奥利根 後編
中ノ沢右俣〜ススヶ峰〜奥ススケ沢(下降)〜楢俣川本流(下降)〜湯ノ小屋温泉

四日目 9月21日
 (天気;晴れ)
コースタイム
BP7:30〜ススケ峰湿原9:45/9:55〜ススケ峰10:11〜ススケ峰湿原10:25/10:40〜奥ススケ沢標高1820m付近11:40〜楢俣川本流出合13:00/13:15〜中沢出合15:00頃(泊)



昨晩は異常なくらいどんどん冷え込んで、寒さで時折目が覚めてしまった。
朝の予定起床時間になっても寒く、しばらくシュラフから出ることができなかった。

ラジオを聞くと、今朝はこの秋一番の冷え込みで、奥日光などは、初霜初氷を観測したそうだ。
朝これだけ冷えたということは、今日も天気がよさそうだ。
今日はいよいよススケ峰湿原だ。
ススケ峰湿原は、あの長ーい楢俣林道を歩いてかつ楢俣川本流を往復してでも見に行く人がいるという湿原なので楽しみだ。

中ノ沢も右沢は、ほとんどがゴーロでたまに2mほどのゆるやかな滝がかかるくらいのお気楽な沢だ。
ただ、倒木などで沢がけっこう埋まっているので距離の割りに時間がかかる。
日差しが沢に入りこむようになってきて、これまでで一番天気がよさそうだ。

やがて標高1750mあたりで二俣ぽくなり、ここは左に入る。
水も涸れて窪になってきたころに再び二俣っぽいところになり、ここは右に入った。
窪にはササやぶがかぶっているが、窪ははっきりしており迷うことはなく、歩くのも楽だ。

いよいよ窪もなくなり藪こぎに突入かと覚悟を決めてササやぶを漕いで行くと、5分ほどで先がぽっかりと開けたような感じになっている。
そこを目指す(といっても10mほど)と小湿原にあっけなくたどりついた。
なんとも楽ちんな詰めだった。

ススケ峰湿原はちょうど稜線を挟んで向かい側なので、そこまで移動する。
向こう側にあったススケ峰湿原は予想以上に素晴らしかった。数年前の残雪期に平ヶ岳へ行くときにここに来たが、そのときはここがこんなにすごいところだとは知らなかった。
湿原自体も美しいが、周りの景色がよい。しばし、湿原を堪能する。

折角なので、荷物を置いて空身でススケ峰を往復してくることにした。
途中までは小さな湿原や草原状になっているササ原を繋ぎながら行く。
いよいよ藪こぎになる。
灌木が思ったよりも生えていて時間がかかる。
とうとうモコモコさんは山頂手前20mほどで、「私もうここでいい。」と聞きなれたセリフが出たので、山人一人で山頂を踏むことになった。
山頂にはススケ峰のプレートがあっただけで、展望はきかない。

モコモコさんのところまで戻ってからザックデポ地へと引き返す。
ちょうど往復に25分かかった。
もっとのんびりしていたいが、今日も早めにビバークポイントに着きたいので、名残惜しいが湿原を後にする。

楢俣川本流へは、奥ススケ沢を下降路にとった。
楢俣側はどこをルートにとっても藪こぎが長くなり大変だ。
最初はコンパスの指す方向へひたすら藪こぎ。少し離れるとお互いがどこにいるのかわからなくなる藪を黙々と行く。尾根が見え始めてからは、入る沢を間違えないように尾根を確認しながら慎重に進む。

モコモコさんからも「ここまでくれば、奥ススケ沢に入れるはず。もう思い切り下っていいよ。」のGOサインがでたので、大胆に進むと、標高1820m付近の奥ススケ沢の水涸れするあたりにうまく入れた。
やったねといいながら、どんどん下っていくと、沢に入って30分ほどのところで登ってくる3人パーティーにひょっこり出会う。
情報交換をした結果、ススケ沢出合いをベースにススケ峰湿原を往復してくるのだそうだ。
その他に、ススケ沢からススケ峰湿原を経由して周回してくるパーティーもいるそうだ。
ススケ沢出合のビバークポイントは、ススケ峰湿原めぐりの2パーティー分のテントですでに一杯とのことだ。

お互いの健闘と無事を祈って、それぞれ先へ進む。
奥ススケ沢は大きな滝が少なくほどんとがクライムダウン又は小さく巻き下ることができた。
懸垂下降したの滝は、2つで、そのうちの一つは、この沢唯一の10m級の滝で、割りと新しい残置スリングが数本あったのでそれを利用し、あとの一つは5mの滝で立木を利用した。

本流出合いは、前回の記憶がほとんど残っていなかった。
ここからは一度下ったことがあるのだが、さっぱり覚えていない。
覚えているのは、いずれの滝やゴルジュも困難なく下降できたことぐらいである。

晴れているので、とてもきれいな楢俣川本流をどんどん下っていると、ちょうどゴルジュを抜けたあたりで下降してきた3人パティーと出合う。
このパーティーはススケ沢出合の30分ほど下ったあたりをベースに稜線を往復してきたとのことだった。
どこかの山岳会の方々のようだが、うかつにも尋ねるのを忘れてしまった。
さすが好天気が予想された大型連休で、楢俣川は満員御礼といった感じだ。

このパーティーと前後しながら下降をしていく。
ちょうど中沢出合で、薪が豊富で二人なら泊れるスペースを見つけた。
少し早いが、この先へ行っても手頃なところは先客ありだったり、この連休で薪も大量消費されて少なくなっていそうだったので、奥利根最後の夜をここで楽しむことにした。

そうときまったら早速整地だ。
藪を刈りはらうと思ったよりも奥行きがあったので、今日もツエルトを張れそうだ。
刈り払いに時間がかかりそうなので、モコモコさんには先に薪集めをしてもらうことにした。
既にモコモコさんが明日の朝まで焚き火をしても余るくらいの薪を集めていたので、タープとツエルトを張り終えた後で山人も薪集めをするが、少しの時間で済んだ。

焚き火の準備もできたという頃に男性4人パーティーが下降してきた。
ススケ沢を登ったパーティーだった。
そのパーティーから「薪に不自由しなくていいですね。」と羨ましがられた。翌日その言葉が出た理由がわかった。

焚き火も点いて、宴会突入。
宴会になると、奥ススケ沢で出合ったパーティーが気になってくる。
「あのパーティーきっと残業だ。」
だんだん日が陰ってくると、「ああ、もうこれはヘッ電行動確実だな。」となり、日が暮れてくると、「焦ってケガとかしてなければいいけど・・・。」、とうとう日没になって「ビバーク確実だな。」等モコモコさんと会話を交わした。

焚き火にあたりながら、奥利根最後の夜は更けていった。


平ヶ岳を背後に登る 藪こぎわずかで湿原へ出た
ススケ峰の湿原 ススヶ峰の湿原。その2。かわいい小さな島2つ
ススヶ峰の湿原その3。奥の山は大白沢山 ススケ峰山頂(プレートがあるのみ)
山頂から湿原へ戻る、至仏山が見える 奥ススケ沢は明るい沢だ
奥ススケ沢最大の10m滝 晴れて明るい今日は本流を下るのも楽しい
ゴルジュもある 滝はほぼ全てクライムダウンできた


五日目 9月22日 (天気;くもり)
コースタイム
BP7:20〜ススケ沢出合8:00〜日崎沢出合10:11〜狩小屋沢出合12:15/12:30〜楢俣林道ゲート14:40〜湯ノ小屋温泉15:33


今日は昨日のような冷え込みはなかったが、それなりに寒い朝を迎えた。
長かったようであっという間の下山日
湯ノ小屋温泉まで下るだけなのでのんびり出発。
出発までの間に3人パーティーが通過するかもと思ったが、とうとう姿は見なかった。

あちこち道草をくいながらタラタラと下っていく。
ススケ沢出合のビバーク適地について様子を見ると、3人パーティーのものらしいテントが一張り残されていた。
最高のビバークポイントであるがため薪が少なく、集めるには時間がかかりそうだ。昨日薪の豊富さを羨ましがられたのがわかった。
沢中の倒木もきれいに切られていた。

本当に連休中はにぎわったらしく、快適に泊まれそうなところには必ずといっていいくらいここ数日の内に泊まった気配があった。
今回は道草&ビバークポイントめぐりとなった下降だったが、それでも気がつけば狩小屋沢出合い。

林道に上がると最初は快調に歩く。
モコモコさんは途中から道草を食い始めた。
なにやってるんだ?と振り返ると、本当に道草を食っていた。
山ブドウ採集をしていたのだ。
なんでも前回歩いた時から目をつけていたらしい。酸っぱさがある山ブドウが動いてきた体には特にとてもおいしく感じた。

楢俣ダムのバックウオーターが見えてきたあたりで、なんだか声が聞こえる。
最初、西桶小屋沢を下降してきた人でもいるのかなと思ってよく見てみると、カヌーのツアーらしき人たちだった。
楢俣湖は奥まで入っても途中林道に逃げられるためか、カヌーツアーがはやっているらしい。

ここからもうんざりする歩きでようやく湯ノ小屋温泉に到着。
前回と同様に洞元茶屋でお風呂に入ることにした。

茶屋ではどこへ行ってきたのかとお店の方から声をかけられたことがきっかけで、いろいろと山の話しを聞くことができた。
5日分の汗と汚れを落としてさっぱりし、水上駅へのバスへ乗り込んだが、さすがに連休終了に近いので、バスはめずらしく満席となった。
皆思い思いの休日を楽しんだらしく、バスの後方に座った人は全員爆睡という全滅状態の微笑ましい光景をみることができた。
我々も水上からの電車内で、ささやかながら乾杯をして無事降りてこられたことに感謝しながら山を後にした。

日崎沢出合 今日は曇り空
踏み跡入口にあった鉱山道の名残 鉄道ネタ 写真を撮る多くの人がいた人気者





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