPは標高1156mピークという意味)
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4月29日(晴れ)
コースタイム;肘折温泉10:00〜登山口12:45〜大森山14:00〜赤沢川下降点17:55〜赤沢川左俣源頭部(幕営地@)18:00
山形駅までは、夜行のJRバスを利用した。満席だったが、皆静かに過ごしていたのでよく寝ることができた。
朝はさすがに少し肌寒く、フリースを着てちょうどだった。
新庄駅からのバスに接続する電車まで時間があるので、松屋で朝食をとった。
今年は4月は連休にならなかったので、山登りの格好をした人は見かけなかった。
新庄駅から肘折温泉までのバスの乗客は、途中乗り下りした人が2人ほどいたものの、最終的に我々含めて3人だった。
ここまで山が黒々していて薮漕ぎが長くなりそうで不安だったが、さすが日本有数の豪雪地、肘折温泉へ近付くと斜面に雪が残っていて少し安心した。
昨年夏に肘折温泉に月山から下りてきたときは工事中だった橋が開通していた。
実際通ってみるとジェットコースターのような橋で、工事するのはさぞかし大変だったことが察せられた。
肘折温泉街の道がとても狭く、5月の連休中は混雑するためバスは奥の待合所までは入らないらしい。今日は4月で連休ではないので一番奥の待合所が終点だ。
待合所にはベンチとトイレがあったので、入山の支度を整えた。
支度をしている最中から暑い。今日は標高が低く、初日でとても荷物が重いので長くつらい戦いになりそうだ。
[出発から登山口まで]
銅山川にかかる橋を渡り林道へ入って坂を上るが、雪は一切ない。
ひとのぼりして台地状になると、林道の傾斜もゆるみ少し楽になった。たったここまででひと汗かいてしまった。
雪のない状態はここまでで、我々の進む林道は雪に覆われた。
スパッツとサングラスをつけて雪道に入った。予想はしていたが昼前で既に暑いほど気温が上がっているので、ズボズボ潜る雪だった。
ワカンは持ってきていないので我慢して歩く。幸い潜り方は足首程度までで済んでいるので何とか予定通り進めそうだ。
林道が何度か折れ曲がって高度を上げる所は、斜面に雪が着いていたので適当に登って近道した。
路肩下は完全に雪が切れていて道に乗りあげるのに薮をつかんでの泥つき登りになるが、道を辿って行ってぐるっと回ってくることを考えると時間と体力の節約になったと思う。
我々が辿るコースは月山からのスキールートで有名だが、今年の連休は林道を近道するのにも完全に雪が切れているので面倒そうだ。日帰りのスキー登山者が降りてくるかなと少し期待していたが、どうやら雪の状態をみてこちらに下りてくる人はいなさそうだ。
黙々と林道を歩いて途中休憩してさらに進むと、なにやら方向がおかしいことに気が付いた。
地形図を覗きこむと、途中で分岐している林道へ入ってしまったらしい。休憩した所までは確実に合っていたので戻ってよく見てみると、はっきりと本来辿るべき林道がしっかりと伸びていた。
この後の林道は分岐することなく一本道なので迷うことなく進めた。
さきほどの彷徨があったこともあり、予定よりも40分ほど遅れて取りつきに到着。登山口は雪の広場になっているが、道標の頭が出ていた。
本格的な登りに入る前に休憩した。
[登山口から猫又沢まで]
最初は、目の前に見えている尾根まで登らなければならない。
夏道通りに小さな沢状を詰めて登り、尾根に乗った。
標高が低いながらも尾根にはしっかりとした雪堤がついており、その上をとことこ歩いていくと目の前に大森山が立ちはだかった。
雪のない時は大森山は登らずに巻くように道が付けられているが、まだ斜面には雪がべっとりついており傾斜もあって巻くのは危険そうなので大森山を登って越えることにした。
北面で傾斜もそれなりにあるので、アイゼンを履いた。
これが正解で、上部になると雪も多少固くなって傾斜がでてきたので、アイゼンを履いていなかったらキックステップで登るには疲れてしまいそうだ。
傾斜がなくなると山頂はまもなく。
大森山山頂は長細く、少し歩いた先にあった。山頂は雪の台地になっており時間が早ければゆっくり休憩して行きたいところだ。
折角登ったが、鞍部まで登ったのと同じくらい下降することになる。下降は西面になるのですっかり雪はなくなり薮の中を降りた。
鞍部手前でモコモコさんは薮に足をとられて転倒。
ここだけ夏道がでていたので、ついでに荷物をおろして休憩。
先を見ると夏道はこの先も出ているようなので、一度アイゼンを外した。
期待したほど夏道はでておらず、雪の斜面になってしまったので、夏道を歩くときは見下ろすことになる北側の窪地まで下降して進んだ。
特にこれといった登り下りはなく歩きやすい。小さな池が顔を出し始めていた所に近付くと、つがいの鴨らしき鳥さんたちが飛び立っていった。
窪地は両側を尾根に挟まれており、そのまま地形に任せて進むと自然と地形図にある凹地に辿りつく。
この凹地も雪がかなり融けており、そうとうな深さになっているようだった。
凹地を通り過ぎてから再び尾根に戻った。完全に夏道は雪の下であるがほぼ夏道通りに進んだ。
そろそろ猫又沢への下降点となるはずであるが、尾根上が非常に歩きやすかったので調子に乗ってしまって、下降点先にある778mのちいさなピョコまで登ってしまった。往復30分ほど時間をロスした。
目指す方向とずれてしまったので一度戻った。
下降点までほぼ戻ったところで作戦会議。周りを見てみると、目の前には雪で埋まった猫又沢がよく見える。そのすぐ向こうは猫又沢横断後に取りつく尾根だ。
夏道通りに下降するには傾斜がきついのと、わずかでも距離を短くするために夏道が猫又沢を横断する地点のすぐ上流にある二俣目指して、傾斜の緩い所を選んで下降した。
[猫又沢から幕営地まで]
比較的下りやすい斜面で助かった。
降り立った猫又沢の二俣下は、小さな滝が顔をのぞかせていた。そのまま尾根を登ってしまえば夏道に合流するが、上から見た感じでは二俣から先はしっかりと埋まっていたので、割れている個所を小さく巻いてやり過ごして沢を詰めた。
沢が緩やかに右に曲がる辺りで、尾根側面から水が流れていた。これまでの暑さで水を大量に消費していたため水を汲んだ。
汲んだ水は冷たくて、飲むと生き返った気分だ。
尾根側面の傾斜がきつくなる直前で沢床を離れて尾根に登った。
尾根を出来るだけ登って、夏道通り標高900m辺りで尾根を離れてトラバースしながら赤砂山から南へ伸びる稜線へ乗った。
乗りあげた場所は赤砂山南にある名もなきピークと赤沢川下降点となる978mピークとのちょうど鞍部だ。
ここでかなりいい時間になってしまった。
今日はできれば赤沢川へ下降してできるだけ進んでおきたいところだ。一度荷物を降ろして休憩しながらこの先どうするかを相談。
もう少し頑張ってみることにした。
夏道は978mピークから斜面を下っている。すぐ近くの沢を覗くと雪がつまっているが、水音が聞こえる。小沢に沿って下降した。
小さな小さな沢の出合まで降りると、ちょうどいい具合に平坦な場所が見つかり、近くから水音も聞こえる。
薄暗くなってきて時間も時間であるので、明日頑張ることにして今日はここまでとした。
モコモコさんに整地とテント設営をしてもらっている間に水汲みに行った。
気温が高いせいか、水量があって短時間で汲み終わった。テン場へ戻るとちょうど設営が済んだ所だった。
水作りをしないで済んだので、すぐに夕食をとることができて助かった。ラジオでは明日も高気圧に覆われて暑いくらい気温が上がるということだ。
明日は前半の核心部、月山越えが待っている。月明かりがきれいで夜更かししたいところだが、疲れの為すぐ寝た。
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肘折温泉待合所 |
水量豊富な銅山川を渡る |
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林道は斜面を登って近道した |
ようやく登山口 |
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大森山を越える |
夏道は巻いている大森山山頂 |
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北側にある小さな池 |
地形図に書かれた凹地 |
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夏道横断点より上流に下りた |
恵みの水 |
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しばらく猫又沢を歩き、登りやすそうな所から右岸尾根へ登った |
もうすぐ赤砂山からの稜線に上がれる |
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尾根は赤沢川をぐるっと回りこんで繋がっている |
近道をするために目の前の沢へ一度下る |
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この小沢に沿って下降 |
今日はここまで |
4月30日(晴れ)
コースタイム;幕営地@5:00〜小岳7:00〜念仏ヶ原避難小屋8:00/8:40〜立谷沢川9:20〜千本桜12:30〜月山15:10〜牛首16:00〜石跳川源頭部(幕営地A)17:00
冷え込みもなく暖かな夜だった。
昨日行動終了が遅かったためもう少し寝ていたいが、今日は行動予定時間が長いのと稼がなくてはいけない標高差が大きいので頑張って早起きした。
どうか今日は残業になりませんように。
[幕営地@から小岳まで]
まだぎりぎりでも4月というのに雪が硬くない。
それでもそれなりに気温が朝には下がっているため、昨日水を汲んだ所に行ってみると水量が極端に減っていた。
テントや荷物を撤収している間に水をためておくようにして一度幕営地へ戻り、パッキングが終わった時点で様子を見に行くと、ちょうど水が溜まったところだった。
体操を済ませて早速出発。
最初に赤沢川の本流まで小沢をそのまま下降して行く。
雪が硬くなく傾斜も急でないので下りやすい。さすがに出合近くになると少し急になるが問題になるものではない。しかし、雪解けが早いせいか、沢に被った灌木や枝に行く手を邪魔された所があった。
赤沢川本流はすでに源流部となっているので、雪のないときでも小さな流れであるが、草や灌木を雪が覆っているので広く感じた。
しばらく沢床を上流に向かって詰めていく。
早朝であるのに雪が軟らかく、荷物もまだ重いままなので一歩一歩が遅くなってしまう。沢を吹き抜ける風が涼しくありがたかった。
沢が狭まってきた辺りから右岸の尾根に取りついた。
夏道に沿うように登ったが、早いうちに登ってしまいたい気持ちからか、夏道からずれて少し早めに尾根に登り切ってしまいそうな所まで登ってしまった。このあたりの尾根はやせ気味なので薮が出ていたが、折角登ったので少し薮を抜けて尾根南東側についている雪堤にのって先へ進んで、ルートを修正した。
尾根が広がると再び雪の斜面となった。小岳手前の1180mPは登らずに北側を巻いて小岳との鞍部に出た。
ここまで登ると周りが良く見える様になった。
小岳は大きなドーム状になっていた。モコモコさん先頭でゆっくり登り、傾斜が緩んで先が見える様になったところで、小岳の山頂には寄らずに東側に大量に残った緩やかな雪の斜面をトラバースする感じで次の1199mPを目指した。
「小岳から立谷沢川まで」
この時点でまだ7時だが、強い日差しが横から差し込んできて非常に暑い。ただでさえ遅れているのにさらにペースダウン。本来の計画では、念仏ヶ原から千本松山を通って清川行人小屋へ回り込んでから月山へ登り返すつもりだったが、なんだか厳しくなってきた予感。それでもまだモコモコさんは残雪期でないとなかなか行けない千本松山経由で行人小屋へ行く気満々だった。
1199mPに着いた時に、眼下に白く平らな盆地状の地形が見えたので念仏ヶ原に間もなく着くのかと一瞬喜んだが、直後に「目の前の稜線を越えた先の盆地が念仏ヶ原だよ」とモコモコさんから言われがっくり。まだ先が長いよ。この時点で、モコモコさんがなんと言おうと、行人小屋はあきらめてもらおうと思った(まだ言いはしないが)。
そうとなるとなんだかルートを見て行くのが面倒になったので、遠回りになるが念仏ヶ原への下降地点までは尾根伝いに進むことにした。そうすれば尾根を進んでいる間は歩くことに集中できる。
念仏ヶ原への下降ポイントとなる1185mピークは夏道同様登らずに軽く巻いて、適当に小屋の方向へと雪の斜面を楽しく下って行くと、小屋の屋根がすぐに発見できた。
これには二人ともとても喜んだ。
小屋は雪融けが早いので、おそらく例年よりも出ているのだろう。
2階の入口へは梯子を数段登るようになっているほど小屋が出ていた。折角なので扉が開くか見てみたところ簡単に開いた。これから来る人は何事もなく小屋に入ることができるようだ。後に分かったことだが、4月中旬に地元の山岳会の方が肘折温泉へのスキーツアーの際に、小屋入口が開くようにと除雪をしていってくれたとのことだった。
天気がいいので、小屋内には入らずに外で休憩した。
モコモコさんが暑くて汗をかいて靴ずれ対策でテーピングをしたいというので、地図を取り出してこの先の行程をみて時間の予測をしてみる。
やはり行人小屋経由では時間がかかり過ぎて、後の行動に支障をきたしそうだ。サブルートとしての計画には入れてこなかったが、このまま立谷沢川へ降りて月山に登り返すのが一番よさそうだ。
モコモコさんにそう告げると、以外にもあっさりと“ここに着いたのが遅すぎた。行人小屋経由はあきらめる”との返事があった。
清川行人小屋経由にしたのは、千本松を通って尾根通しに歩きたかったこともあるが、立谷沢川がスノーブリッジで渡れないかもしれないという不安があったからとのことだ。
これまでの行程で、思ったよりも沢が出ていなかったので行けそうだと思ったらしい。どうしても渡れなかったら、そのときに考えようということになった。
居心地の良さも相まって、小屋前でなんと40分も休憩してしまった。先は長い。いい加減重い腰を上げて出発。
雪だけの世界だとかなり広く感じる念仏ヶ原を、立谷沢川への下降点となる1134mP南の鞍部を目標に歩く。途中熊さんの足跡を発見した。
このときは「熊さんの足跡だ、熊さんいないかな?」「結構前に通ったみたいだからもう近くにはいないでしょ」とただただ無邪気に会話をして喜んでいた。
立谷沢川への道は西側斜面についているが、さすがにまだ夏道は出ていなかった。地形図を見て、夏道のついている尾根の北側にある小沢を見ながら下降していくと、標高1050m辺りで、一時的に尾根が痩せてロープが張られている場所は夏道が出ていた。
重荷なので、ここは両手が空いていた方がいいのでストックを一時的にしまった。モコモコさんはさらにアイゼンも外した。
根や枝に引っかかって躓いたりしないように慎重に下ると、尾根南側の沢が見えた。沢を埋めている雪面が一番近づいているところで雪面へと下りれば、あとは緩やかに立谷沢川まで下って行くだけだ。
モコモコさんは再びアイゼンを履いていくので、その間に先行して様子を見ておくことにした。
沢床を軽く下ると立谷沢川を見下ろせる台地状となっている所にたどり着いた。荷物をおろして早速気になる立谷沢川を覗きこんで見ると、橋の下流は大きく水流が見えておりその下は完全に埋まっていた。
問題の渡渉(橋は壊れており使えない)点の方を見てみると、渡れそうだ。
偵察を終わらせほっとしたところで、モコモコさんがモコモコとやってきた。やはり第一声は「どう?大丈夫?ブリッジあった?」だった。大丈夫なことを教えてあげると心からホッとしたようだ。
これからブリッジを渡って、渡った後は尾根までの急な登り返しなのでもう一度軽く休憩をとった。
[立谷沢川から千本桜まで]
台地状から少し降りると、渡渉点が目の前に現れる。
渡渉点は壊れた橋の一部が現れていた。
融雪が進んでいて、中央部がかなり落ち込んでいるがブリッジ自体はまだしっかりしている様子。それでもあまり厚くはないので、ひとりずつできるだけ刺激を与えないようにそっと渡った。
無事に渡り終わったところで、登り返しの斜面を見ると夏道がついている斜面はもともと急であり、雪も途中で切れていて尾根に乗る直前は雪堤に乗り上げるのが面倒そうだ。
その先を見てみると、夏道から尾根を挟んで東側にある開けた沢状の斜面が登りやすそうだ。地形図を見ても傾斜は夏道の斜面よりも緩やかで傾斜も一定なのでここから見えない上部も雪がしっかり付いているだろう。
最初は登りやすいが、段々と急になってくる。すぐに息があがってしまい、尾根までの標高差は200mであるが、標高差500mはあるのではないかと思うほどきつかった。今日一番きつく感じたところだった。
雪自体は安定していて登りやすかったと思う。
尾根についた雪がちょうど雪堤状から尾根が広がって蒲鉾状にかわったところに登りついたので、難なく尾根に乗ることができた。
きつかったのと、大きな木が立っており雰囲気がよかったのでゆっくりと休憩をとった。
大変な思いをして登ってきたが、念仏ヶ原と同高度まで戻っただけだ。これからが本当の登りの始まりといってもいい。
傾斜は緩いが、まだ標高差850mあるので時間配分をうまくやらないと月山を登って終わりになりそうだ。できれば今日中に湯殿山を越えておきたいのでそれだけは避けなければ。
1221mP先の尾根が少しくびれている所までは、これまでの登りが嘘のようにほぼ平坦な斜面だ。
くびれ手前で登るルートを確認する。上へ上へ登ればいいのだが、このルートは1か所必ず通らないと先へ進めない千本桜への登りがあるため、地形を念のため地形図と照らし合わせた。
広い斜面の登りでは、モコモコさんに先頭になってもらって、後ろからばてないようにゆっくりと登った。
斜面は広く、傾斜も一定なのでどれだけ登ったかは後ろを振り返らないとわからない。念仏ヶ原の白い盆地が良く見える。
ここだけは、軽い荷物でスキーで滑り降りてみたいと思った。実際にかすかに残ったスキーの滑った跡を見ると、それぞれが本当に楽しそうに通った様子がうかがえた。
のんびり写真を撮りながら行くと、いつの間にかモコモコさんと少し距離が開いてしまった。斜面は尾根の形状を取り始めてきており、千本桜への通過ポイントもはっきり見えるのであまり気にせずお互いマイペースでそのまま登って行った。
すると、前方からモコモコさんが変な声を出しているのが聞こえてきた。結構長い間この奇声が聞こえてきたので「モコモコさんがおかしくなったのか?」と訳が分からず登って行くと、「熊だー!!」との声。遥か稜線上に黒い塊が見えた。あれがそうかなとのんびり写真を撮る準備をしていると、モコモコさんが両手を広げてストックを構えて叫んでいた。
なんと稜線上の黒い塊は熊ではなかった。熊は目前に姿をあらわしたのだった。モコモコさんは左前方に見える。ちょうど蒲鉾形の右側斜面に熊、左側斜面にモコモコさんといった立ち位置だ。
そのため視点の低い熊の方からはモコモコさんが姿が良く見えないのか一向に立ち去る様子がない。
いざとなったダシュでモコモコさんを庇おうと両者の間に割り込むように歩みを早めた。カメラを構えながらモコモコさんの近くへ駆けつける。やっと熊が人間が近くにいることを認識したようで、飛ぶように向きを変えて薮に突っ込んでいき、物凄い音を立てて駆け下って行った。
熊がいなくなったところでモコモコさんに話を聞くと、モコモコさんも最初熊の姿が全く見えなかったそうだ。
熊を見て声を出したり、ストックを使って体を大きくして見せたが、熊はきょろきょろするだけで逃げないどころか近づいてきたとのこと。
「登山中熊に襲われ・・・」と新聞に載ることを覚悟したそうだ(熊さんはかわいらしかった(見た目が)とのことだ)。
熊さんのいた所へ行ってみると、本当に近い距離で遭遇してしまったようだ。まさかここで遭遇するとは両者とも思ってもみなかっただろうが、いずれにしてもお互い不幸なことにならずに済んでよかった。
モコモコさんも山人も心臓ドキドキがいまだ落ち着かず。千本桜までの急斜面は先頭を交代する。
大きくはないが、何箇所か亀裂が入っていた。登山で登りであれば問題ないが、スキーで下るには時間がかかってしまいそうだ。
夏道も時折出ているのが見えるが、中途半端なのでそのまま雪上を歩く方が早くて安全だ。
千本桜直下は完全に雪が切れていた。
夏道へ入るのも面倒な感じだ。薮と雪の隙間が結構大きく開いているので、薮が一番近づいたところを探してなんとか乗り越えた。
乗り越えると一層緩やかになった。一息入れ、さきほどの熊さんの話をした。
[千本桜から牛首まで]
ここからあと標高差500m。距離があるので結構時間がかかりそうだ。夏道のコースタイムでも1時間50分とある。
このままだと、下手すれば3時間かかってしまうかもしれない。そう考えると、清川行人小屋経由にしなくて本当によかったと思った。もし行人小屋経由だと今日は小屋で終了だったかもしれない。
しばらく夏道がでていたりしたが、すぐに雪の広い斜面となった。
千本桜の下は新しいトレースは見られなかったが、この辺りからは比較的新しいトレースが見られるようになった。おそらく山頂からぎりぎり雪の着いている所まで滑ってきて登り返したと思われる。
ただただ広い斜面でどの程度進んだか全くわからなくなった。兎に角上を目指して先頭を交代しながら登った。
山頂への東斜面は、比較的傾斜がありそれに雪の影響で壁になっているように見えた。
どこをどうやって登ろうかなと相談しながら登っていると、山頂から単独のテレマークスキーの方が滑り下りてくるのが見えた。広い斜面なのですれ違うこともなかったので、挨拶できなかったが、なんとなく人を見ることができてうれしかった。
直下の急斜面は、アイゼンを着けているし雪も硬くないので直登することにした。
これが正解で、上部はさすがに少し雪が硬かったものの回り込んで登るよりもずっと早く登りきることができたと思う。
ゆるやかな台地上になれば頭を出した頂上小屋もはっきりと見えて、山頂は目前ということが分かる。
頂上小屋を目印にしていくと小屋から先は夏道が出ていた。
事前情報によれば、ここから鍛冶小屋までは確実に夏道がでているということだったのでアイゼンを外した。
モコモコさんはそのまますぐに下ろうとしていたが、山頂を踏まないと区切りがつかないので山頂へ行くことにした。モコモコさんからは山頂(普段は神社を参拝しないと踏めない)はどうせ雪で埋まっているだろうから私は行かないとお決まりの言葉が出たので、空身になって単独で行ってくることにした。
ここからしばらくは夏道なので、下りの遅いモコモコさんには先行してもらう。
山頂の神社は思ったよりも雪が融けて見えるようになっていた。
荷物の所へ戻り、行人小屋との分岐までくると、道標にカラスが留まっていた。よくみるとなにやら食べ物を手に入れたようだった。食物を見てみると人間が落としたものを見つけたらしい。山にいてもカラスはカラスだった
事前情報通り、夏道が完全に出ており鍛冶小屋のかなり下まで夏道で下りることができた。
途中夏道がまだ雪で埋まっていた所があるが、雪が柔らかいのでずんずん下って行けた。次に夏道が出てきた所でモコモコさんの姿発見、再び完全に雪の斜面になるところで追いついた。
雪が柔らかく、斜度も下りにはちょうどいいのでそのまま降りた。牛首で休憩をとり、これから登りがあったりするのでアイゼンを付けた。
現在の時刻16:00、モコモコさんはまだ「湯殿山を越えておきたいな」と言っている。今日も残業になりそうだ。
[牛首から幕営地まで]
目の前に見える柴灯森まで一度軽く下って登り返し。
巻くこともできそうだが、登り返しで夏道が出ていたので夏道を使った。
ここまで登ると、その先がやっと見通せることができるようになった。
ふと眼をやると猛禽類が空を悠々と飛んでいる。モコモコさんと鳥さんだーと喜んでいると、更にもう一羽、最終的に3羽見ることができた。こんなに密集して飛んでいるのは初めて見た。
金姥をわざわざ登って越えなければならないと思っていたが、先を見てみると、トラバースする夏道は雪がついていてまだ使えない様子だが、その一段下はゆるやかな雪の斜面になっていてトラバースに使えそうだ。
トラバースの始点となる鞍部までは夏道がでているが、下りなので雪を使って行った方が早く、幸い鞍部まで雪堤ができているのが見える。
雪堤を一下りして鞍部へ、登山道が一番近づいたところで夏道に入り、夏道に沿ってトラバースに入る。
すぐに雪の斜面になるので、高度をあまり下げないようにしてトラバースしていく。
ちょうど中間地点当たりで、近くで水音が聞こえた。水が取れそうなのでこのあたりで泊まることを主張したが、モコモコさんから却下される。これにはさすがにムッと来て「言っておくけど今日はもう湯殿山は越えないよ」と釘を刺した。
さすがに、モコモコさんもこれから湯殿山越えは無理だと思っているようだが、装束場までは行こうと思っているらしい。
ここで泊まらないのは非常に不満だが、先へ進んでおきたいのも事実なのでここはぐっとこらえてトラバースを終了させた。
夏道通り尾根を乗り越して石跳川の源頭へと入る。
下りて行くと、少し急な下りとなった。この辺りは小さな沢がいくつも派生してるので本流ではなく、そのうちのどれか一番夏道に近い沢を降りていくと、穴が開いており水音がする。
おお、これは、と下りて行くと水がなんとか汲めそうだ。モコモコさんは沢に落ちて濡れるのを嫌がって夏道(雪がついている)を降りてきた。
モコモコさんと合流して、水が汲めることを教えると、モコモコさんからも、とりあえずは今日のうちに進んでおかなければならない所までは来ているということで今日の行動を終了することが決まった。
整地が楽そうな場所を探して、昨日同様、整地設営と水汲みと作業を手分けして、まだ十分明るいうちにテントにもぐりこむことができた。
日没になり、思ったよりも風が出てきたが、テントに入れば寒くはないので気にならない程度だ。乾燥注意報が出ており、風も吹いている。日没を迎えても乾きそうだったので、濡れものを干した。
夕食を取ったあと、少し横になって明日のルートを確認する時間をとることができた。一日の中で、食事の次に幸せを感じる一時だ。水作りをしていたら、今頃ようやく夕食かもしれなかった。水を汲めるということは素晴しい。
今晩も雨の心配がなく、翌日も天気がいいとのことなので安心して休める。
もう少し起きていたいが、明日からいよいよ次のステージに入りる。この先も行動時間が長く、できるだけ進みたいのでシュラフに包まった。
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赤沢川本流へ下降 |
しばらく赤沢川を詰めていく |
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赤沢川から小岳の鞍部目指して登る |
小岳東面の積雪量は膨大 |
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小岳を過ぎるとやっと月山が見えてくる |
目の前の尾根の向こうが念仏ヶ原 |
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小岳を振り返る |
念仏ヶ原避難小屋が見えてきた |
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今日は最高の眺めだ |
かなり小屋が出ていた |
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広い念仏ヶ原を行く |
熊さんの足跡発見 |
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立谷沢川へ向かって下降開始 |
日当たりのいい斜面はすっかり雪がない |
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最後は雪に埋まる小沢を下降 |
立谷沢川の流れ |
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折れた橋の一部が見えている |
まだスノーブリッジを使って渡ることができて一安心 |
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渡り終わってから振り返る |
どこから登り返そうかな |
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広い沢状の斜面を登った |
暑くて辛い登り |
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やっと尾根に登り返した |
癒される風景 |
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振り返ると念仏ヶ原が見える |
まずは千本桜を目指す |
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軽い荷物なら滑り下りてみたい |
歩いてきた所を目で辿ってみる |
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1.jpg) |
広い斜面 |
熊さんと対峙するモコモコさん |
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大きな熊さんだったらしい |
熊さんは薮の中をものすごい音をたてて逃げて行った |
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気を取り直して千本桜への登り |
完全に雪が切れている |
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一段上がるとまた傾斜が緩む |
千本桜付近は夏道が出ているところが多かった |
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緩やかな登りが続く |
登りは続くよ |
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山頂直下になると傾斜が急になった |
頂上小屋が見えた |
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目覚めが近い月山神社 |
何かを仕留めたらしい |
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これから行く先がやっと見えるようになった |
さすが月山 足跡が銀座状態で出てきた |
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鍛冶小屋のさらに下まで夏道が出ていた |
これまでのことが嘘のようにはっきりとトレースが残る |
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湯殿山はまだ先だ |
柴灯森と金姥との鞍部まで一下り |
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鞍部に着いた |
夏道の一段下の雪の斜面をトラバース |
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湯殿山の雪の着き具合と時間を見て今日は行動終了 |
今日はよく歩いた |
中編へ続く
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