山域 奥利根
コース 割沢左俣〜赤倉岳〜南田代(下降)〜中ノ沢右俣〜ススヶ峰〜奥ススケ沢(下降)〜楢俣川本流(下降)〜湯ノ小屋温泉
〜激藪の彼方の湿原巡り〜
日程 2009年9月18日〜9月22日

 4泊5日のモコモコプランだ。
 割沢は例によって数年前からモコモコさんが行きたいと騒いでいた沢のひとつだ。
山人は赤倉岳登頂、モコモコさんは、南田代とススケ峰湿原訪問を楽しみに計画を立てた。
 しかしながら、渡船による入山で退路を断つ。船が去ってしまうと後は前進あるのみ。稜線は藪に覆われている。今まで一番長い入山日数だ。不安と期待が入り混じって船に乗り込んだ。
データ
地形図;
奥利根湖、尾瀬ヶ原、至仏山

アプローチ

上野駅9:15−高崎駅11:02/11:11−水上駅12:15(予定時刻実際は電車時刻が乱れていたため、遅れが10分ほど発生)/12:45−須田貝発電所入口バス停13:21−民宿やぐら13:25

コースタイム
1日目
八木沢ダム14:00〜割沢出合14:30/14:50〜標高1040m付近16:15(泊)
2日目
BP7:07〜二俣11:30〜標高1580m付近15:25(泊)
3日目
BP7:30〜上の二俣8:30〜稜線(赤倉岳東の小ピーク)10:30〜赤倉岳11:05〜赤倉岳東の小ピーク11:25〜鞍部13:00〜南田代13:45〜中ノ沢右沢14:20/15:00〜標高1550m付近15:20
4日目
BP7:30〜ススケ峰湿原9:45/9:55〜ススケ峰10:11〜ススケ峰湿原10:25/10:40〜奥ススケ沢標高1820m付近11:40〜楢俣川本流出合13:00/13:15〜中沢出合15:00頃(泊)
5日目
BP7:20〜ススケ沢出合8:00〜日崎沢出合10:11〜狩小屋沢出合12:15/12:30〜楢俣林道ゲート14:40〜湯ノ小屋温泉15:33


一日目 9月18日(天気;曇りのち晴れ)
コースタイム
八木沢ダム14:00〜割沢出合14:30/14:50〜標高1040m付近16:15(泊)


 前夜発ができずにのんびりと朝自宅を出た。高崎線ダイヤが乱れていたが、無事水上駅に到着。そこからバスで、あらかじめ渡船の予約をしてあった民宿やぐらに向かう。宿からは、御主人の車に乗り込んでダムに向かう。登山届を提出してから御主人が船をまわしてくるのを待つ。
 ダムの水がとても少ない。御主人の話によると、今年はどういうわけか毎日どんどん水位が下がっているらしい。
ここ4〜5年そういうことはなかったらしいので、なにかあるのではないかと訝しがっていた。
 そんな感じで、以前水長沢のとき(9月)は出合いまで入れたのが、今回は割沢出合いまで入るのがやっとの状態だった。
 我々は割沢が目的なので、ぎりぎりセーフだが、利根川本谷などに入る人はここからさらにズブズブ潜る泥などに苦労しながら歩いていくことになるのだろう。
 
出合い付近にはテントが一張りあった。
なんでも9月20日から禁漁ということなので、釣り人が最後の釣りを楽しみに来たらしい。
船を降りて支度を整えて出発。
水流沿いは、ズブズブの泥田状態になっているので、乾いた砂地となっているところをしばらく歩いていく。
普通の沢の状態になったところから遡行開始。
最初は森の中を流れる河原歩きだ。
遡行を始めてわずかで、テントの持ち主である釣り人と出合う。
少し話をして先行させてもらう。

だんだんナメがでてきて、そのナメは青い縞模様があったりしてきれいだ。
初日は出合い近くで泊まろうと計画していたモコモコさんは、「ここなら快適に泊まれそう」「あそこなら・・・」と言ってくるが、「もう少し先へ進もう」とそのたびに説得して進む。
そのうち 滝も出てくるようになり、渓がV字状になってきた。
滝を登るたびにモコモコさんが「これ以上先に行くといいところがないよ」と言ってくる。
それを無視してどんどん先に進むと、両岸草付き斜面となり、直登できない8mほどの滝がでてきた。
それも越えようとすると、「いいかげんにしてよ!!泊まるのにいいところがなくなっちゃったじゃない。これ以上進むともっと泊まるところがないって言ってるでしょう!!」とブチ切れたモコモコさんが叫んできた。
「この滝の上に泊まれるところが無いか見てくる。」とモコモコさんに言って少し登ってみるが、先は屈曲していて見えない。
時間も時間なので先へ行くのはあきらめる。

怒りがおさまらないモコモコさんは、「だからずっと前から今日はもうここでやめようって言ったじゃないの。下降するよ。」と提案してくるが、折角ここまできたので「ここで泊まるのはどう?」とためしに聞いてみる。
大いに不満そうだが、しかたがないなあという顔で「いいよ。」との声。
ほとんど水線と同じだが、雨は大丈夫そうなので泊まる準備にかかる。
泊まれば都で、入山祝いをすることができた。また、焚き木だけは豊富にあったので、服を乾かすことができた。

渡船にて割沢へ向かう。退路を断つ。気持微妙。 船は割沢出合までがやっとだ
入渓30分ほどで変化がでてくる 割沢は岩盤が美しい沢だ
7m垂直滝 左から巻き気味に登る
滝が連続するようになった 明るく美しい沢
楽しく登れる 両岸が立った草つきになってきた
7m滝、ゴルジュ帯に突入してしまったらしい。 適地なし。雨降らないで良かった。


二日目 9月19日(天気;曇りときどき晴れ)
コースタイム
BP7:07〜二俣11:30〜標高1580m付近15:25(泊)


思ったよりも快適に寝られた。
さすがに朝は冷え込む。

すぐ目の前の8m滝は左を小さく巻いて越えた。
沢はゴルジュ状となり、昨日滝を越えていても泊まれる場所はなかった。

ゴルジュに入ってからは小滝が続く。
しかし、どの滝も落差は2〜3m、大きくても5mほどで、ほどんどの滝が登れるのだが、どれも水に浸かってとりついたり、思い切り水をかぶって登ることになったり、よいしょと登らなければいけなかったりと、とにかく面倒だ。

滝と滝の間は極めて平坦なので、 いくつの滝を越えたが忘れるくらい滝を登るが、なかなか標高を稼げない。
天気予報では、今日は晴れて暑くなると言っていたが、なかなか太陽が現れず気温もひくいままで寒い遡行を続ける。
出発して2時間ほど経過して、ゴルジュも終わり穏やかになる。初日にこのあたりまで来られれば泊まるところもでてくる。

しばらく穏やかな渓相となるが、15m滝から再びゴルジュが始まる。
15m滝は登れないので左を巻いた。
すぐに10m滝。これは快適に登れた。しかし次の2大きな釜を持つ2m滝は登れないので、右から巻くことにした。リッジ状に張りだしている岩を回り込んでから取りついた。
最初は落ち口までバンドが走っているので容易かと思ったが、バントに岩が張り出していて、トラバースの一歩が怖い。
モコモコさんにお助け紐を出すこととなった。ここは、バンドをトラバースするのではなく、手前のリッジ状を登ってそのままザクッとバンドの上に張り出している小さな尾根を巻いた方がいいようだ。

すぐに4mCS滝。
モコモコさんからここは無理だから大きく左を巻くように言われたが、左からなんとかなりそうで取りついてみる。
2〜3歩がきつそうだ。なんとかならないか探してみるが、しきりにモコモコさんから戻るように言われ、「そこじゃないっていってるでしょう!!!戻ってきて!!!」と最後は怒鳴られる。

結局モコモコさんの言うとおり(これが正しかった。)に戻り、右岸を大きく高巻くことになった。
簡単に巻けると思ったが、大岩が張り出していて迂回するようにぐるっと回りこんで急斜面を登り、尾根を越えてから下降することでうまく沢に降りられた。

さらにどれも手ごたえのある登りとなるCS滝が3つ続き、沢が右に直角に曲がると再びゴルジュ。
ゴルジュに突入するが、2mほどの滝が登れない。
ここはすぐにあきらめて左岸から巻きに入る。
尾根の形状をなしてくるあたりから上流側へトラバースするようにして下降を始める。
最後は傾斜が急で手がかりの枝もなくなりそうなので、ちょうど支点にするにいい木があったこともあり、懸垂下降することにした。

下降したところはゴルジュの中間点あたりで、さらに2mCS滝(簡単に越せた)と3mCS滝(少し頑張り必要だった)をこなしてゴルジュを抜けた。
ゴルジュを抜けて少し歩くと、二俣だ。

この二俣は左俣へ入る。
左俣へ入ると、両岸は相変わらずV字であるが、癒し系の滝が続くようになり、快適に登っていく。
8m4段滝を超えると、20m滝だ。
きれいだが、登れず左から巻く。この巻きの中段でいやらしいところがあったので、モコモコさんにあ助け紐を出したが、モコモコさんにとっては最後のの5mほどが、きつい登りだったようだ。
結果として小さく巻くことができた。
この20m滝を越えると、見ごたえのある岩を見ることができた。

次に大きな15mトイ状滝は階段状になっている左壁を快適に登れたが、先の8m滝との間は登れそうになかったので、少し左を巻き気味に登った。
到木のかかった8m滝は、一瞬絶望的な感じがするが、右壁を登ることができたが、傾斜が強く、上部にボールドが少なそうなので、空身で登り荷揚げをした。この滝の落ち口に古びた残置ハーケン+スリングがあった。
モコモコさんの後日談だが、荷揚げのときサンショウウオが釜を泳いできて、とてもかわいかったそうだ。


これ以降は、簡単に登れる小滝とゴーロでぐんぐん高度を稼いでいく。
しかし両岸はV字状となっていてなかなか開けない。
ようやく標高1450mあたりになると、河原状のところがでてくる。
モコモコさんはこのあたりで泊まりたがったが、まだ時間があるからと先へ進むことにした。

標高1500mあたりを越すと、沢は再び狭まってきてしまった。
モコモコさんから、そろそろやめようと言われ始めるが、もう少しもう少しと言って歩を進める。
昨日と同様、「もう、いい加減にしてよ!!また昨日みたいになるじゃないの。これ以上先へいっても泊まれるところなんかないよ!!!」と、モコモコさんから怒りの声がでてきた。

さすがに昨日の今日はまずいと思い、下降して泊まるというモコモコさんに少し待ってもらい、山人が先を偵察してくることにした。
幸い5分ほど行ったところの7m滝下に、なんとか整地すれば2人なら泊まれそうなところがあった。
モコモコさんからも渋々OKがでて、1時間かけて整地たきぎ集めを済ませた。

冷たい風が始終吹き抜ける中、幸い焚き火は点いたものの、狭いので火にうまく当たれないまま、寒い夜を送ることになってしまった。
今晩はモコモコさんのいうことを聞かなかったことを少し反省した。


左岸を巻気味に登った 4m滝、水に浸かって取りついた
この4m滝は全身水を浴びて登った 7m滝 左を小さく巻いた
次々と大きな釜を持った滝が連続する 6m2段滝は右を巻いた
15m滝 左から巻いた 左を巻く最中のモコモコさん
10m滝は快適に登れた 2m滝を巻くが、ここまでの2〜3歩が微妙
4mCS滝、左を大高巻きするのが正解 ゴルジュ入口、奥の滝2つが登れず右を巻いた
一瞬やさしい面を見せる 20m美滝、左から巻いた。結構きつかった
奇岩 見事な岩塔
15mトイ状滝、左壁を快適に登った 8m滝、空身で登って荷揚げした
ゴルジュを抜けてぐいぐい高度を稼ぐ なんとか二人横になれる所を見つけた


三日目 9月20日 (天気;曇りのち晴れ)
コースタイム
BP7:30〜上の二俣8:30〜稜線(赤倉岳東の小ピーク)10:30〜赤倉岳11:05〜赤倉岳東の小ピーク11:25〜鞍部13:00〜南田代13:45〜中ノ沢右沢14:20/15:00〜標高1550m付近15:20



寒い朝となったが、今日も雨は大丈夫そうだ。
なんとか服は乾かしておいたので、着替えるのが苦痛でなくて助かった。

目の前の7m滝を登るときにモコモコさんに念のためにお助け紐を出したくらいで、快適に小滝を登ると、右から4:1の水量で小沢が出合う。
さらに小滝とゴーロでぐいぐい標高を稼ぐと二俣になる。

迷ったが、右俣のほうが水量が多かったので、右俣に入り、すぐに二俣となったところで左沢へ入る。
すると標高1720mあたりですぐに水涸れ。いくらなんでも早すぎるだろうと思い、最初の二俣は左が正解で、戻ろうかという話も出たが、そのまま詰めていくことにした。
これが大失敗で、えんえんと続く藪こぎに突入し、結局赤倉岳の東にある小ピークから派生する尾根にでてしまった。
尾根にでてからも、藪は濃く小ピークにやっとの思いでたどりついたのは、予定の一時間遅れだった。

小ピークから少し赤倉岳へ移動すると、少し藪がうすくなったので、荷物をデポして赤倉岳をピストンしてくることにした。
稜線にはかすかに踏み跡があったので、思ったよりも早く赤倉岳に着いた。
少し雲はあるものの、視界があり見晴らしがいい。
山頂からの眺めを堪能して、荷物のところへ戻る。

小ピークから藪がうるさくなるが、よく見ると、かすかに人が通ったような跡がある。
ときどき背丈まであるササやぶをこいでいくと、標高1890mあたりある草原が見下ろせるようになった。
つるつる滑る急斜面を転がりながら下っていくと、きれいな草原にでた。
草原には踏み跡がついていた。
踏み跡は藪に戻ってもかすかについていて、たどっていくとやはり少し楽だ。

調子に乗って行ったところ、楢俣川側へ引き込まれてしまったので、稜線に少し苦労して戻る。
また背丈を超えるササやぶを漕いで行くと鞍部に到着。

鞍部で少し休んで、コンパスを南田代に合わせる。今回も禁断の兵器GPSを持ってきたので、GPSも用意して南田代へ向けて出発。
トラバースになるので、ササが余計にうるさく感じる。
コンパスとGPSを見ながら、尾根の急斜面沿いにどんどん進む。

標高を落とすと、ササやぶも薄くなって歩きやすくなってきた。
また、単なる大雨が降った時の水の流れた跡か、獣道かはわからないが、我々の進行方向と同じでついているような感じで、これを利用させてもらう。
すると、水が湧き出しているところに当たり、のどを潤すことができた。
水を汲みたして、細い水流をたどっていくと、藪藪・・・の中にぽっかりと南田代が現れた。

とてもきれいで、ほっとするが、よく見ると鹿に踏み荒らされているところが目立つ。
日光や尾瀬では鹿の食害がひどく,、もはや駆除しないといけない状態になっているらしいが、ここも例外ではないようだ。周りを見ると、水芭蕉の葉っぱも見事に食べられている。

南田代からは中ノ沢右沢へ移動を開始する。
藪はそうひどくなく、鹿が南田代と下田代や上田代を行き来しているのか、うっすらと獣道らしきものがあるので、それを利用させてもらったりしながら行くと、思ったよりも早く進み、中ノ沢右沢の標高1600m付近へ予定通りの時刻で着いてしまった。
ここから左沢の下田代や上田代を見に行ってくる計画だったが、入山中日であるのと、藪こぎで早く休みたくなったので、湿原はあっさりあきらめた。

中ノ沢へ着いたところはいきなりいいテンバになりそうだったが、モコモコさんはあまり気に入らない様子。
少し上流を見に行ったが、薪集めに苦労しそうだ。
そこで下流へ移動して適地を探すことにした。
標高1550mあたりで、薪が豊富で整地すれば寝心地もよさそうなところがみつかった。二人の少人数だと寝る場所を探すのが比較的楽なのが助かる。

今晩は、タープだけでなくツエルトも張ることにした。
作業中なのにモコモコさんに呼ばれた。わざわざこんなときに何の用だと思ったら、イチゴがなっていたのを見つけたとのことでおいしく頂いた。
焚き火もついて宴会に突入。
焚き火は良く燃えてくれているが、冷え込みが激しく、焚き火に当たっているところはめちゃくちゃ暑いが当たらない個所はその分寒い。
そんなこんなで寒くなってきたので、シュラフに包まることにした。


岩峰が見えた どんどん離れていく。この時点で戻っていれば・・・
余計な藪こぎはしなくて済んだはず やっと着いた小ピークから平ヶ岳が見えた
赤倉岳を往復してくる 薮は膝程度で歩きやすい
赤倉岳山頂からススケ峰を見る ススケ峰へと続く尾根を下降する
まずは草原を目指す。奥はススヶ峰
草原に着いた
降りてきた尾根 次に南田代を目指す(この後激薮の為撮影なし)
激藪との格闘で勝ち取った南田代のオアシス
きれいな地塘の周りは鹿に踏み荒らされている

                             →後編へ続く


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