朝日連峰 
大檜原川〜小国沢(下降)〜八久和川中俣沢〜狐穴小屋〜竜門小屋〜日暮沢
〜モコモコ祭り again! 〜
2012年9月12日〜9月16日

2007年に一度挑戦した八久和川。
増水にやられ、岩屋沢出合いの登山道までで打ち切りとなってから課題として残っていた沢だ。今考えると、これも運命。2007年の我々の技術と経験ではまだまだ早すぎると山の神様が足止めの大雨を降らせてくれたのに違いない。

時は巡って再び挑戦する機会に恵まれた。
いわゆるモコモコ祭りin八久和 再始動!
山と高原地図;朝日連峰、  2万5千分の1地形図;大井沢、朝日岳


アプローチ

東京駅八重洲口22:50〜寒河江営業所5:05/(タクシー10930円))−大檜原林道入口

コースタイム
ルート図
9月12日(晴れ一時雨、夕立あり)
林道入口6:43〜林道終点7:16〜トッサカ沢出合9:00〜枯松沢出合11:30〜奥の二俣14:30〜14:51(泊場@)

9月13日(晴れ)
泊場@6:24〜稜線7:29〜小国沢〜八久和川出合13:55(泊場A)

9月14日(晴れ)
泊場A小国沢出合6:25〜茶畑沢出合7:56/8:31〜平七沢出合10:40/11:54〜岩屋沢出合13:08〜呂滝下16:00(泊場B)

9月15日(晴れときどきくもり一時雨)
泊場B5:44〜呂滝上6:03〜中俣沢出合7:45/8:00〜15m滝下9:28/滝上10:15〜右俣出合14:35〜連瀑帯上15:29〜狐穴小屋17:09

9月16日(晴れ)
狐穴小屋7:15〜竜門小屋9:50/10:20〜日暮沢小屋14::27〜堰堤15:05


9月12日
(晴れ一時雨、夕立あり)
コースタイム
林道入口6:43〜林道終点7:16〜トッサカ沢出合9:00〜枯松沢出合11:30〜奥の二俣14:30〜14:51(泊場@)



長い長い沢旅だ。少しでも早く行動できるように夜行バスでのアプローチにした。
東北急行バスでも、この路線はあの体力を削る休憩はないのがいい。夜行バスは定刻に寒河江に到着。
ところが問題発生。
てっきり寒河江駅の近くに停車するのかと思ったら、駅からは歩いて20分ほど離れた寒河江営業所だった。
タクシーの予約では寒河江駅での迎えをお願いしていたので慌ててタクシー会社へ電話してみる。すぐに出てくれてほっとした。
迎えの場所を変更してもらうことが出来て一安心。
予約の時間まで少しあるので近くのコンビニ(ファミマ)で買い物を済ませたところでちょうど迎えのタクシーが到着した。

今回は八久和ダム峠下流の長い長いへつり道を歩くのを避けて、大檜原川を遡行し、紫ナデと1320mピークの鞍部を乗越して小国沢を下降して本流に出る計画だ。
ところが大檜原川沿の林道は工事の為車両進入禁止となっていた。
林道入口でタクシーを降りて支度をして出発。

林道はよく手入れされており、歩きやすい。
林道の工事は、対岸で早坂沢が出合う辺りの崩壊を修復していた。ここは歩きならば難なく通過できた。
比較的新しい巨大な堰堤。まさにゲゲゲの鬼太郎のぬりかべ登場といった感じ。堰堤の直前で林道終点となったので沢へ降りる。
堰堤直前まで沢を歩き、左から堰堤手前の灌木のある斜面を登り堰堤を越えられる高さまで上がり、トラバース気味に堰堤上に降りる。堰堤上を歩いて堰堤梯子を降りて水流を横断してから堰堤湖の左岸側へ降りた。早朝から大汗をかいた。

堰堤上は穏やかな流れになっていた。
朝食をとってから本格的に大檜原川を遡行する。
出だしからゴルジュで水に浸かる。大変ではないが、いきなりで面食らった。

時々ゴルジュとなるが、一か所虎ロープがかかっていた所を少し巻き気味に越えたくらいで全て水線突破できた。
特記することもなくトッサカ沢出合を過ぎて右に左に小沢を合せながら順調に距離を伸ばしていく。
枯松沢出合付近はいい泊り場があちらこちらにあるが、藪蚊が異常に多く沢の真ん中を歩いていても蚊にたかられて不愉快だった。
標高790m付近の二俣で一時的に雨に降られたので雨具を着たが、幸い雨はすぐに止んでくれた。

この辺りになると沢は高度を上げ始め、これまでの平凡な様子から少し変化を見せて小滝が出てきたところもあった。
左から立て続けに沢が入ってからはぐいぐいと高度を上げる。
これまで何も無かったのが嘘のような立派な2段8m滝が現れた。
最初は登れそうな気がしたが、結局右のガレから巻いた。初日で重荷のモコモコさんに1、2歩お助け紐を要求されたが、難なく巻き終えた。
そろそろ泊まる場所がほしいところだ。

平らなビバーク地がなく、どんどん登るはめになる。
膝を抱えてのビバークか、稜線まで頑張って藪の中での泊りを覚悟しないといけないかなと頭をよぎったところ、モコモコさんから「ここしかないでしょう!」との声が上がる。
雪渓の雪消えの跡と思われる所だ。
整地すればなんとか二人なら横になれそうだ。

整地に時間が掛ったのと、立木が皆無なので設営に苦労したがなんとか今夜の宿が完成した。薪は直ぐに集まったので、早速夕飯の支度にかかる。
焚き火も熾きができて、夕食も中盤に差し掛かったところで、なんだか雲行きがあやしくなってきた。
18:00頃とうとう雨が降り始めた。
大粒の雨であっという間に土砂降りとなった。
すぐ横の涸れたルンゼからも水が流れるようになった。
あわてて遡行用の服に着替えて、荷物をまとめて水が流れた跡がないところへ移動させる。
もともととても狭い場所で、側壁は急な草付きだ。焚き火に新聞紙をかぶせて、自分たちはできるだけ側壁に寄って立ったままやり過ごす。

目の前は濁流だが、沢自体の傾斜が急なのでそのまま水は下に流れていき、我々の泊場には流れてくることなく、しばらくすると雨が弱まってきた。
19:00前には雨がほぼ止んで水も落ち着いてきた。増水も早ければ引くのも早い。怪しい雲もなくなった。タープを張り直し、焚き火の熾きも消えずに済んだので、焚き火を起こし直して夕食を再開した。

寝る頃には満天の星空。
夜行の疲れと、重荷を担いできたので横になった途端気絶するように眠りに就いた。


9月13日(晴れ)
泊場@6:24〜稜線7:29〜小国沢〜八久和川出合13:55(BPA)


ツエルトを張って寝たので、蚊に悩まされることなくぐっすり寝れられた。
今日は記録が見られない部分の遡行があるので、モコモコさんは緊張しているようだ。

出発してすぐに1030mの二俣。紫ナデと1320mピークとの鞍部から乗越す予定なのでここは右に入る。
相変わらずの急なゴーロと小滝でぐいぐい高度を上げて行く。1090m付近で二俣。ここも右に入り同じような渓相で高度を上げて行くと1150m付近で再度二俣。
藪がかぶさってきて水も細くなった。水を汲んでここは左に入る。右に行った方が直接鞍部に出られるが、稜線直下の崖マークを避けいざとなったら左の尾根に逃げられる左沢から稜線に出る作戦だ。
昨日泊まったところは、唯一無二の所だったことが分かる急な登りだ。
窪はかなり上まで続いており、稜線直下になると草付き登りに近くなってくる。左右にまばらにある灌木を掴みながら登り、最後2m程を藪を頼りにグイッと体を持ち上げたら稜線だった。
最後の登りでモコモコさんが登れずお助け紐で釣り上げた。久しぶりに大物を釣り上げた。

尾根に逃げることなく無事予定通りに稜線に着いた。
ここは5月に歩いたところだ。4か月ぶりの再訪。
このまま小国沢へ向かって下降してもよさそうだが、確実に場所を特定するために一度鞍部まで移動する。
藪がうるさいがなんとか鞍部に到着。
下を見ると、結構灌木が続いていて難なく行けそうだ。

少し休んでから下降開始。
思った通り灌木が生えており、藪もうるさくないので順調に高度を下げて行く。
変な言い方だか、傾斜が一定の端正な斜面なので降りやすい。かなり高度を下げたところで窪に入れた。
窪に入ってからも滝など皆無で、苔むした涸れ沢の状態が続く。傾斜も急でないのでどんどん下降して、1040m付近で紫ナデから降りてくる沢に出合った。ここまで水がない涸れ沢だった。

一度休憩してから下降を続ける。
さすがに水が出てくると滝が出現するが、問題なく降りられる。
890m付近の二俣は小滝で出合うきれいなところだった。850m付近の二俣直前に降りられない4m滝が掛っていた。
落ち口の倒木からロープが垂れ下がっていたが、これを使って降りるのには不安がある。そこで滝上の倒木を支点に懸垂で降りることにしたところ、モコモコさんからここにザイルを掛けると抜けなくなるからこの倒木ではなく落ち口の倒木を使ってと文句を言われるが、大丈夫だからと先に降りた。

懸垂自体は問題ないが、釜が小さいのに深く足がつかないので泳ぎとなる。ザイルをはずすのが大変だった。
安定して立てるところまで行ってザイルを回収できるか引いてみるとびくともしない。モコモコさんの忠告は正しかった。
申し訳ないがモコモコさんには別の支点を使って降りてもらう。モコモコさんは落口の倒木を支点にして降りてきた。こちらは数m空中懸垂になるが、無事ザイルを回収することが出来た。静かな沢の中でモコモコさんに怒られました。「わしゃの忠告を無視するからだよ〜!」とのこと。
この他には荷下げをしてから空身で残置のロープを使って降りる手もあったが、我々にとってはモコモコ方式が一番だったようだ。

すぐに二俣。二俣はひらけた日当たりのいい場所だったので、びしょ濡れになった体を温めつつ長めに休憩をとった。
しばらくは平凡な流れが続くが、やがて滑り台のような4m滝が掛る。ヒャッホーと行きたいところだが、水量が多すぎるので遠慮して滝の横に張り出している岩を降りた。滝下はゴルジュ状になった。右に左に曲がりながら小滝と淵を越えて行くと、4m滝。滝左岸の灌木に捨て縄を掛けて懸垂で降りた。ここも降りたところは足がつかないくらい深い釜なので泳いで岸に上がった。

再び二俣となった先には、上2段が小滝の3段7mの立派な滝がかかる。
滝の右岸のルンゼ横のブッシュにある残置を利用して、懸垂でルンゼを降りた。
この滝を降り切ってしまうと沢は穏やかになった。
堰堤のような滝を降りて間もなくで左から沢が入る二俣となった(標高760m付近)。
沢はぐんと広くなり、時折出てくる滝も数個あり幅広になってくる。いずれも簡単に降りられるので楽しいところだ。
北ノ沢出合いからは側壁が立ってくる。
大きな淵や小滝を難なく通過した。右から滝をかけて入る辺りの沢は狭まっている。
一瞬沢床が広がったところには、なぜここだけにと疑問に思うがブロック雪が残っていた。
そのすぐ先には、この沢最狭部とも言ってもいいくらい狭まった所から2m程の滝がかかって水が一気に落ち込んでいた。
巻き降りようとすると大高巻きになりそうだ。
ここは飛びこむのが一番安全で早い。

そのまま落ち口から飛び込むと水に巻かれそうなので、大股開きで落ち込み部分を通過してから意を決して飛びこむ。釜は深く大きい。泳いで下流の足が着くところまで移動。モコモコさんも同じ要領で無事通過。暑いのでなんだか爽快だ。
ここを過ぎてしまえば今日の宿泊地八久和川出合いまであとわずか。出合にはいい泊り場があるのは以前遡行したときに確認済みなので、気持ちが楽になった。
大渕をへつったり、浸かったり小滝を簡単に降りたりしていくとようやく八久和川出合。
「デカ!!!」」と思わず声を漏らしてしまった。川幅、小国沢手前のトロと何もかもがデカイ。田舎の駅から、いきなり東京駅の人混みの中へワープした感覚。

早速高台にある泊場を覗いてみると誰もおらず、以前と変わらず平坦ないいところだった。
思ったよりも順調にこられて、もう少し先に行こうと思えば行ける時間だったが、疲れていたので即荷物を降ろした。

設営を済ませて、薪を集め終わったところでいよいよ八久和のお楽しみ、釣りに出かける。
しかし、どうしたことだ。釣れない。というかいない。本流はすぐ上流に大淵があるので小国沢へ釣りに入る。
ところが、下降するときにあれだけいた岩魚が下流部には見当たらない。

どんどん釣り上がることになった。途中、山人が滑って竿を守るためお尻を強打。お尻の穴が数センチ広がった感じでしばらく動けなかった。「立て立つんだジョ〜!」状態。撤退も頭によぎったが、幸い痛みが引いたので釣りを続行。モコモコさんには戻ってもらい焚き火を点けておいてもらうことにした。

少し上がったところで、丁寧に釣ってみたところなんとか塩焼きサイズが釣れた。お尻は報われました。(泣)
1匹でもあるのとないのでは夕飯の豪華さが違う。
泊場に戻り、塩焼きにした。
蚊が多いのには参ったが、今日は夕立もなく楽しい時間を過ごした。
明日は長丁場、頑張ろう。


ぬりかべ堰堤の高巻き 何も無いかと思ったら・・・
こんな所がいきなりでてくる なかなか楽しい
左の岩棚に乗って小さく巻いた 基本的に河原歩き
時々ゴルジュ状 快適に登れる小滝
2段8m滝は右のガレから巻いた 沢はV字谷のゴーロとなって高度を上げる
夕立による増水で一時避難 浸水することなく快適に寝られた
ゴーロと小滝で高度を上げる いよいよ詰めに入る
稜線から大檜原川を見下ろす 小国沢を下降して行く
4m滑り台状の滝 深い釜を持つ4m滝を懸垂で降りた
3段7m滝は右岸のルンゼから懸垂下降 沢幅が広がってきた
今回の行程で唯一見たブロック ドボン飛び込み突破
八久和川出合 八久和川小国沢出合には高台のいいテンバがある


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